セファロスポリン系抗生物質(フロモックスなど)

セフェム系抗生物質(概略)

βラクタム系抗生物質:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁のない「マイコプラズマ属」には効果がない。

PK/PD理論(時間依存性、time above MIC):
βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)の抗菌薬は、時間依存性に抗菌力を発揮する。
できるだけ長い時間、一定濃度(最小発育阻止濃度:MIC)以上の薬物血中濃度を保つ方が効果的である。
1日量を複数回に分けて服用する。
参考)濃度依存性→ニューキノロン系、アミノグリコシド系など。

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

セフェム系抗生物質の投与量調節に関しては、日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

  • セフェピム(注射用第四世代セフェム系薬):腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。(バンコマイシン塩酸塩、アミノグリコシド系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬、アシクロビルなども同様である)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(日本腎臓学会)

CKD患者へ腎排泄性薬物を投与する際に,有害事象の減少を目的とし,腎機能に応じて適切な投与方法・量に変更することを強く推奨する。

腎排泄性薬物としては,一部の抗不整脈薬,抗菌薬(βラクタム系やアミノグリコシド系など),抗真菌薬(フルコナゾール),抗ウイルス薬の多く(本章CQ3参照),ヨード造影剤(本章CQ5参照),ビグアナイド系薬,抗がん薬の一部,直接経口抗凝固薬(本章CQ4参照),ガバペンチン,プレガバリン,炭酸リチウムなどが代表的な薬剤としてあげられる。

腎機能に応じた薬物投与方法は,具体的には1回投与量の減量・投与間隔延長・投与中止があげられ,薬剤の血中濃度測定が可能な薬剤については,治療薬物モニタリングを実施することで,薬剤の特性に応じて血中濃度測定による最適な投与計画を行うことが重要である。

薬物投与計画を行う際に参照すべき国際的ガイドラインとして,2012年にKDIGOが発表したCKD診療に関するガイドラインaがあり,上記の腎排泄性薬物を投与する際の指針が示されている。

近年,わが国からも薬物投与に関連した腎障害診療ガイドラインが複数発刊されており,鎮痛薬・抗菌薬・免疫抑制薬に関しては「薬剤性腎障害診療ガイドライン2016」b,抗がん薬に関しては「がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016」cで詳説されている。
各薬剤の具体的な投与量調整に関しては,日本腎臓病薬物療法学会が特に注意すべき薬剤に対する指針dを発表している。
加えてCKDステージG3b~5のハイリスク症例においても参照すべき診療ガイドラインeが発表されており,これらを参考に投与量調整を行うことが望ましい。

セフェム系抗生物質の投与量調節に関しては、日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

医薬品各種(セファロスポリン系抗生物質)

フロモックス(一般名:セフカペン)

経口用第三世代セフェム系薬:
「プロドラッグ。腸管壁で代謝されてCFPNになる」。(今日の治療薬2020,p.55)
「本剤は腎排泄型の薬剤であり」。(フロモックス添付文書)
「セフカペンはほとんど代謝されることなく主として腎から排泄される」。(同上)

βラクタム系抗生物質:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁のない「マイコプラズマ属」には効果がない。

抗菌スペクトル:
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属、プレボテラ属(プレボテラ・ビビアを除く)、アクネ菌
効果がない菌:百日咳菌、マイコプラズマ属、レジオネラ属など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
    クラリスロマイシンでは適応となっていない。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

セフカペンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.194-197、服薬指導例・薬歴記載例有り)

高度腎障害患者(週3回の血液透析)
歯茎の腫れ・痛みが気になり、近医(歯科)受診。
セフカペンピボキシル錠100mg、1回1錠、1日3回毎食後、5日分
ロキソプロフェンナトリウム錠60mg、1回1錠、疼痛時、5回分

フロモックス添付文書の用法・用量は以下のとおりである。

【用法・用量】
通常,成人にはセフカペン ピボキシル塩酸塩水和物として1回100mg(力価)を1日3回食後経口投与する。なお,年齢及び症状に応じて適宜増減するが,難治性又は効果不十分と思われる症例には1回150mg(力価)を1日3回食後経口投与する。

ただし、添付文書には記載されていないが、腎機能障害患者では1日投与回数を減らす必要がある。
参照)日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」付表:腎機能低下時の薬剤投与量←(どんぐり2019,p.196)

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回100mg、1日3回食後(最大1回150mg)
  • CCr(10~50mg/dL未満)
    1回100mg、1日2回
  • CCr(10mg/dL未満)
    1回100mg、1日1~2回
  • 透析(HD)
    100mg、1日1回(透析日は透析後投与)

なお、ロキソプロフェンは、もし鎮痛薬が必要であれば、アセトアミノフェンに変更する。
そして、短期間少量投与。

セフゾン(一般名:セフジニル)

経口用第三世代セフェム系薬:
「黄色ブドウ球菌、レンサ球菌属などに強い抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.52)

メイアクトMS(一般名:セフジトレン)

経口用第三世代セフェム系薬:
「セフジトレンに代謝されて抗菌力を示すプロドラッグ。経口セフェム剤として初めてバクテロイデス属、百日咳の適応。インフルエンザ菌、肺炎球菌に特に良好な活性」。(今日の治療薬2020,p.53)

バナン(一般名:セフポドキシム)

経口用第三世代セフェム系薬:
「プロドラッグ。腸管壁で代謝されてCPDXになる。特にグラム陰性菌に対する抗菌力が強い」。(今日の治療薬2020,p.55)

オラセフ(一般名:セフロキシム)

経口用第二世代セフェム系薬:
「エステル型プロドラッグ。生体内でCXMとなり抗菌力を発揮」。(今日の治療薬2020,p.52)

腎機能低下時の用法・用量(セフロキシム)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ケフレックス、ラリキシン(一般名:セファレキシン)

経口第一世代セフェム系薬:
「グラム陽性菌、大腸菌、クレブシエラ属などに抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.50)

L-ケフレックス(一般名:セファレキシン)

経口第一世代セフェム系薬:
「ケフレックスの持続性製剤(胃溶30%、腸溶70%)」。(今日の治療薬2020,p.51)

ケフラール(一般名:セファクロル)

経口第一世代セフェム系薬:
「CEX参照」。(今日の治療薬2020,p.51)
CEX:ケフレックス。

L-ケフラール(一般名:セファクロル)

経口第一世代セフェム系薬:
「ケフラールの持続性製剤(胃溶40%、腸溶60%)」。(今日の治療薬2020,p.52)

セフテム(一般名:セフチブテン)

経口第三世代セフェム系薬:
「グラム陰性菌に強い抗菌力」。(今日の治療薬2020,p.53)

注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療薬

医薬品各種(ADHD治療薬)

コンサータ、リタリン(一般名:メチルフェニデート)

ADHD治療薬(ドパミン刺激薬):
「ドパミン、ノルアドレナリンの再取込み阻害のため、中枢興奮作用強い。強力な覚醒作用。(リタリン)依存性極めて高く、ナルコピレシーのみに適応。(コンサータ徐放剤)」(今日の治療薬,p.882)

ビバンセ(一般名:リスデキサンフェタミン)

ADHD治療薬(ドパミン刺激薬):
「効果はあるが、依存性や目的外使用の懸念から処方には処方医も患者の登録が必要」。(今日の治療薬2020,p.883)

腎機能低下時の用法・用量(リスデキサンフェタミン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ストラテラ(一般名:アトモキセチン)

ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取込み阻害薬):
「ノルアドレナリン系に作用。効果はやや弱いが、依存性が少なく、登録不要」。(今日の治療薬2020,p.883)

アトモキセチンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    アトモキセチン:CR(CYP2D6)0.87、(PISCS2021,p.50)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

気管支喘息、COPD治療薬(吸入以外)

咳が長く続く場合には、原因を特定することが大切

(児島2017,p.181)

「咳は体力を奪い、また肋骨の骨折にもつながる」。
適切な薬物を適切に使い分けることが大切である。

とはいうものの、鎮咳薬が全ての咳に効くわけではない。
咳が長引く場合、それぞれの原因疾患別に根本的な治療が必要である。

〇喘息による咳:
鎮咳薬は逆効果となる。
ステロイド吸入薬や抗ロイコトリエン薬を使用する。

〇逆流性食道炎による咳:
胃酸を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)が必要である。

〇副鼻腔炎(蓄膿症)による咳:
副鼻腔炎を根本的に治療するため、ステロイド点鼻薬や抗菌薬などを使用する。

〇就寝時横になると咳がひどくなるのは、心不全の兆候かもしれない。
心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下して、全身に十分な血液を送り出すことができなくなった状態をいう。
心不全状態では、全身に水分がたまってしまうので、体重増加(1週間で2kg以上の増加)や、横になると咳が出たり息苦しくなったりする。

〇子どもの咳は、家族の喫煙が原因のこともある。

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

医薬品各種(気管支喘息薬・吸入以外)

テオドール(一般名:テオフィリン)

テオフィリン薬(キサンチン誘導体):
「血中濃度を上昇させる併用薬に注意」。(今日の治療薬2020,p.730)

「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)
注)テオフィリンは、上記「どんぐり」のリストでは漏れている。

テオフィリンの血中濃度に応じて、非有効域から有効域、中毒域さらに痙攣または死亡に至る。中毒域では、血中濃度に応じて、消化器症状、心拍増加、呼吸困難、そして不整脈さらには痙攣が起きる。

「テオフィリンはテオフィリン中毒の初期症状が起こり得る20μg/mLまでは線形、それ以上になると非線形に血中濃度が上昇していく」。テオフィリンは、CYP1A2の基質薬であり、喫煙はCYP1A2を誘導する。体調が悪化して喫煙ができなくなった場合に、テオフィリンの代謝が阻害されて血中濃度が一気に上昇すると、死に至ることも考えられる。

「テオフィリンの血中濃度と効果および副作用との関係」(実践薬学2017,p.152)
「テオフィリンの投与量と血中濃度の関係」(実践薬学2017,p.153)

テオフィリンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

テオフィリンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.90)

63歳女性、体重40kg、非喫煙者、風邪をひいたあと、咳の症状が残っている
テオフィリン徐放錠200mg、1回1錠、1日2回朝食後・就寝前、14日分

消失半減期(hr)= 14.8±2.8(hr)
投与間隔/消失半減期=12/14.8=0.81<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=1.0
塩係数(S)=1.0
1回投与量(Dose)=200mg
投与間隔(τ)=12時間
クリアランス(CL)=(Vd×Ke)
=0.035L/hr/kg(60歳以上の高齢者のクリアランス)

平均血中濃度(Css.ave)
=(1.0×1.0×200mg/12hr)/0.035L/hr/kg×40kg(体重)
=16.67/1.4
=11.9mg/L⇒11.9μg/mL

テオフィリンの有効血中濃度:
5~20μg/mL
有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算

麻酔薬(キシロカインなど)

医薬品各種(麻酔薬)

慢性疼痛治療に対する使用薬剤:
「慢性疼痛診療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • ケタミン(NMDA受容体拮抗薬):2D(使用しないことを強く推奨する)

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である→古い)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

ドルミカム(一般名:ミダゾラム)

全身麻酔薬(ベンゾジアゼピン系):
「中時間作用型、フルマゼニルで拮抗可」。(今日の治療薬2021,p.1025)

ミダゾラムは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
    CR(CYP3A4)0.92VS、(PISCS2021,p.46)

ドロレプタン(一般名:ドロペリドール)

全身麻酔薬(ブチロフェノン系):
「鎮静作用はハロペリドールの15倍。クロルプロマジンの約200倍」。(今日の治療薬2020,p.1018)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

ケタラール(一般名:ケタミン)

全身麻酔薬(フェンサイクリジン系)NMDA受容体拮抗薬:
「麻酔・鎮痛作用(麻薬)」。(今日の治療薬2020,p.1018)

副腎皮質ステロイド(点鼻薬)

アレルギー性鼻炎(適応)

ステロイド点鼻薬は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに有効である。

「ステロイド点鼻薬は、症状がひどくなってから使う切り札ではなく、初期の軽い症状のうちから使うべき薬としてガイドラインでも定められています」。(児島2017,p.153)
「通年性アレルギー性鼻炎における軽症例から重症例、花粉症においても初期治療から重症例まで、鼻噴霧用ステロイドが単独ないしは併用で使用が推奨され、重要度が増している」。(今日の治療薬2020,p.1073)

ステロイド点鼻薬は、症状の悪化を防ぐため継続的に使う薬物である。
そのため、症状が治まってもしばらくは使い続けることになる。
その点、ステロイド点鼻薬は、眠気(抗ヒスタミン薬の副作用)や全身への影響が少ない(バイオアベイラビリティが低い)ので、長期間使いやすい薬物である。

ただし、ステロイド点鼻薬は、鼻づまりにはやや効果が弱い。
鼻づまりには血管収縮薬が最も有効であるが、症状の重いとき、1~2週間に限って使用すること。

点鼻薬は、鼻の通っているときに使う

最近のステロイド点鼻薬は、1日1回投与になっている。
通常は(大人では)、1回に各鼻腔2噴霧ずつ、合計4噴霧となる。

1日のうちでできるだけ鼻のとおりが良い時間帯に使用する。
朝起きてすぐでも風呂上りでも、いつでも何の問題も無い。

使用する前にはよく鼻をかんで、鼻水を取り除いておくことが大切である。
大人(1回2噴霧)の場合、左右交互の噴霧を2回繰り返すようにするとよい。
右なら右を2回連続して噴霧すると、液垂れしやすくなる。

噴霧した後は、鼻から息を吸って口から吐く。
ここで、鼻から息を吐くと、薬剤が奥まで届かなくなる。

使い初めには空打ちが必要である。(アラミスト、ナゾネックス、下記参照)
フタを閉め忘れていた(5日以上経過)、あるいは長い間(30日以上)使っていなかった場合には、再度空打ちをしてから使う必要がある。

医薬品各種(副腎皮質ステロイド・点鼻薬)

アラミスト(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)

定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻液):
「1日1回投与の横押し型噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1077)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
受容体への結合力が非常に強く、眼症状(目のかゆみ・赤み・涙など)の改善効果が期待できる。
バイオアベイラビリティ、0.5%(全身への影響は少ない)。
ベンザルコニウム塩化物などの添加物を含んでいる(ナゾネックスも同様)。
(液体状の製剤であり、細菌の繁殖を防ぐため)
2~5歳未満、1日1噴霧、15歳以上、1日2噴霧。
使い始めの空打ち、6回。

フルチカゾンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

フルナーゼとの違い

同じGSKには、1日2回のフルナーゼがある。

有効成分の側鎖が違うことによって、グルココルチコイド受容体(GR)との結合親和性が高くなっている。
フルチカゾンと同等以上の有効性および安全性を有する。
1日1回投与で安定した効果がより長時間持続する。
フルナーゼ特有のにおいがない。
フルナーゼに比べて、ミスト状に噴霧される。

ナゾネックス(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)

定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻薬):
「1日1回噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1076)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
バイオアベイラビリティ、0.2%未満(全身への影響は非常に少ない)。
ベンザルコニウム塩化物などの添加物を含んでいる(アラミストも同様)。
(液体状の製剤であり、細菌の繁殖を防ぐため)
3~12歳未満、1回1噴霧、12歳以上、1回2噴霧。
使い始めの空打ち、10回。

エリザス(一般名:デキサメタゾンシペシル酸エステル)

粉末噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤(点鼻薬):
「国内初の粉末製剤の1日1回噴霧薬。全身的影響は少ない」。(今日の治療薬2020,p.1077)

1日1回のステロイド点鼻薬である。
バイオアベイラビリティ、14.0%未満(全身への影響は少ない)。
乳糖以外の保存料や防腐剤が使われていない粉状の製剤である。
(鼻粘膜に対する刺激が少なくなっている)
16歳以上、1回1噴霧。

フルナーゼ(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)

1日2回のステロイド点鼻薬である。
同じGSKには、1日1回のアラミストがある。

フルチカゾンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

呼吸障害改善薬(ピレスパなど)

医薬品各種(呼吸障害改善薬)

ピレスパ(一般名:ピルフェニドン)

抗繊維化薬:

「特発性肺線維症に対する初の抗繊維化薬」。(今日の治療薬2020,p.743)

ピルフェニドンは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

制吐薬、鎮暈薬(メリスロンなど)

医薬品各種(制吐薬、鎮暈薬)

トラベルミン(一般名:ジフェンヒドラミン/ジプロフィリン配合)

中枢性制吐・鎮暈薬(抗ヒスタミン薬および類似薬):
「迷路機能亢進抑制作用、嘔吐中枢に選択的に作用し鎮吐作用」。(今日の治療薬2020,p.938)

トラベルミン配合錠(ジフェンヒドラミン40mg/ジプロフィリン26mg)

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ジフェンヒドラミン:IR(CYP2D6)0.61、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

トラベルミン配合錠は、乗り物酔いの吐き気に盛用されている。
トラベルミン配合錠は、以下のような理由から、乗り物酔いの吐き気に最適な薬物である。

乗り物酔いは、三半規管の異常によって起こる。
吐き気の一部は、CTZを介して生ずるため、ナウゼリンやプリンペランでもある程度の効果は期待できる。
ただし、CTZを介さない嘔吐中枢の刺激によって生じる部分もある。
また、随伴症状として、平衡感覚の失調や急性の眩暈も生じる。
(児島2017,p.305より)

【効能・効果】
下記の疾患又は状態に伴う悪心・嘔吐・めまい
動揺病、メニエール症候群

【用法・用量】
通常成人1回1錠を経口投与する。
必要により1日3~4回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

(トラベルミン配合錠)

⇒「消化管運動機能改善薬+消化酵素(ナウゼリン、プリンペランなど)

メリスロン(一般名:ベタヒスチン)

眩暈薬(狭義):
「内耳循環障害改善作用、脳内血流量改善作用」。(今日の治療薬2020,p.941)

メリスロン錠(6mg、12mg)

メニエール病などに伴うめまい症状を改善する薬物である。
内耳循環障害の改善、内リンパ水腫の除去、および脳内血流量の増加をもたらす。

【効能・効果】
下記の疾患に伴うめまい、めまい感
メニエール病、メニエール症候群、眩暈症

【用法・用量】
錠6mg: 通常、成人は1回1~2錠(ベタヒスチンメシル酸塩として1回6~12mg)を1日3回食後経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
錠 2mg: 通常、成人は1回1錠(ベタヒスチンメシル酸塩として1回12mg)を1日3回食後経口投与する。
なお、ベタヒスチンメシル酸塩としての1回用量は6~12mgである。

(メリスロン添付文書)

副作用としては、悪心・嘔吐や発疹がある。
メリスロンはヒスタミン類似作用を有す。
消化性潰瘍や気管支喘息の症状を悪化させる恐れがある。(禁忌ではない)

メニエール病は難聴の原因になる

メニエール病では、回転性のめまい・中~低音部の難聴・耳鳴りを伴うことがよくある。
めまいの発作を繰り返しているうちに、難聴が進行してしまう恐れがある。
めまいの症状が治まってもすぐに薬を中止せず、頓服薬を使いながら3~6か月程度は様子をみる必要がある。
不快な症状が治まったら服薬を中止してしまいがちだが、この点注意を要する。
(児島2017,p.310より)

セファドール(一般名:ジフェニドール)

眩暈薬(狭義):
「椎骨動脈循環改善作用、前庭神経路調整作用、眼振抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.941)

セファドール顆粒(10%、100mg/g)
セファドール錠(25mg)

メニエール病を含む様々な病態において、各種の作用を発揮してめまいを抑制する。
「左右の血流量のアンバランスや、異常な神経興奮といった内耳障害を解消する作用」を有する。(児島2017,p.309)

【効能・効果】
内耳障害にもとづくめまい

【用法・用量】
1.セファドール錠25mg:通常成人回1~2錠、1日3回経口投与する。
年齢、症状により適宜増減する。
2.セファドール顆粒10%:通常1回0.25~0.5g(ジフェニドール塩酸塩として25~50mg)を1日3回経口投与する。

(セファドール添付文書)

ジフェニドールは、抗コリン作用を有する。
前立腺肥大や緑内障などの症状を悪化させる恐れがある。(禁忌ではない)

アデホスコーワ(一般名:アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物)

⇒「脳梗塞治療薬(アデホスコーワなど)

めまい、メニエール病および耳鳴症で使われることが多い。

ナゼア(一般名:ラモセトロン)

5-HT3受容体拮抗制吐薬:
「【錠】作用は強力かつ持続的」。(今日の治療薬2020,p.940)

ラモセトロンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

イメンド(一般名:アプレピタント)

ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬:
「日本初のニューロキニン(NK1)受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.940)

CYP2C9誘導作用(弱い)があり、ワルファリンの抗凝固作用を減弱する作用を有する。(PISCS2021,p.155)

アプレピタントは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

アプレピタントは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ST合剤(抗菌薬)

ST合剤(概要)

ST合剤:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

医薬品各種(ST合剤)

バクタ、バクトラミン(一般名:スルファメトキサゾール/トリメトプリム、ST合剤)

配合剤:
「(T)と(S)により相乗的な抗菌作用の増大。腎・肺への移行良好。MRSA感染症に対して使用されることもある」。(今日の治療薬2020,p.88)

抗菌スペクトル:
腸球菌属、大腸菌、赤痢菌、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア・レットゲリ、インフルエンザ菌、ニューモシスチス・イロベチー

腎機能低下時の用法・用量(バクタ)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)一般感染症:1日[錠]4錠、[顆粒]4g(T換算320mg)を分2
    2)ニューモシスチス肺炎の治療及び発症抑制:治療の場合は1日[錠]9~12錠、[顆粒]9~12g(T換算720~960mg)を分3~4。発症抑制の場合は1日1回[錠]1~2錠、[顆粒]1~2g(T換算80 ~ 160 mg)を連日又は週3日
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    腎機能正常者と同じ
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    通常の1/2量
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    一般感染症への使用は推奨されない
    ニューモシスチス肺炎に使用する場合には、一例として治療には1日[錠]6錠、[顆粒]6g(T換算480mg)を分1。発症抑制の場合は1日1回[錠]1錠、[顆粒](T換算80mg)を週3回、HD患者はHD日はHD後に投与
    なお、本投与法に関する情報は不足していることから、今後の検討が望まれる。

トリメトプリムは、CYP2C8阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

中毒治療薬(チャンピックスなど)

医薬品各種(中毒治療薬)

ジャドニュ(一般名:デフェラジロクス)

鉄過剰症治療薬:
キレート剤としてFe3+と選択的に結合し胆汁中排泄。(今日の治療薬2020,p.1120)

デフェラジロクスは、CYP2C8阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

チャンピックス(一般名:バレニクリン)

ニコチン依存症治療薬:
「ニコチン受容体部分作動薬」。(今日の治療薬2020,p.1123)

腎機能低下時の用法・用量(バレニクリン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

皮膚科用薬(CS以外)

医薬品各種(CS以外の皮膚科用薬)

オクソラレン(一般名:メトキサレン)

白斑治療薬:
「皮膚の光線感受性を増強、特に長波長側の紫外線に対する感受性を増す。露光部にメラニン沈着」。(今日の治療薬2020,p.1094)

メトキサレンは、CYP1A2阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ケラチナミン、ウレパール、パスタロン(一般名:尿素)

角化症治療薬:
「角質の水分保持増加作用、角質の溶解剥離作用」。(今日の治療薬2020,p.1097)

薬物動態パラメーター(尿素)

「尿素は水溶性だが分子量60と小さいため、細胞膜を自由に通過でき、細胞内液、細胞外液を加えた体の総水分量、つまり体重の60%に均等に分布するため分布容積は0.6L/kgとなる(このため、体内水分量のことをurea spaceと呼ぶ」。(実践薬学2017,p.257、図S1:薬剤・物質の体内分布)

抗C型肝炎ウイルス薬(ハーボニーなど)

抗C型肝炎ウイルス薬

HCVのライフサイクルとDAAの主な作用部位(実践薬学2020,p.133)
DAA:direct-acting-antiviral(直接作用型抗ウイルス薬)

  • 翻訳、ウイルス蛋白産生(HCVが肝細胞内に侵入)
    NSS/4Aプロテアーゼ阻害薬(いずれも蛋白阻害薬):テラプレビル(2017年11月中止)、シメプレビル、アスナプレビル、バニプレビル、パリタプレビル、グラゾプレビル
  • 複製複合体形成(HCVを増殖する)
    NS5A阻害薬(いずれも蛋白阻害薬):ダクラタスビル、レジパスビル、オムビタスビル、エルバスビル
  • RNA複製、増殖(HCVを肝細胞外へ放出)
    NS5Bポリメラーゼ阻害薬(核酸アナログ製剤):ソホスブビル

アスナプレビル、ダクラタスビル、2021年3月末経過措置期間満了

参考資料:
日本肝臓学会編『C型肝炎治療ガイドライン』の公表について/日本肝臓学会(2019年6月)
ガイドライン(PDF)、各剤併用禁忌一覧表(PDF)などへのリンク有り。
そのほか、別途、ガイドライン簡易版(PDF)も存在する。

医薬品各種(抗HCV薬)

レベトール(一般名:リバビリン)

抗C型肝炎ウイルス薬(RNAポリメラーゼ阻害):
「プリンヌクレオシド類似物質。DNA、RNAウイルス増殖抑制作用」。(今日の治療薬2021,p.828)

RNAポリメラーゼ阻害は、直接の抗ウイルス作用の他に免疫調節蛋白を誘導する。(同上,p.825)

グラジナ(一般名:グラゾプレビル)

抗C型肝炎ウイルス薬(NS3・4Aプロテアーゼ阻害):(今日の治療薬2021,p.829)
エルバスビルと併用。(エルバスビル+グラゾプレビル(EBR/GZR))

NS3・4Aプロテアーゼ阻害薬は、非構造蛋白3・4Aプロテアーゼを競合的に阻害する。(同上,p.825)

併用禁忌には、CYP3A誘導薬、P-gp誘導薬やOATP1B1阻害薬がある。

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP2C9、CYP3A阻害薬・ミコナゾール(フロリード)
併用禁忌:CYP3A、P-gp阻害薬・イトラコナゾール(イトリゾール)

エレルサ(一般名:エルバスビル)

抗C型肝炎ウイルス薬(NS5A阻害):(今日の治療薬2021,p.830)
グラゾプレビルと併用。(エルバスビル+グラゾプレビル(EBR/GZR))

NS5A阻害薬は、副作用が少なく、他の阻害薬と組み合わせて使われる。(同上,p.825)

併用禁忌には、CYP3A誘導薬、P-gp誘導薬やOATP1B1阻害薬がある。

ソバルディ(一般名:ソホスブビル)

抗C型肝炎ウイルス薬(NS5Bポリメラーゼ阻害):(今日の治療薬2021,p.830)
リバビリンと併用。(ソホスブビル+リバビリン(SOF/RBV)

NS5Bポリメラーゼ阻害薬は、HCV複製の中心的役割をもつポリメラーゼを阻害する。(同上,p.825)

腎機能低下時の用法・用量(ソホスブビル)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ハーボニー配合(一般名:レジパスビル+ソホスブビル)

抗C型肝炎ウイルス薬(配合剤):(今日の治療薬2021,p.830)
一般名:ソホスブビル+レジパスビル(SOF/LDV)

アドヒアランスを高めるため配合剤にしている。(同上,p.825)

ハーボニー配合のソバルディ(ソホスブビル)は、核酸アナログ製剤でありC型肝炎治療のキードラッグと目されている。p.132

腎機能低下時の用法・用量(ハーボニー配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)または透析を必要とする腎不全の患者には禁忌である。
また、P-gp誘導薬の中に併用禁忌薬がある。
さらに、アミオダロンとの併用(機序不明)は添付文書上は併用注意であるが、併用は避けるべきである。p.135

エプクルーサ配合(一般名:ソホスブビル+ベルパタスビル)

抗C型肝炎ウイルス薬(配合剤):(今日の治療薬2021,p.831)
一般名:ソホスブビル+ベルパタスビル(SOF/VEL)

腎機能低下時の用法・用量(エプクルーサ配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ヴィキラックス配合(販売中止)

一般名:オムビタスビル+パリタプレビル+リトナビル(OBV/PTV/r)
2018年5月販売中止、2019年3月末日経過措置期間満了

腎機能低下時の用法・用量(ヴィキラックス配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ヴィキラックスは、ハーボニーとは異なり胆汁排泄型である。

ただし、強力なCYP3A4阻害薬であるリトナビル(抗HIV薬)が配合されているため、CYP3A4基質薬あるいはCYP3A4誘導薬とは併用禁忌となり、その対象薬は多くなる。p.133-135

そのほか、P-gp阻害薬、BCRP阻害薬やOATP阻害薬の中に併用禁忌薬がある。

そうした中で、Ca拮抗薬のアゼルニジピンが併用禁忌となっている。

添付文書上の禁忌はアゼルニジピンだけであるが、「その他のCa拮抗薬でも血中濃度上昇に伴う下肢浮腫や顔面浮腫、肺水腫、低血圧、無尿などが報告されて」いる。
「最小用量まで減量するか、できればアンジオテンシンⅡ受容体(ARB)などへの変更を考慮した方がいいだろう」。pp.134-135

なおここで、リトナビル(強力なCYP3A4阻害薬)の役目は、併用薬剤のPI(プロテアーゼ阻害薬:CYP3A4基質薬)の分解を阻止して血中濃度を高めるとともに、血中濃度半減期を延長させることにある。
つまり、ブースター効果を狙ったものである。

ちなみに、ヴィキラックス配合錠でのリトナビル含有量は100mg/日分である。
そして、抗HIV薬としてのリトナビルの1日量は1200mgである。

抗HIV薬

医薬品各種(抗HIV薬)

ビリアード(一般名:テノホビル)

抗HIV薬[ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)]:
「単独ではなく、FTCとの合剤で使われることが多い」。(今日の治療薬2020,p.107)

抗B型肝炎ウイルス薬:テノゼット
抗HIV薬[ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)]:ビリアード

腎機能低下時の用法・用量(テノホビル)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

テノホビルは、CYP2B6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

エムトリバ(一般名:エムトリシタビン)

抗HIV薬[非ヌクレオシド系逆転酵素阻害薬(NNRTI)]:
「単独ではなくTDFとの合剤で使われることが多い」。(今日の治療薬2020,p.108)

腎機能低下時の用法・用量(エムトリシタビン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ツルバダ(一般名:エムトリシタビン/テノホビル配合)

配合剤(NRTI):
「FTCとTDFの合剤」。(今日の治療薬2020,p.108)

腎機能低下時の用法・用量(エムトリシタビンなど配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

デシコビ(一般名:エムトリシタビン/テノホビル配合)

配合剤(NRTI):
「FTCとTAFの合剤。初回治療の選択薬として使われることが多い」。(今日の治療薬2020,p.108)

腎機能低下時の用法・用量(エムトリシタビンなど配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ストックリン(一般名:エファビレンツ)

抗HIV薬[非ヌクレオシド系逆転酵素阻害薬(NNRTI)]:(今日の治療薬2020,p.109)

エファビレンツは、CYP2B6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    エファビレンツ:IC(CYP3A4)1.4倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

インテレンス(一般名:エトラビリン)

抗HIV薬[非ヌクレオシド系逆転酵素阻害薬(NNRTI)]:(今日の治療薬2020,p.109)

エトラビリンは、CYP2C19阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

エジュラント(一般名:リルピビリン)

抗HIV薬[非ヌクレオシド系逆転酵素阻害薬(NNRTI)]:
「初回治療の薬剤として推奨される。TDF/FTCとの合剤であるコムプレラとして使用されることが多い」。(今日の治療薬2020,p.110)

リルピビリンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

ノービア(一般名:リトナビル)

抗HIV薬[HIVプロテアーゼ阻害薬(PI)]:
「抗HIV薬としての役割よりも、CYP3A4阻害薬として他のPIの血中濃度を上げる役割が大きい」。(今日の治療薬2020,p.110)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

リトナビルは、CYP2C19阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

リトナビルは、CYP3A阻害薬である(強い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

強いCYP3A阻害薬を有するリトナビルは、そのほかのPI(HIVプロテアーゼ阻害薬)と併用することによって、他PIの代謝を遅らせて血中濃度を上げる役割りを果たしている。つまり、抗HIV薬としての効果は期待されていない。

同様の理由で、リトナビルはヴィキラックス配合錠(抗HCV薬)にも配合されており、主薬の血中濃度を高めるとともに、血中濃度半減期を延長させる(1日の投与回数を減らす)効果がある。

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

レクシヴァ(一般名:ホスアンプレナビル)

抗HIV薬[HIVプロテアーゼ阻害薬(PI)]:(今日の治療薬2020,p.111)

活性代謝物のアンプレナビルは、CYP3A阻害薬である(中程度)。

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

レイアタッツ(一般名:アタザナビル)

抗HIV薬[HIVプロテアーゼ阻害薬(PI)]:(今日の治療薬2020,p.112)

  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

アタザナビルは、CYP3A阻害薬である(中程度)。

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

プリジスタ(一般名:ダルナビル)

抗HIV薬[HIVプロテアーゼ阻害薬(PI)]:
「初回治療の選択薬としてNRTIと一緒に使われることが多い」。(今日の治療薬2020,p.112)

ダルナビルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

カレトラ(一般名:ロピナビル/リトナビル配合)

配合剤(PI):
「新しいPIの台頭により使用される機会は少ない。LPVとRTVの合剤」。(今日の治療薬2020,p.113)

ロピナビルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP2C19、CYP3A阻害薬・ボリコナゾール(ブイフェンド)

シーエルセントリ(一般名:マラビロク)

抗HIV薬(CCR5受容体拮抗薬):
「CCR5受容体指向性のウイルスに効果があるため、使用前にはウイルス指向性を検査する」。(今日の治療薬2020,p.114)

腎機能低下時の用法・用量(マラビロク)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

マラビロクは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

スタリビルドゲンボイヤ(一般名:エルビテグラビル配合)

配合剤(INSTI/NRTI):
「ラルテグラビルと交叉耐性を示す。FTC、コビシスタットのほかスタリビルドはTDF、ゲンボイヤはTAFを加えた合剤」。(今日の治療薬2020,p.115)

腎機能低下時の用法・用量(エルビテグラビル配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ビクタルビ(一般名:ビクテグラビルなど配合)

配合剤(INSTI/NRTI):(今日の治療薬2020,p.116)

腎機能低下時の用法・用量(ビクテグラビルなど配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

シムツーザ(一般名:ダルナビルなど配合)

配合剤(NRTI/PI):(今日の治療薬2020,p.117)

腎機能低下時の用法・用量(ダルナビルなど配合)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

コビシスタット(一般名:コビシスタット)

単独製品無し。
抗HIV薬の薬物動態学的増強因子(ブースター)として、各剤に配合されている。
スタリビルド、ゲンホイヤ、そしてプレジコビックスである。

コビシスタットは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

コビシスタットは、CYP3A阻害薬である(強い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

ビラセプト(一般名:ネルフィナビル)

抗HIV薬[HIVプロテアーゼ阻害薬(PI)]:
2020年3月末経過措置期間満了

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

降圧薬(そのほか)

医薬品各種(そのほかの降圧薬)

アルドメット(一般名:メチルドパ)

中枢性交感神経抑制薬:
「α2作動薬。妊娠高血圧に対して使用。尿の変色、クームステスト陽性」。(今日の治療薬2020,p.620)

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)
メチルドパが尿酸値に及ぼす影響は、<不変>である。

ラジレス(一般名:アリスキレン)

レニン阻害薬:
「PRAを抑制。長時間作用。生物学的利用率が低い。降圧効果は概ねレニン依存性。食前服用で血中濃度上昇」。(今日の治療薬2020,P.635)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP3A、P-gp阻害薬・イトラコナゾール(イトリゾール)

勃起不全改善薬(バイアグラなど)

医薬品各種(勃起不全改善薬)

バイアグラ(一般名:シルデナフィル)

勃起不全改善薬(PDE-5阻害薬):(今日の治療薬2021,p.1051)

シルデナフィルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、やや高度である。
    CR(CYP3A4)0.75SS、(PISCS2021,p.46)

レビトラ(一般名:バルデナフィル)

勃起不全改善薬(PDE-5阻害薬):
「食事の影響なし」。(今日の治療薬2021,p.1052)

バルデナフィルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
    CR(CYP3A4)0.9VS、(PISCS2021,p.46)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

シアリス(一般名:タダラフィル)

勃起不全改善薬(PDE-5阻害薬):
「作用時間長く(36時間)性行為直前に服用不要。食事の影響なし」。(今日の治療薬2021,p.1052)

タダラフィルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.46)

肝疾患治療薬(インターフェロン製剤など)

医薬品各種(肝疾患治療薬)

ペガシス(一般名:ペグインターフェロンアルファ-2a)

ペグインターフェロンアルファ-2aは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

テノゼット、ビリアード(一般名:テノホビル)

抗B型肝炎ウイルス薬:テノゼット
抗HIV薬[ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)]:ビリアード

テノホビルは、CYP2B6阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ノベルジン(一般名:酢酸亜鉛)

腎疾患用剤(カリメートなど)

医薬品各種(腎疾患用剤)

慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常とは
https://www.myclinic.ne.jp/imobile/contents/medicalinfo/top_naika/suzuken_naika_54/mdcl_info.html

カリメート(一般名:ポリスチレンスルホン酸カルシウム)

高K血症治療薬:
「Ca型なので、Na制限の患者にも使用可能」。(今日の治療薬2020,p.1030)

「薬剤中に含まれる陽イオンを腸内のカリウム(K)イオンと交換し、Kを体外に排泄させることにより、血中のK値を低下させる」。(同上,p.1026)

ホスレノール(一般名:炭酸ランタン)

高リン血症治療薬:
「食物中のリン酸と結合、難溶性のリン酸ランタンが生成され糞便とともに排泄」。(今日の治療薬2020,p.1029)

「陽イオンであるリン吸着薬が陰イオンであるリンと消化管内で結合し、その吸収を妨げる」。(同上,p.1026)

リオナ(一般名:クエン酸第二鉄)

高リン血症治療薬:
「消化管内で第二鉄(3価鉄)とリン酸が結合し難溶性の沈殿(リン酸第二鉄)を形成することでリンの消化管吸収を抑制」。(今日の治療薬2020,p.1029)

「陽イオンであるリン吸着薬が陰イオンであるリンと消化管内で結合し、その吸収を妨げる」。(同上,p.1026)

ところで、第二鉄(Fe3+)よりも、第一鉄(Fe2+)の方が消化管からの吸収に優れる。
クエン酸第一鉄は、鉄欠乏性貧血における鉄補充薬として使用されている。
⇒「女性に多い鉄欠乏性貧血(フェロミアなど)

ピートル(一般名:スクロオキシ水酸化鉄)

高リン血症治療薬:(今日の治療薬2020,p.1029)

第二鉄(Fe3+)製剤である。
⇒上記、リオナ参照。

クレメジン(一般名:炭素)

尿毒素治療薬:
「腸管内で尿毒素あるいはその前駆体を吸着し糞便中への排泄を促進させる」。(今日の治療薬2020,p.1026)
「進行性慢性腎不全における尿毒症症状の改善・透析導入の遅延」。(同上,p.1029)

レグパラ(一般名:シナカルセト)

Ca受容体作動薬:
「副甲状腺のカルシウム(Ca)感知受容体に直接作用し、過剰なPTHの分泌を抑制する」。(今日の治療薬2020,p.1026)

シナカルセトは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

抗うつ薬(SSRI)概略

選択的セロトニン再取り込み阻害薬:
SSRI:selective serotonin reuptake inhibitor

うつ病患者では、神経伝達物質であるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の濃度が減少しているとされている。

  • セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらす。
  • ノルアドレナリンは、意欲・関心(やる気や気力など)を高める。
  • ドーパミンは、感情(興味や楽しみなど)を高める。

SSRIは、セロトニン濃度を高めることによって、抗うつ効果を発揮すると考えられている。
SSRIは、セロトニンのシナプスでの回収(再取り込み)を阻害して、シナプス間隙のセロトニン濃度を高める作用を有する。

セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらすので、SSRIの多くが、うつ病・うつ状態と共に社会不安障害に適応がある。

セロトニンは、消化管の活動にかかわっている。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。

高齢者では転倒や消化管出血などのリスクがある。
離脱症状が発現するリスクがある。

なお、多くの抗うつ薬は、痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、慎重投与となる。

SSRIとSNRI

入院・外来にかかわらず、うつ病の第一選択薬は、SSRI若しくはSNRIである。
入院・外来にかかわらず、「不眠、食思不振がある」場合は、ミルタザピンが第一選択薬となる。
外来対応が可能で「不安症を併せ持つ」場合、エスシタロプラムとセルトラリンが第一選択薬となる。
(今日の治療薬2020,p.845)

元住吉こころみクリニック
「抗うつ剤の副作用と安全性の比較」
cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-side/

⇒「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など

医薬品各種(SSRI)

  • パキシル:
    抗コリン作用薬、非線形型薬物、CYP2D6阻害薬、分布容積大。
  • ジェイゾロフト:
    QT延長に注意、社会不安障害(適応無し)。
  • レクサプロ:
    QT延長のある患者には禁忌、投与初日から治療用量。
  • デプロメール、ルボックス:
    QT延長、非線形型薬物、CYP1A2阻害薬。

パキシル(一般名:パロキセチン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「抗不安作用を併せもつ。比較的強力。中断症候群に注意。【CR錠】緩徐に血中濃度が推移」。(今日の治療薬2020,p.877)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○パニック障害
○強迫性障害
○社会不安障害
○外傷後ストレス障害

【用法・用量】〈うつ病・うつ状態〉
通常、成人には1日1回夕食後、パロキセチンとして20~40mgを経口投与する。
投与は1回10~20mgより開始し、原則として1週ごとに10mg/日ずつ増量する。
なお、症状により1日40mgを超えない範囲で適宜増減する。

パロキセチン錠(5mg、10mg、20mg)

パロキセチンは、非線形型薬物である

パロキセチンは、「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.233)
投与量を10→20→40mgに増量したとき、Cmax及びAUCは投与量に比例せず大幅に上昇している。

パロキセチンは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    パロキセチン:IR(CYP2D6)0.99(20mg/day投与)、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬
    パロキセチン:IR(CYP2D6)0.89(10mg/day投与)、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬
    パロキセチン:CR(CYP2D6)0.71、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「薬物相互作用、中断症候群共に少なく、使いやすい」。(今日の治療薬2020,p.876)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

効能・効果、用法・用量(ジェイゾロフト)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○パニック障害
○外傷後ストレス障害

【用法・用量】
通常、成人にはセルトラリンとして1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により1日100mgを超えない範囲で適宜増減する。

ジェイゾロフト錠(25mg、50mg、100mg)
ジェイゾロフトOD錠(25mg、50mg、100mg)

海外では、ジェイゾロフトを主に1日200mgで使っている。
これに対して、日本では1日100mgである。
その分、効き目が穏やかになるとともに、副作用も少なくなっていると考えられる。

ジェイゾロフトは、副作用が少なく、病態による禁忌事項もない使いやすい薬物である。

セルトラリンは、CYP2C19の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    セルトラリン:CR(CYP2C19)0.67、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    セルトラリン:IR(CYP2C9)0.17、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用

セルトラリンは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    セルトラリン:IR(CYP2D6)0.41、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「セロトニンにより選択的に働く。抗不安作用あり。QT延長があるため心疾患患者には投与を控える」。(今日の治療薬2020,p.876)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)リスト漏れ
    QT延長のある患者には禁忌である。

効能・効果、用法・用量(レクサプロ)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○社会不安障害

【用法・用量】
通常、成人にはエスシタロプラムとして10mgを1日1回夕食後に経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて行い、1日最高用量は20mgを超えないこととする。

レクサプロ錠(10mg、20mg)

抗うつ薬(SSRIやSNRI)は、飲み始めに副作用の出ることが多い薬物である。
そこで一般的には、最初は通常用量よりも少量から投与を開始して、何週間かかけて少しずつ量を増やしていく使い方をすることになる。

つまり、投与開始時には治療効果はないにもかかわらず、副作用ばかりが出やすい状態となっている。
このことは、薬への不信感や苛立ちを招きやすく、抗うつ薬の大きな弱点である。

そうした中で、エスシタロプラムは、初日から治療用量を服用することができる。
そのため、エスシタロプラムは、投与開始とともに治療効果を期待できる薬物である。

エスシタロプラムは、CYP2C19の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    シタロプラム:CR(CYP2C19)0.49、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬
    エスシタロプラム:CR(CYP2C19)0.45、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬

エスシタロプラムは、CYP2D6阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    セルトラリン:IR(CYP2D6)データ無し、(PISCS2021,p.50)

デプロメール、ルボックス(一般名:フルボキサミン)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):
「抗不安作用あり。相互作用に注意。半減期が短い」。(今日の治療薬2020,p.877)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
  • 「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」。(どんぐり2019,p.232)

【効能・効果】
○うつ病・うつ状態
○強迫性障害
○社会不安障害

【用法・用量】
通常、成人には、フルボキサミンマレイン酸塩として、1日50mgを初期用量とし、1日150mgまで増量し、1日2回に分割して経口投与する。
なお、年齢・症状に応じて適宜増減する。

デプロメール錠(25mg、50mg、75mg)

フルボキサミンは、非線形型薬物である

  • 添付文書でしか確認できない「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」。(どんぐり2019,p.232)

25mg→50mgは、線形性を保っている。
50mg→100mg→200mgは、非線形性である。
つまり、投与量を倍増するごとに、Cmax及びAUCはそれ以上の上昇率を示している。

  • 25mg、Cmax 9.14±3.97(ng/mL)、AUC 133± 51(ng・hr/mL)
  • 50mg、Cmax 17.25±3.03(ng/mL)、AUC 302± 69(ng・hr/mL)
  • 100mg、Cmax 43.77±15.49(ng/mL)、AUC 804±322(ng・hr/mL)
  • 200mg、Cmax 91.81±16.67(ng/mL)、AUC 2020±655(ng・hr/mL)

フルボキサミンは、CYP1A2阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

CYP1A2(阻害薬)⇒チザニジン、ラメルテオン(基質薬)

フルボキサミンは、CYP2C19阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    フルボキサミン:IR(CYP2C19)0.98、(PISCS2021,p.54)、CYP2C19阻害薬
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    フルボキサミン:IR(CYP3A4)0.30W、(PISCS2021,p.47)、CYP3A4阻害薬

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬 (スルピリド含む))

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、 ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンは CYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【抗うつ薬】

  • 三環系抗うつ薬(イミプラミン[イミドール、トフラニール]、クロミプラミン[アナフラニール]、アミトリプチリン[トリプタノール]など)
  • パロキセチン[パキシル]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチリン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

防御因子増強薬(ムコスタなど)

医薬品各種(防御因子増強薬)

内因性PGは攻撃因子、防御因子の双方の調整役であるとされているが、粘膜防御因子増強薬の多くは内因性PG増強作用が報告されている。(今日の治療薬2020,p.757)

NSAIDs(ロキソプロフェンなど)の胃腸障害防止のため、防御因子増強薬が併用されることは多い。
中でも、レバミピドとテプレノンがよく使われている。

両者共に胃粘膜保護薬であり、胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカーやPPI)よりもやさしめの薬物である。
また、両者の治療効果には明らかな違いは認められていない。

ただし、NSAIDsの併用薬としては、食事の影響を受けない(吸収に差がでない)レバミピドが適している。
万一空腹時に服用することになったとしても、胃腸障害の程度を極力抑えることができると考えられる。
もちろんその場合でも、胃の負担をできるだけ軽くする工夫をすることが大切である。
⇒「急性腰痛にはNSAIDs(ロキソニンなど)がお薦め
(もし、空腹時に飲む場合は、軽食をとるか牛乳で飲めば、胃の負担が軽くてすむ)

一方、セルベックスを空腹時服用した場合、吸収が非常に悪くなる。
AUC(血清中濃度曲線下面積)は、健康成人男子で23%、胃潰瘍患者で98%低下した。
(児島2017,p.229より)、参考資料はセルベックス・インタビューフォームなど。

なお、厳密には、サイトテックやネキシウムなど、保険適用のある薬物を使う必要がある。
(レバミピドやテプレノンは保険適用とはなっていない)

各剤の効能・効果は以下のとおりである。

ロキソニン、セルベックス
「胃潰瘍、急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善」
サイトテック
非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍」
ネキシウム(一部のみ)
非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制」

サイトテック(一般名:ミソプロストール)

プロスタグランジン製剤:
「PGE1誘導体。攻撃因子抑制作用と防御因子強化作用の両方あり」。(今日の治療薬2020,p.776)

【効能・効果】
非ステロイド性消炎鎮痛剤の長期投与時にみられる胃潰瘍及び十二指腸潰瘍

PGE1製剤ではあるが、下痢などの副作用は少ない。
低用量で防御因子増強、高用量で胃酸分泌抑制作用を有する。
H2ブロッカー、PPIと比べて再発防止効果が強く、H2ブロッカー、PPI抵抗性潰瘍に併用効果が期待される。
NSAIDsによる潰瘍予防に有効性を示す。
(今日の治療薬2020,p.757要約)

ムコスタ(一般名:レバミピド)

防御因子増強薬:
「胃粘膜PG増加作用。胃粘膜保護作用、活性酸素抑制作用、胃粘膜への炎症性細胞浸潤抑制作用、損傷胃粘膜修復作用」。(今日の治療薬2020,p.776)

胃潰瘍
1回100mg、1日3回(朝、夕、就寝前)
急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善
1回100mg、1日3回

顆粒(20%、200mg/g)
錠剤(100mg)

セルベックス(一般名:テプレノン)

防御因子増強薬:
「テルペン系、胃粘膜保護作用。胃粘膜PGE2、PGI2増加作用」。(今日の治療薬2020,p.776)

胃潰瘍、急性・慢性胃炎の急性増悪期の胃粘膜病変の改善
1回50mg、1日3回(食後)

細粒(10%、100mg/g)
カプセル(50mg)

ノイエル(一般名:セトラキサート)

防御因子増強薬:
「防御・攻撃両面に作用。胃粘膜微小循環改善が主作用」。(今日の治療薬2020,p.778)

ソロン(一般名:ソファルコン)

防御因子増強薬:
「胃組織内PG増加作用。胃粘膜保護・組織修復」。(今日の治療薬2020,p.778)

アプレース(一般名:トロキシピド)

防御因子増強薬:
「胃粘膜血流増加作用。抗ウレアーゼ活性。組織修復促進作用」。(今日の治療薬2020,p.778)

プロマック(一般名:ポラプレジンク)

防御因子増強薬:
「亜鉛を含み胃粘膜損傷部位に付着し、創傷治癒促進。抗酸化作用、膜安定化作用」。(今日の治療薬2020,p.779)

ガストローム(一般名:エカベト)

防御因子増強薬:
「環状テルペン系誘導体。胃粘膜保護・抗ペプシン作用、抗H.pylori作用。内因性PG量増加」。(今日の治療薬2020,p.776)

アルロイドG(一般名:アルギン酸)

防御因子増強薬:
「粘膜保護作用、止血作用。液剤であり、経管投与も可能。止血治療後に用いられる」。(今日の治療薬2020,p.778)

マーズレンS(一般名:アズレンスルホン酸/L-グルタミン)

防御因子増強薬:
「組織修復作用、抗炎症作用、血管新生作用など」。(今日の治療薬2020,p.779)

ウルグート(一般名:ベネキサート)

防御因子増強薬:
「胃粘膜に直接作用し、胃粘膜血流増加作用・胃粘膜PGE2、PGI2増加作用」。(今日の治療薬2020,p.778)

コランチル(一般名:ジサイクロミンなど配合)

防御因子増強薬:
「鎮痙・制酸作用」。(今日の治療薬2020,p.780)

抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

筋弛緩薬(ミオナールなど)

医薬品各種(筋弛緩薬)

ミオナール(一般名:エペリゾン)

中枢性筋弛緩薬:
「脊髄シナプス反射・固縮・筋紡錘感度の抑制、血流改善、脊髄での鎮痛作用」。(今日の治療薬2020,p.984)

テルネリン(一般名:チザニジン)

中枢性筋弛緩薬:
「中枢性のα2アドレナリン作動薬。脊髄シナプス反射・固縮・筋紡錘感度の抑制、血流改善、脊髄での鎮痛作用」。(今日の治療薬2020,p.984)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

チザニジンは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

チザニジンは、CYP1A2の基質である。
フルボキサミンやシプロフロキサシン(CYP1A2阻害薬)と併用しないこと。

「フルボキサミン又はシプロフロキサシンとの併用により、本剤の血中濃度が上昇し、AUCがそれぞれ33倍、10倍に上昇したとの報告がある。臨床症状として、著しい血圧低下、傾眠、めまい及び精神運動能力の低下等があらわれることがあるので併用しないこと。
これらの薬剤がCYP1A2を阻害し、本剤の血中濃度を上昇させると考えられる」。(テルネリン添付文書)

リンラキサー(一般名:クロルフェネシン)

中枢性筋弛緩薬:
「脊髄シナプス反射と筋紡錘活動の抑制」。(今日の治療薬2020,p.984)

ロバキシン(一般名:メトカルバモール)

中枢性筋弛緩薬:
「脊髄シナプス反射と筋紡錘活動の抑制」。(今日の治療薬2020,p.983)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【骨格筋弛緩薬】

  • チザニジン[テルネリン]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)概要

即効性に優れるが、眠気を生じやすい

長所:第一世代抗ヒスタミン薬は、即効性に優れる。
短所:ただし、脂溶性が高いため脳内に移行しやすく、眠気を生じやすい。
自動車の運転は避けるなどの注意が必要である。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)は、全て強い抗コリン作用を有している。
したがって、鼻水が止まらないような水様性鼻漏に効果的である。
ただし、口渇、便秘が生じやすく、認知機能低下、せん妄のリスクがある。
可能な限り使用を控える(第二世代が治療の基本となる)。

「第一世代は脂溶性が高く血液脳関門を通過しやすく、中枢神経系、特に後部視床下部―結節乳頭核に作用して鎮静効果をもたらす」。(どんぐり2019,p.175)

第一世代抗ヒスタミン薬は、H1受容体に対する選択性が低い。
そのため、 ムスカリン受容体や セロトニン受容体など、そのほかのアミン受容体にも結合する。
その結果、口渇, 食欲増進などの副反応が生じる。

脳内H1受容体占拠率

脳内H1受容体占拠率が20%以上になると、インペアードパフォーマンス(眠気を自覚しているかどうかにかかわらず、集中・判断力、作業効率が低下すること)が起こりやすくなる。(鎮静性薬物:20%以上、非鎮静性薬物:20%以下)

ケトチフェン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、d-クロルフェニラミンの脳内H1受容体占拠率は50%を超えており、投与に際して慎重さが求められる。(オキサトミド、販売中止)

参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)

妊娠中も安心して使うことができる

古い「第一世代」の方が使用実績は豊富である。
妊婦に対しても安全性が高い。

疫学調査で先天異常に影響しないと評価されている「抗ヒスタミン薬」:

  • 第一世代の抗ヒスタミン薬全般、例えば、クロルフェニラミン(豪州ADEC基準【A】)
  • 第二世代、ロラタジン(妊・豪B1)、セチリジン(妊・豪B2)
    (児島2017,p.131)

ヒスタミン受容体は,生体アミンの一種であるヒスタミンを受容する GPCR で,ヒトには機能の異なる4種類のヒスタミン受容体(H1R,H2R,H3R,H4R)が存在する.H1R は全身に分布し,主に花粉症などのアレルギー反応に関わっている.体内にアレルゲンが侵入すると肥満細胞からヒスタミンが放出される.そのヒスタミンが平滑筋や血管内皮細胞などに存在する H1R に結合すると H1R は活性化状態に平衡を偏らす.その結果,平滑筋収縮・血管拡張・血管透過性亢進などが引き起こされ,かゆみや鼻水などのアレルギー症状が発生する.一方,脳に発現しているH1R は,脳内で神経伝達物質として働いているヒスタミンを受容し,睡眠覚醒サイクルの制御や記憶に関与している.H1R のインバースアゴニストである抗ヒスタミン薬は,H1R を不活性化状態で安定化し,アレルギー症状を抑える.

島村達郎「ヒト由来ヒスタミン H1受容体の結晶構造の決定」生化学 第84巻 第9号,772-776,2012.

医薬品各種(ヒスタミンH1受容体拮抗薬、第一世代)

参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
第一世代と第二世代では、血液脳関門(BBB)の通過のしやすさが異なる。
(第一世代は通過しやすく、第二世代は通過しにくい)
⇒眠気の出やすさに関係してくる。

自動車の運転など眠気の心配のある人では、ステロイド点鼻薬(眠気の心配無し)を使うという手もある。

ポララミン(一般名:d-クロルフェニラミン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(プロピルアミン系):
「dl-クロルフェニラミンマレイン酸塩の約2倍の抗ヒスタミン作用」。(今日の治療薬2020,p.359)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    S-クロルフェニラミン:CR(CYP2D6)0.56、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    R-クロルフェニラミン:CR(CYP2D6)0.49、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

セレスタミン(一般名:d-クロルフェニラミン/ベタメタゾン)

プロピルアミン系抗ヒスタミン薬+副腎皮質ステロイド

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

ポララミン通常用量2mg+リンデロン半量0.25mgの合剤である。
即効性に優れるとともに、ステロイドとの相乗効果によって強力な抗アレルギー効果を発揮する。

ピレチア、ヒベルナ(一般名:プロメタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(フェノチアジン系):
「鎮静作用強い。抗パーキンソン作用、制吐作用。アレルギー性疾患にはあまり使用されない」。(今日の治療薬2020,p.359)

抗コリン作用、制吐作用有り。
⇒「消化管運動機能改善薬(ナウゼリンなど)」

抗うつ薬や抗ヒスタミン薬の原型となっている。
三環系の構造を持ち、抗ヒスタミン作用を発揮する。
血液脳関門(BBB)を通過するので眠気が生じる。

アタラックス-P(一般名:ヒドロキシジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(ピペラジン系):
「抗アレルギー性精神安定剤。中枢抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.360)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

ヒドロキシジンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,p.174、服薬指導例・薬歴記載例有り)

2歳(男性)、体重12kg、アトピー性皮膚炎
ヒドロキシジンパモ酸塩シロップ0.5%、1回4mL、1日2回朝夕食前、28日分
3週間前、熱性けいれんを起こした。
数日前、再度熱性けいれんを起こした。

ヒドロキシジンはヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)であり、脳内移行性の高い薬物である。
参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)
注)どんぐり2019,p.175の引用文献(熱性けいれん診療ガイドライン2015)には、ヒドロキシジンの記載が無い。

ヒドロキシジンは、下記のように痙攣性疾患には慎重投与となっている。

【使用上の注意】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
てんかん等の痙攣性疾患、又はこれらの既往歴のある患者[痙攣閾値を低下させることがある。]

(アタラックス-Pシロップ添付文書)

レボセチリジンシロップ(脳内移行性低い、痙攣に関する添付文書上の記載無し)などへの変更を考える。

ヒドロキシジンは、定常状態のある薬物である。
そして、薬物が体内から消失するまでには、少なくとも丸4日以上かかる。

投与間隔12時間/消失半減期20時間=0.6<3.0
消失半減期20時間×5=100時間(4.17日)

したがって、ヒドロキシジンシロップからレボセチリジンシロップに変更した後も、数日間は今までと同様のリスクがあると考えるのが妥当である。

単回投与:

<参考>外国人データ
ヒドロキシジン塩酸塩に関するデータを示す。
ヒドロキシジン塩酸塩を健康成人(7 人)に 0.7mg/kg 単回経口投与(シロップ液)した結果、投与後 1 時間の血中濃度は 42.6ng/mL、2 時間で 70.0ng/mL、24 時間で 13.6ng/mL となり、その消失半減期は 20.0 時間であった(高速液体クロマトグラフィー)。

(アタラックス-Pシロップ・インタビューフォーム)

ペリアクチン(一般名:シプロヘプタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(ピペリジン系):
「食欲亢進作用」。(今日の治療薬2020,p.361)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

レスタミンコーワ(一般名:ジフェンヒドラミン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(エタノール系アミン):
「鎮静作用強い。止痒作用強い」。(今日の治療薬2020,p.357)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

ベナパスタ(一般名:ジフェンヒドラミン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(エタノール系アミン):(今日の治療薬2020,p.358)

タベジール(一般名:クレマスチン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第一世代)(エタノールアミン系):(今日の治療薬2020,p.358)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【第一世代H1受容体拮抗薬】

  • すべての第一世代H1受容体拮抗薬:
    (クロルフェニラミン[アレルギン、ネオレスタミン、ビスミラー]、ジフェンヒドラミン[レスタミン]など)

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【第一世代
H1受容体拮抗薬】

上記の表1.抗コリン作用に基づく注意と同じである。

  • H1受容体拮抗薬(第一世代)
  • 認知機能低下、せん妄のリスク、口腔乾燥、便秘
  • 可能な限り使用を控える。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

そのほかの攻撃因子抑制薬(チアトンなど/PPI、H2ブロッカーを除く)

医薬品各種(攻撃因子抑制薬)

チアトン(一般名:チキジウム)

選択的ムスカリン受容体拮抗薬:
「ムスカリン作用、腹痛に有効」。(今日の治療薬2023,p.782)

ブスコパン(一般名:ブチルスコポラミン)

四級アンモニウム塩(合成抗コリン薬):
「鎮痙・消化管運動抑制・胃液分泌抑制・膀胱内圧上昇抑制作用」。(今日の治療薬2023,p.782)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

コリオパン(一般名:ブトロピウム)

四級アンモニウム塩(合成抗コリン薬):
「アセチルコリン受容体に作用し、腹部平滑筋の運動を抑制」。(今日の治療薬2023,p.783)

ロートエキス(一般名:ロートエキス)

ベラドンナアルカロイド::
「抗コリン作用、軽度の局所麻酔作用」。(今日の治療薬2023,p.783)

抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

硫酸アトロピン(一般名:アトロピン)

ベラドンナアルカロイド:
「抗コリン作用」。(今日の治療薬2023,p.784)

抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム、重層)

制酸剤:
「薬効は速効性で、発生するCO2が胃粘膜を刺激して胃酸分泌促進」。(今日の治療薬2023,p.784)

沈降炭酸カルシウム(炭カル)

制酸剤:
「吸着・制酸作用」。(今日の治療薬2023,p.784)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【腸管鎮痙薬】

  • アトロピン、ブチルスコポラミン[ブスコパン]など

胆道疾患治療薬(ウルソなど)

医薬品各種(胆道疾患治療薬)

ウルソ(一般名:ウルソデオキシコール酸)

ウルソデキシコール酸(UDCA)は、胆汁酸の一種である。ヒトの胆汁酸には5種類あり、疎水性で細胞障害性の強いものから親水性で細胞障害性の弱いものまでに分類できる。ウルソデキシコール酸(UDCA)は、その中で最も親水性が高く細胞障害性はほとんどない。

胆汁酸は、肝臓でコレステロールから生合成されるステロイド化合物の一種である。胆汁酸の主な作用は、リパーゼを活性化させ、食事中の脂質とミセルを形成することによって可溶化し、吸収しやすくすることである。

「【作用機序】ウルソデオキシコール酸は胆汁分泌を促進する作用(利胆作用)により胆汁うっ滞を改善する。また、投与されたウルソデオキシコール酸は肝臓において、障害性の強い疎水性胆汁酸と置き換わり、その相対比率を上昇させ、疎水性胆汁酸の肝細胞障害作用を軽減する(置換効果)。さらに、ウルソデオキシコール酸はサイトカイン・ケモカイン産生抑制作用や肝臓への炎症細胞浸潤抑制作用により肝機能を改善する。そのほか、上記の胆石溶解作用、消化吸収改善作用が知られている」。(ウルソ添付文書)

ウルソデキシコール酸は、腸肝循環を繰り返す。

利胆作用(胆汁うっ滞を改善する)

種々の原因によって肝機能が低下すると、肝内外に胆汁酸が蓄積して細胞障害性が高まり、さらに肝機能を悪化させてしまう。

ここでウルソを投与すると、「胆汁酸を毛細胆管に輸送するトランスポーターの発現を促し、胆汁量を増加させることで胆汁のうっ滞を改善する」。その結果、肝内にあった細胞障害性の高い(疎水性の高い)胆汁酸の排泄を促進する。

置換作用(細胞障害性を低下させる)

ウルソを投与することで、細胞障害性の高い(疎水性の高い)胆汁酸が、細胞障害性のない(親水性の高い)ウルソに置き換わり(UDCAの比率が上昇し)、肝障害が軽減する。

(以上、実践薬学2017,pp.74-78、「」内引用)

頻尿・過活動膀胱治療薬など(ウリトスなど)

頻尿・過活動膀胱治療薬など(概要)

ムスカリン性コリン受容体拮抗薬が多い。
口渇、便秘のほか、中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などがある。
抗コリン薬以外には、ミラベグロン、ビベグロン、フラボキサートがある。
薬物代謝酵素CYP2D6の基質(トルテロジン)、阻害薬(ミラベグロン)がある。
ソリフェナシン:CR(CYP3A4)0.58M、(PISCS2021,p.46)

医薬品各種(頻尿・過活動膀胱治療薬)

消失半減期は、イミダフェナシン(2.9時間)、ソリフェナシン(40時間)である。
つまり、同系統の薬物でありながら、効果(あるいは副作用)発現時期は異なる可能性が高い。

ウリトス、ステーブラ(一般名:イミダフェナシン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリンM1,M3に対して拮抗作用。膀胱選択性が高い」。(今日の治療薬2020,p.1039)

ウリトス(ステーブラ)錠0.1mg
ウリトス(ステーブラ)OD錠0.1mg

「通常、成人にはイミダフェナシンとして1回0.1mgを1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与する。効果不十分な場合は、イミダフェナシンとして1回0.2mg、1日0.4mgまで増量できる」。(ウリトス添付文書)

「健康成人男性5例にイミダフェナシン0.25mgを1日2回5日間反復投与した時、初回投与後と最終回投与後の血漿中濃度推移はほぼ同様であった。また、薬物動態パラメータにも変動は認められず、反復投与による蓄積性は認められなかった」。(同上)

Ritschel理論からも、投与間隔12時間/消失半減期2.9時間=4.14>4.0となり、定常状態にはならない薬物と考えられる。
したがって、もし口渇などの副作用が出るとすれば、初回投与時から出現する可能性がある。p.53

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
リスト記載無し⇒ただし、添付文書には以下の関連事項有り。

「重度の腎障害のある患者については、1回0.1mgを1日2回投与とする」。(ウリトス添付文書)
⇒つまり、重度の腎障害があっても使用可(通常用量)だが、増量の余地は無い。

ベシケア(一般名:ソリフェナシン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリンM3選択性があるムスカリン受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.1039)

  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    CR(CYP3A4)0.58M、(PISCS2021,p.46)

ベシケア錠2.5mg、5mg
ベシケアOD錠2.5mg、5mg

「通常、成人にはコハク酸ソリフェナシンとして5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減するが、1日最高投与量は10mgまでとする」。(ベシケア添付文書)

「健康高齢・非高齢男女に本剤10mgを1日1回28日間反復経口投与したときの血漿中濃度は、非高齢者では投与後1~2週間で、高齢者では投与後2~3週間で定常状態に達した。また、反復投与により血漿中濃度は単回投与時に比べ2~4倍に上昇した」。(同上)

消失半減期約40時間であり、1日1回投与では定常状態に達する。
そして、高齢者の半減期は若年者よりも長くなっており、そのため定常状態に達する時間も若年者よりは長くなっている。
したがって、口渇などの副作用や頻尿の改善傾向は、最初の1週間程度ではよく分からない可能性もある。

  • 「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り
    リスト記載無し⇒添付文書には下記の記載有り。

「重度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス30mL/min未満):血中濃度が上昇するおそれがある」。(ベシケア添付文書)

ベタニス(一般名:ミラベグロン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1040)

選択的β3アドレナリン受容体作動薬:
「膀胱平滑筋のβ3アドレナリン受容体を刺激し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を亢進し、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁を改善する」。(ベタニス添付文書)

ベタニス錠25mg、50mg

腎機能低下時の用法・用量(ミラベグロン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ミラベグロンは、CYP2D6阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

Ic群抗不整脈薬(フレカイニド、プロパフェノン)とは併用禁忌である。
その理由は次のとおりである。

「ともに催不整脈作用があり、また本剤のCYP2D6阻害作用により、これらの薬剤の血中濃度が上昇する可能性がある」。(ベタニス添付文書より)

フレカイニドとプロパフェノンには、催不整脈作用が有る。
また、ミラベグロンは「弱いながら心拍数を増加させる程度のβ1、β2刺激作用があり、潜在性QT延長症候群を顕在化させる可能性も否定できない」。(ベタニス審査報告書より、実践薬学2017,p.216)。

フレカイニドとプロパフェノンは、共にCYP2D6の基質薬である。
そして、ミラベグロンは中程度のCYP2D6阻害作用を有している。

上記を踏まえた上で、抗不整脈薬としてフレカイニドやプロパフェノンに変わり得る薬物がほかにあることから、あえてミラベグロンとそれら薬物を併用するまでもないと判断された。
そこで、ミラベグロンのCYP2D6阻害作用は中程度ではあるが、併用禁忌(併用しないこと)となっている。

頻尿・過活動膀胱治療薬の抗コリン作用による口渇を避けるために、作用の異なるミラベグロン(抗コリン作用無し)に変薬するケースがあるかもしれない。
しかしその場合には、併用薬(CYP2D6の基質薬)に留意すること。
例えば、ミラベグロンとノルバデックス錠(タモキシフェン、CYP2D6の基質薬)を併用すると、ノルバデックスの代謝が阻害される可能性がある。(実践薬学,pp.139-142)

ベオーバ(一般名:ビベグロン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1040)

ベオーバ錠50mg

ブラダロン(一般名:フラボキサート)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「膀胱容量増大、尿意発現遅延、排尿回数減少、夜間尿の改善」。(今日の治療薬2020,p.1038)

ブラダロン錠200mg

バップフォー(一般名:塩酸プロピベリン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「抗コリン作用とCa拮抗作用により膀胱平滑筋の異常収縮を抑制」。(今日の治療薬2020,p.1040)

  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

バップフォー細粒2%(10mg/0.5g/包、20mg/g/包)
バップフォー錠10mg、20mg

ネオキシ、ポラキス(一般名:オキシブチニン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1039)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

ネオキシ・テープ73.5mg/枚

トビエース(一般名:フェソテロジン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:(今日の治療薬2020,p.1038)

トビエース錠4mg、8mg

腎機能低下時の用法・用量(フェソテロジン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

デトルシトール(一般名:トルテロジン)

頻尿・過活動膀胱治療薬:
「ムスカリン受容体拮抗薬。徐放性」。(今日の治療薬2020,p.1038)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

デトルシトール・カプセル2mg、4mg

トルテロジンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    トルテロジン:CR(CYP2D6)0.81、(PISCS2021,p.50)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【過活動膀胱治療薬】

  • オキシブチニン[ポラキス]、 プロピベリン[バップフォー]、 ソリフェナシン[ベシケア]など

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【過活動膀胱
治療薬】

上記の表1.抗コリン作用に基づく注意と同じである。

  • オキシブチニン(経口)[ポラキス]
  • 尿閉、認知機能低下、せん妄のリスクあり。
    口腔乾燥、便秘の頻度が高い。
  • 可能な限り使用しない。
    代替薬として:他のムスカリン受容体拮抗薬
  • ムスカリン受容体拮抗薬:
    (ソリフェナシン[ベシケア]、トルテロジン[デトルシトール]、フェソテロジン[トビエース]、イミダフェナシン[ ウリトス、ステーブ ラ]、プロピベリン[バップフォー]、オキシブチニン経皮吸収型[ネオキシテープ])
  • 口腔乾燥、便秘、排尿症状の悪化、尿閉
  • 低用量から使用。
    前立腺肥大症の場合はα1受容体遮断薬との併用。
    必要時、緩下剤を併用する。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

三環系/四環系抗うつ薬(トフラニール、テトラミドなど)

医薬品各種(三環系/四環系抗うつ薬)

三環系抗うつ薬は、第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(よく似た三環)を持つ。
抗ヒスタミン作用を示し、BBBを通過する。
つまり、眠気がある。
そのほか、抗精神病薬の中にはプロメタジンと同じ三環を持つものがある。
クロルプロマジン、クエチアピンなどである。(実践薬学2017,p.416)

三環系/四環系抗うつ薬は、CYP2D6の基質薬となるものが多い。

慢性疼痛治療に対する使用薬剤:
「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • アミトリプチリン:2A(使用することを弱く推奨する)(緊張型頭痛と片頭痛)
  • デュロキセチン、2C(使用することを弱く推奨する)
  • そのほかの抗うつ薬:2D(使用しないことを弱く推奨する)
    アミトリプチリン以外は、積極的適応とはなっていない。

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)、つまり古い版からの引用である)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

トリプタノール(一般名:アミトリプチリン)

三環系抗うつ薬(TCA):
「鎮静が強く、不安・焦燥や希死念慮が強い場合に用いられる」。(今日の治療薬,p.873)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

トリプタノール添付文書参照

【用法・用量】
〇うつ病・うつ状態:
アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人1日30~75mgを初期用量とし、 1日150mgまで漸増し、分割経口投与する。まれに300mgまで増量することもある。なお、年齢、症状により適宜減量する。
〇夜尿症:
アミトリプチリン塩酸塩として、1日10~30mgを就寝前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜減量する。
〇末梢性神経障害性疼痛:
アミトリプチリン塩酸塩として、通常、成人1日10mgを初期用量とし、その後、年齢、症状により適宜増減するが、1日150mgを超えないこと。

アミトリプチリンの適応外使用(不眠症-海外で使用)

適応外処方として、「≪慢性疼痛におけるうつ病・うつ状態。片頭痛、緊張性頭痛≫、慢性疼痛、歯科治療後神経因性疼痛、繊維筋痛症、しびれ」が挙げられている。(今日の治療薬,p.873)

海外においては、睡眠薬としても使用されている。以下のとおりである。

「(アミトリプチリンは)2002年に不眠のために米国で使われた薬剤の相対処方頻度の調査で、トラゾドン、ゾルピデムに続いて第3位にランクインしている(ちなみに4位はミルタザピンで6位はクエチアピン)」。(実践薬学2017,p.41)

「ただし、せん妄のハイリスク患者の場合、GABAa受容体作動薬とともに三環系抗うつ薬のアミトリプチリンも避けておきたい薬剤の1つだ。脳内のアセチルコリン低下はせん妄発症のリスクとなる」。(同上,p.41)

その点、同じく適応外処方ながら、「トラゾドンやミアンセリン、ミルタザピンはGABAa受容体作動薬の代替薬となり得る」。(同上,p.41)⇒(ミアンセリン、下記参照)

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

アミトリプチリンは、CYP2D6の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    アミトリプチリン:CR(CYP2D6)0.58、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて軽度である。
    アミトリプチリン:CR(CYP3A4)0.25VW、(PISCS2021,p.46)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    アミトリプチリン:CR(CYP2C19)0.28、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬

トフラニール(一般名:イミプラミン)

三環系抗うつ薬(TCA):(今日の治療薬,p.874)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

イミプラミンは、CYP2D6の基質薬(影響を中等度に受けやすい)である

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    イミプラミン:CR(CYP2D6)0.51、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

デシプラミンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    デシプラミン:CR(CYP2D6)0.87、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

なお、デシプラミンは、イミプラミンの活性代謝物である。

アナフラニール(一般名:クロミプラミン)

三環系抗うつ薬(TCA):
「セロトニン再取り込み阻害作用が非常に強い」。(今日の治療薬2020,p.872)

  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、強い抗コリン作用があることを示している。

注射剤(劇薬

クロミプラミンは、CYP2D6の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    クロミプラミン:CR(CYP2C19)0.42、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬

テトラミド(一般名:ミアンセリン)

四環系抗うつ薬:
「心血管系への影響が少ない。鎮静が強く睡眠薬としても使用可」。(今日の治療薬2020,p.875)

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    S-ミアンセリン:CR(CYP2D6)0.47、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

ミアンセリンの適応外使用(せん妄、不眠症)

「適応症:うつ病・うつ状態。適応外使用:せん妄、不眠症」。(今日の治療薬2020,p.875)

四環系抗うつ薬で、主にノルアドレナリン系神経に作用して抗うつ効果を示すが、その効果は弱い。
一方で、比較的強い鎮静作用を持ち、睡眠薬代わりに使われることが多い。(実践薬学2017,pp.39-40、以下要約)

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

睡眠障害に使用する場合は、10~30mgを就寝前に用いる。
ただし、持ち越し効果に加え、起立性低血圧による転倒にも注意を要する。

5HT2a受容体遮断作用により睡眠の質を、H1受容体遮断作用により睡眠の量を改善すると考えられる。
特に高齢者の不眠で、BZD系薬を使用するとせん妄や軽度意識障害が誘発されるような場合に適している。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

ミルタザピンとミアンセリンは、化学構造がよく似ている。ミルタザピン=6位がN(窒素)、ミアンセリン=6位がC(炭素)となっている。ただし半減期は、ミルタザピン(半減期31.7時間)の方がミアンセリン(半減期18時間)よりも長いことは注意が必要だろう。(実践薬学2017,pp.411-412「ミルタザピンとミアンセリンの6位近傍の結合様式の模式図」)

なお、両者の構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。それに対して、よく似た構造のエピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。(実践薬学2017,pp.414)

テシプール(一般名:セチプチリン)

四環系抗うつ薬:(今日の治療薬2020,p.876)

ノリトレン(一般名:ノルトリプチリン)

三環系抗うつ薬(TCA):
「ノルアドレナリンに作用するため意欲向上に効果的」。(今日の治療薬2020,p.873)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

ノルトリプチリンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ノルトリプチリン:CR(CYP2D6)0.79、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

スルモンチール(一般名:トリミプラミン)

三環系抗うつ薬(TCA):(今日の治療薬2020,p.874)

散剤(劇薬

トリミプラミンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    トリミプラミン:CR(CYP2D6)0.61、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    トリミプラミン:CR(CYP2C19)0.49、(PISCS2021,p.55)、CYP2C19基質薬

ルジオミール(一般名:マプロチリン)

四環系抗うつ薬:(今日の治療薬2020,p.875)

マプロチリンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    マプロチリン:データ無し、(PISCS2021,p.50)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬(スルピリド含む))

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンはCYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【抗うつ薬】

  • 三環系抗うつ薬(イミプラミン[イミドール、トフラニール]、クロミプラミン[アナフラニール]、アミトリプチリン[トリプタノール]など)
  • パロキセチン[パキシル]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチリン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

薬物代謝酵素:CYP(シトクロムP450)及びグルクロン酸抱合酵素

「薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用」
ファルマシア,Vol.50,No.7.pp.654-658,2014
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

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薬物代謝酵素:CYP(シトクロムP450)

CYPの活性は、加齢に伴って低下する

CYP(1A2,2C19,3A4)の活性は加齢に伴って低下する。CYP2D6は加齢の影響を受けないと言われている。また、抱合反応は、加齢の影響をあまり受けない。

CYPの活性は、肝障害によって低下する

「2015年版 循環器の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン」
http://jstdm.umin.jp/guidelines/JCS2015_Original.pdf

「薬物の肝代謝に及ぼす肝障害の影響は、薬物代謝酵素および肝障害の重症度によって異なる」。(上記,p.33)

以下本文を全て引用の上、箇条書きとした。

  • 一般的に、CYP2C19やCYP1A2による肝代謝は、肝硬変の比較的早期の段階(Child-Pugh分類クラスAおよびB)から低下する。
  • 一方で、多くの肝代謝型抗不整脈薬の主要代謝経路となるCYP2D6による肝代謝は、重度の肝硬変(Child-PughクラスC)から低下が現れる。
  • CYP3A4による肝代謝は、Child-Pugh分類クラスBの肝硬変から低下する。

(実践薬学2017,p.21-22)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(デパスなど)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(概略)

現在用いられている抗不安薬・睡眠薬には、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬が多い。

BZD受容体作動薬は、催眠・鎮静作用、抗不安作用、抗痙攣作用あるいは筋弛緩作用を有している。
これらのうち、抗不安作用の強い薬物が抗不安薬として用いられる。
そして、睡眠作用の強い薬物が睡眠薬として用いられる。

BZD系薬は、海外のガイドラインでは、投与期間を4週間以内に止めるとしている。
長期にわたる漫然投与は、依存を形成する。
さらに、高齢者では認知機能低下のリスクとなる。
適切に減量・休薬することが重要である。
ただし、急激な減量によって、離脱症状(禁断症状、退薬症状)を起こしやすい点は注意を要する。

抗不安薬には、エチゾラム(短時間型)、アルプラゾラム(中間型)、ジアゼパム(長時間型)やロフラゼプ酸(超長時間型)などがある。

エチゾラムは、不安・緊張・抑うつ・睡眠障害のある患者に用いる。
また、筋弛緩作用が強いことから、腰痛や肩こり・緊張型頭痛に用いる。
なお、筋弛緩作用が強いため、特に高齢者では、ふらつき、転倒に注意を要する。

アルプラゾラムは、エチゾラム同様、不安・緊張・抑うつ・睡眠障害のある患者に用いる。
抗不安作用が特に強く、パニック発作が強い場合にも用いられる。
ただし、パニック障害の基本治療薬は、SSRI(パロキセチンとセルトラリン)である。
アルプラゾラムには、パニック障害の適応はない。

ロフラゼプ酸は、長時間作用型で依存形成をしにくい。
また、1日1回投与で使いやすい。

BZD受容体作動薬(抗不安薬・睡眠薬)の作用機序について:
⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

医薬品各種(抗不安薬)

デパス(一般名:エチゾラム)

ベンゾジアゼピン(チエノジアゼピン)系抗不安薬(短時間型):
「抗不安作用に加え睡眠作用もある。筋弛緩効果あり、依存性に注意」。(今日の治療薬2020,p.895)

短時間作用型:半減期(6時間)。

【効能・効果】
〇神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
〇うつ病における不安・緊張・睡眠障害
〇心身症(高血圧症, 胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
〇統合失調症における睡眠障害
〇下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張
頸椎症, 腰痛症, 筋収縮性頭痛

デパス細粒(1%、10mg/g)
デパス錠(0.25mg、0.5mg、1mg)

2016年10月「第三種向精神薬」指定。

副作用機序別分類(エチゾラム)

(どんぐり2019,p.29,230)

  1. 薬理作用(薬効の発現と一緒に起こりやすい)
    眠気ふらつきめまい口渇倦怠感脱力感など
    増量になった場合、血中濃度が高まるため、薬効が増強すると共に副作用が出やすくなる
  2. 薬物過敏症(服用開始6か月以内に起こりやすい)
    発熱発赤掻痒感など

エチゾラムは、CYP2C19の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    エチゾラム:CR(CYP3A4)0.36W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

リーゼ(一般名:クロチアゼパム)

ベンゾジアゼピン(チエノジアゼピン)系抗不安薬(短時間型):
「マイルドな作用」。(今日の治療薬2020,p.894)

短時間作用型:半減期(6時間)。

リーゼ顆粒(10%、100mg/g)
リーゼ錠(5mg、10mg)

コレミナール(一般名:フルタゾラム)

ベンゾジアゼピン(チエノジアゼピン)系抗不安薬(短時間型):(今日の治療薬2020,p.895)

短時間作用型:半減期(3.5時間)

消化管機能安定剤
【効能・効果】心身症(過敏性腸症候群、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ

コレミナール細粒(1%、10mg/g)
コレミナール錠(4mg)

ソラナックス、コンスタン(一般名:アルプラゾラム)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(中間型):
「抗不安・パニック効果は強い。筋弛緩作用が比較的弱い。半減期短い。依存性に注意」。(今日の治療薬2020,p.895)

中間作用型:半減期(14時間)。

【効能・効果】
心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害

ソラナックス錠(0.4mg、0.8mg)

アルプラゾラムは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、やや高度である。
    アルプラゾラム:CR(CYP3A4)0.75SS、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

アルプラゾラムの構造式とトリアゾラムのそれはよく似ている。
アルプラゾラム(塩素1つ)に対して、トリアゾラム(塩素2つ)では、アルプラゾラムの水素に代わって塩素がもう1つ加わっている。

塩素(Cl)は水素(H)よりも大きいため、薬物代謝酵素の標的となりやすい。
その結果、早く代謝される。
アルプラゾラムの半減期が14時間であるのに対して、トリアゾラムの半減期は2.9時間となっている。

ワイパックス(一般名:ロラゼパム)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(中間型):
「CYPに関係しないため、肝障害者にも使いやすい」。(今日の治療薬2020,p.895)

中間作用型:半減期(12時間)。

ワイパックス錠(0.5mg、1.0mg)

ロラゼパムは、代謝産物が活性を持たない(グルクロン酸抱合)ため、腎機能障害や肝機能障害のある場合に有用である。
ワイパックス添付文書によれば、以下のとおりである。

「健常成人にロラゼパム1.0mgを経口投与したとき、未変化体の血中濃度は約2時間で最高値を示し、24時間後に消失した。なお、本剤の半減期は約12時間であり、尿中からは、大部分がグルクロン酸抱合体として排泄された」。
このグルクロン酸抱合は、分子中に水酸基を有することによる。

なお、ロラゼパムの注意点として、せん妄の独立した危険因子との報告がある。(実践薬学2017,p.20)

セニラン、レキソタン(一般名:ブルマゼパム)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(中間型):
「鎮静・抗不安・筋弛緩・抗痙攣作用が強い」。(今日の治療薬2020,p.896)

中間作用型:半減期(20時間)。

セニラン細粒(1%)
セニラン錠(1mg、2mg、3mg、5mg)
セニラン坐剤(3mg)

セルシン、ホリゾン(一般名:ジアゼパム)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(長時間型):
「鎮静・筋弛緩・抗痙攣作用が強い。作用時間が長い」。(今日の治療薬2020,p.896)

長時間型:半減期(記載無し)。

  • ジアゼパムは、「線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

セルシン散(1%)
セルシン錠(2mg、5mg、10mg)
セルシンシロップ(0.1%、1mg/mL)
セルシン注射液(5mg/1mL、10mg/2mL)

小児用坐剤(抗てんかん薬)がある(商品名:ダイアップ)。

ジアゼパムの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.174-179、薬歴記載例有り)

ジアゼパム坐剤(熱性けいれんに対して)

ジアゼパムは、CYP2C19の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    ジアゼパム:CR(CYP2C19)0.84、(PISCS2021,p.54)、CYP2C19基質薬

レスミット(一般名:メダゼパム)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(長時間型):(今日の治療薬2020,p.897)

長時間型:半減期(メダゼパム:1~2hr、N-デスメチルジアゼパム:51~120hr)

レスミット錠(2mg、5mg)

メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(超長時間型):
「抗不安作用強力。依存性は比較的少ない。1日1回投与が可能」。(今日の治療薬2020,p.898)

超長時間型:半減期(記載無し)

メイラックス細粒(1%)
メイラックス錠(1mg、2mg)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗不安薬)

加齢により睡眠時間は短縮し、また睡眠が浅くなることを踏まえて、薬物療法の前に、 睡眠衛生指導を行う。必要に応じて催眠鎮静・抗不安薬が用いられるが、ベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者では有害事象が生じやすく、依存を起こす可能性もあるので、特に慎重に投与する薬剤に挙げられている。(注:催眠鎮静薬・抗不安薬全般に対する冒頭の文章)

  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬(アルプラゾラム[コンスタン、ソラナックス]、エチゾラム[デパス]など)は日中の不安、焦燥に用いられる場合があるが、高齢者では上述した(ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬同様の)有害事象のリスクがあり、可能な限り使用を控える。
    (過鎮静、認知機能の悪化、運動機能低下、転倒、骨折、せん妄など)
  • 漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど、慎重に使用する。
    ベンゾジアゼピン系薬剤は、海外のガイドラインでも投与期間を4週間以内の使用にとどめるとしていることも留意すべきである。
  • ベンゾジアゼピン系薬剤は急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 多くの薬剤は主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用はなるべく避けるべきである。
    (Web作者注:抗不安薬の中にはCYP2C19の基質薬がある(エチゾラム、ジアゼパム)。ただし、このリストには含まれていない)

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬)

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)

トリアゾラムは、「長短時間型」のベンゾジアゼピン系睡眠薬である。

トリアゾラムは、CYP3A基質薬(強い)であり、グレープフルーツジュースと相互作用を有する。
実際に、以下のような海外データがある。

「健常人10名(海外データ)を対象にして、ハルシオンを0.25mgとGFJを250mL併用した結果、AUCは1.5倍、Cmaxは1.3倍、Tmaxは1.6~2.5倍に延長した」。

つまり併用によって、トリアゾラムの「長短時間型」睡眠薬としての<素早い立ち上がり及び消失>という特徴が失われてしまっている。
トリアゾラムがトリアゾラムでなくなってしまっているのである。
それにもかかわらず、添付文書上は併用禁忌にも併用注意にもなっていない。

メーカーもこのデータを承知しているが、「改定の根拠となるような有害事象例がないため」添付文書には記載していない、ということである。

後は薬剤師として個別の判断が求められる。

参考)薬歴公開 byひのくにノ薬局薬剤師。2013年9月27日 (金)
ハルシオンとGFJ(グレープフルーツジュース)
http://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/index.html

なお、一般的に、アルプラゾラムブロチゾラムなどベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は、CYP3A基質薬である。
したがって、グレープフルーツジュースとの相互作用が考えられる。

新しい睡眠薬(ロゼレム、ベルソムラ)

睡眠薬の薬理作用のイメージ

不眠症とは、ただ単に眠れないという状態をいうのではなく、その結果として「何らかの昼間の弊害がもたらされる状態」のことをいう。

睡眠覚醒調節機構

  • GABAa受容体作動薬:
    恒常性維持機構(疲れたら眠る仕組み)に働く
  • メラトニン受容体作動薬:
    体内時計機構(夜になると眠る仕組み)に働く
  • オレキシン受容体拮抗薬:
    覚醒調節機構(目覚めている状態を維持する仕組み)に働く

医薬品各種(新しい睡眠薬)

ラメルテオンとスボレキサントは、GABAa受容体作動薬(BZD系睡眠薬及び非BZD系睡眠薬)とは異なる作用機序を有する新しい薬物である。

ラメルテオンは、メラトニン受容体作動薬(MRA:melatonin receptor agonist)である。
メラトニンは、概日リズム(サーカディアンリズム:睡眠 ― 覚醒のリズム)などを調整するホルモンである。
ラメルテオンは、メラトニン受容体と結合して、乱れた(昼夜逆転したような)概日リズムを調整する。
副作用は少ないものの、睡眠薬としての効果は強くない。

スボレキサントは、デュアルオレキシン受容体拮抗薬:DORA(dual orexin receptor antagonist)である。
オレキシンは、覚醒/睡眠の制御などをつかさどる神経ペプチドである。
スボレキサントは、オレキシンの受容体への結合を阻害することによって、過剰に働いている覚醒システムを抑制する。
入眠障害と中途覚醒の両方に効果がある。

ラメルテオンは、CYP1A2の基質薬であり、フルボキサミン(CYP1A2阻害薬)とは併用禁忌である。
スボレキサントは、CYP3Aの基質薬である。
したがって、クラリスロマイシンなど(CYP3A阻害薬)と併用禁忌であるほか、併用注意(スボレキサントを減量する)の薬物も多い。

(実践薬学2017,pp.35-36,42-47、以下「」引用)

ロゼレム(一般名:ラメルテオン)

メラトニン受容体作動薬:
「ベンゾジアゼピン受容体に作用しないため、効果は弱いが副作用は少ない。高齢者や身体疾患患者、睡眠相のずれなどに効果が期待される」。(今日の治療薬2020,p.903)

ロゼレム:錠(8mg)

メラトニンは、間脳の松果体で合成・分泌される脳内ホルモンの一種である。
概日リズム(体内時計機構)を調整することによって、日中はきちんとした覚醒状態を保ち、夜になると自然な睡眠が得られるように働く。

ラメルテオンは、メラトニン受容体に結合することによって、乱れた体内時計に働き掛けて睡眠 ― 覚醒のリズムを改善する薬物である。
つまり、「睡眠導入剤というより、リズム異常を改善する睡眠改善薬」という位置付けになる。

【効能・効果】
不眠症における入眠困難の改善

【用法・用量】
通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。

本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること。[食後投与では、空腹時投与に比べ本剤の血中濃度が低下することがある]

(ロゼレム錠添付文書)

ラメルテオンは、効果発現までには日数を要する薬物である。
服薬指導では、「眠るための薬というよりは、スッキリとした自然な目覚めを取り戻すための薬」と説明するのがよいだろう。

ラメルテオンはマイルドな薬物である。
依存性は少なく、離脱も容易である。
また、アルコールの影響も少ない。
とはいうものの、アルコール自体は睡眠の質を悪化させる物質である。

なお、ラメルテオンの半減期(未変化体)は約1時間であるが、催眠作用はそれよりも長く、まれに持ち越し効果を訴える患者もいる。
つまり、半減期は短いが効果の持続時間は長い。
半減期と持続時間が一致しない理由は分かっていない。

筋弛緩作用がないため、めまいやふらつきの心配はない。

ラメルテオンは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン」(2018年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

ラメルテオンは、CYP1A2の基質薬である。
併用禁忌:フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)・CYP1A2阻害薬

ロゼレム添付文書の記載は以下のとおり。

「併用禁忌」(併用しないこと):
薬剤名等:フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメール、ルボックス)
臨床症状・措置方法:本剤の最高血中濃、AUCが顕著に上昇するとの報告があり、本剤の作用が強くあらわれるおそれがある。
機序・危険因子:本剤の主な肝薬物代謝酵素であるCYP1A2を強く阻害する。
また、CYP2C9、CYP2C19及びCYP3A4に対する阻害作用の影響も考えられる。

(ロゼレム添付文書)

ラメルテオンには、せん妄予防効果が期待できる

参考:「2011年9月、「器質的疾患に伴うせん妄、精神運動興奮状態、易怒性」に対する、ハロペリドール、ペロスピロンの処方が審査上認められることとなった。せん妄の治療には、半減期の短いクエチアピンやペロスピロンから勧めていくといいだろう」。(実践薬学2017,p.41)

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)

オレキシン受容体拮抗薬:
「覚醒物質であるオレキシンの受容体への結合を阻害。中~長期間作用する。悪夢に注意」。(今日の治療薬2020,p.903)

ベルソムラ:錠(10mg、15mg、20mg)

  • 【スボレキサント】は、オレキシン受容体拮抗薬である。(半減期:10~12時間)
    通常1日1回20mg就寝直前投与(高齢者15mgに減量、併用注意10mgに減量)。
  • CYP3A4基質薬であり、相互作用が多い。CR(CYP3A)0.64、(PISCS2021,p.117)
  • マクロライド系抗菌薬、(PISCS2021,p.119)
    (クラリスロマイシン:併用禁忌、エリスロマイシン:併用注意(具体的な薬剤名の記載は無いが、CYP3Aを阻害する薬剤として含まれる)、ロキシスロマイシン・アジスロマイシン:記載無し)
  • アゾール系抗真菌薬、(PISCS2021,p.117)
    (ボリコナゾール、イトラコナゾール:併用禁忌、ミコナゾール、ポサコナゾール:(具体的な薬剤名の記載は無いが、それぞれAUC2.3倍に上昇 ― 限りなく併用禁忌)、フルコナゾール:併用注意、ラブコナゾール:併用注意(ただし記載無し)
  • Ca拮抗薬、(PISCS2021,p.121)
    (ジルチアゼム、ベラパミル:併用注意)

オレキシンは、視床下部のニューロンから産生される神経ペプチドである。
覚醒/睡眠の制御などの重要な生理機能を担っている。

世界初のオレキシン受容体拮抗薬として日本で開発された

(実践薬学2017,pp.42-47)

ベルソムラは、日本で開発され世界で初めて発売されたオレキシン受容体拮抗薬である。

スボレキサントは、オレキシンの受容体への結合をブロックすることによって、過剰に働いている覚醒システムを抑制する。
その結果、脳を覚醒状態から生理的な睡眠状態へと導く。

スボレキサント(半減期:日本人約10時間、外国人約12時間)は、1日1回反復投与したとき、3日目までには定常状態に達する。
つまり、反復投与によって血中濃度がゼロでない状態が続くようになるが、それでも目覚めることができる。

このように、スボレキサントの薬効は、血中濃度だけでは論ずることはできない。
スボレキサントの薬効を理解するには、オレキシン受容体におけるオレキシンとスボレキサントの競合的拮抗作用を考える必要がある。

オレキシンとスボレキサントの競合的拮抗作用を考える

〈内因性オレキシン濃度の日内変動は非常に大きい〉

スボレキサントが睡眠作用を発揮するには、脳内受容体占有率65~80%以上が必要とされている。
これに対して、GABAa受容体の場合、受容体占有率は26~29%とされる。
つまり、スボレキサントが十分な睡眠作用を発揮するためには、高い受容体占有率が必要である。

さて、内因性のオレキシン濃度は、日中は高く就寝時間中は急速に減少する。
スボレキサントのオレキシン受容体占有率は、この内因性オレキシン濃度の日内変動に応じて大きく変化する。
そしてその結果、夜間の自然な睡眠に導く。

以下のとおりである。

1)就寝時間中には、内因性オレキシン濃度は日中のレベルから急速に減少する。

そのため、スボレキサントのオレキシン受容体占有率が競合的に大きく上昇する。
その結果、覚醒から睡眠へと傾く。
つまり、自然な睡眠状態が得られる。

2)覚醒時刻付近では、オレキシン濃度は急速に上昇して再び日中のレベルに近づく。

そうすると、スボレキサントのオレキシン受容体占有率は競合的に減少することになる。
その結果、睡眠から覚醒へと傾く。
つまり、自然と目覚めることになる。

用法・用量(スボレキサント)

スボレキサントの用法・用量は、通常成人には1日1回20mg、高齢者では1日1回15mgである。
CYP3A阻害薬(中程度)との併用では、1日1回10mgに減量する。
ただし、CYP3A阻害薬(強い)との併用は禁忌である。
そして、CYP3A阻害薬(弱い)との併用では何の縛りもない。

通常、成人にはスボレキサントとして1日1回20mgを、高齢者には1日1回15mgを就寝直前に経口投与する。

〈用法・用量に関連する使用上の注意〉

  1. 本剤は就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中で一時的に起床して仕事等で活動する可能性があるときは服用させないこと。
  2. 入眠効果の発現が遅れるおそれがあるため、本剤の食事と同時又は食直後の服用は避けること〔食後投与では、空腹時投与に比べ、投与直後のスボレキサントの血漿中濃度が低下することがある。〕
  3. 他の不眠症治療薬と併用したときの有効性及び安全性は確立されていない。
  4. CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)との併用により、スボレキサントの血漿中濃度が上昇し、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症等の副作用が増強されるおそれがあるため、これらの薬剤を併用する場合は1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。(ベルソムラ添付文書)

血中濃度(ベルソムラ®服用後9時間)を検討したところ、高齢者15mgと成人20mgでほぼ同じ血中濃度が得られたことから、高齢者と成人では異なる用量が設定されている。
「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」では65歳以上を高齢者と定義しており、ベルソムラ錠の臨床試験でも同様に定義して評価を行っている。

食事と同時又は食直後の服用を避ける。
実際の服用時間は、就寝30分くらい前の方がよい。
そのように指導する医師も多い。

スボレキサントの副作用

スボレキサントの主な副作用として、傾眠、頭痛、疲労などが報告されている。

最も心配なナルコレプシー(居眠り病:突然急な睡魔に襲われる)の発現増加はみられないようである。
とはいうものの、未知の副作用の可能性については、注意深く見守っていく必要がある。

スボレキサントは、CYP3A基質薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2014年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)、このリストにはスボレキサントは記載されていない。

スボレキサントは、主に薬物代謝酵素CYP3Aによって代謝される。
また、P糖蛋白(腸管)への弱い阻害作用を有する。(ベルソムラ添付文書)

CYP3A阻害薬の程度は以下のように定義される。

  • 強い阻害薬:相互作用を受けやすい基質薬のAUCが5倍以上に上昇
  • 中程度の阻害薬:相互作用を受けやすい基質薬のAUCが2倍以上5倍未満に上昇
  • 弱い阻害薬:相互作用を受けやすい基質薬のAUCが1.25倍以上2倍未満に上昇

【併用禁忌】(併用しないこと)

CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ネルフィナビル、ボリコナゾール)を投与中の患者。
[スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを強く阻害し、スボレキサントの血漿中濃度を顕著に上昇させる]。

(ベルソムラ添付文書)

上記医薬品リストについては、「「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(平成26年7月8日 厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡)より」が、ベルソムラ・インタビューフォームに引用転記されている。

上記CYP3Aを強く阻害する薬物のうち、イトラコナゾール、リトナビル、ボリコナゾールは、特に強いCYP3A阻害作用を有する。
すなわち、基質薬のAUCを10倍以上上昇させる。

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
  • 併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬(リスト抜け)
  • 併用禁忌:クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)・CYP3A阻害薬

【併用注意】(併用に注意すること)

  • アルコール(飲酒):
    精神運動機能の相加的な低下を生じる可能性がある。本剤を服用時に飲酒は避けさせること。
    本剤及びアルコールは中枢神経系に対する抑制作用を有するため、相互に作用を増強させるおそれがある。
  • 中枢神経抑制剤(フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体等):
    中枢神経系に対する抑制作用を増強させるおそれがあるため、慎重に投与すること。
    本剤及びこれらの薬剤は中枢神経系に対する抑制作用を有するため、相互に作用を増強させるおそれがある。
  • CYP3Aを阻害する薬剤(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等):
    傾眠、疲労等の本剤の副作用が増強するおそれがあるため、併用する際には1日1回10mgへの減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察すること。
    スボレキサントの代謝酵素であるCYP3Aを中等度に阻害し、スボレキサントの血漿中濃度を上昇させる。
  • CYP3Aを強く誘導する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等):
    本剤の作用を減弱させるおそれがある。
  • ジゴキシン:
    ジゴキシンの血漿中濃度を上昇させるおそれがある。本剤と併用する場合は、ジゴキシンの血漿中濃度をモニタリングすること。
    スボレキサントはP糖蛋白阻害作用を有する。(ベルソムラ添付文書)

グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(スボレキサント)

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)

スボレキサントは、CYP3A4基質薬である。
メーカーとしては、グレープフルーツジュースとスボレキサントの併用は控えてほしいとしている。
ただし、併用のデータは何も無いという。
したがって、添付文書上はグレープフルーツジュースに関する記載は無い。

減量用の規格として10mg錠がある

スボレキサントの規格として、米国では5mg、10mg製剤があるという。
日本でも、2016年12月、減量用の規格として10mg錠が発売された。

中等度のCYP3A阻害薬(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾールなど)との併用時には、患者の個別の病態に応じて10mgへの減量を考慮する。
エリスロマイシンもその対象に含まれる。

もちろん、CYP3Aを強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル、ネルフィナビル、ボリコナゾール)との併用は禁忌である(既述)。

そして、そのほかの弱いCYP3A阻害薬とベルソムラを併用した場合、減量を考慮する必要性はない。

ベルソムラ錠の製剤的特徴

スボレキサントはγ-アミノ酪酸(GABA)、セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、メラトニン、ヒスタミン、アセチルコリン及びオピオイド受容体に対して親和性を示さない。
したがって、抗コリン作用を有しない。

錠剤の強度を増す(欠けなどを防ぐ)ため、フィルムコーティング錠になっている。
ベルソムラ錠には割線はない。
ベルソムラの原薬に味はない。

有効成分であるベルソムラは水に溶けにくいため、製剤に工夫がされている。
無包装における製剤の光安定性試験において、性状、定量(成分量)、錠剤の厚みを検討した結果、溶出速度の増加、崩壊時間の短縮、硬度の低下及び退色(10mg)が観察された。
つまり、無包装状態での安定性試験において、光、湿度の影響を受けやすいことが確認されたため、両面アルミ包装としている。

デエビゴ(一般名:レンボレキサント)

オレキシン受容体拮抗薬:
「オレキシン受容体(特にオレキシン2受容体に強い)を阻害。入眠にも効果あり」。(今日の治療薬2021,p.911)

デエビゴ:錠(2.5mg、5mg、10mg)

  • 【レンボレキサント】は、オレキシン受容体拮抗薬である。(半減期:31~56時間)
    通常1日1回5mg就寝直前投与。
  • CYP3A4基質薬であり、相互作用が多い。CR(CYP3A)0.77、(PISCS2021,p.117)
  • マクロライド系抗菌薬、(PISCS2021,p.119)
    (クラリスロマイシン、エリスロマイシン:併用注意
  • アゾール系抗真菌薬、(PISCS2021,p.117)
    (ボリコナゾール:具体的な薬剤名の記載は無いが、AUC4.1倍に上昇 ― 限りなく併用禁忌
    フルコナゾール:併用注意だが、AUC4.2倍に上昇 ― 限りなく併用禁忌
    イトラコナゾール、ミコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾール:
    AUC2.3~3.7倍に上昇 ― 記載の有無にかかわらず併用注意)
  • Ca拮抗薬、(PISCS2021,p.121)
    (ジルチアゼム、ベラパミル:AUC2.2~2.6倍に上昇 ― 記載の有無にかかわらず併用注意)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(新しい睡眠薬)

加齢により睡眠時間は短縮し、また睡眠が浅くなることを踏まえて、薬物療法の前に、 睡眠衛生指導を行う。必要に応じて催眠鎮静・抗不安薬が用いられるが、ベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者では有害事象が生じやすく、依存を起こす可能性もあるので、特に慎重に投与する薬剤に挙げられている。(注:催眠鎮静薬・抗不安薬全般に対する冒頭の文章)

  • メラトニン受容体作動薬ラメルテオン[ロゼレム]は、CYP1A2を強く阻害する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルボキサミン[デプロメール、ルボックス]との併用は禁忌である。
  • オレキシン受容体拮抗薬スボレキサント[ベルソムラ]は、併用によりCYP3Aでの代謝が阻害され、作用が著しく増強するため、クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]などCYP3Aを強く阻害する薬剤との併用は禁忌である。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリーなど)

医薬品各種(非BZD系睡眠薬)

Z-Drug(非BZD系薬)は、BZD系薬と同様にGABA受容体作動薬である。
BZD系薬は、GABA受容体のαサブユニット(α1とα2)に非選択的に作用する。
これに対してZ-Drug(非BZD系薬)では、それぞれの薬物ごとに、αサブユニット(α1,α2,α3そしてα5)の中で、より効力を発揮するサブユニットが異なっている。
そしてその結果、各薬物の薬理学的な性格も異なってくる。

非BZD系睡眠薬の方が安全だとは言い切れない

ゾルピデムはω1受容体選択的であるため比較的筋弛緩作用が弱く、脱力感や転倒のリスクが少ないことが期待されています。しかし、臨床的にほかの睡眠薬と比較してふらつきや転倒が少ないことを示す確固とした報告はないようです。むしろ、ゾルピデムのほうが従来のBZ系薬より股関節骨折のリスクが高かったとの報告や、高齢者ではAUCが健康成人の5.1倍であったとの報告もあることから、その使用に関しても十分に注意を払うことが肝要です。(PISCS2021,p.103)

マイスリー(一般名:ゾルピデム)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型):
「ω1受容体に選択的に作用。脱力や転倒などの副作用が少ないとされる。翌朝への持ち越し少ない」。(今日の治療薬2020,p.902)

ゾルピデムの注意点については、上記「非BZD系睡眠薬の方が安全だとは言い切れない」参照のこと。

マイスリー:錠(5mg、10mg)

  • 【ゾルピデム】は、超短時間作用型である。(半減期:2時間)
  • CYP3A4基質薬(影響は軽度)である。CR(CYP3A4)0.40W
    ただし、高齢者(AUC5.1倍)や肝硬変患者(AUC5.3倍)で血中濃度が上昇しやすく、
    特に、65歳以上10mg投与群(高用量)での転倒率が有意に高い。
    (また、女性のゾルピデム代謝が緩徐なため、高齢女性での転倒率はさらに高い)
  • マクロライド系抗菌薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.118)
    (クラリスロマイシン、エリスロマイシンのAUC1.5倍 ― 併用注意の範囲内)
  • アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用注意薬有り。(PISCS2021,p.116)
    (各薬剤共にAUC1.3~1.5倍程度であり、併用注意の記載有無にかかわらず、
    併用注意無し~併用注意の範囲内)
  • Ca拮抗薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.120)
    (ジルチアゼムのAUC2.3~3.4倍、ベラパミルのAUC2.9倍であり、併用注意~併用注意無しの範囲内)

GABA受容体サブユニットに対する最大効力の比較:α1 >> α2,α3,α5
α1サブユニットへの効力が強い。

  • ω1受容体:睡眠に関する「小脳」や「大脳新皮質」に多い(睡眠作用)
  • ω2受容体:筋肉の緊張に関する「脊髄」に多い(筋弛緩作用)
    最近では、GABAa受容体のサブユニット(α1、α2、α3、そしてα5)への作用の違いで説明されることが多い。(児島2017,pp.256-257)

【効能・効果】
不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)。

【用法・用量】
通常、成人にはゾルピデム酒石酸塩として1回5~10mgを就寝直前に経口投与する。
なお、高齢者には1回5mgから投与を開始する。
年齢、症状、疾患により適宜増減するが、1日10mgを超えないこととする。

(マイスリー錠添付文書)

ゾルピデムは、肝代謝酵素(CYP3A4やCYP2C9、CYP1A2など)によって段階的に代謝され、最終的には活性のない代謝産物となり排泄される。
尿中未変化体濃度は、いずれの投与量においても投与量の0.5%以下とごくわずかであった。

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    ゾルピデム:CR(CYP3A4)0.40W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

高齢者・高用量での転倒率は高い

ゾルピデムの筋弛緩作用はほとんど無く、転倒・骨折リスクは、Z-Drugの中でも一番少なそうである。
ところが、高齢者においては、特に高用量で転倒率が有意に高くなっている。

「ゾルピデムの投与量および年齢と転倒率に関する研究結果」によると、ゾルピデム10mg投与群では、5mg群に比べて転倒率が高かった。
その中で、65歳以上10mg投与群での転倒率が特に高かった。(実践薬学2017,p.33)

その原因として、ゾルピデムは、高齢者及び肝硬変患者でAUCが大きく上昇することが挙げられる。

ゾルピデムは、主にCYP3A4で代謝される。
したがって、加齢によってCYPの活性が低下した高齢者の場合には、半減期の延長や血中濃度が上昇することからAUCが大きく上昇する。

具体的には、高齢患者7例(67~80歳、平均75歳)で健康成人の5.1倍、肝硬変患者(外国人8例)で5.3倍となっている。(マイスリー錠添付文書より)

特に、高齢女性で転倒率が高いとされているようである。(同上,p.291)

女性では代謝が緩徐である

「女性は男性に比べ、ゾルピデムの代謝が緩徐のために持ち越し効果の可能性が高まるとして、米国では年齢に関係なく、女性の推奨用量を5mgとしている」。(同上,p.33)

そのほか

超短時間作用型であり「睡眠維持障害には効果が乏しく、時に早朝不眠の原因になることもある」。
また、睡眠作用よりも鎮静作用が強く、前向性健忘や依存が気になる。(同上,p.37)

前向性健忘(服薬してから入眠するまでの記憶の欠如など)は、トリアゾラムやゾルピデムに限らず、睡眠薬一般によくみられる重要な副作用の一つである。
⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」

アモバン(一般名:ゾピクロン)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型):
「ω1受容体に選択的に作用。筋弛緩作用は弱い。口中の苦みが問題」。(今日の治療薬2020,p.902)

アモバン:錠(7.5mg、10mg)
2016年10月「第三種向精神薬」指定。

  • 【ゾピクロン】は、超短時間作用型である。(半減期:4時間)
    ラセミ体(S + R)である。⇒エスゾピクロン(S体)
    (全般的に、エスゾピクロンの方が種々の効果を示す)
  • CYP3A4基質薬(影響は軽度)である。CR(CYP3A4)0.44W
  • マクロライド系抗菌薬との相互作用では、併用注意有り。(PISCS2021,p.118)
    (クラリスロマイシン、エリスロマイシンのAUC1.6倍 ― 併用注意の範囲内)
  • アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用注意有り。(PISCS2021,p.116)
    (各薬剤共にAUC1.5~1.8倍程度であり、併用注意の範囲内)
  • Ca拮抗薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.120)
    (ジルチアゼム、ベラパミル共に
    AUC1.5倍、併用注意の範囲内)

GABA受容体サブユニットに対する最大効力の比較:α1,α5 > α2,α3
α1サブユニットに加えて、α5サブユニットへの効力が強い。

ゾルピデムの特徴(α1サブユニット)の上に、筋弛緩作用、学習・記憶への影響、耐性が加わる。

【 効能・効果 】
不眠症、麻酔前投薬

【 用法・用量 】
1.不眠症
通常、成人1回、ゾピクロンとして、7.5~10mgを就寝前に経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減するが、10mgを超えないこと。
2.麻酔前投薬
通常、成人1回、ゾピクロンとして、7.5~10mgを就寝前または手術前に経口投与する。
なお、年齢・症状・疾患により適宜増減するが、10mgを超えないこと。

(アモバン錠添付文書)

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    ゾピクロン:CR(CYP3A4)0.44W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

苦みの訴えが多い

「血中に移行した一部(総投与量の約4%)が唾液中に分泌されるため、苦味の訴えが多いことで有名な薬だ」。p.27
唾液そのものが苦くなってしまうと考えられている。
したがって、苦みを消そうとしてガムや飴をなめると、余計に唾液が増えて、苦みが強くなってしまうことがある。

ゾピクロンに比べてエスゾピクロンの方が苦みは少ない。
そこで、苦みが気になるときには、エスゾピクロンに変薬してみる価値はある。
ただし、両者共に、苦みを抑えるためフィルムコーティング錠になっているので、半錠に割ったり粉砕したりすると、その苦みが強まることがある。

ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型):
「ω1受容体に選択的に作用。ゾピクロンの胸像異性体。筋弛緩作用や依存性が少ない」。(今日の治療薬2020,p.902)

ルネスタ:錠(1mg、2mg、3mg)・・・普通薬

  • 【エスゾピクロン】は、超短時間作用型である。(半減期:5~6時間)
    ゾピクロン:ラセミ体(S + R)⇒エスゾピクロン(S体)
    (全般的に、エスゾピクロンの方が種々の効果を示す)
  • CYP3A4基質薬(影響は軽度)である。CR(CYP3A4)0.44W(ゾピクロン)
  • マクロライド系抗菌薬との相互作用では、併用注意有り。(PISCS2021,p.118)
    (クラリスロマイシン、エリスロマイシンのAUC1.6倍 ― 併用注意の範囲内)
  • アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用注意有り。(PISCS2021,p.116)
    (各薬剤共にAUC1.5~1.8倍程度であり、併用注意の範囲内)
  • Ca拮抗薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.120)
    (ジルチアゼム、ベラパミル共に
    AUC1.5倍、併用注意の範囲内)
  • エスゾピクロンの転倒率は一番低い
  • 依存形成が少なく、減量や中止をしやすい
  • 抗うつ作用がある

光学異性体(S体)⇔ゾピクロン(ラセミ体:S + R)

  • 効果の増強、半減期の延長(超短時間型と短時間型の中間型)。
  • 入眠障害に加えて中途覚醒への効果確認。
  • 苦味は残っている。

GABA受容体サブユニットに対する最大効力の比較:α2,α3 > α1,α5
ゾルピデム(ラセミ体)から光学異性体(S体)を取り出すことによって、各αサブユニットの効力比が逆転している。(ゾピクロン:α1,α5 ⇔ エスゾピクロン:α2,α3)

エスゾピクロンは、睡眠、抗不安、抗うつ作用といった好ましい作用を獲得している。
逆に、学習・記憶への影響、前向性健忘、依存、耐性といった好ましくない作用への関与は少なくなっている。

【効能・効果】
不眠症

【用法・用量】
通常、成人にはエスゾピクロンとして 1回2mgを、高齢者には1回1mgを就寝前に経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないこととする。

(ルネスタ錠添付文書)

アモバン10mg→ルネスタ3mgで単純に換算してはいけない

(児島2017,pp.261-262)

エスゾピクロン(S体のみ)は、光学異性体のゾピクロン(S+R)から、S体のみを取り出したものである。
それにもかかわらず、エスゾピクロンの用量は、ゾピクロンの半量よりもさらに少量に設定されている。

ただし、両者の用法・用量から、アモバン10mg=ルネスタ3mgと単純に考えることはできない。
その理由としては、以下のようなことが考えられる。

  1. もともとアモバンの用量設定が多めであった。
    (アモバンは、1日5mgでも効果があるとされている)
  2. アモバン発売時(1989年5月)よりも、ルネスタ発売時(2012年4月)の方が睡眠薬使用に対する考え方が厳しくなっている。

エスゾピクロンの転倒率は一番低い

エスゾピクロンは、Z-Drugではあるが「筋弛緩作用による転倒・骨折のリスクには注意が必要かもしれない」。ただし、臨床の場では「エスゾピクロンで転倒が多いという話は聞こえてこない」。(実践薬学2017,p.28)

むしろ、エスゾピクロンの転倒率は、Z-Drugの中でも一番低いという研究結果が示されている(前述)。(同上,p.34)

つまり、薬理作用から考えられる症状が全て臨床用量で発現するとは限らない。
「しかし、医師の処方変更を読み解く1つの指標にはなるだろう」。(同上,p.29)

依存形成が少なく、減量や中止をしやすい

依存形成は、「α1サブユニットを介した薬理作用による。前述した通り、BZD系で強く、Z-DrugはBZD系よりも弱く、中でもエスゾピクロンが最も影響が少ない」。(同上,p.29)

エスゾピクロンは、耐性や退薬症状が少ないとされている。
また、服薬を中断しても反跳性不眠は起こらなかったことが報告されている。
(児島2017,p.261参照)

抗うつ作用がある

GABAa受容体のα3サブユニットの薬理作用の一つに、抗うつ作用が有る。

エスゾピクロンは、α3サブユニットの効力が強く、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)との併用において、うつ病による二次性不眠にも効果がある」。
「同試験において、追加の抗うつ効果をもたらすことも報告されている」。(実践薬学2017,p.29)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(概要)

非BZD系薬(Z-Drug)の転倒・⾻折リスクは、BZD系薬よりも小さい

睡眠薬による転倒の多くは、筋弛緩作用によるとされている。
筋弛緩作用を有し、かつ半減期が長い薬物ほどそのリスクは高まる。

Z-Drug(非BZD系薬)は、半減期が短く筋弛緩作用が弱いため、BZD系薬と比べて転倒リスクは低い。
さらに、就寝直前の服用を徹底することで、急速に血中濃度が高まり転倒リスクが上昇する時間帯に歩き回ることを回避できる。

なお、Z-Drug(非BZD系薬)のメリットとして、依存形成が少ないことが挙げられる。

(実践薬学2017,pp.23-34、以下「」内引用)

⾼齢者の原発性不眠症に対しては、⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)

⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される。ベンゾジゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻折リスクに関するデータが乏しく推奨に⾄らなかった。⾼齢者では睡眠薬による不眠症の改善効果のエフェクトサイズに⽐較して、相対的に副作⽤のリスクが⾼いため、不眠の重症度、基礎疾患の有無や⾝体的コンディションなどを総合的に勘案して睡眠薬の処⽅の是⾮を決定すべきである。【推奨グレードA】

「睡眠薬の種類と転倒率に関する研究結果」によれば、「Z-DrugはBZD系薬に比べ転倒率が有意に低かった」。その中でも特に「エスゾピクロンの転倒率が最も低く、ブロチゾラムと比べ有意に低かった」。p.34

「Z薬」の認知症患者への処方は危険!

BMC Med2020; 18: 351)の論文について、メディカルトリビューンでは、上記表題を付けて内容を抜粋している。

  • 認知症患者に対する高用量Z薬の処方は、骨折および脳卒中のリスクの上昇と関連していた。
  • Z薬によるリスクの上昇度は高用量ベンゾジアゼピン系薬と同程度または同薬を上回っていた。
  • 認知症患者には可能な限り高用量のZ薬の使用を避け、非薬物療法を優先的に考慮すべき。
  • Z薬は既に認知症患者の不眠症治療に広く使用されているが、使用期間は最長で4週間にとどめておくことが勧められる。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(非BZD薬

加齢により睡眠時間は短縮し、また睡眠が浅くなることを踏まえて、薬物療法の前に、 睡眠衛生指導を行う。必要に応じて催眠鎮静・抗不安薬が用いられるが、ベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者では有害事象が生じやすく、依存を起こす可能性もあるので、特に慎重に投与する薬剤に挙げられている。(注:催眠鎮静薬・抗不安薬全般に対する冒頭の文章)

  • 非ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬(ゾピクロン[アモバン]、ゾルピデム[マイスリー]、エスゾピクロン[ルネスタ])も転倒・骨折のリスクが報告されている。
    その他ベンゾジアゼピン系と類似の有害事象の可能性がある。
    (過鎮静、認知機能の悪化、運動機能低下、転倒、骨折、せん妄など)
  • 漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど、慎重に使用する。
    ベンゾジアゼピン系薬剤は、海外のガイドラインでも投与期間を4週間以内の使用にとどめるとしていることも留意すべきである。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

医薬品各種(BZD系睡眠薬)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(BZD系薬)は、依存形成リスクの高い薬物である。

依存形成リスクを軽減するため、診療報酬の減額対象として、「3種類以上の抗不安薬または睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬または抗精神病薬の処方」が挙げられている。
また、海外のガイドラインにおいては、使用期間に制限(4週間以内)が設けられている。

その上、特に高齢者では、認知機能の悪化などの有害事象が生じやすくなる。
したがって、⾼齢者の原発性不眠症に対しては、⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬(Z-drug薬)が推奨されている。(児島2017,pp.251-255)

BZD系睡眠薬は、効き目の強さではなく、作用時間の長短によって使い分ける。

超短時間型には、BZD系(トリアゾラム)のほかに、非BZD系(ゾルピデムなど、Z-drug)がある。
トリアゾラムの効き目は、非BZD系も含めた睡眠薬の中で一番速く現れる(10~15分程度)。
ただし、トリアゾラムの筋弛緩作用は強く、高齢者では夜間のトイレでの転倒・骨折のリスクが高い。

短時間型(ブロチゾラムなど)は、寝付きの悪い「入眠障害」に用いる。
半減期が短く、翌朝まで効果を持ち越すことがないため、必要に応じて頓用で使いやすい。

ただし、短時間型では睡眠薬に対する依存が起こりやすいとされている。
つまり、「薬があれば安心して眠れる」状態から「薬がなければ安心して眠れない」状態に陥ってしまう。
離脱症状にも気を付ける必要がある。

中~長時間型(フルニトラゼパムなど)は、睡眠薬の効果が一晩中続くので、「中途覚醒」や「早朝覚醒」に有効である。
依存や離脱症状あるいは反跳性不眠は少ないが、眠気が翌朝あるいは日中まで続く「持ち越し効果」に注意する必要がある。
なお、半減期が24~36時間と長いため、睡眠薬を継続して服用することによって定常状態に達する。
その結果、睡眠効果が安定してくる。

  • 反跳性不眠:
    睡眠薬を減量・中止した際に起こる不眠症状
  • 離脱症状(退薬症状):
    睡眠薬を減量・中止した際に起こる頭痛やめまい、焦燥感などの副作用
    (児島2017,p.261)

ハルシオン(一般名:トリアゾラム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型):
「警告:もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)の発現と中途覚醒時の健忘」。(今日の治療薬2020,p.899)

ハルシオン:錠(0.125mg、0.25mg)

  • 【トリアゾラム】は、超短時間作用型である。(半減期:2~4時間)
    前向性健忘に特に注意する。
  • CYP3A4基質薬(影響を強く受けやすい)であり、相互作用が多い。CR(CYP3A4)0.93VS
    グレープフルーツジュースとは、併用注意となっている。
  • マクロライド系抗菌薬との併用注意。(PISCS2021,p.118)
    (クラリスロマイシンではAUC5.1倍に上昇 ― 限りなく併用禁忌
    エリスロマイシン、ロキシスロマイシンでは、AUC2.1~1.5倍 、
    併用注意の記載有無にかかわらず、併用注意)
  • アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用禁忌薬が最も多い(4種類)。(PISCS2021,p.116)
    (ボリコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール、フルコナゾールである。

    ただし、ポサコナゾールでは、AUC5.3倍 ― 限りなく併用禁忌
    ラブコナゾールでは、AUC3.1倍 ― 併用注意)
  • HIVプロテアーゼ阻害薬との相互作用では、併用禁忌薬がある。(PISCS2021,p.112)
  • Ca拮抗薬(ジルチアゼム)とは、併用注意。(PISCS2021,p.120)
    (ベラパミルはAUC2.9倍であり、併用注意相当(実際の記載は無い))

トリアゾラム[ハルシオン]は健忘のリスクがあり使用はできるだけ控えるべきである。(高齢者の医薬品適正使用の指針)

参考)「質問3 睡眠薬を飲んでから電話を受けたようですが記憶がありません.これは病気でしょうか?」
レジデントノート(https://www.yodosha.co.jp/rnote/sleep/q3.html)
フルニトラゼパム (ロヒプノール®) を服用後,電話で仕事のやり取りをして,翌日同僚にその内容について聞かれ全く記憶がないためパニックになった方がいました。→前向性健忘

前向性健忘(服薬してから入眠するまでの記憶の欠如など)は、BZD系・非BZD系睡眠薬一般にみられる現象として注意すべきである。

トリアゾラムは、CYP3Aの基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
    トリアゾラム:CR(CYP3A4)0.93VS、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)

トリアゾラムは、CYP3A基質薬(強い)であり、グレープフルーツジュースと相互作用を有する。
実際に、以下のような海外データがある。

「健常人10名(海外データ)を対象にして、ハルシオンを0.25mgとGFJを250mL併用した結果、AUCは1.5倍、Cmaxは1.3倍、Tmaxは1.6~2.5倍に延長した」。

つまり併用によって、トリアゾラムの「長短時間型」睡眠薬としての〈素早い立ち上がり及び消失〉という特徴が失われてしまっている。
トリアゾラムがトリアゾラムでなくなってしまっているのである。
それにもかかわらず、添付文書上は併用禁忌にも併用注意にもなっていない。

メーカーもこのデータを承知しているが、「改定の根拠となるような有害事象例がないため」添付文書には記載していない、ということである。

後は薬剤師として個別の判断が求められる。

参考)薬歴公開 byひのくにノ薬局薬剤師。2013年9月27日 (金)
ハルシオンとGFJ(グレープフルーツジュース)
http://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/index.html

なお、一般的に、アルプラゾラムブロチゾラムなどベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬は、CYP3A基質薬となっている。
したがって、グレープフルーツジュースとの相互作用が考えられる。

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 併用禁忌:フルコナゾール(ジフルカン)・CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬
  • 併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
  • 併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
  • 併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬
  • 併用禁忌:リファンピシン(リファジン)・CYP3A4誘導薬

トリアゾラムはCYP3A4で代謝されるため、薬物相互作用が問題となる。
トリアゾラムをロルメタゼパム(エバミール)に変薬するならば、薬物相互作用は何ら問題無くなる。
ロルメタゼパムは、「CYPで代謝されないため、肝疾患や高齢者でも使いやすく相互作用の心配が少ない」。
(グルクロン酸抱合による、今日の治療薬2020,p.900)

化学構造及び代謝について(トリアゾラム)

トリアゾラムは、アルプラゾラムの水素(H)を塩素(Cl)に置き換えた構造をしている。
塩素原子の方が水素原子よりも大きいため、標的になりやすいと考えられている。
また、トリアゾラムは分子中に塩素を2つ持つことになるので、より薬物代謝酵素の標的となりやすく代謝されやすくなる。
その結果、血中濃度半減期は、アルプラゾラム14時間に対して、トリアゾラム2.9時間になっている。
(実践薬学2017,p.22)

トリアゾラムの「主な代謝物のα-ヒドロキシトリアゾラムにはトリアゾラムと同等か1/2程度の活性があり、4-ヒドロキシトリアゾラムには活性がない」。(実践薬学2017,p.20←ハルシオン・インタビューフォーム参照)

ただし、インタビューフォームでの記載方法は以下のとおりである。

代謝物の活性の有無及び比率
主たる代謝物:
1)α-hydroxytriazolamはtriazolamと同等か1/2 程度の活性を有する。
2)4-hydroxytriazolamには活性がない。

さらに、ハルシオン添付文書を確認すると、以下のようになっている。
「代謝物は主としてα-hydroxytriazolamと4-hydroxytriazolamである。前者は未変化体より弱い活性を有するが血漿中濃度は低く、後者は活性がない」。

インタビューフォームと添付文書では、多少記載方法に違いがある。

レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型):(今日の治療薬2020,p.900)

レンドルミン:錠(0.25mg)、D錠(0.25mg)

  • 【ブロチゾラム】は、短時間作用型である。(半減期:7時間)
  • CYP3A4基質薬(影響を強く受けやすい)である。CR(CYP3A4)0.85S
  • マクロライド系抗菌薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.118)
    (ただし、クラリスロマイシン:AUC4.0倍 ― 限りなく併用禁忌
    エリスロマイシン:AUC3.3倍 ― 併用注意相当)
  • アゾール系抗真菌薬との相互作用では、併用禁忌薬無し。(PISCS2021,p.116)
    (ただし、ボリコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾールでは、AUC4.1~6.0倍、
    併用注意の記載有無にかかわらず、限りなく併用禁忌
    フルコナゾール、ポサコナゾール、ラブコナゾールでは、AUC2.6~3.8倍、
    併用注意の記載有無にかかわらず、併用注意相当)
  • Ca拮抗薬との併用注意の記載無し。(PISCS2021,p.120)
    (ただし、ジルチアゼム、ベラパミルでは、AUC3.1~2.5倍 ―併用注意相当)

ブロチゾラムは、CYP3A基質薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、高度である。
    ブロチゾラム:CR(CYP3A4)0.85S、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4阻害薬

エバミール、ロラメット(一般名:ロルメタゼパム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型):
「CYPで代謝されないため、肝疾患や高齢者でも使いやすく相互作用の心配が少ない」。(今日の治療薬2020,p.900)

エバミール:錠(1.0mg)

【ロルメタゼパム】は、短時間作用型である。(半減期:10時間)
CYP(肝代謝酵素)の代謝を受けない。CR(CYP3A):ほとんどない。(PISCS2021,p.117)
(腎・肝障害患者や高齢者に使いやすい)

(実践薬学2017,pp.18-22、以下参照)

ロルメダゼパムは、CYPでの代謝を受けることはない。
分子中に水酸基(-OH)を有しており、いきなりグルクロン酸抱合を受けて活性を失う。
なお通常、抱合体には活性は無い。

以上から、「腎機能障害や肝機能障害がある場合に推奨」されており、また「高齢者に使いやすいといえる」。例えば、CYPの影響を受けやすいトリアゾラム(上記)から変薬することによって、相互作用の影響を排除することが可能となる。

リスミー(一般名:リルマザホン)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型):(今日の治療薬2020,p.900)

リスミー:錠(1mg、2mg)

【リルマザホン】は、短時間作用型である。(半減期:10時間)
カルボキシエステラーゼで分解される。CR(CYP3A):非常に低い。(PISCS2021,p.117)
(併用禁忌無し)
腎不全の場合、通常の半量に減量する。(PISCS2021,p.103)
(健康成人男性2mg投与群と腎不全患者1mg投与群で活性代謝物の血中濃度が同程度であった)

サイレース(一般名:フルニトラゼパム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型):
「強力な睡眠作用」。(今日の治療薬2020,p.900)

サイレース:錠(1mg、2mg)
サイレース:静注(2mg/1mL)

【フルニトラゼパム】は、中間作用型である。(半減期:24時間)
(併用禁忌無し)

(どんぐり2019,pp.137-138、以下参照)

Cmax(ng/mL)、21.7±6.73
tmax(hr)、0.75(0.5-6.0)
AUC0-72h(ng・hr/mL)、203±34.0
t1/2(hr)、21.2±4.90

「健康成人男子5名にフルニトラゼパム2mgを1日1回7日間反復経口投与したとき、投与後3日から5日で定常状態に達し、その最高血中濃度は単回投与時の約1.3倍であった」。(サイレース添付文書)

「血液-脳関門通過性〈参考〉
ラットに 14Cフルニトラゼパム1mg/kgを経口投与した場合の脳の放射活性濃度は、投与1時間後で0.15μg/gであり、血液中濃度0.16μg/gとほぼ同等であった。(サイレース・インタビューフォーム)

フルニトラゼパムは、脳に移行しやすく消失半減期はやや長い薬物である。

「ベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者では有害事象が生じやすく、依存を起こす可能性もあるので、特に慎重に投与する薬剤に挙げられている」。(上記指針(総論編))
高齢者では、一般的に薬物が長時間体内に留まり、作用が持続する傾向がある。

もし薬が効きすぎて日中まで眠気が続けば、転倒などのリスクが高まる。
減量しても日中まで眠気が残る場合、ほかの睡眠薬への変更や中止などを検討する。
ただし、「ベンゾジアゼピン系薬剤は急な中止により離脱症状が発現するリスクがある」。(上記指針(総論編))

ベンザリン、ネルボン(一般名:ニトラゼパム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型):
「催眠作用のほか、筋弛緩作用、抗痙攣作用あり」。(今日の治療薬2020,p.901)

ベンザリン:細粒(1%)
ベンザリン:錠(2mg、5mg、10mg)

【ニトラゼパム】は、中間作用型である。(半減期:28時間)
(併用禁忌無し)

ユーロジン(一般名:エスタゾラム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(中間型):(今日の治療薬2020,p.901)

中間作用型:半減期(24時間)

ユーロジン:散(1%)
ユーロジン:錠(1mg、2mg)

【エスタゾラム】は、中間作用型である。(半減期:24時間)
(併用禁忌無し)

(実践薬学2017,pp.14-15、以下参照)

「健康成人(5例)に1回4mgを経口投与した場合の血中濃度は、投与約5時間後に最高値約107ng/mLに達し、半減期は約24時間である」。(ユーロジン添付文書)

エスタゾラムを毎日(4~5日間)、つまり半減期(約24時間)×4~5回飲み続けると、定常状態に達すると考えられる。
つまりある一定量の睡眠薬濃度が持続する状態となる。
しかし、それでもちゃんと目覚めることができる。
「それは、脳にある強力な覚醒機構が発動するからである」。

ドラール(一般名:クアゼアム)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(長時間型):(今日の治療薬2020,p.901)

ドラール:錠(15mg、20mg)

【クアゼパム】は、長時間作用型である。(半減期:36時間)
(併用禁忌無し)

「ちなみに、フッ素(F)はその構造を安定させ、代謝を受けにくくする。
例えば、フッ素をたくさん持つクアゼパム(ドラール他)の半減期は36時間と長い」。
(実践薬学2017,p.22)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(概略)

BZD系薬の作用機序

BZD系薬(ベンゾジアゼピン骨格を有する)は、GABAa受容体のαサブユニットとγサブユニットの境界領域に結合することによって、神経活動を抑制する。
(GABA受容体:中枢神経系に存在する5量体のイオンチャネル)

つまり、BZD系薬はGABA受容体作動薬である。
そして、Z-Drug(非BZD系薬)もまたGABA受容体作動薬である。

BZD系薬は、GABA受容体のαサブユニット(α1とα2)に非選択的に作用する。
Z-Drug(非BZD系薬)は、各薬物ごとにαサブユニット(α1~6に細分化)に対する効力差があり、それが各薬物の薬理学的な特徴となって現れる。

⇒「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリーなど)

BZD系薬の用量と作用

BZD系睡眠薬は、もちろん鎮静睡眠作用を有している。
しかしながら、主作用を発揮する用量よりも少量で、そのほかの様々な作用を発揮する薬物でもある。

  • 健忘作用、一番最後に出現する作用
  • 鎮静睡眠作用
  • 筋弛緩作用
  • 抗痙攣作用
  • 抗不安作用、一番最初に(少量で)出現する作用

例えば、筋弛緩作用は鎮静睡眠作用よりも少ない用量で出現する。
したがって、BZD系睡眠薬を服用する場合、筋弛緩作用によるふらつきや転倒に十分注意する必要がある。
(実践薬学2017,p.16)

⾼齢者の原発性不眠症に対しては、⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される

「現在では、特にBZD系による身体依存や持ち越し効果による認知機能への影響、そして筋弛緩作用による転倒や骨折が問題となっている」。
そのため、2013年6月に下記ガイドラインが作成されている。
(実践薬学2017,pp.18)

  • 「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)

⾼齢者の原発性不眠症に対しては⾮ベンゾジゼピン系睡眠薬が推奨される。
ベンゾジゼピン系睡眠薬は転倒・⾻折リスクを⾼めるため推奨されない。
メラトニン受容体作動薬については転倒・⾻折リスクに関するデータが乏しく推奨に⾄らなかった。
⾼齢者では睡眠薬による不眠症の改善効果のエフェクトサイズに⽐較して、相対的に副作⽤のリスクが⾼いため、不眠の重症度、基礎疾患の有無や⾝体的コンディションなどを総合的に勘案して睡眠薬の処⽅の是⾮を決定すべきである。

【推奨グレードA】

  • 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)/「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」の策定と発出について
  • 調剤と情報,2013.9(Vol.19 No.9),pp.57-63(1185-1191)/ガイドライン作成責任者・三島和夫先生に対するインタビュー記事
  • 週刊医学界新聞,第3043号,2013年09月16日/ガイドライン作成責任者・三島和夫先生に対するインタビュー記事

「Z薬」の認知症患者への処方は危険!

BMC Med2020; 18: 351)の論文について、メディカルトリビューンでは、上記表題を付けて内容を抜粋している。

  • 認知症患者に対する高用量Z薬の処方は、骨折および脳卒中のリスクの上昇と関連していた。
  • Z薬によるリスクの上昇度は高用量ベンゾジアゼピン系薬と同程度または同薬を上回っていた。
  • 認知症患者には可能な限り高用量のZ薬の使用を避け、非薬物療法を優先的に考慮すべき。
  • Z薬は既に認知症患者の不眠症治療に広く使用されているが、使用期間は最長で4週間にとどめておくことが勧められる。

抗コリン作用による便秘の可能性

「抗コリン作用により腸管で交感神経が優位の状態となるため弛緩が起こり、蠕動運動が抑制され便秘が生じる」。(どんぐり2019,p.34)

酸化マグネシウム(緩下薬)がトリアゾラムと併用されている場合、便秘はトリアゾラムの副作用である可能性も考える。(便秘、口渇、胃部不快感など)

併用薬の副作用(便秘)を疑う:
⇒「便秘薬(マグミットとプルゼニドなど)

催眠・鎮静系抗うつ薬の適応外使用(不眠症)

向精神薬に関しては、副作用リスク、特に依存形成リスク対策の観点から、診療報酬改定において厳しい処置が取られている。

2014年度診療報酬改定では、向精神薬の多種類処方に対して、処方箋料や薬剤料の減額規定が盛り込まれた。

2016年度診療報酬改定では、「3種類以上の抗不安薬または睡眠薬、3種類以上の抗うつ薬または抗精神病薬を処方した場合」、減額対象がより厳しくなった。

今まで当たり前のように行われてきた「半減期の異なる睡眠薬の併用」は意味のあることだったのだろうか。
副作用防止のためには、GABAa受容体作動薬(BZD系やZ-Drug系薬物)同士の併用だけではなく、作用機序の異なる薬物を併用してみることも必要であろう。
(実践薬学2017,pp.37-38)

例えば、うつ病性不眠に対しては、適応外処方ではあるものの、ガイドラインの中に次のような記載がある。

  • 「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。
原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。
ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。
その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。

【推奨グレードB】

「実践薬学2017」では、上記3薬に加えてアミトリプチリン(同じく適応外処方)を挙げている。

「(アミトリプチリンは)2002年に不眠のために米国で使われた薬剤の相対処方頻度の調査で、トラゾドン、ゾルピデムに続いて第3位にランクインしている(ちなみに4位はミルタザピンで6位はクエチアピン)」。
(実践薬学2017,p.41)

  • ミアンセリン(テトラミド)、四環系抗うつ薬
  • トラゾドン(レスリン、デジレル)、SARI
  • ミルタザピン(リフレックス、レメロン)、NaSSA
  • アミトリプチリン(トリプタノール)、三環系抗うつ薬
  • クエチアピン(セロクエル)、抗精神病薬

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(BZD系睡眠薬

加齢により睡眠時間は短縮し、また睡眠が浅くなることを踏まえて、薬物療法の前に、睡眠衛生指導を行う。
必要に応じて催眠鎮静・抗不安薬が用いられるが、ベンゾジアゼピン系薬剤は、高齢者では有害事象が生じやすく、依存を起こす可能性もあるので、特に慎重に投与する薬剤に挙げられている。
(注:催眠鎮静薬・抗不安薬全般に対する冒頭の文章)

  • ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬(ブロチゾラム[レンドルミン]、 フルニトラゼパム[ロヒプノール、サイレース]、ニトラゼパム[ベンザリン、ネルボン]など)は、過鎮静、認知機能の悪化、運動機能低下、転倒、骨折、せん妄などのリスクを有しているため、高齢者に対しては、特に慎重な投与を要する。
  • 長時間作用型(フルラゼパム[ダルメート]、ジアゼパム[セルシン、ホリゾン]、ハロキサゾラム[ソメリン]など)は、高齢者では、ベンゾジアゼピン系薬剤の代謝低下や感受性亢進がみられるため、使用するべきでない。
  • トリアゾラム[ハルシオン]は健忘のリスクがあり使用はできるだけ控えるべきである。
  • 漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど、慎重に使用する。
    ベンゾジアゼピン系薬剤は、海外のガイドラインでも投与期間を4週間以内の使用にとどめるとしていることも留意すべきである。
  • ベンゾジアゼピン系薬剤は急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 多くの薬剤は主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用はなるべく避けるべきである。

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。