糖尿病治療薬(配合薬)

医薬品各種(糖尿病配合薬)

エクメット配合錠(一般名:ビルダグリプチン/メトホルミン)

腎機能低下時の用法・用量(エクメット)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回1錠を1日2回朝夕
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    禁忌(中等度以上の腎機能障害では腎臓におけるメトホルミンのの排泄が減少する)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(透析患者(腹膜透析を含む)ではメトホルミンの高い血中濃度が持続するおそれがある)

イニシンク配合錠(一般名:アログリプチン/メトホルミン)

腎機能低下時の用法・用量(イニシンク)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠を食直前又は食後
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌

1日1回1錠を食直前又は食後

メトアナ配合錠(一般名:アナグリプチン/メトホルミン)

腎機能低下時の用法・用量(メトアナ)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回1錠を1日2回朝夕
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌

メタクト配合錠(一般名:ピオグリタゾン/メトホルミン)

腎機能低下時の用法・用量(メタクト)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠、朝食後
    女性の場合は、ピオグリタゾンとして1日1回15mgから投与を開始することが望ましい
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌(腎機能障害(軽度障害も含む)では、腎臓におけるメトホルミンの排泄が低下する)

リオベル配合錠(一般名:ピオグリタゾン/アログリプチン)

腎機能低下時の用法・用量(リオベル)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回1錠を朝食前又は朝食後
    女性・高齢者の場合は、これまでのピオグリタゾンの投与量を考慮のうえ、ピオグリタゾンとして1日1回15mgからの投与開始を検討する
  • CCr(60mg/dL未満、腎機能患者を含む)
    禁忌(腎機能障害(軽度障害も含む)では、腎臓におけるメトホルミンの排泄が低下する)

カナリア配合錠(一般名:テネリグリプチン/カナグリフロジン)

スージャヌ配合錠(一般名:シタグリプチン/イプラグリフロジン)

ビスホスホネート(BP)製剤

ビスホスホネート製剤(概略)

⇒「骨粗鬆症について

ビスホスホネート製剤(BP)

(参考:今日の治療薬2020,pp.476-480)

  • フォサマック、ボナロン(一般名:アレンドロン酸)
  • ベネット、アクトネル(一般名:リセドロン酸)
  • リカルボン、ボノテオ(一般名:ミノドロン酸)
  • ボンビバ(一般名:イバンドロン酸)

BPは、内服薬では腸管からの吸収が悪く、血清中濃度は定量限界未満となる。
ただし、体内に入ったBPは、特異的に骨組織に取り込まれる。
破骨細胞の活性化及び生存を抑制することにより、骨吸収を抑制する。
その結果、優れた骨密度増加効果、骨折予防効果が示されている。
多くの国で、骨粗鬆症の第一選択薬と位置付けられている。

アレンドロン酸リセドロン酸で同一評価(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)
  • 椎体骨折:抑制する(A)
  • 非椎体骨折:抑制する(A
  • 大腿骨近位部骨折:抑制する(A

ミノドロン酸(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)
  • 椎体骨折:抑制する(A)
  • 非椎体骨折:抑制するとの報告はない(C
  • 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C

イバンドロン酸(ガイドライン2015)

  • 骨密度:上昇効果がある(A)
  • 椎体骨折:抑制する(A)
  • 非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B
  • 大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C

マグミットの相互作用:
「本剤は吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある」。(以下、マグミット添付文書より引用)

  • テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤、ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤
  • これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
  • マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。

ビスホスホネート製剤(BP)服用方法

  1. 起床後、朝食前に多めの水(約180mL)で服用する
    薬を食後服用すると、薬の吸収率が大きく低下して、治療効果に影響を与える。
    薬が喉や食道に引っかかると、そこで炎症や潰瘍を起こす恐れがある。
  2. 服薬後、朝食まで30分間、水以外飲まず横にならない
    薬を服用してから30分以内に飲食すると、薬の吸収率が大きく低下して、治療効果に影響を与える。
    服用後すぐに横になると、薬の成分が逆流して食道で炎症や潰瘍を起こす恐れがある。

顎骨壊死と非定型大腿骨骨折のリスク

近年、ビスホスホネート製剤(BP)投与患者において、歯科治療(抜歯などの観血処置)を契機とした顎骨壊死の発症が大きな問題となっている。(BP系薬剤関連顎骨壊死:Bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaws : BRONJ)

侵襲的な歯科治療は、BP製剤(骨吸収抑制剤)投与前に、全て終わらせておくことが大切である。
また、BP製剤投与中に歯科治療の必要性が生じたならば、その都度BP製剤を中止しなければならないかもしれない。

BRONJの発生頻度は極めて低いとは言うものの、予防のためには、BP製剤投与前、投与中及び投与後の医家歯科の緊密な連携が求められる。
そして、それらいずれの時期においても、適切な口腔ケアが欠かせない。

ビスホスホネート製剤を長期使用すると、非定型大腿骨骨折のリスクが高まる。
BP製剤を3~5年使用した時点で、薬を続けるか変更するかの検討が必要である。

医薬品各種(ビスホスホネート(BP)製剤)

フォサマックボナロン(一般名:アレンドロン酸)

ビスホスホネート(BP)製剤:
「骨吸収抑制作用で骨密度増加、骨折防止。骨量減少を抑制する投与量では骨石灰化は障害しない」。(今日の治療薬2020,p.483)

  • フォサマック錠(5mg、35mg)
  • ボナロン錠(5mg、35mg)
  • ボナロン経口ゼリー(35mg/2g/包)
  • ボナロン点滴静注バッグ(900μg/100mL)

椎骨(背骨)だけでなく大腿骨の骨折予防効果が証明されている。
内服で証明されているのは、アレンドロン酸とリセドロン酸のみである。

ボナロンにはゼリーと点滴製剤がある。
嚥下困難な高齢者などで、錠剤が喉に詰まって食道を荒らすのを防ぐことができる。

【効能・効果】(5mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはアレンドロン酸として5mgを1日1回、毎朝起床時に水約180mLとともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

【効能・効果】(35mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはアレンドロン酸として35mgを1週間に1回、朝起床時に水約180mLとともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

(フォサマック錠・各添付文書)

相互作用:
併用注意(併用に注意すること)

  • 「薬剤名等」カルシウム、マグネシウム等の金属を含有する経口剤:
    カルシウム補給剤、制酸剤、マグネシウム製剤等
  • 「臨床症状・措置方法」本剤の服用後少なくとも30分経ってから服用すること。
  • 「機序・危険因子」本剤は多価の陽イオン(Ca、Mg等)とキレートを形成することがあるので、併用すると本剤の吸収を低下させる。

そのほか、テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤もキレートを形成しやすい薬物である。

ベネットアクトネル(一般名:リセドロン酸)

ビスホスホネート(BP)製剤:(今日の治療薬2020,p.483)

  • ベネット錠(2.5mg、17.5mg、75mg)
  • アクトネル錠(2.5mg、17.5mg、75mg)

椎骨(背骨)だけでなく大腿骨の骨折予防効果が証明されている。
内服で証明されているのは、アレンドロン酸とリセドロン酸のみである。

リセドロン酸には、1日1回、週1回、そして月1回の製剤がある。
なお、骨ページェット病(17.5mg錠のみ)の適応がある。

【効能・効果】(2.5mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして2.5mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

【効能・効果】(17.5mg錠)
〇骨粗鬆症
〇骨ページェット病

【用法・用量】
〈骨粗鬆症〉
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして17.5mgを1週間に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。
骨ページェット病
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして17.5mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに8週間連続経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

【効能・効果】(75mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはリセドロン酸ナトリウムとして75mgを月1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、水以外の飲食並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

(ベネット錠・各添付文書)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    骨粗鬆症:[2.5mg]1日1回2.5mg。[17.5mg]1週間に1回17.5mg。[75mg]1ヵ月に1回75mg
    骨ページェット病:[17.5mg]1日1回17.5mgを8週間連日
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    慎重投与(排泄が遅延するおそれがある)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(CCr30mL/min未満では排泄が遅延するおそれがある)

リカルボンボノテオ(一般名:ミノドロン酸)

ビスホスホネート(BP)製剤:
「日本で創薬された製剤。日本人での骨折予防効果が立証」。(今日の治療薬2020,p.483)

  • リカルボン錠(1mg、50mg)
  • ボノテオ錠(1mg、50mg)

日本人の椎骨(背骨)の骨折予防効果が実証されている。
なお、大腿骨への効果は臨床試験中である。

【効能・効果】(1mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはミノドロン酸水和物として1mgを1日1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又は
ぬるま湯)とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

【効能・効果】(50mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはミノドロン酸水和物として50mgを4週に1回、起床時に十分量(約180mL)の水(又はぬるま湯)とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。

(リカルボン錠・各添付文書)

ボンビバ(一般名:イバンドロン酸)

ビスホスホネート(BP)製剤:
「月1回のワンショット静注(又は経口)で骨粗鬆症治療が可能」。(今日の治療薬2020,p.484)

  • ボンビバ錠(100mg)
  • ボンビバ静注シリンジ(1mg/1mL)

月1回製剤(錠、静注シリンジ)である。

【効能・効果】(100mg錠)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはイバンドロン酸として100mgを1カ月に1回、起床時に十分量(約180mL)の水とともに経口投与する。
なお、服用後少なくとも60分は横にならず、飲食(水を除く)及び他の薬剤の経口摂取を避けること。

【効能・効果】(1mgシリンジ)
骨粗鬆症

【用法・用量】
通常、成人にはイバンドロン酸として1mgを1カ月に1回、静脈内投与する。

(ボンビバ・各添付文書)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1カ月に1回100mg、起床時
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    減量の必要なし(Up to Date)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    投与を推奨しない (Up to Date)

排尿障害治療薬(ハルナールなど)

医薬品各種(排尿障害治療薬)

前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療薬(α1遮断薬)

ハルナール(一般名:タムスロシン)

排尿障害治療薬(α1遮断薬):
「α1受容体遮断薬。作用時間長い」。(今日の治療薬2021,p.1049)

ユリーフ(一般名:シロドシン)

排尿障害治療薬(α1遮断薬):
「選択的α1a受容体遮断薬。前立腺の緊張を除き尿道抵抗を改善」。(今日の治療薬2021,p.1049)

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    CR(CYP3A4)0.68M、(PISCS2021,p.46)

フリバス(一般名:ナフトピジル)

排尿障害治療薬(α1遮断薬):
「α1d/1a受容体遮断薬。作用時間が長い」。(今日の治療薬2021,p.1049)

アボルブ(一般名:デュタステリド)

排尿障害治療薬(ホルモン):
「5α-還元酵素阻害薬。前立腺容積を縮小」。(今日の治療薬2021,p.1050)

  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

ザルティア(一般名:タダラフィル)

排尿障害治療薬(そのほか):
「低用量PDE5阻害薬。NO/cGMPを増加し、膀胱を弛緩。頻尿に効果」。(今日の治療薬2021,p.1050)

アドシルカ錠(一般名:タダラフィル)肺高血圧治療薬

腎機能低下時の用法・用量(タダラフィル)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回40mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回20mg
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(血中濃度が上昇すること、使用経験が限られていること及び透析によるCLの促進は期待されない)

タダラフィルは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.46)

セルニルトン(一般名:セルニチンポーレン)

排尿障害治療薬(そのほか):
「抗炎症・排尿促進作用」。(今日の治療薬2021,p.1051)

エブランチル(一般名:ウラピジル)

α遮断薬:
「α1選択性」。(今日の治療薬2021,p.630)

神経難病治療薬など

医薬品各種(神経難病治療薬など)

ウブレチド(一般名:ジスチグミン)

腎機能低下時の用法・用量(ジスチグミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難:1日5mg
    2)重症筋無力症:1日5~20mgを分1~4
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1)1日2.5~5mgを分1
    2)1日2.5~10mgを分1
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日2.5~5mgを分1

グランダキシン(一般名:トフィソパム)

トフィソパムは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ミオカーム(一般名:ピラセタム)

腎機能低下時の用法・用量(ピラセタム)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

痛風・高尿酸血症治療薬

痛風・高尿酸血症治療薬(概要)

尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬がある

尿酸生成抑制薬(アロプリノールなど)と尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロンなど)に分かれる。

尿酸排泄促進薬は、腎障害がある場合、腎臓(糸球体)の濾過機能が低下しているので使いにくい。
その場合には、尿酸生成抑制薬による治療が中心となる。
また、ベンズブロマロンでは、投与開始後少なくとも6か月間、定期的な肝機能検査が義務付けられている。

尿酸生成抑制薬(キサンチンオキシダーゼ阻害剤)のうち、ザイロリック(1日3回投与)はプリン骨格を有する腎排泄型薬物であり、腎機能低下時は減量が必要である。
プリン骨格を有しない肝消失型のフェブキソスタット(1日1回投与)、あるいはトピロキソスタット(1日2回投与)は、腎機能が多少低下していても用量調節の必要が無い。

フェブキソスタット、トピロキソスタットでは漸増法がとられる。
血中尿酸値の急激な低下により痛風関節炎(痛風発作)が誘発されることがあるためである。

フェブキソスタット:心血管疾患を有する痛風患者を対象とした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の発現割合が高かったとの報告がある。

高尿酸血症治療と残余リスク

高尿酸血症治療について、益崎裕章・琉球大学医学部第二内科教授は、残余リスクという考え方を示している。

「ACE阻害薬やARB、スタチンなどの優れた薬剤は、心血管イベントの発症抑制に大きく貢献していますが、それらの薬剤を用いても依然として心血管イベントを発症する例が少なくないのも事実です。
すなわち、それらの薬剤を用いても何らかのリスクは残っており、これを「残余リスク」と呼んでいます。
残余リスクの候補は種々ありますが、私たちは、高尿酸血症、とくに尿酸産生酵素XO(キサンチンオキシダーゼ)の活性に伴う過剰な酸化ストレスを提唱しています」。
(XOチャンネル|エキスパートに聞く! XOの最前線 第2回 「心血管イベント残余リスクとしてのXO」)

尿酸生成抑制薬3剤における結合様式の違い

  • アロプリノール(1969年発売)
    プリン骨格を持ち、XORの活性中心であるモリブデン(IV価)と共有結合して阻害作用を示す。
  • フェブキソスタット(2011年発売)
    非プリン骨格で、XORの基質結合ポケット内に入り込み、複数のアミノ酸残基との相互作用により結合し、XORを阻害する。
  • トピロキソスタット2013年発売
    ハイブリッド結合。
    非プリン骨格を持つトピロキソスタットは、XOR のポケット内に入り込み、モリブデンに共有結合するとともに、複数のアミノ酸残基との相互作用により、XORを選択的に阻害し、尿酸産生を抑制する。
    (参考:「尿酸生成抑制薬3剤における3つの違い」株式会社三和化学研究所より)

ところで、高血圧治療薬(ARB)のロサルタンは、尿酸排泄促進作用(URAT1阻害作用)を有している。
尿酸を平均0.7mg/dL低下させる能力があり、プロベネシッドには引けを取らない。

尿酸産生・排泄の仕組み

(実践薬学2017,pp.307-308)

尿酸はプリン体から作られる

尿酸は、体内でプリン体などから作られる。
(プリン体→ヒポキサンチン→キサンチン→尿酸)
その反応過程には、キサンチンオキシダーゼ(XO:酸化酵素)が深く関わっている。

尿酸生成抑制薬(アロプリノールなど)は、このXOを阻害することによって、尿酸の生成を抑制する。

なお、キサンチンオキシダーゼ(XO)は、キサンチン酸化還元酵素(XOR:キサンチンオキシドレダクターゼ)のアイソフォームの一つである。

尿酸は腎臓(糸球体)から排泄される

最終産物である尿酸の排出経路は、腸管(1/3)と腎臓(2/3)である。

この尿酸の排泄にはトランスポーターの働きが必要である。
なぜならば、尿酸は親水性で、脂質でできた細胞膜を通過することができないからである。

「腎臓に運ばれた尿酸は糸球体濾過を受けた後、近位尿細管にて尿酸トランスポーターURAT1を介して管腔側から再吸収される。また同時に、尿酸トランスポーターURATv1を介して血管側へ分泌もされる。その結果、糸球体濾過量の約1割が尿中に排泄される」。

ベンズブロマロン(ユリノーム)は、近位尿細管における尿酸トランスポーターURAT1を阻害することによって、尿酸の再吸収を抑え、尿酸の排泄を促進する。
なお、in vitroではURATv1阻害作用も確認されている。

医薬品各種(痛風・高尿酸血症治療薬)

コルヒチン(一般名:コルヒチン)

痛風発作寛解・予防薬:
「痛風発作の特効薬。尿酸排泄作用なし」。(今日の治療薬2021,p.431)

コルヒチン錠(0.5mg)

腎機能低下時の用法・用量(コルヒチン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)痛風発作の緩解及び予防:1日3~4mgを分6~8。痛風発作の緩解には1日1.8mgまで。発病予防には1日0.5~1mg。発作予感時には1回0.5mg
    2)家族性地中海熱:1日0.5mgを分1~2。1日最大投与量は1.5mg
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    連続投与は推奨できない。腎障害がありCYP3A4阻害薬(アタザナビル, クラリスロマイシン, インジナビル, イトラコナゾール, ネルフィナビル, リトナビル, サキナビル, ダルナビル, テラプレビル, コビシスタットなど)、P-gp阻害薬(シクロスポリン)併用患者は禁忌
    インジナビル販売中止(2017年7月)

コルヒチンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

ザイロリック(一般名:アロプリノール)

尿酸生成抑制薬:
「キサンチンオキシダーゼを阻害し、尿酸生成を抑制(主代謝物のオキシプリノールも同作用」。(今日の治療薬2021,p.432)

ザイロリック錠(50mg、100mg)

【効能又は効果】
下記の場合における高尿酸血症の是正
痛風、高尿酸血症を伴う高血圧症

プリン骨格を有する腎排泄型薬物であり、腎機能低下時は減量が必要である。
過量投与によって、核酸代謝(プリン骨格を有する)に関与した重篤な副作用の発現リスクがある。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)などの重篤な皮膚障害や肝障害、血小板減少症などである。
(1日2~3回投与)

腎機能低下時の用法・用量(アロプリノール)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(活性代謝物70%)、減量法の記載無し。
    下記のとおり、減量の基準はあるものの、それらの用量では「適正な尿酸値にコントロールできない場合が多い」⇒ 元の用量まで増量となるケースが多い。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日200~300mgを分2~3、食後
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1日100mgを分1
    ただし、この用量では適正な尿酸値にコントロールできない場合が多い
  • CCr(30mg/dL未満)
    1日50mgを分1
    ただし、この用量では適正な尿酸値にコントロールできない場合が多い
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    HD患者では1回100mgを週3回、毎HD後。
    CAPD患者では1日50mgを分1
    ただし、この用量では適正な尿酸値にコントロールできない場合が多い

アロプリノールは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

フェブリク(一般名:フェブキソスタット)

尿酸生成抑制薬:(今日の治療薬2020,p.424)

フェブリク錠(10mg、20mg、40mg)

【効能・効果】
1.痛風、高尿酸血症
2.がん化学療法に伴う高尿酸血症

「通常、成人にはフェブキソスタットとして1日10mgより開始し、1日1回経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1日1回40mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回60mgとする」。(フェブリク錠添付文書)

非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤(1日1回投与)である。
非プリン骨格を有する肝消失型薬物であり、腎機能に応じた用量調節の必要が無い。
アロプリノールの欠点を改良している。

【重要な基本的注意】
「心血管疾患を有する痛風患者を対象とした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の発現割合が高かったとの報告がある。本剤を投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意すること」。(フェブリク錠添付文書)

トピロリック、ウリアデック(一般名:トピロキソスタット)

尿酸生成抑制薬:(今日の治療薬2020,p.425)

トピロリック錠(20mg、40mg、60mg)

【効能又は効果】
痛風、高尿酸血症

【用法・用量】
「通常、成人にはトピロキソスタットとして1回20mgより開始し、1日2回朝夕に経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1回60mgを1日2回とし、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1回80mgを1日2回とする」。(トピロリック錠添付文書)

非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤(1日2回投与)である。
投与回数が1回より2回の方が尿酸濃度の低下が大きく、かつ日内変動が少ない。
つまり、痛風関節炎を起こす可能性がより低い。
非プリン骨格を有する肝消失型薬物であり、腎機能に応じた用量調節の必要が無い。
アロプリノールの欠点を改良している。

ユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)

尿酸排泄促進薬:
「尿細管での尿酸の再吸収を特異的に抑制」。(今日の治療薬2021,p.432)

ユリノーム錠(25mg、50mg)

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    ベンズブロマロン:CR(CYP2C9)0.76、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
    ベンズブロマロン:IR(CYP2C9)0.55、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

併用注意(併用に注意すること)
ワルファリン(クマリン系抗凝血薬)
クマリン系抗凝血薬の作用を増強することがあるので、プロトロンビン時間を測定するなど観察を十分に行い、注意すること。

高尿酸血症治療薬であるブコロームおよびベンズブロマロンはCYP2C9阻害作用を有し、ワルファリンの抗凝固作用を増強する。
また、蛋白結合置換によるワルファリンの遊離型濃度増加による作用増強も寄与している可能性がある。
(従来はこちらが強調されていた)

ブコローム:S-ワルファリンのクリアランスを約1/3に低下させる。(中程度の作用)
ベンズブロマロン:S-ワルファリンのクリアランスを約1/2に低下させる。(軽度の作用)

(PISCS2021,p.153)

【警告】
「劇症肝炎等の重篤な肝障害が主に投与開始6ヶ月以内に発現し、死亡等の重篤な転帰に至る例も報告されているので、投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず、定期的に肝機能検査を行うこと。また、患者の状態を十分観察し、肝機能検査値の異常、黄疸が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」。(ユリノーム錠添付文書)

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
「腎結石を伴う患者、高度の腎機能障害のある患者
[尿中尿酸排泄量の増大により、これらの症状を悪化させるおそれがある。また、効果が期待できないことがある。]」。(ユリノーム錠添付文書)

ベネシッド(一般名:プロベネシド)

尿酸排泄促進薬:
「尿細管における尿酸の再吸収を抑制して尿中排泄を促進」。(今日の治療薬2021,p.431)

ベネシッド錠(250mg)

パラミヂン(一般名:ブコローム)

尿酸排泄促進薬:
「尿酸排泄促進作用をもつNSAIDs」。(今日の治療薬2021,p.431)

パラミヂン・カプセル(250mg)

ブコロームは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • ブコローム:IR(CYP2C9)0.84、(PISCS2021,p.53)

併用注意(併用に注意すること)
ワルファリン(クマリン系抗凝血薬)
併用が必要な場合、本剤の投与量を減らすこと。

高尿酸血症治療薬であるブコロームおよびベンズブロマロンはCYP2C9阻害作用を有し、ワルファリンの抗凝固作用を増強する。
また、蛋白結合置換によるワルファリンの遊離型濃度増加による作用増強も寄与している可能性がある。
(従来はこちらが強調されていた)

ブコローム:S-ワルファリンのクリアランスを約1/3に低下させる。(中程度の作用)
ベンズブロマロン:S-ワルファリンのクリアランスを約1/2に低下させる。(軽度の作用)

(PISCS2021,p.153)

ユリス(一般名:ドチヌラド)

尿酸排泄促進薬:
近位尿細管細胞管腔側で尿酸を再吸収するトランスポーターURAT1を選択的に阻害、排泄を促進。(今日の治療薬2021,p.432)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表3.代表的腎排泄型薬剤(高尿酸血症治療薬

  • アロプリノール

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

片頭痛、慢性頭痛治療薬(概要)

  • 「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」(日本頭痛学会)
    https://www.jhsnet.net/guideline_GL2013.html
  • 「慢性疼痛治療ガイドライン」(同ガイドライン作成ワーキンググループ)2018年
    https://www.mhlw.go.jp/content/000350363.pdf

慢性頭痛には、主に片頭痛と緊張型頭痛がある。

片頭痛の特徴

  • 片頭痛は、頭痛発作を繰り返す疾患である(中等度~重度)。
  • 1回の発作ごとに、片側性で拍動性の痛みが4~72時間持続する。
  • こめかみを中心に、心臓の拍動に合わせて痛みが強くなる。
  • 20~40歳の女性に多い。
  • 悪心、嘔吐、光過敏、音過敏を伴う。
    光をまぶしく、音をうるさく、においを不快に感じる。
  • 脳の血管が異常に拡張しているため、温めたりマッサージしたりすると悪化する。
    発作が起きたならば、暗く静かな場所で、痛む個所を冷やしながら休むとよい。
    また、入浴は控える。

片頭痛急性期の治療は、薬物療法が中心である。

治療薬として
1)アセトアミノフェン
2)非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
3)エルゴタミン
4)トリプタン
5)制吐薬があり
片頭痛の重症度に応じた層別治療が推奨される。

軽度~中等度の頭痛には、NSAIDs(アスピリン、ナプロキセンなど)を使用する。
中等度~重度の頭痛には、トリプタンが推奨される。
過去にNSAIDsの効果がなかった場合、軽度~中等度の頭痛であっても、トリプタンが適応となる。

緊張型頭痛の特徴

  • 緊張型頭痛は、頭の周りや首の後ろから肩、背中にかけての筋肉が緊張するために起こる。
  • 痛みは、後頭部を中心に頭の両側や首筋にかけて起こる。
    「頭をバンドで締め付けられているよう」とか、「頭に大きな荷重がかかっているような感じ」などと表現される。
  • 痛み以外にも、体がフワフワするようなめまい感を伴うこともある。
  • 日本人の頭痛の中で最も多い(15歳以上の日本人の、およそ5人に1人が罹患)。
  • NSAIDsが使われることが多い。

(緊張型頭痛(タイプ別の頭痛)、第一三共ヘルスケアなどより)

医薬品各種(片頭痛、慢性頭痛治療薬)

片頭痛治療薬(頓用)

片頭痛発作(軽度~中等度)の第1選択は、アセトアミノフェン単剤投与およびNSAIDs単剤投与になる。
これらの薬剤は、安全性が高く安価であることから推奨される。
しかし、トリプタンに比べて効果は限定的で、アセトアミノフェンやNSAIDsで効果のない片頭痛患者には、トリプタンの早期投与を検討する。(推奨グレードA,ガイドライン2013,p.128)

トリプタン服用のタイミングは、頭痛が軽度か、もしくは頭痛発作早期(発症より1時間ぐらいまで)が効果的である。
片頭痛前兆期、予兆期にトリプタンを使用しても支障はないが、無効である可能性がある。(推奨グレードA,ガイドライン2013,p.118)

トリプタン系薬は、「選択的セロトニン作動性薬剤。5-HT1A/1B受容体に結合し、血管を収縮させるとともに神経原性炎症を抑制する」。

マクサルト:立ち上がりが速く(Tmax:1.0±0.6時間)、2時間後の頭痛改善率が高い。
アマージ:半減期が長く(T1/2:5.05±1.71時間)、頭痛再発率が低い。
イミグラン:両者の中間型、剤形が多い。

トリプタン系薬を継続して服用することは、薬物乱用頭痛のリスクとなる。
したがって、トリプタン系薬の服用は、ひと月で10日までに抑えること。
なお、この場合、1日2回服用したとしても1日としてカウントする。

片頭痛予防薬(長期服用)

「慢性疼痛の診療ガイドライン2018」によれば、片頭痛予防薬としては、抗てんかん薬(バルプロ酸トピラマート)、アセトアミノフェン、抗うつ薬(アミトリプチリン)に続いてNSAIDsが挙げられている。
そのほかでは、デュロキセチン、プレガバリン、ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液や抗認知症薬(メマンチン)の名前があるものの、積極的な適応とはなっていない。

『実践薬学』(2017,p.316)には、「片頭痛の予防薬(グループ別)」として、上記以外にも各種薬物が挙げられている。
ただし、その一覧表は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」(日本頭痛学会)からの引用である。
新しいガイドライン「慢性疼痛診療ガイドライン2018」では、それらの薬物の多くがリストから外されている。

なお、片頭痛の保険適応があるのは、バルプロ酸、プロプラノロール、ミグシスである。

マクサルト(一般名:リザトリプタン)

トリプタン系薬(5-HT1B/1D作動薬):
「脂溶性で中枢移行良好。効果は優れているが全身倦怠感は出やすい」。(今日の治療薬2020,p.933)

マクサルト錠(10mg)
マクサルトRPD錠(10mg、口腔内崩壊錠)

「片頭痛では、頭痛と合わせて吐き気・嘔吐を催し、水も飲めない状態となることが少なくありません」。
PRD(Rapid Dissolution)錠は、「唾液でさっと溶ける錠剤で、水なしでも飲めます」。
(児島2017,p.294)

効能・効果及び用法・用量(マクサルト)

【効能・効果】
片頭痛

【用法・用量】
通常、成人にはリザトリプタンとして1回10mgを片頭痛の頭痛発現時に経口投与する。
なお、効果が不十分な場合には、追加投与することができるが、前回の投与から2時間以上あけること。
ただし、1日の総投与量を20mg以内とする。

(マクサルト添付文書)

腎機能低下時の用法・用量(リザトリプタン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回10mg、前回投与から2時間以上あけること、最大1日20mg。
  • CCr(60mg/dL未満)
    腎機能正常者と同じ
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌(AUCが上昇する)

アマージ(一般名:ナラトリプタン)

トリプタン系薬(5-HT1B/1D作動薬):
「効果はそれほど強くないが半減期が長く、持続時間の長い片頭痛に適する」。(今日の治療薬2020,p.934)

アマージ錠(2.5mg)

効能・効果及び用法・用量(アマージ)

【効能・効果】
片頭痛

【用法・用量】
通常、成人にはナラトリプタンとして1回2.5mgを片頭痛の頭痛発現時に経口投与する。
なお、効果が不十分な場合には、追加投与することができるが、前回の投与から4時間以上あけること。
ただし、 1日の総投与量を5mg以内とする。

(アマージ添付文書)

イミグラン(一般名:スマトリプタン)

トリプタン系薬(5-HT1B/1D作動薬):
「錠剤の他、注射薬、皮下注キット、点鼻薬が使用可能」。(今日の治療薬2020,p.932)

イミグラン錠(50mg)
イミグラン注(3mg/mL)
イミグラン・キット皮下注(3mg)
イミグラン点鼻液(20mg/0.1mL)

効能・効果及び用法・用量(イミグラン)

【効能・効果】
片頭痛

【用法・用量】
通常、成人にはスマトリプタンとして1回50mgを片頭痛の頭痛発現時に経口投与する。
なお、効果が不十分な場合には、追加投与をすることができるが、前回の投与から2時間以上あけること。
また、50mgの投与で効果が不十分であった場合には、次回片頭痛発現時から100mgを経口投与することができる。
ただし、1日の総投与量を200mg以内とする。

(イミグラン添付文書)

レルパックス(一般名:エレトリプタン)

トリプタン系薬(5-HT1B/1D作動薬):
「効果はそれほど強くないが即効性。中枢副作用は少ない」。(今日の治療薬2020,p.933)

エレトリプタンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ゾーミック(一般名:ゾルミトリプタン)

トリプタン系薬(5-HT1B/1D作動薬):
「脂溶性で中枢移行良好。効果は優れているがアロディニアや全身倦怠感は出やすい。RM錠は柑橘系で飲みやすい」。(今日の治療薬2020,p.933)

アロディニア(allodynia,異痛症)とは、通常では痛みとして認識しない程度の接触や軽微な圧迫、寒冷などの非侵害性刺激が、痛みとして認識されてしまう感覚異常のことである。
(牧野 利明, アロディニア, ファルマシア, 2021, 57 巻, 2 号, p. 134_2 )

クリアミン(一般名:エルゴタミン配合)

エルゴタミン製剤:
「ピリン系解熱鎮痛薬・カフェインとの合剤」。(今日の治療薬2020,p.934)

クリアミン配合錠A1.0
(エルゴタミン酒石酸塩1.0mg、無水カフェイン50mg、イソプロピルアンチピリン300mg)
クリアミン配合錠S0.5(上記の半量含有)

「エルゴタミン製剤:麦角アルカロイド。セロトニン受容体に結合することで強い血管収縮作用を表す。悪心・嘔吐などの副作用が強い」。(同上,p.932)
「トリプタン系薬の出現によって使用は減っている」。(同上,p.929)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

併用禁忌:フルコナゾール(ジフルカン)・CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

デパケン(一般名:バルプロ酸)

⇒「抗てんかん薬(デパケン、テグレトールなど)

バルプロ酸は、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

「抗てんかん薬:バルプロ酸は予防薬として国際的にも広く使われている。てんかんよりも少量で有効」。(今日の治療薬2020,p.932)

【適応症の一つ】片頭痛発作の発症抑制
「本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること」。(デパケン添付文書)

インデラル(一般名:プロプラノロール)

⇒「β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など

プロプラノロールは、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

【適応症の一つ】片頭痛発作の発症抑制
ただし、ガイドライン2018ではリストアップされていない。

ミグシス(一般名:ロメリジン)

Ca拮抗薬:
「脳血管に選択的拡張作用がある。効果発現に1カ月以上を要する」。(今日の治療薬2020,p.935)

ミグシス錠(5mg)

「注:頭痛発作の完解薬ではない。漫然とした長期使用を避ける。授乳を避ける」。(同上)
「Ca拮抗薬:ピペラジン誘導体のCa拮抗薬。脳血管を選択性に拡張させ、片頭痛のきっかけとなる脳血管収縮を予防する」。(同上,p.932)

ロメリジンは、片頭痛が適応となっている

【効能・効果】
片頭痛

【用法・用量】
通常、成人にはロメリジン塩酸塩として1回5mgを1日2回、朝食後及び夕食後あるいは就寝前に経口投与する。
なお、症状に応じて適宜増減するが、 1日投与量として20mgを超えないこと。

(ミグシス添付文書)

禁忌(次の患者には投与しないこと)
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
[動物実験(ラット)で催奇形作用(骨格・外形異常)が報告されている]

ロメリジンは、ガイドライン2018ではリストアップされていない。

カフェイン(一般名:カフェイン)

キサンチン製剤:(今日の治療薬2020,p.935)
「眠気、倦怠感などの片頭痛治療薬の副作用緩和」。(同上,p.932)

カフェインは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ミグリステン(一般名:ジメトチアニン)

抗セロトニン薬:(今日の治療薬2020,p.935)

麻薬および類似薬(モルヒネなど)

医薬品各種(麻薬および類似薬)

モルヒネ、アンペック(一般名:モルヒネ)

モルフィナン系オピオイド(モルヒネ)(麻薬):
「【内服・注射】速放性でレスキューとして使用可。【坐剤】投与後8時間まで安定した有効血中濃度」。(今日の治療薬2021,p.1003)

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(2~6%)、ESKDでのクリアランス(-40%)、ESKDの用量(1/2に減量)
参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

MSコンチン(一般名:モルヒネ徐放)

モルフィナン系オピオイド(モルヒネ)(麻薬):
「(MSコンチン)フィルムコーティングしたマトリックス型の徐放剤。(MSツワイスロン)徐放性顆粒を充填した硬カプセル剤、(モルペス)徐放性細粒」。(今日の治療薬2021,p.1004)

オキシコンチン(一般名:オキシコドン徐放)

モルフィナン系オピオイド(モルヒネ以外)(麻薬):
「【TR錠】乱用防止特性(容易に砕けない硬さ・水を含むとゲル化)を有する徐放性製剤」。(今日の治療薬2021,p.1005)

オキノーム(一般名:オキシコドン)

モルフィナン系オピオイド(モルヒネ以外)(麻薬):
「オキシコドンの速放性製剤。レスキューとして使用可」。(今日の治療薬2021,p.1005)

フェンタニル(一般名:フェンタニル)

フェニルピペリジン系オピオイド(麻薬):
「レスキューとして使用可」。(今日の治療薬2021,p.1006)

デュロテップ(一般名:フェンタニル)

フェニルピペリジン系オピオイド(麻薬):
「(デュロテップ)麻薬として初の貼付剤。1回の貼付で約72時間鎮痛効果持続。(ワンデュロ)持続24時間。(ラフェンタ)持続72時間」。(今日の治療薬2021,p.1008)

ノルスパン(一般名:ブプレノルフィン)

モルフィナン系オピオイド(非麻薬):(今日の治療薬2021,p.1011)

トラマール、ワントラム(一般名:トラマドール)

そのほかのオピオイド(非麻薬):
「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有し、代謝産物がμオピオイド受容体に作用。依存性・精神作用が弱い」。(今日の治療薬2021,p.1012)

トラマドールは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R,R-トラマドール:CR(CYP2D6)0.33、(PISCS2021,p.50)
    S,S-トラマドール:CR(CYP2D6)0.29、(PISCS2021,p.50)

トラムセット(一般名:トラマドール/アセトアミノフェン)

そのほかのオピオイド(非麻薬):(今日の治療薬2021,p.1013)

トラマドールは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R,R-トラマドール:CR(CYP2D6)0.33、(PISCS2021,p.50)
    S,S-トラマドール:CR(CYP2D6)0.29、(PISCS2021,p.50)

抗悪性腫瘍薬

医薬品各種(抗悪性腫瘍薬)

フルオロウラシル系抗がん薬(代謝拮抗薬:ピリミジン代謝拮抗薬)は、ワルファリンの作用を増強させる。(明確な作用機序は不明、PISCS,p.148)

併用注意(併用に注意すること)
ワルファリンカリウム
ワルファリンカリウムの作用を増強することがあるので、凝固能の変動に注意すること。
(ティーエスワン配合添付文書)

ティーエスワンなどとの併用により、出血症状を呈した症例や顕著にINRが上昇した症例が多数報告されている。
活性代謝産物である5-フルオロウラシルがCYP2C9の発現量を低下させることにより、ワルファリンの代謝が抑制され血中濃度が上昇するためと考えられている。(PISCS2021,p.148)

製品としては、5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグであるフルツロン(ドキシフルリジン)やフトラフール(テガフール)、そしてゼローダ(カペシタビン)、さらにはそれらの配合剤(ユーエフティやティーエスワン)がある。

エンドキサン(一般名:シクロホスファミド)

腎機能低下時の用法・用量(シクロホスファミド)

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(8~25%)、ESKDでのクリアランス(-30%)、ESKDの用量(1/2~3/4に減量)⇒参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ゼローダ(一般名:カペシタビン)

代謝拮抗薬(ピリミジン代謝拮抗薬)、フルオウラシル系抗がん剤:
「5′-DFURのプロドラッグ。消化器癌・乳癌に有効」。(今日の治療薬2020,p.196)

5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグが、5′-DFUR(ドキシフルリジン)である。そのさらにプロドラッグが、ゼローダ(一般名:カペシタビン)ということになる。

フルオウラシル系抗がん剤は、CYP2C9阻害薬である(強い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ユーエフティ(一般名:テガフール/ウラシル配合)

代謝拮抗薬(ピリミジン代謝拮抗薬)、フルオウラシル系抗がん剤:
「テガフールと5-FU分解阻害薬のウラシルを配合」。(今日の治療薬2020,p.197)

TGF(テガフール)は、5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグである。

フルオウラシル系抗がん剤は、CYP2C9阻害薬である(強い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ティーエスワン(一般名:テガフール/ギメラシル/オテラシル配合)

代謝拮抗薬(ピリミジン代謝拮抗薬)、フルオウラシル系抗がん剤:
「テガフールと5-FU分解阻害薬のギメラシルと消化器毒性を軽減するオテラシル配合」。(今日の治療薬2020,p.198)

TGF(テガフール)は、5-FU(フルオロウラシル)のプロドラッグである。

フルオウラシル系抗がん剤は、CYP2C9阻害薬である(強い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

フルダラ(一般名:フルダラビン)

代謝拮抗薬(プリン代謝拮抗薬):
「細胞性免疫低下が強い」。(今日の治療薬2020,p.201)

腎機能低下時の用法・用量(フルダラビン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ロンサーフ(一般名:トリフルリジン/チピラリシル配合)

代謝拮抗薬(その他):
「経口ヌクレオシド系薬」。(今日の治療薬2020,p.206)

腎機能低下時の用法・用量(トリフルリジン/チピラリシル配合)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ノルバデックス(一般名:タモキシフェン)

ホルモン療法薬(抗エストロゲン薬):
「乳腺では増殖抑制、子宮内膜や骨では増殖促進に働く選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)」。(今日の治療薬2020,p.213)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

タモキシフェンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

タモキシフェンは、プロドラッグである。主にCYP2D6(及びCYP3A4)によって代謝され、活性代謝物となり薬効を発揮する。(実践薬学,pp.139-142)

タモキシフェンとパロキセチン(強力なCYP2D6阻害薬)との併用によって、活性代謝物の産生が阻害され、薬効が減弱する。

併用注意(併用に注意すること)、ノルバデックス添付文書より

  • 薬剤名等:
    選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)パロキセチン等
  • 臨床症状・措置方法:
    本剤の作用が減弱するおそれがある。併用により乳癌による死亡リスクが増加したとの報告がある。
  • 機序・危険因子:
    CYP2D6阻害作用により本剤の活性代謝物の血漿中濃度が低下したとの報告がある。

イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)

ホルモン療法薬(抗アンドロゲン薬):
「アンドロゲン受容体との結合などでシグナル伝達を強力に阻害」。(今日の治療薬2021,p.215)

CYP2C9誘導作用(弱い)があり、ワルファリンの抗凝固作用を減弱する作用を有する。(PISCS2021,p.155)

イレッサ(一般名:ゲフィチニブ)

分子標的治療薬(小分子:EGFR阻害薬):
「第一世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬」。(今日の治療薬2021,p.241)

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    CR(CYP3A4)0.39W、(PISCS2021,p.46)

スプリセル(一般名:ダサチニブ)

分子標的治療薬(小分子:BCR/ABL阻害薬):
「BCR/ABL、PDGFR、SRC等を抑制するマルチキナーゼ阻害薬」。(今日の治療薬2020,p.243)

ダサチニブは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

タイケルブ(一般名:ラパチニブ)

分子標的治療薬(小分子:HER2阻害薬):
「EGFRとHER2を抑制するチロシンキナーゼ阻害薬。トラスツズマブ既治療のHER2陽性乳癌に有効」。(今日の治療薬2020,p.242)

腎機能低下時の用法・用量(ラパチニブ)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

グリベック(一般名:イマチニブ)

分子標的治療薬(小分子:BCR/ABL阻害薬):
「BCR/ABL、PDGFR、c-kitなどのチロシンキナーゼ阻害作用を有するシグナル伝達阻害薬」。(今日の治療薬2020,p.242)

イマチニブは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて軽度である。
    CR(CYP3A4)0.28VW、(PISCS2021,p.46)

ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)

分子標的治療薬(小分子:ALK阻害薬):
「最初に承認されたALK阻害薬」。(今日の治療薬2020,p.250)

クリゾチニブは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

イムブルビカ(一般名:イブルチニブ)

分子標的治療薬(小分子:BTK阻害薬):
「ブルトン型チロキシンキナーゼ(BTK)阻害薬」。(今日の治療薬2020,p.251)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:CYP2C19、CYP3A阻害薬・ボリコナゾール(ブイフェンド)

アフィニトール(一般名:エベロリムス)

分子標的治療薬(小分子:mTOR阻害薬):
「経口mTOR阻害薬」。(今日の治療薬2020,p.254)

エベロリムスは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ラパリムス(一般名:シロリムス)

分子標的治療薬(小分子:mTOR阻害薬):

シロリムスは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

マクロライド系抗生物質(クラリスなど)

マクロライド系抗生物質(概要)

マクロライド系薬:
作用機序(タンパク合成阻害作用を有する)。
(アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系などが同様の作用を有する)

CYPの阻害作用(CYP3A)が強く、この経路で代謝されるほかの薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。(アゾール系抗真菌薬も同様である)

ワルファリンは、抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

医薬品各種(マクロライド系抗生物質)

マクロライド系:「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

クラリス、クラリシッド(一般名:クラリスロマイシン)

マクロライド系薬(14員環薬):
「抗菌力はEMとほぼ同等、酸に安定で血中濃度はEMに比べ高い。組織移行性も良好。肺炎球菌では耐性が進行」。(今日の治療薬,p.69)

錠:200mg、錠小児用:50mg
ドライシロップ(DS)小児用:10%(100mg/g)

抗菌スペクトル(一般感染症):
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、クラミジア属、マイコプラズマ属、(百日咳(菌)は適応ではない)
効果がない菌:大腸菌、サルモネラ菌、コレラ菌など。

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、クラリスロマイシンでは適応となっていない。
    エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

クラリスロマイシンは、CYP3A阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、高度である。
    クラリスロマイシン:IR(CYP3A4)0.88S、(PISCS2021,p.47)、CYP3A阻害薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    クラリスロマイシン:IR(CYP2C9)0.20、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害作用

クラリスロマイシンは、P-gp阻害薬である

  • 「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune

クラリスロマイシンは、P糖蛋白(P-gp:排出トランスポーター)阻害薬である。
相互作用を受ける薬物(P-gpの基質):ジゴキシン(併用によってジゴキシンの腎クリアランスが低下し、血清中濃度が2.5倍に上昇する)。(実践薬学,p.103,104(図4))

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

クラリスロマイシンは、OATP1B1阻害薬である

クラリスロマイシンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬である。
相互作用を受ける薬物(OATP1B1の基質):グリベンクラミド(「併用注意」添付文書では機序不明の記載有り)など。p.87

OATP1B1は肝臓の血管側膜に発現し、薬物の肝臓への取り込みを促進する。OATP1B1が阻害されると、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。

Giusti-Hayton法による薬物投与設計(クラリスロマイシン)

(どんぐり2019,p.128,253)

70歳女性、体重55kg、血清クレアチニン値1.3mg/dL
クラリスロマイシン錠200mgを処方したい。
投与量あるいは投与間隔を知りたい。

補正係数(G)=1-未変化体排泄率(fu)×(1-(対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr))

尿中未変化体排泄率(fu)=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ(BA))

クラリスロマイシン錠 250mg を経口投与した場合(2 回測定)と同量のクラリスロマイシンラクトビオン酸塩を静脈注射した場合の薬物速度論的パラメータを比較検討した.結果,未変化体のバイオアベイラビリティは 52.55%であった。
健康成人に 14C-クラリスロマイシン 250mg を単回経口投与し、放射能の排泄を測定したところ、投与後 5 日までに投与総放射能の37.9%が尿中,40.2%が糞中に排泄された。
(クラリシッド・インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率(fu)=250×0.379/250×0.5255
=0.7212

Cockcroft&gaultの式より、
CCr={(140-70)/(72×(1.3+0.2))}×55×0.85
=(70/108)×55×0.85
=30.30mL/min

補正係数(G)=1-0.7212×(1-30.3/100)
=0.4973 ⇒ 50%

クラリスロマイシンの用法・用量(通常感染症)
1回200mg、1日2回投与

結論1)腎機能低下者の投与量=常用量×補正係数(G)
=1回200mg×0.5 ⇒ 1回100mg(1日2回投与)

結論2)腎機能低下者の投与間隔=通常投与間隔/補正係数(G)
=12時間/0.5 ⇒ 1回200mg(1日1回投与)
ただし、PK/PD理論から考えて、クラリスロマイシンの投与間隔を延長する考え方は成り立つのか?

エリスロシン(一般名:エリスロマイシン)

マクロライド系薬(14員環薬):
「グラム陽性菌、マイコプラズマ、レジオネラなどに強い抗菌力。肺炎球菌では耐性化が進行」。(今日の治療薬2020,p.68)

腎機能低下時の用法・用量(エリスロマイシン)

  • 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
    尿中排泄率(12~15%)、ESKDでのクリアランス(-31%)、ESKDの用量(1/2~3/4に減量)
    参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

エリスロマイシンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、高度である。
    エリスロマイシン:IR(CYP3A4)0.82S、(PISCS2021,p.47)、CYP3A阻害薬

ジスロマック(一般名:アジスロマイシン)

マクロライド系薬(15員環薬):
「グラム陽性菌、クラミジア、マイコプラズマなどに強い抗菌力を有し、グラム陰性菌には既存マクロライド薬より強い抗菌力。肺炎球菌には耐性化が進行」。(今日の治療薬2020,p.71)

1日1回500mg、3日間。

「本剤500mg(力価)を1日1回3日間経口投与することにより、感受性菌に対して有効な組織内濃度が約7日間持続することが予測されている」。(ジスロマック添付文書)

  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    アジスロマイシン:IR(CYP3A4)0.11VW、(PISCS2021,p.47)、CYP3A阻害作用

症例)咽頭炎でアジスロマイシン錠を1回服用した翌日に蕁麻疹出現、他剤変更となる。

蕁麻疹は、アジスロマイシンによる過敏症と考えられる。
血中に薬物が残っている間は症状が出る可能性がある。
半減期62時間×5=310時間、つまり約13日間程度は注意が必要であろう。

「本剤は組織内半減期が長いことから、投与終了数日後においても副作用が発現する可能性があるので、観察を十分に行うなど注意すること」。(ジスロマック添付文書)

つまり、3日間飲み切った場合、約7日間有効と考えられる。
ところが、副作用は、その倍近くの2週間程度たっても出現する可能性がある。

ルリッド(一般名:ロキシスロマイシン)

マクロライド系薬(14員環薬):
「肺炎球菌では耐性化が進行」。(今日の治療薬,p.70)

腎機能低下時の用法・用量(ロキシスロマイシン)

  • 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
    尿中排泄率(7.5~10%)、ESKDでのクリアランス(-42%)、ESKDの用量(1/2に減量)
    参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ロキシスロマイシンは、CYP2C19阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    ロキシスロマイシン:IR(CYP3A4)0.35W、(PISCS2021,p.47)、CYP3A阻害薬

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(CYP3A)

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)

ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)概要

副作用(抗コリン作用、眠気)が少なく、治療の基本となる

第二世代の抗ヒスタミン薬では、副作用としての眠気や、抗コリン作用(口渇、便秘、尿閉や眼圧上昇など)による副反応は少なくなっている。
季節性のアレルギーやアトピー性皮膚炎のガイドラインでは、第一選択薬とされている。

第2世代抗ヒスタミン薬は、基本的な化学構造は第一世代と同じである。
例えば、セチリジン(第2世代)は、ヒドロキシジン(第1世代)とよく似た構造をしている。
セチリジンでは、カルボキシル基(-COOH)を導入することによって、血液脳関門(Blood-brain barrier:BBB)の通過性を低下させている。

カルボキシル基などの親水性官能基の導入によって、脂溶性が低下して中枢移行が悪くなる。
カルボキシル基が導入された第二世代抗ヒスタミン薬は、P-gp(p糖蛋白質)の基質となる。
そこで、脳内からくみ出されることによって、脳内移行性を弱めていると考えられる。

第2世代抗ヒスタミン薬では、ヒスタミン受容体に対する選択性が改善されている。
その結果、副反応が少なくなる。
また、血漿タンパク結合率は高くなっている。

脳内H1受容体占拠率

脳内H1受容体占拠率が20%以上になると、インペアードパフォーマンス(眠気を自覚しているかどうかにかかわらず、集中・判断力、作業効率が低下すること)が起こりやすくなる。(鎮静性薬物:20%以上、非鎮静性薬物:20%以下)

ケトチフェン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、d-クロルフェニラミンの脳内H1受容体占拠率は50%を超えており、投与に際して慎重さが求められる。(オキサトミド、販売中止)

参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)

眠気の強さ=効果の強さではない

抗ヒスタミン薬の効果を比較する場合、「効果の強さは眠気の強さに比例する」と勘違いされていることが多い。

抗ヒスタミン薬による眠気(鎮静作用)は、同薬物が血液脳関門(Blood-brain barrier:BBB)を通過して、脳内の神経細胞やグリア細胞に存在するH1受容体に結合することによって生ずる。

これに対して、アレルギー症状(くしゃみ、鼻水、かゆみ、腫れ)に関係するのは、末梢(気管支や腸管などの平滑筋、血管内皮細胞、あるいは副腎髄質細胞など)に分布しているH1受容体である。

つまり、抗ヒスタミン薬による眠気(中枢)と抗アレルギー反応(末梢)との間には、何の因果関係も無いことが分かる。

ヒスタミン受容体は,生体アミンの一種であるヒスタミンを受容する GPCR で,ヒトには機能の異なる4種類のヒスタミン受容体(H1R,H2R,H3R,H4R)が存在する.H1R は全身に分布し,主に花粉症などのアレルギー反応に関わっている.体内にアレルゲンが侵入すると肥満細胞からヒスタミンが放出される.そのヒスタミンが平滑筋や血管内皮細胞などに存在する H1R に結合すると H1R は活性化状態に平衡を偏らす.その結果,平滑筋収縮・血管拡張・血管透過性亢進などが引き起こされ,かゆみや鼻水などのアレルギー症状が発生する.一方,脳に発現しているH1R は,脳内で神経伝達物質として働いているヒスタミンを受容し,睡眠覚醒サイクルの制御や記憶に関与している.H1R のインバースアゴニストである抗ヒスタミン薬は,H1R を不活性化状態で安定化し,アレルギー症状を抑える.

島村達郎「ヒト由来ヒスタミン H1受容体の結晶構造の決定」生化学 第84巻 第9号,772-776,2012.

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お薬手帳の工夫:
熱性痙攣の既往がある患児のお薬手帳の表紙に「熱性痙攣の既往あり、抗ヒスタミン剤の投与に注意」等のシールを貼る。http://www.kmpa.or.jp/com/keiren-a-4.html

医薬品各種(ヒスタミンH1受容体拮抗薬、第二世代)

アレグラ(一般名:フェキソフェナジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「催眠作用少ない。自動車運転の注意記載なし」。(今日の治療薬,p.353)

眠気のない抗ヒスタミン薬の代表である。(1日2回投与)
アボイド・インペアードパフォーマンスに優れる。

くしゃみ・鼻水・かゆみの原因となる「ヒスタミン」を抑えることで、アレルギー症状を抑える。
ただし、単独では鼻づまりには十分な効果が得られない。
⇒ディレグラ

食事やグレープフルーツジュースなどの影響

【 用法及び用量 】
通常、成人にはフェキソフェナジン塩酸塩として1回60mgを1日2回経口投与する。
(アレグラ錠添付文書)

添付文書によれば、投与のタイミングについて特に記載はないものの、食後投与時のAUCは、空腹時に比べて15%減少している(外国人健康成人のデータ)。
つまり、食前(空腹時)投与の方が適していると思われる。
ただし、実際の処方では、飲み忘れや精神的な負担の少ない食後が圧倒的に多い。

フェキソフェナジンの血中濃度は、グレープフルーツジュース、オレンジジュースあるいはリンゴジュースと共に摂取すると、低下することが知られている。
作用機序としては、OATP(OATP-B、OATP-Aなどの関与が考えられている)やP糖タンパクの阻害作用が考えられている。
ただし、添付文書上の記載は特に何も無い。

腎機能低下時の用法・用量

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(11%)、ESKDでのクリアランス(-65%)、ESKDの用量(1/4から1/3に減量)
参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ディレグラ(一般名:フェキソフェナジン/プソイドエフェドリン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「鼻閉に有効。自動車運転の注意記載なし」。(今日の治療薬,p.354)

プソイドエフェドリン(α刺激薬)を配合することで、鼻粘膜の血管を収縮させて充血や腫れを抑え、鼻づまりの症状を改善する

プソイドエフェドリンは、交感神経に作用するため長期間の使用を避けることが望ましい。
添付文書では、「鼻閉症状の緩解がみられた場合には、速やかに抗ヒスタミン剤単独療法等への切り替えを考慮すること」としている。
投与期間の目安は、2週間程度と考えられる。

鼻づまりがひどい場合には、一般的には、抗ヒスタミン薬と一緒に抗ロイコトリエン薬やステロイド点鼻薬を使うことが多い。

ディレグラの錠は非常に大きく飲みにくい。
しかしながら、有効成分を徐放層から少しずつ放出する製剤となっているため、かみ砕いたり割ったりしないように気を付けること(薬の溶出速度が変わり、薬の吸収に影響を与える)。

プソイドエフェドリンは、食後に服用すると吸収が低下することが知られており、ディレグラは空腹時投与となっている。

ディレグラは、ドーピング禁止薬物である。

「プソイドエフェドリン塩酸塩」は尿中濃度150μg/mLを超えた場合には、WADA(World Anti-Doping Agency)禁止表内のカテゴリー「競技会(時)に禁止される物質と方法」の禁止物質「S6興奮薬」の「特定物質」に該当します。

この検定ラインは、プソイドエフェドリン塩酸塩240mg/日を服用した場合の検出量として設定されています。

橋村孝博「第1回うっかりドーピングを防ぎましょう!」

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回2錠を1日2回、朝夕の空腹時
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    プソイドエフェドリンの尿中未変化体排泄率のデータに幅があるため、至適投与量が定めにくいが1回1錠を1日1~2回

アレジオン(一般名:エピナスチン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「LTC4・PAF拮抗作用」。(今日の治療薬,p.354)

エピナスチン(抗アレルギー薬)とよく似た構造式を持つ薬物に、ミルタザピン(NaSSA)とミアンセリン(四環系抗うつ薬)がある。(実践薬学2017,pp.414)

それぞれ、以下のような特徴を有する。

ミルタザピンとミアンセリンの構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。
血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。
それに対して、エピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。

アレロック(一般名:オロパタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「ケミカルメディエーターなどの産生・遊離抑制作用」。(今日の治療薬,p.356)

鼻づまりが強いときに有効とされている。
眠気の程度は、ジルテックと同程度(多少眠気が強い)と考えられる。
1日2回投与。

1回5mg単回投与時:
Tmax:1.00±0.32(h)、Cmax:107.66±22.01(ng/mL)、t1/2:8.75±4.63(h)

投与間隔/消失半減期
=12/8.75≒1.37 ⇒ 定常状態のある薬物
消失半減期×5
=8.75×5=43.75時間(約2日で体内から消失する)

作用機序(アレロック添付文書)

「オロパタジン塩酸塩は、選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とし、更に化学伝達物質(ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF等)の産生・遊離抑制作用を有し、神経伝達物質タキキニン遊離抑制作用も有する」。

ヒスタミンが中枢神経に存在するH1受容体に結合することで、覚醒や興奮が保たれている。
H1受容体拮抗薬によってヒスタミンのH1受容体への結合が阻害されると、眠気倦怠感などが起こる。

中枢神経に存在するH1受容体は、痙攣の抑制系にも関わっている。
H1受容体の遮断作用が強くなると、痙攣の抑制系が抑えられなくなり、痙攣が起きてしまうこともある。
不随意運動(顔面・四肢等)、頻度不明

「GABA(γ-アミノ酪酸)などによる中枢神経の抑制系が十分に発達していない乳幼児では、ヒスタミン系が神経の抑制系として働いています。特にてんかん素因のある小児や脳内の神経細胞の未熟な乳幼児では痙攣等を誘発するため注意しましょう」。(どんぐり2019,p.64)

ただし、オロパタジンは、脳内H1受容体占拠率20%以下であり、重大な副作用(痙攣)などの添付文書上の記載は無い。

オロパタジンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.128-251)

56歳女性、体重45kg、血清クレアチニン1.0mg/dL
アレルギー性鼻炎で初めての処方、配送関係の仕事(鼻炎症状が悪化すると運転に支障あり)
オロパタジン塩酸塩錠5mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-56)/(72×(1.0+0.2))}×45×0.85
=(84/86.4)×45×0.85
=37.1875⇒37.2mL/min

腎機能低下患者(血液透析導入前)
クレアチニンクリアランスが2.3〜34.4mL/minの腎機能低下患者にオロパタジン塩酸塩10mgを朝食後単回経口投与した場合の平均血漿中濃度の推移は下記のとおりである。健康成人と比較して、腎機能低下患者のCmaxは2.3倍、AUCは約8倍であった。(測定法:RIA法)(アレロック添付文書)

添付文書の基準は上回っているが、日常的に車を運転しており、眠気の副作用もできる限り避けたいところである。
減量や、肝消失型薬物への変更などを処方提案する。

クラリチン(一般名:ロラタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「LTC4遊離抑制作用、好酸球浸潤抑制作用。自動車運転の注意記載なし」。【レディタブ錠】舌の上で瞬時に崩壊。【DS】3歳以上の小児に適応」。(今日の治療薬,p.356)

眠気のない抗ヒスタミン薬の代表である。(1日1回投与)
アボイド・インペアードパフォーマンスに優れる。

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

デザレックス(一般名:デスロラタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「ロラタジンの活性代謝物。催眠作用少ない。自動車運転の注意記載なし」。(今日の治療薬,p.357)

代謝活性物:CYP3A4やCYP2D6による活性化を必要としないため、遺伝的体質による個人差が生じにくい。(児島2017,p.141)
食後でも空腹時でも吸収に大きな差がないため、食事の時間に縛られることがない。
グレープフルーツジュースとの相互作用はない。

ジルテック(一般名:セチリジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「好酸球遊走・活性化抑制作用」。(今日の治療薬,p.355)

多少眠気が強い。

ラセミ体(S+R)である

ラセミ体(S+R)である。⇒レボセチリジン(R体)
抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

第一世代抗ヒスタミン薬のヒドロキシジンに構造式が似ている。
カルボキシル基(-COOH)を導入することによって、BBB通過性を弱めている。
(冒頭記事参照)

腎機能低下時の用法・用量(セチリジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ザイザル(一般名:レボセチリジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「セチリジンの光学異性体」。(今日の治療薬,p.355)

眠気が少なく、効果が確実な薬物である。(1日1回投与)
6か月の子どもから使用でき、セチリジンよりもやや眠気が少ない傾向にある。
また、食事の影響を受けることが無いため、食前・食後を気にすることなく服用できる。

セチリジンの光学異性体である

光学異性体(R体)⇔セチリジン(ラセミ体:S + R)

  • 抗ヒスタン作用(効力):R体>S体(約30倍)
  • 抗ヒスタミン作用(持続時間):R体>S体(約17倍)

レボセチリジンは、R体のみを抽出した薬物である。
常用量は、セチリジン1日1回10mg、レボセチリジン1日1回5㎎となる。
つまり、レボセチリジンは、セチリジンの半分量で同等の効果を発揮する。

効果の増強(実践薬学2017,p.24、児島2017,p.137)

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1日1回5mg、就寝前、最大1日10mg
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1日1回2.5mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回2.5mgを2日に1回
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1回2.5mgを週2回(3~4日毎)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(腎機能正常者に比しAUCが1.8~5.7倍増加する)

ザイザル・インタビューフォーム(以下)より
腎排泄型薬物と考えられる。

  • 健康成人男女 20 例にレボセチリジン塩酸塩 5mg を空腹時単回経口投与したときの投与後 48 時間までのレボセチリジン塩酸塩の累積尿中排泄率は約 73%であった。(外国人データ)
  • レボセチリジンは主に尿中に未変化体として排泄される。
  • 分配係数(log P):1.32(pH7.4、1-オクタノール/水系)

腎機能低下患者では、レボセチリジンの排泄遅延が起こり、血中濃度が上昇する。
薬理作用の副作用である眠気めまいふらつきが起きる可能性がある。

成人患者の腎機能に対応する用法・用量の目安(外国人データ)では、
CCr(50~80mg/dL未満)1日1回2.5mgとなっている。
つまり、軽度の腎機能低下患者あるいは高齢者では、ザイザル錠5mg1錠投与は過量となる。

ビラノア(一般名:ビラスチン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「催眠作用少ない。自動車運転の注意記載なし。空腹時内服」。(今日の治療薬,p.357)

くしゃみ・鼻水が止まらない「くしゃみ・鼻漏型の鼻炎」や蕁麻疹、皮膚炎が適応となる。

食事の1時間前から食後2時間までの間、服用を控える。
就寝前の服用指示はよく見かける。
ただしこの場合、晩ご飯を食べてすぐ寝る人、就寝前に夜食を取る人などは、条件に当てはまらないことになる。(児島2017,p.143)

【空腹時投与のこと】(食後投与で吸収低下)

健康成人男性20例にクロスオーバー法で空腹時及び食後(高脂肪食)に本剤20mgを単回経口投与したとき空腹時に比べ食後投与時のCmax及びAUC0-tはそれぞれ約60%及び約40%低下した。

【グレープフルーツジュース】(吸収を阻害する)

健康成人12例に本剤20mgをグレープフルーツジュース240mLで投与したとき、血漿中ビラスチンのCmax及びAUC0-infはそれぞれ約0.6倍及び約0.7倍に低下した。この血漿中ビラスチン濃度の低下はグレープフルーツジュースによるビラスチンの消化管からの吸収阻害に起因すると推察されたが機序は不明である。

(参考:ビラノア錠添付文書)

ルパフィン(一般名:ルパタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「抗PAF作用を有する。活性代謝産物デスロラタジンへ変化する」。(今日の治療薬,p.357)

抗PAF作用⇒鼻閉の改善が期待できる。

タリオン(一般名:ベポタスチン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「好酸球機能抑制作用。IL-5産生抑制作用」。(今日の治療薬,p.355)

ニポラジン、ゼスラン(一般名:メキタジン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代)。(今日の治療薬,p.353)

ザジテン(一般名:ケトチフェン)

ヒスタミン(H1)受容体拮抗薬(第二世代):
「ケミカルメディエーター遊離抑制、好酸球活性化抑制。抗ヒスタミン・抗PAF作用」。(今日の治療薬,p.352)

ケトチフェンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.174-179、服薬指導例・薬歴記載例有り)

2歳(男性)、体重12kg、アトピー性皮膚炎
ケトチフェンシロップ0.02%、1回4mL、1日2回朝食前および寝る前、28日分
3週間前、熱性けいれんを起こした。
数日前、再度熱性けいれんを起こした。

ケトチフェンは、ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第二世代)にもかかわらず、脳内移行性の非常に高い薬物である。
参考)実践薬学2017,p.415「各抗ヒスタミン薬の脳内H1受容体占拠率」
(Hum Psychopharmacol.2011;26:133-9.より引用)

ケトチフェンには、下記のような禁忌及び慎重投与の項目がある。(ザジテン添付文書より)

【禁忌(次の患者には投与しないこと)】
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.てんかん又はその既往歴のある患者〔痙攣閾値を低下させることがある。〕

【使用上の注意】
1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)
てんかんを除く痙攣性疾患、又はこれらの既往歴のある患者〔痙攣閾値を低下させることがある。〕(【禁忌】の項参照)
6.小児等への投与
乳児、幼児に投与する場合には、観察を十分に行い慎重に投与すること。〔痙攣、興奮等の中枢神経症状があらわれることがある。〕

レボセチリジンシロップ(脳内移行性低い、痙攣に関する添付文書上の記載無し)などへの変更を考える。

ケトチフェンは、定常状態のある薬物である。(下記ザジテン添付文書参考)
そして、薬物が体内から消失するまでには、1.67日かかる。

以下のとおりである。

投与間隔12時間/消失半減期8時間=1.5<3.0
消失半減期8時間×5=40時間(1.67日)

したがって、ヒドロキシジンシロップからレボセチリジンシロップに変更した後も、1日半以上は今までと同様のリスクがあると考えられる。

1.血中濃度
健康成人に本剤10mL(ケトチフェンとして 2 mg)を 1 回経口投与した場合の薬物動態は、下表及び図のごとくであり、ザジテンカプセルとほぼ同じと推定された。
また、本剤を小児患者に投与した場合、健康成人に比べやや吸収が遅く、血中からの消失が速いことが示された。

T1/2(hr)=8.03±1.24(表の一部のみ転記)

消化管運動機能改善薬(ナウゼリン、プリンペランなど)

消化管運動機能改善薬+消化酵素(概要)

消化管運動機能改善薬など(作用機序)

  • アセチルコリン作動薬
    副交感神経を刺激し、消化管運動と消化液分泌を促進する。
  • ドパミン受容体拮抗薬
    ドパミンのD2受容体への結合拮抗作用によりアセチルコリンの遊離を促進する。
    制吐作用を示す。
  • オピアト作動薬
    オピオイド受容体に作用し、消化管運動調律作用を示す。
  • セロトニン(5-HT4)受容体作動薬
    セロトニン(5-HT4)受容体を刺激し、アセチルコリン作動性を示す。
  • アセチルコリンエステラーゼ阻害薬
    アセチルコリン量を増やし胃運動を促進する。
  • 健胃薬
    いわゆる胃ぐすり、消化酵素、制酸薬、生薬などの合剤、胃の不定愁訴をとり、食欲を増進させる。
  • 消化酵素
    各種消化酵素で消化を助ける目的で用いられる。

以上参照:「今日の治療薬2020」p.764

吐き気止め

制吐薬としては、ドンペリドンメトクロプラミド(いずれもドパミンD2受容体拮抗薬)がある。

両者共に、消化管運動改善作用を有し、末梢性の吐き気を軽減する。
さらに、CTZ(chemoreceptor trigger zone、化学受容器引金帯)を介して起こる中枢性の吐き気を軽減する。
なお、CTZは第四脳室底にあり、そこには血液脳関門(BBB:blood-brain barrier)は存在しない。
したがって、血液脳関門(BBB)を通過できないドンペリドンでも、CTZには到達することができる。

両者共に、「片頭痛の随伴症状である悪心・嘔吐にも有効です」。(児島2017,p.302←慢性疼痛の診療ガイドライン2013)

慢性胃炎における胸やけなど

慢性胃炎における胸やけなどの治療薬としては、イトプリド(ドパミンD2受容体拮抗薬)とモサプリド(セロトニン(5-HT4)受容体作動薬)がある。

両者の作用点は、それぞれドパミン受容体(拮抗)とセロトニン受容体(作動)というように異なるため、副作用の出方が異なってくる。

過敏性腸症候群

トリメプチン(オピアト作動薬)は、上部・下部の消化管に作用する。
適応症として、過敏性腸症候群がある。

医薬品各種(消化管運動機能改善薬)

定常状態のある薬物とない薬物がある。(どんぐり2019,p.236)

ナウゼリン(一般名:ドンペリドン)

ドパミン受容体拮抗薬:
「ベンズイミダゾロン系消化管運動改善薬。メトクロプラミド類似(血液-脳関門は通過しにくい」。上部消化管並びにCTZに作用し、抗ドパミン作用にて効果発現。胃腸運動も促進」。(今日の治療薬2020,p.782)

1回10mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期10.3時間=0.78⇒定常状態あり

ドンペリドンは、消化管運動を改善することによって、末梢性の吐き気を軽減する。
ドンペリドンは、血液脳関門(BBB)は通過しにくいものの、CTZには到達して中枢性の吐き気を軽減する。
脳に移行しにくく、錐体外路障害を起こしにくい。

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    ドンペリドン:CR(CYP3A4)0.67M、(PISCS2021,p.46)、CYP3A基質薬

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)、
妊婦又は妊娠している可能性のある女性。
動物実験(ラット)で骨格、内臓異常等の催奇形作用が報告されている。(ナウゼリン添付文書より)
児島(2017,p.304)では、「原因不明の吐き気に『ナウゼリン』を使っていたが、後になって妊娠だと判明した、ということがあっても、妊娠に気付いた時点で主治医に連絡し、対応することで十分」としている。

【豪B2】豪州ADEC基準
【授乳L3】Medications and Mother’s Milk2019基準

注)児島(2017,p.304)では、授乳中の薬の安全性評価において、「『ナウゼリン』は最も安全な【L1】、『プリンペラン』は5段階中2番目の【L2】と評価されています」としている。
しかしながら、少なくとも「今日の治療薬2019」p.746では、既に上記のようにナウゼリンは【授乳L3】となっている。

プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)

ドパミン受容体拮抗薬:
「消化管運動調節。中枢性・末梢性嘔吐のいずれにも制吐作用。長期連用で錐体外路症状が出現することあり」。(今日の治療薬2020,p.781)

1日10~30mg、食前2~3回分服。
8時間ごと投与/半減期5.4時間=1.48⇒定常状態あり
12時間ごと投与/半減期5.4時間=2.22⇒定常状態あり

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    メトクロプラミド:CR(CYP2D6)0.44、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

メトクロプラミドは脳まで届くため、錐体外路症状(パーキンソン症候群)が出現しやすい。
メトクロプラミドは、腎機能低下の影響を受けやすい薬物でもある。
したがって、高齢者では「可能な限り使用を控えること」とされている。

メトクロプラミドは、妊婦に安心して使える薬物である。

【豪A】豪州ADEC基準/【米B】米国FDA基準
【授乳L2】Medications and Mother’s Milk2019基準

メトクロプラミドの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.160,260-263)

80歳女性。
数日前から吐き気あり、近医にて処方あり。
メトクロプラミド錠5mg、1回2錠、1日3回毎食前、10日分。
(そのほか服用薬なし)

「【用法・用量】:メトクロプラミドとして、通常成人1日7.67~23.04mg(塩酸メトクロプラミドとして10~30mg、2~6錠)を2~3回に分割し、食前に経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」。(プリンペラン錠添付文書)

通常成人量の最大量(1日30mg)が処方されている。

「高齢者への投与:本剤は、主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるので、副作用(錐体外路症状等)の発現に注意し、用量並びに投与間隔に留意するなど慎重に投与すること」。(プリンペラン錠添付文書)

高齢者では、腎機能に注意しながら慎重に投与すること、となっている。

「【薬物動態】1.血漿中濃度(外国人データ):
健康成人にメトクロプラミド20mgを経口投与した場合、消化管より速やかに吸収され約1時間後に最高血漿中濃度(54ng/mL)に達し、消失半減期4.7時間で減少した。健康成人にメトクロプラミド10mgを静脈内投与した場合、二相性に消失しβ相の半減期は5.4時間であった」。(プリンペラン錠添付文書)

投与間隔8時間/消失半減期4.7時間
=1.7<3.0 ⇒ 定常状態有り
定常状態に達するまでの時間
=4.7×5 ⇒ 23.5時間

丸1日で定常状態に達すると考えられる。
ただし、投与後約1時間で最高血漿中濃度に達することから、頓用でも有効かもしれない。
しかしながら、添付文書上には頓用に関して何ら記載は無い。

副作用回避のため、ドンペリドンヘの変更を提案する。

腎機能低下時の用法・用量

「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
尿中排泄率(20~30%)、ESKDでのクリアランス(-66%)、ESKDの用量(1/4に減量)
参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(40mg/dL以上)、常用量
    1日10~30mgを分2~3、食前
  • CCr(40mg/dL未満)
    1日5~15mgを分1~2(Up to Date)総CLが健常者の30%に低下するという報告がある(Eur J Clin Pharmacol 19:437-441,1981)

ガナトン(一般名:イトプリド)

ドパミン受容体拮抗薬:
「抗ドパミンD2(制吐作用)作用、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用。相互作用少ない」。(今日の治療薬2020,p.782)

「ガナトンはドパミンD2受容体拮抗作用によりアセチルコリン(ACh)遊離を促し、更にアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害作用を有しており、遊離されたAChの分解を阻害する。
これらの協力作用により消化管運動亢進作用を示す」。(ガナトン添付文書)

1回50mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期5.77時間=1.39⇒定常状態あり

ドパミンは、身体の運動機能の調節に関わっている。
イトプリドは、ドパミンD2受容体拮抗薬であり、運動機能障害の副作用として錐体外路症状が出ることがある。

ガスモチン(一般名:モサプリド)

セロトニン(5-HT4)受容体作動薬:
「5-HT4受容体刺激による消化管運動機能改善薬」。(今日の治療薬2020,p.783)

「本剤は選択的なセロトニン5-HT4受容体アゴニストであり、消化管内在神経叢に存在する5-HT4受容体を刺激し、アセチルコリン遊離の増大を介して上部及び下部消化管運動促進作用を示すと考えられている」。(ガスモチン添付文書)

1回5mg、1日3回食前又は食後投与。
8時間ごと投与/半減期2.0時間=4.0⇒定常状態なし

セロトニンは、消化管の蠕動を活発にする作用がある。
モサプリドは、セロトニン5-HT4受容体作動薬であり、副作用として下痢・軟便(1~2%未満)を起こしやすい。

セレキノン(一般名:トリメブチン)

オピアト作動薬:
「胃・腸運動調律作用。胃腸両方に作用。末梢性鎮吐作用」。(今日の治療薬2020,p.782)

1回100mg、1日3回投与。
8時間ごと投与/半減期2時間=4.0⇒定常状態なし

【効能・効果】
慢性胃炎における消化器症状(腹部疼痛、悪心、噯気、腹部膨満感)
過敏性腸症候群

【用法・用量】
〈慢性胃炎における消化器症状〉
トリメブチンマレイン酸塩として、通常成人1日量300mgを3回に分けて経口投与する。
年齢、症状により適宜増減する。
〈過敏性腸症候群〉
トリメブチンマレイン酸塩として、通常成人1日量300~600mgを3回に分けて経口投与する。

消化管平滑筋に対する作用
トリメブチンは、平滑筋細胞において、弛緩した細胞に対しては、Kチャネルの抑制に基づく脱分極作用により細胞の興奮性を高め、一方、細胞の興奮性に応じてCaチャネルを抑制することで過剰な収縮を抑制することが推測される。
オピオイド受容体を介する作用
トリメブチンは、運動亢進状態にある腸管では、副交感神経終末にあるオピオイドμ及びκ受容体に作用して、アセチルコリン遊離を抑制し、消化管運動を抑制する。
一方、運動低下状態にある腸管では、交感神経終末にあるμ受容体に作用してノルアドレナリン遊離を抑制する。
その結果、副交感神経終末からのアセチルコリン遊離が増加し、消化管運動を亢進する。

(セレキノン添付文書)

⇒「腸機能改善薬(下痢止め、整腸剤、過敏性腸症候群治療薬など)

アコファイド(一般名:アコチアミド)

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬:
「唯一の機能性ディスペプシア治療薬。アセチルコリン量を増やし、副交感神経の刺激を強め胃運動を活発化する」。(今日の治療薬2020,p.783)

1回100mg、1日3回食前投与。
8時間ごと投与/半減期13.31時間=0.60⇒定常状態あり

S・M配合散

健胃薬:

つくしA・M配合散

健胃薬:

タフマックE

消化酵素配合剤:

ベリチーム

消化酵素配合剤:

エクセラーゼ

消化酵素配合剤:

ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)

⇒「抗精神病薬(統合失調症治療薬など)

抗コリン作用、制吐作用有り。

ピレチア、ヒベルナ(一般名:プロメタジン)

⇒「ヒスタミンH1受容体拮抗薬(第一世代)

抗コリン作用、制吐作用有り。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【制吐薬】

  • プロクロルペラジン[ノバミン]、メトクロプラミド[プリンペラン]

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【制吐薬】

  • メトクロプラミド[プリンペラン]、プロクロルペラジン[ノバミン]、プロメタジン[ヒベルナ、ピレチア]
  • ドパミン受容体遮断作用により、パーキンソン症状の出現・悪化が起きやすい。
  • 可能な限り使用を控える。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

神経障害性疼痛緩和薬など(リリカなど)

高齢者における薬物治療の注意点(特にプレガバリンを中心として)

高齢者では、加齢による腎機能低下の影響は避けられない。
消失半減期は延長し、血中濃度は上昇する可能性が高い。
腎機能低下に合わせた薬物投与量の調整が必要となる。
「リリカカプセル適正使用に関するお願い(2017年2月)」
(どんぐり2019,p.148)

通常の痛み止めと違って、痛いときだけではなく、一定期間飲み続けることで効果を発揮する。
飲み始めて2~3日(下記計算参照)すると、効果が出始めるとともに副作用が出る可能性もある。
薬理作用による重大な副作用である「めまい、傾眠、意識消失など」による転倒・骨折に注意する。

腎機能低下患者においては、プレガバリンを適切に減量しても有害事象の発生率が高い。
特に、低体重の患者でその傾向が強い。
全般的に、腎機能障害患者ではより低用量とする必要がある。(実践薬学2017,p.180)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」(下記)においても、高度腎機能障害者では、リリカ添付文書よりも少量投与を推奨している。
なお、ミロガバリンの場合も、Giusti-Hayton法により求めた投与量は、添付文書記載の数値よりも厳しく(少なく)なっている(下記)。

プレガバリンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.143-150)

75歳男性、体重58kg(身長163cm)、血清クレアチニン値0.9mg/dL
整形外科受診中(腰から足にかけて腫れがひどくなり)、プレガバリン処方追加。
プレガバリン口腔内崩壊錠75mg、1回1錠、1日1回夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-75)/(72×(0.9+0.2))}×58
=(65/79.2)×58
=47.6mg/dL

本剤は主として未変化体が尿中に排泄されるため、 腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、 慎重に投与する必要がある。腎機能障害患者に本剤を投与する場合は、下表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として本剤の投与量及び投与間隔を調節すること。(リリカ添付文書)

添付文書掲載の表から、
60>CCr≧30の欄について検討する。
初期用量は、「1回25mg1日3回投与、または1回75mg1日1回投与」、つまり1日75mg投与である。

上記の「プレガバリン口腔内崩壊錠75mg、1回1錠、1日1回夕食後」は妥当と考えられる。

プレガバリンの尿中未変化体排泄率(fu)

尿中未変化体排泄率(fu)=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

下記(リリカ添付文書及びインタビューフォーム)記載のとおり、尿中排泄率=絶対バイオアベイラビリティとなっており、「体内に入った薬物のほとんど全てが未変化体のまま尿中に排泄される」と考えられる。

したがって、尿中未変化体排泄率(fu)=1.0(100%)とする。(もちろん腎排泄型である)

  • ヒトにおいてプレガバリンはほとんど代謝を受けず、主に未変化のまま尿中へ排泄される。
  • 日本人健康成人に、プレガバリン50、100、200、250及び300 mg(各投与量 6 例)を絶食時に単回経口投与した時のCL/Fは4.64~5.15 L/hであった。
    この時の尿中排泄率は83.9~97.7%であった。
  • 絶対バイオアベイラビリティ 83.9~97.7%
    日本人健康成人男性にプレガバリンを 50、100、200、250 及び 300mg 単回経口投与したとき、投与後60 時間までの各投与群の平均累積尿中未変化体排泄率は、それぞれ 83.9%、95.0%、91.8%、95.6%及び 97.7%であった。
    健康成人におけるプレガバリンの尿中排泄率はその用量に影響されなかったことから、絶対バイオアベイラビリティは投与量の増加によって影響を受けないことが示唆された。

参考)ミロガバリンの尿中未変化体排泄率(fu)の計算(下記参照)

プレガバリンの高齢者における消失半減期を推算する

高齢者消失半減期
=若年者消失半減期/{1-尿中未変化体排泄率(fu)×[(若年者CCr-高齢者CCr)/若年者CCr]}
=5.95/{1-1.0×[(100-47.6)/100]}
=5.95/0.476
=12.5(hr)⇒ 5.95時間から12.5時間へ2倍以上延長している

注)尿中未変化体排泄率(fu)が大きいことから、分母は小さくなる。
その結果、分子(若年者消失半減期)に対する数値は大きくなる。
つまり、若年者消失半減期との解離が大きくなる。

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-1.0×(1-47.6/100)
=1-0.524
=0.476 ⇒ 47.6%

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=150×0.476 ⇒ 71.4mg/日

これは、添付文書に記載された初期用法・用量である「1回25mg1日3回投与、または1回75mg1日1回投与」とほぼ同じ用量である。

医薬品各種(神経障害性疼痛緩和薬など)

慢性疼痛に対する使用薬剤:
「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • プレガバリン:2C(使用することを弱く推奨する)
  • ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液:2D(使用することを弱く推奨する)
    いずれも、積極的な適応とはなっていない。

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である→古い)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

リリカ(一般名:プレガバリン)

【効能・効果】
神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛。

「神経障害性疼痛の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.286,305)
(帯状疱疹後疼痛、糖尿病性神経障害、脊髄損傷後疼痛など)

「抗炎症作用はなく、神経系に分布するCaイオンチャネルの一部に結合して鎮痛作用を発揮する」。(同上,p.286)

「副作用としては、めまい、頭痛、傾眠、霧視、便秘、口渇、体重増加などがあり、開始時は漸増、中止時は漸減が必要である。高齢者では転倒に特に注意する」。(同上,pp.286-287)

腎機能低下時の用法・用量(プレガバリン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

腎機能低下時内服投与注意:(以下、リリカ添付文書を参考にした)

「本剤は主として未変化体が尿中に排泄されるため、 腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、慎重に投与する必要がある。腎機能障害患者に本剤を投与する場合は、下表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として本剤の投与量及び投与間隔を調節すること」。

「日本人健康成人に、プレガバリン50、100、200、250及び300mg(各投与量6例)を絶食時に単回経口投与した時、・・・Ae(単回投与後60時間までの未変化体の尿中排泄率(%))は、83.9%~97.7%であった」⇒腎排泄型であることを示す。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)神経障害性疼痛:初期用量1日150mgを分2、その後1週間以上かけて1日量として300mgまで漸増、最大1日600mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛:初期用量1日150mgを分2、その後1週間以上かけて1日量として300mgまで漸増し、300~450mgで維持、最大1日450mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1)初期用量1日75mgを分1又は分3、維持量1日150mgを分2又は分3、最大1日300mgを分2又は分3
    2)初期用量1日75mgを分1又は分3、維持量1日150mgを分2又は分3、最大1日225mgを分3
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)初期用量1日25~50mgを分1又は分2、維持量1日75mgを分1、最大1日150mgを分1又は分2
    2)初期用量1日25~50mgを分1又は分2、維持量1日75mgを分1、最大1日100もしくは125mgを分1、又は1日150mgを分2
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)初期用量1日25mgを分1、維持量25~50mgを分1、最大1日75mgを分1
    2)初期用量1日25mgを分1、維持量25~50mgを分1、最大1日50~75mgを分1
    添付文書は上記だが、1日25mg、最大1日50mgの投与を推奨する。
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1)2)初期用量25mgを分1、維持量25~75mgを分1、HD後の補充用量は投与量により25~150mgをHD後に補充。
    PDでは初期用量25mgを分1、維持量25~75mgを分1
    添付文書は上記だが、1日25mgでHD日にはHD後の投与を推奨する。1日50mgの投与が必要な時はより慎重に行う。

食事摂取とプレガバリンの血中濃度の関係

(実践薬学2017,p.182)

プレガバリン150mg単回投与時(日本人健康成人男性)
絶食時、Tmax0.97時間、Cmax4.95μg/mL
食後、Tmax3.37時間、Cmax3.22μg/mL
(参考:リリカ・インタビューフォーム)

絶食時投与の立ち上がり(Tmax)が早いものの、Cmax、AUCに両者の差はあまりなく、食事の影響はないものと考えられる。

ただし、不動性めまいの発現率は、食後投与5.3%、絶食時投与30.8%で顕著な差がみられる。

なお、プレガバリンを就寝前に服用してすぐ床に就けば、空腹時投与ではあるものの、不動性めいまいの副作用を避けることができるかもしれない。
また、プレガバリン服用によって徐波睡眠が増えるという研究報告もあり、睡眠薬の多剤併用を減じるチャンスとすることができるかもしれない。

タリージェ(一般名:ミロガバリン)

【効能・効果】
末梢性神経障害性疼痛

腎機能低下時の用法・用量(ミロガバリン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    初期用量1回5mg を1日2回。その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔をあけて漸増し,1回10~15mgを1日2回
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    初期用量1回2.5mgを1日2回。有効用量1回5~7.5mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    初期用量1日1回2.5mg。有効用量1日1回5~7.5mg
    (HD(血液透析)・PD(腹膜透析)を含む)

ミロガバリンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.129,256)

53歳男性、体重70kg、血清クレアチニン値1.2mg/dL
整形外科受診(お尻から足にかけての痛み、痺れ、麻痺が続いている)、末梢性神経障害性疼痛と診断。
ミロガバリンベシル酸塩錠15mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分
(ミロガバリンは4週間前に初処方、継続服用中)

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-53)/(72×(1.2+0.2))}×70
=(87/100.8)×70
=60.42mg/dL

腎機能が低下している患者では、血漿中濃度が高くなり副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、患者の状態を十分に観察し、 慎重に投与すること。腎機能障害患者に投与する場合は、次の表に示すクレアチニンクリアランス値を参考として投与量及び投与間隔を調節すること。低用量から開始し、忍容性が確認され、効果不十分な場合は増量すること。(タリージェ添付文書)

添付文書掲載の表から、
CCr(60以上~90未満)であり、腎機能軽度低下と判断する。
1回5mg1日2回投与(初期用量)、その後、1回10~15mg1日2回まで増量する。
(1週ごとに5mgずつ増量して、有効用量の推奨用量1回15mg1日2回まで増量する)

上記の「ミロガバリンベシル酸塩錠15mg、1回1錠、1日2回朝夕食後」は妥当と考えられる。

尿中未変化体排泄率(fu)

尿中未変化体排泄率(fu)=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

  • 健康成人男性 6 例に 14C 標識ミロガバリン 30mg(150µCi)を単回経口投与したとき、投与 168 時間後までに放射能の累積排泄率は 98%以上に達し、投与放射能の約 97%が尿中に、約 1%が糞中に排泄された。
    尿中に回収された放射能の約 76%が未変化体であった。
  • ラット及びカニクイザルにミロガバリンを単回経口投与したときの生物学的利用率は、ラットで 97.6%、カニクイザルで 85.2%であった。(ヒトの該当資料なし)
    (タリージェ・インタビューフォーム)

尿中排泄率97%及び未変化体排泄率76%は経口投与時のデータであり、バイオアベイラビリティで補正をする必要がある。
つまり、「体内に吸収された薬物量(投与量×バイオアベイラビリティ)」と「尿中に未変化のまま排泄された薬物量(尿中未変化体排泄量)」の比を求める。

なおここで、バイオアベイラビリティは、「ラットで 97.6%、カニクイザルで 85.2%」の中間をとって、90%とする。

尿中未変化体排泄率(fu)
=(投与量×尿中排泄率×未変化体率)/(投与量×バイオアベイラビリティ(生物学的利用率))
=(30×0.97×0.76)/30×0.9(1日投与量30mgとして)
=0.819⇒約82%(腎排泄型)

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-0.819×(1-60.42/100)
=1-0.819×0.396
=0.6757⇒68%

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=30×0.68⇒20.4mg/日

これは、添付文書に記載された用法・用量である「1回10~15mgを1日2回」よりも厳しい(少ない)投与量になっている。

ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液(一般名:ノイロトロピン)

鎮痛補助薬(生物組織抽出物):
「下行性疼痛抑制系賦活型」。(今日の治療薬2020,p.306)

抗ヘルペスウイルス薬(バルトレックスなど)

抗ヘルペスウイルス薬(概要)

アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルは、代表的な腎排泄型薬物である。
腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
腎不全で精神神経障害や痙攣を起こす代表的な薬物の一つである。
(アシクロビル脳症)

  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
    別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)
    アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩

単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルス

ヘルペスウイルスは数種類存在するが、一般的には、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の2種類を「ヘルペス」と呼ぶことが多い。

単純ヘルペスウイルス(HSV)には、HSV-1とHSV-2の2種類の型があり、全身の様々な部位でHSV感染症(単純疱疹)を引き起こす可能性がある。
その中で、HSV-1による口唇ヘルペス(口の周りにできるヘルペス)が最も多く、HSV-2による再発型性器ヘルペス(陰部にできるヘルペス)がそれに続く。
いずれのウイルスも、初発感染後は知覚神経節の神経細胞の核内に潜伏しており、体調の悪化など細胞性免疫の低下などをきっかけに再増殖して、再発を繰り返す。

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって、主に小児で水痘、いわゆる水ぼうそうを発症することがあり、9歳以下での発症が90%以上を占めると言われている。

水ぼうそうが治った後も、ウイルス(VZV)は脊髄から出る神経節に潜伏している。
そして後年(多くは50歳以上で)、加齢、疲労やストレスなどによって免疫力が低下すると、再びウイルスが増殖を始めて、いわゆる「胴巻き」といわれる帯状疱疹を引き起こす。

帯状疱疹は、ウイルス(VZV)が神経の流れに沿って神経節から皮膚へと移動し、帯状に痛みや発疹を生じる疾患である。

なお、小児の水痘(水ぼうそう)も成人の帯状疱疹も、原因となるウイルスは同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)である。
ただし、水痘が感染によって広がるのに対して、帯状疱疹は他人から感染するのではなく、自分自身の体内に潜んでいたウイルスが原因となる。
通常は生涯に一度しか発症することはない。

アシクロビル脳症

1)どんぐり2019,p.107

アシクロビル脳症は、アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルにより引き起こされる精神神経症状である。
めまい、頭痛、ろれつがまわらなくなる、あるいは意識障害などの症状が出る。

発生機序は、副次的な薬理作用によるものである。
アシクロビルは蛋白結合率が低く、中枢に移行して蓄積しやすいため起こると考えられている。

なお、当然ながら、バラシクロビルの血中濃度が高くなると、活性代謝物であるアシクロビルの濃度も高くなる。
バラシクロビルは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患者、透析患者、そして高齢者などでは、投与量の調節など特に注意が必要である。

2)平田純生,腎薬ニュース第5号(2007年6月;2012年1月加筆修正)

「添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は?」

2007年2月、バルトレックスの添付文書改訂(自主改訂)
「透析患者に当たる末期腎不全であるクレアチニンクリアランス15mL/min未満の患者には1000mgを1日1回だったのが、クレアチニンクリアランス10mL/minの患者には500mgを24時間間隔と実質上減量となりました」。

「アシクロビルの投与量が高くなればなるほど吸収率が低下するため、小腸における吸収は受動拡散ではなく何らかのトランスポーターを介して吸収されるものと考えられます(トランスポーターによる吸収は飽和過程があるからです)」。

医薬品各種(抗ヘルペスウイルス薬)

ゾビラックス(一般名:アシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「単純ヘルペスウイルス、水痘ヘルペスウイルスに対して効果あり」。(今日の治療薬2020,p.98)

アシクロビルは、腎排泄型薬物である

「代謝・排泄
健康成人にアシクロビル200mg及び800mgを単回経口投与した場合、48時間以内にそれぞれ投与量の25.0%及び12.0%が未変化体として尿中に排泄された」。(ゾビラックス錠添付文書)

これは、投与量が増えると「消化管での吸収が飽和して吸収率が低下する」ことを示している。
いずれにしても、投与した薬物の25.0%(200mg投与時)~12.0%(800mg投与時)が尿中に排泄される。

「腎機能障害者における薬物動態(外国人における成績)
腎機能障害のある患者では点滴静注時、アシクロビルの生体内半減期の延長及び全身クリアランスの低下が認められた。
これらの結果から、患者の腎機能に対応する本剤の減量の目安を算出した(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)」。(ゾビラックス錠添付文書)

腎機能障害患者では全身クリアランスの低下が認められることから、腎機能に対応する減量の目安が算出されている。

「バイオアベイラビリティ:10~20%(用量増加により低下)」。(ゾビラックス錠インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率
=(尿中回収率25~12%)/(バイオアベイラビリティ10~20%)
=1.0前後⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(25mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回800mgを1日5回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制:1回200mgを1日5回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回200mgを1日5回
  • CCr(10~25mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日3回
    2)3)1回200mgを1日5回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日2回
    2)3)1回200mgを1日2回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)1日1回体重に応じて400~800mg。HD患者では毎HD後
    2)3)1回200mgを1日1~2回

アシクロビルは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

バルトレックス(一般名:バラシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「アシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.99)

バラシクロビルは、アシクロビルのプロドラッグである

「バラシクロビルはアシクロビルのL-バリルエステルであり、経口投与後、主に肝初回通過効果によりアシクロビルに加水分解され、アシクロビルとして抗ウイルス作用を発現する。プロドラッグ化により経口吸収性が改善され、アシクロビル経口製剤より高いAUCが得られる。なお、バラシクロビルの消化管吸収にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されている」。(バルトレックス添付文書)

プロドラッグ化によって経口吸収性が高まり、1日服用回数はゾビラックスよりも少なくて済むようになっている。

バラシクロビルは、腎排泄型薬物である

「6例の健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合、主な排泄経路は尿中であり、24時間以内の尿中に未変化体、アシクロビル及び9-カルボキシメトキシメチルグアニン(既知のアシクロビルの代謝物)がそれぞれ投与量の0.4%、43.1%及び5.0%排泄された」。(バルトレックス添付文書)

「バイオアベイラビリティー(外国人における成績):健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合のアシクロビルの生物学的利用率は54.2%であった」。(同上)

アシクロビル(活性代謝物)の尿中未変化体排泄率(fu)=
投与量2000mg×アシクロビルの尿中排泄率43.1%/投与量2000mg×アシクロビルのバイオアベイラビリティ54.2%
=0.795⇒腎排泄型薬物

腎機能低下時の用法・用量(バラシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(アシクロビルとして85%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回1,000mgを1日3回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回500mgを1日2回
    4)水痘:1回1,000mgを1日3回
    5)性器ヘルペスの再発抑制:1日1回500mg。HIV感染症患者には1回500mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを12時間毎
    2)3)1回500mgを12時間毎
    5)1回500mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを12時間毎
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを24時間毎
    2)3)1回500mgを4時間毎
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)4)1回500mgを24時間毎
    2)3)1日1回500mg、保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)体重60kg以上で非高齢者では1回500mgを週3回HD後、それ以外の症例には他剤を選択。
    3)1回250mgを週3回HD後

アラセナ-A(一般名:ビダラビン)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを阻害。アシクロビル耐性のウイルスにも有効」。(今日の治療薬2020,p.101)

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ペンシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.100)

腎機能低下時の用法・用量(ファムシクロビル)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

抗真菌薬(白癬治療・外用薬)

抗真菌薬(白癬治療・外用薬)概要

(児島2017,pp.209-212)

水虫(白癬)の治療に使う抗真菌薬(外用薬)には様々な種類がある。
主な薬物に、アスタット、ルリコン、ゼフナート、ラミシールがある。
ただし、白癬治療において、基本的には効果や安全性に大きな違いはない。
(カンジダ症などでは、第一選択薬が決まっている場合もある)

いずれの薬物も、マイコスポール(イミダゾール系、ビホナゾール)と比べて、同等の効果・安全性を有している。
そして、強い抗真菌力(MICが小さい)を持っている。

したがって、剤形の違い(軟膏・クリーム・ローションなど)や医師の経験上の判断によって選択される。
軟膏:刺激は少ないが、べたつき感がある。
外用液:べたつき感は少ないが、刺激を感じることが多い。
クリーム:上記2者の中間くらい。

また、効果がなかった場合には、系統を変えることも考えられる。
その場合には、メンタックスやペキロンも対象となる。
(イミダゾール系、チオカルバメート系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、モルホリン系)

薬の選択よりも、薬を正しく使うことの方が大切である

抗真菌薬は、真菌が完全に消失するまで使い続ける必要がある。
赤みやかゆみといった自覚症状が治まった段階では、真菌はまだ皮膚に残っていることが多い。
ここで治療を中断していると、水虫を何回もぶり返すことになる。

抗真菌薬は、自覚症状のない部分にもしっかりと塗ることが大切である。
真菌は、赤みやかゆみのない部分にも潜んでいるからである。

抗真菌薬は、症状のない部分も含めて、両足全体に塗る必要がある。
1か月分の分量は、軟膏・クリームで30~40gが一般的である。

水虫にステロイドを使用することもある

一般的には、水虫の赤みやかゆみに対してステロイドは使わない。
理由は、以下のとおりである。

水虫は、白癬菌による感染症である。
そして、ステロイドは、免疫抑制薬である。
したがって、水虫に対してステロイドを使うと、白癬菌を抑える免疫が弱まり、かえって症状を悪化させることになるからである。

ただし、患部の炎症やかゆみがひどい場合には、抗真菌薬を使うことができない。
そうした場合には、一旦ステロイドを使って炎症やかゆみを抑えてから、抗真菌薬を使い始めることがある。

つまり、水虫にステロイドを使わないのは原則ではあるが、例外もある。

医薬品各種(白癬治療・外用薬)

アスタット(一般名:ラノコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。良好な角質浸透性・貯留性」。(今日の治療薬2020,p.130)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、外用液(1%10mL)

ルリコン(一般名:ルリコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.131)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、液(1%10mL)
爪外用液(5%、ルナコック)

ゼフナート(一般名:リラナフタート)

表在性抗真菌薬(チオカルバメート系):
「皮膚貯留性が良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

クリーム(2%10g)、外用液(2%10mL)

ラミシール(一般名:テルビナフィン)

深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系):(今日の治療薬2020,p.128)

錠(125mg)、爪白癬に適応有り(内服)
クリーム(1%10g)、外用液(1%10g)、外用スプレー(1%10g)

テルビナフィンは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

メンタックス、ボレー(一般名:ブテナフィン)

表在性抗真菌薬(ベンジルアミン系):
「持続性。皮膚への浸透性良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

ペキロン(一般名:アモロルフィン)

表在性抗真菌薬(モルホリン系):
「持続性が良好」。(今日の治療薬2020,p.132)

エンペシド(一般名:クロトリマゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.129)

マイコスポール(一般名:ビホナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.130)

ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。角質親和性が高いため皮膚貯留性が高い」。(今日の治療薬2020,p.130)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
(日本では内服無し)

抗結核薬(イソニアジドなど)

抗結核薬(概略)

リファンピシン:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)
細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用しRNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
動物細胞のRNAポリメラーゼは阻害しない。(抗菌薬インターネットブック)

リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である。

感染症TODAY(ラジオNIKKEI)2019年2月20日放送
『結核医療の基準』2018年の改定のポイント
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-190220.pdf

イソニアジド、リファンピシン、ストレプトマイシン、ピラジナミドなど併用療法での長期間投与として使用される。(今日の治療薬2020,p.34)

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

医薬品各種(抗結核薬)

イスコチン、ヒドラ(一般名:イソニアジド)

抗結核薬:
「代謝には遺伝的多様性があり、人種差がみられる」。(今日の治療薬2020,p.90)

  • 分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)
    イスコチン錠、670mL/kg
  • 非選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)→選択的~(エフピー)

リファジン(一般名:リファンピシン)

抗結核薬:
「細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害。単独では耐性菌出現しやすい」。(今日の治療薬2020,p.92)

リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    IC(CYP3A4)7.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

リファンピシンは、強力なCYP3A4誘導薬であると共に、CYP2C9の強力な誘導薬でもある。
リファンピシン併用開始1週間以内に抗凝固作用の減弱が認められ、ワルファリンの用量を2~3倍にする必要があった(複数報告)。(PISCS2021,p.154)、相互作用の記載はリファジンには無い。

リファンピシンは、OATP1B1阻害薬(かつ誘導薬)である

リファンピシンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬であり、かつ誘導薬でもある。

薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019/PharmaTribune:
「リファンピシンは、OATP1B1の阻害剤でもあり、かつOATP1B1の誘導により肝取り込み能力が上昇することで、基質薬物の血中濃度が低下することが報告されている。従って、反復投与時に基質薬物を同時投与する場合は、阻害・ 誘導両方の作用が見られることから、その影響の予測は容易でないと考えられる」。⇒詳細は「オイグルコンとリファンピシンの併用で低血糖が起きたのはなぜ?」pp.85-87

リファンピシンは、P-gp誘導薬である

リファンピシンは、P-gp(排出トランスポーター)誘導薬である。

リファンピシンとジゴキシンを併用(経口投与)すると、小腸においてリファンピシンによって誘導されたP-gpが、ジゴキシンを腸管内にくみ出すため、ジゴキシン血中濃度の上昇が抑えられる(AUCは有意に減少、BAは30%減少する)。p.105-106

エサンブトール(一般名:エタンブトール)

抗結核薬:
「結核菌の核酸合成経路を阻害し、分裂を抑制」。(今日の治療薬2020,p.92)

腎機能低下時の用法・用量(エタンブトール)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(85%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)肺結核及びその他の結核:1日0.75~1gを分1~2
    2)MAC症を含む非結核性抗酸菌症:1日0.5~0.75gを分1
    1日15mg/kgを分1、最大1日量750mg、初期2か月は1日20 mg/kgを分1、最大1日量1000mg(結核診療ガイドライン・改訂第3版)
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    減量して連日投与(結核診療ガイドライン・改訂第3版)
  • CCr(15mg/dL未満)
    1 回15~20mg/kgを48時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1 回15~20mg/kgを48時間毎、HD患者ではHD日にはHD後に投与

ミコブティン(一般名:リファブチン)

抗結核薬:
「RFPに比べてCYP3A4の誘導は弱い」。(今日の治療薬2020,p.93)

腎機能低下時の用法・用量(リファブチン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

リファブチンは、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

ニューキノロン系薬(クラビットなど)

ニューキノロン系薬(概要)

ニューキノロン系薬:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)

PK/PD理論(濃度依存性、concentration dependence):
ニューキノロン系やアミノグリコシド系の抗菌薬は、濃度依存性に抗菌力を発揮する。
副作用の出ない安全な範囲で、できるだけ薬物血中濃度を高めた方が効果的である。
1日量を1回にまとめて投与する。
参考)時間依存性→βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)。

フルオロキノロン系抗菌薬は、濃度依存性(Cmax/MICに依存)抗菌薬であり、濃度依存的に殺菌作用を示す(PAE効果も有する)。(アミノグリコシド系も同様)

フルオロキノロン系抗菌薬は、代表的な腎排泄型薬物である。
また、シプロフロキサシンは、CYP1A2の強い阻害薬である。

フルオロキノロン系抗菌薬は、NSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意すること。

フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、難溶性のキレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空けること。
(テトラサイクリン系抗菌薬も同様)

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

医薬品各種(ニューキノロン系薬)

ニューキノロン系:「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

クラビット(一般名:レボフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「OFLXの光学活性S(-)体でOFLXの約2倍の抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.81)

光学異性体(S体)⇔オフロキサシン(ラセミ体:S + R)
抗菌力の増強、副作用の軽減(実践薬学2017,p.24)

抗菌スペクトル(適応菌種):
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、結核菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
効果がない菌:百日咳菌、ジフテリア菌など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、クラリスロマイシンでは適応となっていない。
    エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

腎機能低下時の用法・用量(レボフロキサシン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(87%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日1回
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初日500mgを1回、以後1回250mgを1日1回
  • CCr(20mg/dL未満、透析患者を含む)
    初日500mgを1回、3日目以降1回250mgを2日に1回

タリビット(一般名:オフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.81)

ラセミ体(S+R)である。⇒レボフロキサシン(S体)

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日300~600mgを分2~3。ハンセン病の場合は1日400~600mgを分2~3。腸チフスの場合は1回200mgを1日4回、14日間投与
  • CCr(10~50mg/dL未満)
    1回200mgを1日1回
  • CCr(10mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回100mgを1日1回、HD患者はHD日はHD後に投与

アベロックス(一般名:モキシフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌に強い活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

オゼックス(一般名:トスフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「マクロライドやペニシリンに耐性を示す肺炎球菌・インフルエンザ菌に強い活性。小児に適応を有するニューキノロン薬」。(今日の治療薬2020,p.84)

ジェニナック(一般名:ガレノキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌であるペニシリン耐性肺炎球菌、多剤耐性肺炎球菌を含む肺炎球菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

腎機能低下時の用法・用量(ガレノキサシン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

グレースビット(一般名:シタフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性・陽性菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い活性。嫌気性菌に対する抗菌活性も高い」。(今日の治療薬2020,p.87)

腎機能低下時の用法・用量(シタフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回50mgを1日2回、又は1回100mgを1日1回。効果不十分の場合は1回100mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回50mgを1日1回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回50mgを2日に1回
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1回50mg又は00mgを週3回HD後に投与

スオード(一般名:プルリフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「プロドラッグ。活性体UFXが効力。大腸菌、緑膿菌に強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.85)

腎機能低下時の用法・用量(プルリフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回200mgを1日2回。1回最大量は300mg。肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染には、1回300mgを1日2回
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1 回200mgを24時間毎
  • CCr(15~30mg/dL未満)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回200mgを48時間毎

シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性菌での抗菌力はNFLX,OFLXの2~4倍。但し経口での吸収率は高くない」。(今日の治療薬2020,p.82)

シプロフロキサシンは、CYP1A2阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

CYP1A2(阻害薬)⇒チザニジン(基質薬)

シプロフロキサシンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

ラスビック(一般名:ラスクフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.87)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)胃酸分泌抑制薬

胃酸分泌抑制薬(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)概略

「上部消化管疾患では、高齢者の増加、H.pylori感染者の減少と除菌治療の普及(毎年100~150万人が除菌治療を受けている)などにより、疾患分布が大きく変化している。
すなわち、消化性潰瘍が減少し、胃食道逆流症(GERD)や機能性ディスペプシア(FD)が増加している」。(今日の治療薬2020,p.756)

  • H2ブロッカーは、胃粘膜にある胃壁細胞の「ヒスタミンH2受容体」に拮抗することで酸の分泌を抑える。
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、酸分泌の最終段階である「プロトンポンプ(H+/K+ ATPase)」を阻害することで酸の分泌を抑える。

PPIの胃酸抑制効果は、H2ブロッカーよりも強力であり、24時間持続する。
PPI(日中の胃酸過多に効果的)、H2ブロッカー(夜間の胃酸過多に効果的)の違いもある。

PPIは、消化性潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群に効果があり、第一選択薬とされる。
ただしPPIでは、保険適応上の投与日数に上限があるため、長期間の治療ではH2ブロッカーを使用することになる。

つまり、使い分けとしては、PPI(初期)、H2ブロッカー(長期維持療法)となる。
また、1日投与回数は、PPI(1日1回)、H2ブロッカー(多くの場合、1日2回)となる。

注)機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)
症状の原因となる明らかな異常(器質的、全身性、代謝性疾患)がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれなどの腹部症状(ディスペプシア症状)を呈する疾患
「機能性ディスペプシア(FD)ガイドQ&A」(日本消化器病学会ガイドライン)

医薬品各種(H2ブロッカー)

H2ブロッカーは、「胃の壁細胞に存在するH2受容体を遮断することにより、アデニル酸シクラーゼの活性化を抑え、cAMPの上昇を減らすことで、壁細胞膜に存在するプロトンポンプの活性化を抑制、胃酸分泌を抑える」。(どんぐり2019,p.201)

H2ブロッカーには腎排泄型薬物が多い。
そうした中で、ラフチジンは肝消失型薬物である。
また、PPIも肝消失型である。

タガメット(一般名:シメチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「胃酸及びペプシン分泌抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.769)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

海外での副作用報告では、いずれも800mg/日を超える投与量となっている。
これに対して、日本における投与量は、400mg/日が主流である。(実践薬学2017,p.150)

細粒(20%)
錠(200mg、400mg)
注射液(200mg/2mL)

腎機能低下時の用法・用量(シメチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)には記載無し。
「健康成人に経口投与した場合、大部分が24時間以内に尿中に排泄された」。(タガメット添付文書)
尿中未変化体排泄率(77%)。(実践薬学2017,p.149)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍:1日800mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を分4(毎食後・就寝前)もしくは1回(就寝前)も可
    2)吻合部潰瘍、ゾリンジャーエリソン症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血:1日800mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を分4 (毎食後・就寝前)も可
    3)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:1日400mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を1回(就寝前)も可
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回200mgを1日3回(8時間毎)
  • CCr(5~30mg/dL未満)
    1回200mgを1日2回(12時間毎)
  • CCr(5mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回200mg1日1回(24時間間隔)、HD患者はHD日にはHD後に投与

シメチジンは、CYPの非特異的な阻害薬である(特に、CYP2D6、CYP3A)。
シメチジンは、MATE阻害薬である。

シメチジンは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シメチジンは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シメチジンは、CYP3A阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    IR(CYP3A4)0.44W、(PISCS2021,p.47)

1つの薬をADMEで追ってみる

実践薬学2017,pp.112-115

ガスター(一般名:ファモチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「内分泌系へ影響を及ぼさない」。(今日の治療薬2020,p.768)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

散(2%、10%)
錠(10mg、20mg)
D錠(10mg、20mg、口腔内崩壊錠)
注射液(10mg、20mg)

副作用機序別分類(ファモチジン)

「重大な副作用」:肝機能障害、黄疸
薬物過敏症によるものと考えられる。

「その他の副作用」:AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇
薬物代謝を繰り返す過程において、肝臓に負荷がかかることによる薬物毒性

どんぐり2019,p.227では上記の分類法を提示している。

薬物性肝障害の早期発見と早期対応のポイント:
「倦怠感」、「発熱」、「黄疸」、「発疹」、「吐き気・おう吐」、「かゆみ」などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりするような場合であって、医薬品を服用している場合には、放置せずに医師、薬剤師に連絡をしてください。
(「重篤副作用疾患別対応マニュアル・薬物性肝障害」厚生労働省2008)

ファモチジンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.198-202、服薬指導例・薬歴記載例有り)

77歳男性、体重64kg(身長165㎝)、血清クレアチニン1.34mg/dL
ファモチジンD錠20mg、1回1錠、1日2回朝・夕食後、21日分
多種類の薬物を服用しているが、その中にファモチジン(腎排泄型薬物)がある。
たまに、ふらつき、眠気が起こることがある。

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-77)/(72×(1.34+0.2))}×64
=(63/110.88)×64
=36.36mg/dL

日本腎臓病薬物療法学会(eGFR・CCrの計算)

◎〈血清クレアチニン1.34mg/dLそのほかを代入する〉

  • eGFRcreat:40.49mL/min/1.73m2
    体表面積1.73m2で補正した値である。
    CKD重症度分類より、G3bであり、中等度~高度低下と判断できる。
  • 体表面積未補正eGFRcreat:39.9mL/min
  • CCr(CG式):42.41mL/min/1.73m2
    体表面積1.73m2で補正した値である。
  • 体表面積未補正CCr:41.79mL/min
    Cockcroft&Gaultの式(手計算(酵素法)と同一の値となる。

◎〈血清クレアチニン1.34+0.2mg/dLそのほかを代入する〉

  • 体表面積未補正CCr:36.36mL/min
    Cockcroft&Gaultの式(手計算(Jaffe法変換後)と同一の値となる。

腎機能低下患者への投与法

ファモチジンは主として腎臓から未変化体で排泄される。腎機能低下患者にファモチジンを投与すると、腎機能の低下とともに血中未変化体濃度が上昇し、尿中排泄が減少するので、次のような投与法を目安とする。

1 回20mg1日2回投与を基準とする場合:
60>Ccr>30、1 回20mg1日1回または1回10mg1日2回
(前後略、略記)、ガスターD錠添付文書

減量またはラフチジン(肝消失型)、あるいはPPI(全て肝消失型)への変更を処方提案する。

ファモチジン(H2受容体拮抗薬)は、少量ながら血液脳関門を通過する。
H2受容体は中枢にも存在しているので、ファモチジンによる中枢抑制作用が引き起こされ、精神神経系の副作用(ふらつき、眠気)が生じる可能性が考えられる。

腎機能低下時の用法・用量(ファモチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(80%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群:
    1回20mgを1日2回、朝・夕食後又は就寝前。1日1回40mg、就寝前も可
    2)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:
    1回10mgを1日2回、朝・夕食後又は就寝前。1日1回20mg、就寝前も可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1日20mgを分1~2
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1回20mgを2~3日に1回又は1日1回10mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回10mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日1回10mg、HD患者では1回20mgを週3回HD後も可

ザンタック(一般名:ラニチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「胃酸及びペプシン分泌抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.769)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    IR(CYP3A4)0.37W、(PISCS2021,p.47)

錠(75mg、150mg)
注射液(50mg/2mL、100mg/4mL)

腎機能低下時の用法・用量(ラニチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(70mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血:1回150mgを1日2回、朝食後・就寝前。1日1回300mg、就寝前も可
    2)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:1回75mgを1日2回、朝食後・就寝前。1日1回150mg、就寝前も可
    3)麻酔前投薬:1回150mgを2回、手術前日就寝前及び当日麻酔導入2時間前
  • CCr(30~70mg/dL未満)
    1回75mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1日1回75mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日1回75mg又は1回150mgを週3回。HD患者はHDにはHD後に投与

プロテカジン(一般名:ラフチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「持続的な酸分泌抑制作用とカプサイシン胃粘膜防御因子増強作用」。(今日の治療薬2020,p.771)

肝消失型薬物。

錠(5mg、10mg)
OD錠(5mg、10mg)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(消化性潰瘍治療薬)

消化性潰瘍治療薬は特に逆流性食道炎(GERD)において長期使用される傾向にあるが、薬物有害事象も知られており、長期使用は避けたい薬剤である。(消化性潰瘍治療薬)

  • H2受容体拮抗薬も有効な治療薬であるが、腎排泄型薬剤であることから腎機能低下により血中濃度が上昇し有害事象の生じる可能性が高くなる。
    また、高齢者ではせん妄や認知機能低下のリスクの上昇があり、可能な限り使用を控える。
    (PPIとの比較)
  • H2受容体拮抗薬(ファモチジン[ガスター]、ニザチジン[アシノン]、 ラニチジン[ザンタック])は、腎排泄型であり、腎機能が低下している患者の使用の際に注意する。
  • H2受容体拮抗薬のうち、シメチジン[タガメット]は複数のCYP分子種を阻害することから、薬物相互作用に注意を要する。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【H2受容体拮抗薬】

  • すべてのH2受容体拮抗薬 (シメチジン[タガメット]、ラニチジン[ザンタック] など)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(H2受容体拮抗薬)

  • ファモチジン
  • ラニチジン塩酸塩 他

参考:
ラフチジン(肝消失型)を除く

抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

パーキンソン病治療薬として、レボドパ(L-ドパ)は依然として最も有効な薬物であることに変わりはない。

「パーキンソン病診療ガイドライン2018」においては、「ドパミンアゴニストを第一推奨薬としていた以前のガイドラインと比較して、より積極的なL-ドパ使用に舵を切っている」。
同ガイドラインにおいて、「それぞれの運動症状、非運動症状に対する薬物療法、非薬物療法がQ&Aで記載されており、これに準拠した治療選択が推奨される」。(今日の治療薬2020,p.944)

医薬品各種(抗パーキンソン病薬)

ネオドパストン配合、メネシット配合(一般名:レボドパ・カルビドパ(10:1)配合)

レボドパ含有製剤:
「レボドパ脱炭素酵素阻害薬の併用で、中枢以外での脱炭酸反応を抑制してレボドパの末梢性副作用を軽減、脳内への移行を高める」。(今日の治療薬2020,p.948)

「パーキンソン病ではドパミンが減少しているので、レボドパ(L-ドパ)を投与してドパミンを補う治療法が最も理に適っている」。(今日の治療薬2020,p.942)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

ビ・シフロール、ミラペックス(一般名:プラミペキソール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体ファミリーに強い親和性。非麦角系D2受容体刺激作用」。(今日の治療薬2020,p.952)

「ドパミンアゴニストは軽症・若年発症者の初期治療薬として有効であるが、現在主流となっている非麦角系アゴニストでは突発性睡眠の副作用が看過できず、(中略)MAO-B阻害薬やアマンタジン、あるいはL-ドパでの治療開始を選択肢として考えるべきである」。(今日の治療薬2020,p.944)

「警告:前兆のない突発性睡眠・傾眠等を患者に説明。服用中は自動車運転、機械操作、高所作業等危険を伴う作業に従事不可」。(今日の治療薬2020,p.952)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

腎機能低下時の用法・用量(プラミペキソール)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン病:1日0.25mgより開始し、2週目に1日0.5mgとし、1週間毎に1日量として0.5mgずつ増量。標準維持量1日1.5~4.5 mg。1日量が1.5 mg 未満は分2、朝夕食後、1.5mg以上は分3、毎食後。最大1日量4.5mg
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初回1日0.25mgを分2。最大1日量2.25mgを分2
  • CCr(20mg/dL未満)
    初回1日0.125mgを分1、最大1日量1.5mgを分1
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    十分な使用経験がないので, 状態を観察しながら慎重投与

エフピー(一般名:セレギリン)

モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬:
「脳内ドパミンの代謝を抑制、ドパミンモジュレーターとして治療効果を延長。覚醒剤原料」。(今日の治療薬2020,p.949)

選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-B阻害薬、MAO阻害薬)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

アーテン(一般名:トリヘキシフェニジル)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「震戦などの初期症状に有効。認知症症状を来たしやすいといわれており、高齢者での使用は注意を要する」。(今日の治療薬2020,p.954)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、抗コリン作用があることを示している。

アキネトン(一般名:ビペリデン)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「トリヘキシフェニジル参照+抗振戦・抗硬直・抗カタレプシー作用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケールに関してもトリヘキシフェニジルに準ずる。

シンメトレル(一般名:アマンタジン)

ドパミン遊離促進薬(NMDA受容体拮抗薬):
「抗パーキンソン作用、抗Aインフルエンザウイルス作用(但し大部分が耐性)、ドパミン放出促進作用、ジスキネジア抑制作用あり。軽症患者での治療導入、レボドパ補助薬として使用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(アマンタジン)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。
透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン症候群:初期量1日100mgを分1~2、1週間後に維持量1日200mgを分2、最大1日量300mgを分3
    2)脳梗塞後遺症:1日100~150mgを分2~3 → インフルエンザ感染症は別途
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1回100mgを2~3日毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    1回50~100mgを7日毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌

コムタン(一般名:エンタカポン)

カテコール・Oメチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:
「レボドパの代謝を阻害、その血中濃度を保ち、脳内移行を増加」。(今日の治療薬2020,p.950)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

レキップ(一般名:ロピニロール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体系に選択的に作用する非麦角系。ジスキネジア発現遅延効果及びレボドパ製剤併用例(進行期パーキンソン病患者)で症状が悪くなる(off)時間の短縮効果」。(今日の治療薬2020,p.953)

ロピニロールは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ノウリアスト(一般名:イストラデフェリン)

アデノシンA2a受容体拮抗薬:
「アデノシンA2a受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.954)

イストラデフェリンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

レグナイト(一般名:ガバペンチン)

レストレスレッグス症候群治療薬:(今日の治療薬2020,p.957)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【パーキンソン病治療薬】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]
  • 認知機能低下、せん妄、過鎮静、口腔乾燥、 便秘、排尿症状悪化、 尿閉
  • 可能な限り使用を控える。代替薬:L-ドパ

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

抗てんかん薬(デパケン、テグレトールなど)

抗てんかん薬(概要)

てんかんとは

「てんかん診療ガイドライン2018」(日本神経学会)は、てんかんについて、次のように要約している。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html

てんかんとは、てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害である。
すなわち、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こる。
発作は突然に起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化などが生じる。
明らかなけいれんがあればてんかんの可能性は高い

また、てんかんの多彩な症状として、次のようなものが挙げられている。

  • ひきつけ、けいれん
  • ボーっとする
  • 体がピクッとする
  • 意識を失ったまま動き回ったりするなど

てんかんの分類と第一選択薬

てんかんの分類は、全般発作と部分発作に大別される。
そして、全般発作、部分発作の別で第一選択薬は異なってくる。
ただし、部分発作という用語はガイドライン2010でなくなり、焦点発作(意識障害あり、なし)に統一された。

  • 全般発作:
    全般性とは、発作が両側大脳半球のネットワーク内に起こり、このネットワークが急速に発作に巻き込まれるものをいう。
  • 焦点発作(意識障害有り、無し):←従来の部分発作という用語はなくなった
    焦点性とは、発作が一側大脳半球だけのネットワークに起始し、はっきりと限局する。
    あるいはそれよりももう少し広汎に一側半球内に広がったものをいう。
    つまり、従来の部分発作という用語はなくなり、焦点性に再定義された。

とはいうものの、同ガイドライン2010においても、全般(発作)・部分(発作)の用語を下記のとおり使用している。

新規発症の全般てんかんでの選択薬はなにか:

  • 全般性強直間代発作に対して、バルプロ酸が第一選択薬として推奨される。
    第二選択薬として、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルが推奨される。
    妊娠可能年齢女性ではバルプロ酸以外の薬剤治療を優先する。
  • 欠神発作では、バルプロ酸、エトスクシミド、ついでラモトリギンが推奨される。
  • ミオクロニー発作では、バルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマートが推奨される。

新規発症の部分てんかんでの選択薬はなにか:

  • 第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨される。
  • 第二選択薬としてフェニトイン、バルプロ酸、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ラコサミド、ペランパネルが推奨される。

治療薬物モニタリング(TDM)を必要とする薬物がある

抗てんかん薬TDM標準化ガイドライン 2018【電子版】
一般社団法人 日本TDM学会 (編)

概要
抗てんかん薬の効果と副作用の発現には個人差が大きい。そのため、日常臨床における治療薬物モニタリング(TDM)が投与計画を決定するうえで重要な手段となり、各種抗てんかん薬の薬物動態に基づいたTDMを行う必要がある。本書では11種類の抗てんかん薬について、TDMの標準的な手法が薬剤別にまとめられた。TDMに携わる薬剤師や臨床検査技師、TDMをオーダーする医師必携のガイドラインである。
https://store.isho.jp/search/detail/productId/1905135190

片頭痛の予防薬

「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • バルプロ酸、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防の保険適応有り)
  • トピラマート、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防薬として)
  • カルバマゼピン、推奨度なし
  • ラモトリギン、推奨度なし
  • ガバペンチン、推奨度なし

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である。「慢性疼痛治療ガイドライン2018」では、上記のように評価されている)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

てんかん診療ガイドライン2018(日本神経学会)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html
てんかんと自動車運転(日本てんかん協会)
https://www.jea-net.jp/epilepsy/drive

薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9誘導薬―

抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール)は、CYP2C9の誘導薬であり、ワルファリンの抗凝固作用を明らかに減弱させる。
その作用はリファンピシンよりも弱く、S-ワルファリンのクリアランスの増大は、おおよそ1.25~2倍程度と考えられる。
ただし、ワルファリンとカルマバゼピンとの長期併用でコントロールができていたケースで、カルマバゼピンを中止したところ、プロトロンビン時間の延長がみられたとの報告がある。
併用中の酵素誘導薬を中止する場合、ワルファリンの用量調節を考慮する必要がある。(PISCS2021,p.155)

医薬品各種(抗てんかん薬)

デパケン(一般名:バルプロ酸)

抗てんかん薬(複合作用):
全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

デパケン細粒(20%、40%)
デパケン錠(100mg、200mg)
シロップ(5%、50mg/mL)

新規発症の全般てんかんでは、第一選択薬となる。
(全般性強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作)
ただし、部分発作での選択順位は高くない。
新規発症の部分てんかんでは、第二選択薬となる。

双極性障害(躁が前景の場合)では、第一選択薬の一つとなる。
なお、妊娠可能年齢女性では、バルプロ酸以外の薬剤治療を優先する(催奇形性有り)。
統合失調症の入院患者で鎮静が必要な場合、統合失調症治療薬に加えることがある。(今日の治療薬,p.845)

【効能・効果】
○各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
○躁病および躁うつ病の躁状態の治療
○片頭痛発作の発症抑制

【用法・用量】
〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1,200mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
〈片頭痛発作の発症抑制〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1,000mgを超えないこと。

(デパケン添付文書)

バルプロ酸は、CYP2C9阻害薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    バルプロ酸:IR(CYP2C9)0.61(800mg/日投与)、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

バルプロ酸は、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

「抗てんかん薬:バルプロ酸は予防薬として国際的にも広く使われている。てんかんよりも少量で有効」。(今日の治療薬2020,p.932)

【適応症の一つ】片頭痛発作の発症抑制
「本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること」。(デパケン添付文書)

推奨度は高いが、眠気の副作用や催奇形性など注意事項も多い。

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)

バルプロ酸は、代表的な「非線形型薬物」である

  • バルプロ酸は、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

バルプロ酸は蛋白結合率の高い薬物であり、タンパク結合の飽和が原因で血中濃度が頭打ちとなる。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~

血漿中蛋白結合率
>90%(およそ100μg/mL以上の濃度では結合が飽和する)

(デパケン添付文書)

テグレトール(一般名:カルバマゼピン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.916)

新規発症の部分てんかんでは、第一選択薬となる。

カルバマゼピンは、非線形型薬物である

  • カルバマゼピンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

カルバマゼピンは、薬物代謝酵素の自己誘導を起こす

カルバマゼピンは、代謝の自己誘導を起こすことが知られている。
日常臨床において、治療薬物モニタリング(TDM)実施の対象となる。
「血清内濃度/投与量の比は投与開始10日までは上昇するが、その後低下し、血清内濃度は服薬日数に依存して変動することが認められる」。(テグレトール添付文書)

主として CYP3A4 による代謝を受ける。
自己誘導を起こすため、消失半減期は投与初期で 10-36 時間であるのに対し、連続投与時では 10-24 時間に短縮される。
抗てんかん薬のTDMガイドライン(案)Draft version 1.2,p.15
http://plaza.umin.ac.jp/~jstdm/news/osirase_public2012_4.pdf

カルバマゼピンは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    カルバマゼピン:IC(CYP3A4)3.0倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

カルバマゼピンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.90)

86歳女性、体重42kg、三叉神経痛
カルバマゼピン錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、7日分

消失半減期(hr)=約16~24時間
投与間隔/消失半減期=12/16~12/24=0.75~0.5<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=0.75~0.85(中間値をとって0.8とする)
塩係数(S)=1.0
1回投与量(Dose)=100mg
投与間隔(τ)=12時間
分布容積(Vd)=0.8~1.8L/kg(中間値をとって1.3L/kgとする)
消失速度定数(Ke)=0.028/hr

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.8×1.0×100mg/12hr)/(1.3L/kg×42kg(体重)×0.028/hr)
=6.6667/1.5288
=4.36mg/L⇒4.4μg/mL

テグレトールの有効血中濃度:
4~8μg/mL
有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算

リボトリール、ランドセン(一般名:クロナゼパム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.914)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

「作用機序:
抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることにより、GABAニューロンの作用を特異的に増強すると考えられている」。(リボトリール添付文書)

クロナゼパムの用法・用量を考える

「健康成人男子6例にクロナゼパム1mgを単回経口投与したとき、未変化体の血中濃度は投与2時間後に最高に達し(6.5ng/mL)、半減期は約27時間であった」。(リボトリール添付文書)

(どんぐり2019,p.203-206、服薬指導例・薬歴記載例有り)

20歳女性、自覚症状(ジストニア症状)に対する対症療法
クロナゼパム錠0.5mg、1回1錠、1日1回、就寝前、14日分
⇒増量(1回1錠、1日2回、朝食後と就寝前、90日分)

投与間隔12~24時間/半減期27時間=0.44~0.89<3.0
⇒半減期のある薬物
半減期27時間×5=135⇒約5.6日
効果が発現するには5日以上かかる。

増量(投与回数1日1回から2回へ)されたことから、薬理作用に伴う副作用として、精神神経系の「眠気(13.9%)、ふらつき、意識障害」が起こる可能性がある。

注)ジストニア:持続的に筋肉が収縮する運動であり、ある特定の肢位を維持し続ける様になる
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)」2009年5月

イーケプラ(一般名:レベチラセタム)

抗てんかん薬(主にSV2a結合):
「特異な作用機序。薬物相互作用がほとんどない」。(今日の治療薬2020,p.922)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)、新規発症の部分てんかん。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

レベチラセタムは、非線形型薬物である

  • レベチラセタムは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,P.234)
    250mgから3000mgまでの増量では線形、3000mg以降は非線形である。

腎機能低下時の用法・用量(レベチラセタム)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日2回、最大1回1,500mgを1日2回
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1回500mgを1日2回、最大1回1,000mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回750mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回500mgを1日2回
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回500mgを1日1回、最大1回1,000mgを1日1回、HD患者はHD後に1回250mg、最大1回500㎎を補充

エクセグラン(一般名:ゾニサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「幅広い発作型(部分発作、全般発作)に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

ゾニサミドは、非線形型薬物である

ゾニサミドは、高用量では「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
ゾニサミドは、治療用量範囲では線形型を示し、高用量では非線形型となる。

アレビアチン、ヒダントール(一般名:フェニトイン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「血中濃度は飽和動態に従う(指数関数的に上昇)」。(今日の治療薬2020,p.916)

劇薬(錠を除く)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェニトインは、代表的な「非線形型薬物」である

  • フェニトインは、「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

肝消失型薬物であり、投与量が増加して薬物代謝酵素(CYP2C9など)が飽和すると、体内からの消失が遅くなり急激に血中濃度が上昇する。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~
(添付文書への記載は無し)

フェニトインは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェニトイン:CR(CYP2C9)0.72、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
    フェニトイン:IR(CYP2C9)0.68、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

フェニトインは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    フェニトイン:IC(CYP3A4)4.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬

ラミクタール(一般名:ラモトリギン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「幅広い抗てんかんスペクトラムを有す」。(今日の治療薬2020,p.918)

第一選択薬:新規発症の部分てんかん
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作、欠神発作)

  • ラモトリギンは、線形型薬物である。(どんぐり2019,P.234)

ガバペン(一般名:ガバペンチン)

抗てんかん薬(複合作用):
「全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

ガバペンチンは、非線形型薬物である。

  • ガバペンチンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(ほぼ100%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    初日1日600mg、2日目1日1,200mg、3日目以降は維持量として1日1,200~1,800mgをいずれも分3、最大1日量2,400mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    初日1日400mg、維持量として1日600~800mgをいずれも分2、最大1日量1,000mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    初日1日200mg、維持量として1日300~400mgをいずれも分1、最大1日量500mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg又は2日に1回300mg、最大1日量200mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg、HD日にはHD後。又は維持量として週3回HD後に1回200~400mg。CAPD患者ではGFR<15mL/minに準じる

フェノバール(一般名:フェノバルビタール)

抗てんかん薬(バルビツール酸系):
「半減期が長い」。(今日の治療薬2020,p.913)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェノバルビタールは、CYP2C9基質薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェノバルビタール:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬

フェノバルビタールは、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)
    フェノバルビタール:CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.47)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

マイスタン(一般名:クロバザム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.915)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

  • クロバザムは、「線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

クロバザムは、CYP2C19の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    クロバザム:CR(CYP2C19)データ無し、(PISCS2021,p.54)

クロバザムは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    クロバザム:IR(CYP2D6)データ無し、(PISCS2021,p.50)

トピナ(一般名:トピラマート)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「難治性部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

  • トピラマートは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(トピラマート)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ビムパット(一般名:ラコサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「薬物相互作用が少ない」。(今日の治療薬2020,p.920)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

  • ラコサミドは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ラコサミド)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

エピレオプチマル、ザロンチン(一般名:エトスクシミド)

抗てんかん薬(主にCaチャネル阻害):
「欠神発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(欠神発作)。

フィコンパ(一般名:ペランパネル)

抗てんかん薬(AMPA受容体拮抗):
「特異な作用機序」。(今日の治療薬2020,p.924)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

ペランパネルは、非線形型薬物である

  • ペランパネルは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
    ペランパネルは、2mgから4mgへの増量では線形、4mgから8mgへの増量では非線形を示す。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)そのほか

抗うつ薬(SNRI、そのほか)概略

  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
    SNRI(serotonin/noradrenaline reuptake inhibitors)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
    NaSSA(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant
  • セロトニン拮抗・再取り込み阻害薬(SARI)
    SARI(serotonin antagonist/reuptake inhibitor)

うつ病患者では、神経伝達物質であるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の濃度が減少しているとされている。

  • セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらす。
  • ノルアドレナリンは、意欲・関心(やる気や気力など)を高める。
  • ドーパミンは、興味や楽しみなどを高める。

SNRIは、セロトニンやノルアドレナリン濃度を高めることによって、抗うつ効果を発揮すると考えられている。
SNRIは、セロトニンやノルアドレナリンのシナプスでの回収(再取り込み)を阻害して、シナプス間隙のセロトニンやノルアドレナリン濃度を高める作用を有する。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を促して、両者の濃度を高める。

セロトニン、ノルアドレナリンは、消化管の活動にかかわっている。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。

ノルアドレナリンは、交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質である。
したがって、「交感神経のかかわる心臓・前立腺などに対する悪影響や、不眠の副作用も出やすい」→特にサインバルタ。(児島2017,p.268)

ノルアドレナリンには痛みを軽減する作用もあるため、慢性的な痛みがある患者に使われることも多い。
例えば、サインバルタがそうである。

なお、多くの抗うつ薬は、痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、慎重投与となる。

SSRIとSNRI

入院・外来にかかわらず、うつ病の第一選択薬は、SSRI若しくはSNRIである。
入院・外来にかかわらず、「不眠、食思不振がある」場合は、ミルタザピンが第一選択薬となる。
外来対応が可能で「不安症を併せ持つ」場合、エスシタロプラムとセルトラリンが第一選択薬となる。
(今日の治療薬2020,p.845)

元住吉こころみクリニック
「抗うつ剤の副作用と安全性の比較」
cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-side/

⇒「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

医薬品各種(SNRIなど)

  • サインバルタ(SNRI):
    ノルアドレナリン作用強い(慢性疼痛に適応、前立腺肥大・高血圧・心疾患注意)
    肝消失型薬物だが、高度腎機能障害のある患者では尿毒素が蓄積。
    CYP1A2(強い基質薬)、CYP2D6(中程度の阻害薬)。
  • トレドミン(SNRI):
    脂溶性だが腎排泄(尿細管から分泌)。
  • イフェクサーSR(SNRI):
  • リフレックス、レメロン(NaSSA):
    不眠、食思不振(第一選択薬)
  • レスリン、デジレル(SARI):
    もっぱら睡眠薬として使用される。

サインバルタ(一般名:デュロキセチン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
「投与早期の胃腸症状に注意。肝障害患者への投与は控える。さまざまな疼痛に効果」。(今日の治療薬2020,p.878)

サインバルタ・カプセル(20mg、30mg)

「(SNRIは)セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みに選択的に働く。SSRIよりも意欲に効果が期待。消化器症状、血圧上昇あり。循環器疾患には慎重投与」。(同上,p.858)

【効能・効果】
〇うつ病・うつ状態
〇下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害
線維筋痛症
慢性腰痛症
変形性関節症

【用法・用量】
〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。
投与は 1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。
なお、効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができる。
〈線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを経口投与する。
投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。

ノルアドレナリンに対する作用が強い

  • 前立腺肥大症等排尿困難のある患者:
    ノルアドレナリン再取り込み阻害作用により症状が悪化することがある。
  • 高血圧又は心疾患のある患者:
    本剤投与前に適切にコントロールし、定期的に血圧・脈拍数等を測定すること。
    心拍数増加、血圧上昇、高血圧クリーゼがあらわれることがある。

(サインバルタ添付文書)

腎機能低下時の用法・用量(デュロキセチン)

  • 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
    尿中排泄率(0%)、ESKDでのクリアランス(-62%)、ESKDの用量(禁忌)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛:1日40mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量、最大1日量60mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛:1日60mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    中等度腎障害では薬物動態に変化が認められないため減量は不要(Clin Pharmacokinet 49:311-321,2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(ほとんど尿中排泄されず、半減期も延長しないものの、AUC、Cmaxが約2倍に上昇する)

デュロキセチンと尿毒素の蓄積

デュロキセチンは、肝消失型の薬物である。
それにもかかわらず、高度腎機能低下のある患者(CCr<30mL/分)及び透析患者には禁忌である。

「糞中及び尿中にデュロキセチンはほとんど存在せず、投与量の72.0%は代謝物として尿中に排泄され、18.5%は糞中に排泄された(外国人によるデータ)」⇒肝消失型であることを示す。(サインバルタ添付文書)

高度の腎機能障害のある患者では、健康成人と比べて、CmaxとAUCが約2倍に増大する(それぞれ有意差有り)。(サインバルタ・インタビューフォームより)

「腎機能が正常から中等度の障害の範囲ではデュロキセチンの血漿中濃度変化に及ぼす腎機能の影響は大きくないと考えられた」⇒高度腎機能障害のある患者のみ問題となる。(サインバルタ審査報告書(2010年01月20日)2 申請資料概要)

ところで、「実践薬学2017,p.191」では、同じく審査報告書からの引用として「正常~中等度障害の腎機能の範囲では、本剤の血漿中未変化体濃度に対する腎機能の影響は大きくない」と記載している。

それはともかくとして、実践薬学2017では、「高度の腎機能障害のある患者で問題となるのは尿毒素の蓄積である」として、その機序について考察している。
大変参考になる意見である。

「(尿毒素の蓄積によって)CYPやトランスポーターなどの機能性蛋白質の翻訳後修飾の阻害を引き起こし、結果として、デュロキセチンやワルファリンの代謝が遅延してしまう。つまりそれらの血中濃度が上昇する」⇒腎機能低下患者ではCYP活性などが低下する。(実践薬学2017,p.191)

デュロキセチンは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

フルボキサミン(CYP1A2阻害薬)とは、併用注意である。
チザニジン、ラメルテオン(CYP1A2の強い基質薬)は、フルボキサミンと併用禁忌である。

デュロキセチンは、CYP2D6阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    デュロキセチン:IR(CYP2D6)0.84、(PISCS2021,p.50)、120mg/day投与
    デュロキセチン:IR(CYP2D6)0.84、(PISCS2021,p.50)、60mg/day投与
    デュロキセチン:CR(CYP2D6)0.37、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

トレドミン(一般名:ミルナシプラン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):(今日の治療薬2020,p.879)

トレドミン錠(12.5mg、15mg、25mg、50mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人には、ミルナシプラン塩酸塩として1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、高齢者には、1日25mgを初期用量とし、1日60mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。

腎機能低下時の用法・用量(ミルナシプラン)

  • 脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(高齢者への減量法有り)。
    ⇒参照(デュロキセチン)

イフェクサーSR(一般名:ベンラファキシン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI):
「少量ではSSRI的に、高用量ではノルアドレナリンが作用する。用量の幅は広い」。(今日の治療薬2020,p.879)

イフェクサーSR徐放カプセル(37.5mg、75mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし、1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこと。

腎機能低下時の用法・用量(ベンラファキシン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ベンラファキシンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.92、(PISCS2021,p.50)
    R,S-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.80、(PISCS2021,p.50)
    S-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.59、(PISCS2021,p.50)

リフレックスレメロン(一般名:ミルタザピン)

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
「α2受容体を遮断し、セロトニン・ノルアドレナリン放出を促進。SSRI、SNRIで問題となる胃腸症状や性機能障害が少ない。体重増加と眠気に注意」。(今日の治療薬2020,p.880)

リフレックス錠(15mg、30mg)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ミルタザピン:CR(CYP2D6)0.19、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

SSRIやSNRIなどとは異なり、受容体を遮断し、シナプス間隙の遊離アドレナリンやセロトニンを増加させることで抗うつ効果を示す。(実践薬学2017,p.40)
つまり、直接分泌を増やす作用を持つ。(児島2017,p.268)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはミルタザピンとして1日15mgを初期用量とし、15~30mgを1日1回就寝前に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日45mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として15mgずつ行うこと。

(リフレックス添付文書)

ミルタザピンは、入院・外来にかかわらず、「不眠、食思不振がある」患者では、第一選択薬となる。

ミルタザピンの作用機序

  1. ミルタザピンは、NA細胞体(及び神経線維)のα2自己受容体を遮断することで、ノルアドレナリンの遊離を促進する
  2. 放出されたノルアドレナリンの刺激が、α1自己受容体を介して5-HT細胞体に伝わり、5-HT神経活動を促進する
  3. ミルタザピンは、5-HT神経前シナプスのα2ヘテロ受容体を遮断することで、セロトニンの遊離を促進する
  4. ミルタザピンは、後シナプスの5-HT2、5-HT3受容体を遮断するため、増加したセロトニンは5-HT1受容体への刺激を選択的に増強する
  5. その結果、抗うつ効果をもたらす

(実践薬学2017,p.412-413「ミルタザピン(NaSSA)の作用機序の模式図」)

ミルタザピンの適応外使用(不眠症)

「適応症:うつ病・うつ状態。適応外使用:不眠症」。(今日の治療薬2020,p.880)

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

米国では、トラゾドンと同様に、不眠に対して多く処方されている。
睡眠薬として用いるならば、0.25~0.5錠など(1錠の規格は15mg錠)からスタートした方がよいだろう。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

ミルタザピンとミアンセリンは、化学構造がよく似ている。ミルタザピン=6位がN(窒素)、ミアンセリン=6位がC(炭素)となっている。ただし半減期は、ミルタザピン(半減期31.7時間)の方がミアンセリン(半減期18時間)よりも長いことは注意が必要だろう。(実践薬学2017,pp.411-412「ミルタザピンとミアンセリンの6位近傍の結合様式の模式図」)

なお、両者の構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。それに対して、よく似た構造のエピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。(実践薬学2017,pp.414)

腎機能低下時の用法・用量(ミルタザピン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日15mgを初期用量とし、1日15~30mgを分1、就寝前、最大1日量45mg。増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量15mgずつ
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため2/3に減量
  • CCr(15mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため1/2に減量
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    本剤のCLが低下するため1/2以下に減量。
    ただし、透析患者で薬物動態に影響ないという症例報告もある(Pharmacopsychiatry 41:259-260,2008)

レスリンデジレル(一般名:トラゾドン)

その他の抗うつ薬:
「5HT2a受容体を遮断し、またセロトニン再取込みを抑制。抗コリン作用弱く、鎮静が強い」。(今日の治療薬2020,p.880)

弱いセロトニン再取り込み阻害作用と強い5-HT2受容体遮断作用を併せ持つ。(実践薬学2017,p.39)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

レスリン錠(25mg、50mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
トラゾドン塩酸塩として、通常、成人には1日75~100mgを初期用量とし、1日200mgまで増量し、1~数回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

トラゾドンの適応外使用(不眠症、せん妄)

「適応症:うつ病、うつ状態。適応外使用:不眠症、せん妄」。(今日の治療薬2020,p.880)

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の発売以降は抗うつ薬として使われることは少なくなり、精神科ではむしろ睡眠薬として汎用されている。
米国では第一選択薬の1つである。

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など
副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

トラゾドンは、全体の睡眠時間を増加させ、何度も持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らすといわれている。
睡眠障害に使用する場合は、25~50mgを就寝前に用いる(100mgとしている報告もある)。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

リーマス(一般名:炭酸リチウム)

気分安定薬:
「双極性障害の再発予防、治療抵抗性うつ病に効果」。(今日の治療薬2020,p.881)

リーマス錠(100mg、200mg)

【効能・効果】
躁病および躁うつ病の躁状態

【用法・用量】
炭酸リチウムとして、成人では通常1日400~600mgより開始し、 1日2~3回に分割経口投与する。
以後3日ないし1週間毎に、1日通常1200mgまでの治療量に漸増する。
改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200~800mgの1~3回分割経口投与に漸減する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

(リーマス添付文書)

炭酸リチウムは、双極性障害患者に対して、うつが前景の場合でも躁が前景の場合でも第一選択薬となる。
ただし、腎障害に不可であり、また定期的な採血を必要とする。

腎機能低下時の用法・用量(リチウム)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日400~600mg分2~3より開始し、以後3日ないし1週間毎に1日1,200mgまで漸増。改善後は、維持用量1日200~800mgを分1~3
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    50~75%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    25~50%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
    1回600mgを週3回HD後という報告あり(Am JPsychiatry 167:1409-1410,2010)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬 (スルピリド含む))、ただし、SNRIは含まれていない?

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、 ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンは CYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

抗精神病薬(統合失調症治療薬など)

統合失調症治療薬(概要)

(今日の治療薬2020,pp.843-857)

統合失調症は、陽性症状(妄想、幻覚等)および陰性症状(感情の平板化、意欲の欠如等)を主症状とする慢性の精神疾患であり、長期にわたる維持療法を必要とする。
維持療法中の重要な治療目標として、精神症状の再発、再燃防止と患者のQOL向上が挙げられる。

「(統合失調症の)原因としてドパミンやその受容体の異常が考えられており、ドパミン神経路のうち幻覚妄想に関係するとされる中脳―辺縁系路のドパミンD2受容体の遮断効果のある抗精神病薬が治療の中心となる」。(今日の治療薬2020,p.843)

抗精神病薬(統合失調症治療薬)は、一般的には、薬効よりも副作用の状況をみながら使い分けられる。
副作用としては、錐体外路症状や高プロラクチン血症などが重要である。

各剤の副作用リスクの違いについては、受容体親和性(Ki値,nM)から考えることができる。
D1、D2、D3、D4、5-HT1a、5-HT2a、5-HT2c、α1、H1、M1
(参考:「Next Challengeプログラム」Webサイト,「抗精神病薬と耐糖能障害、脂質代謝異常」大塚製薬)

錐体外路症状

ドパミン神経の過剰な遮断によって、日常の動作が障害されてスムーズな体の動きができなくなる症状のこと。
振戦・歩行困難などの運動機能障害のことをいう。

  • ジスキネジア:無意識に口が動く、手足が勝手に動く、など
  • ジストニア:目が上を向いたままになる、ろれつが回らなくなる、首が反り返る・つっぱる、など
  • パーキンソン様症状:手がふるえる、小刻みに歩く、など
  • アカシジア:身体(足)がムズムズしてじっと座っておれない(絶えず歩き回る)、など

抗精神病薬共通の副作用として、「ドパミン神経の黒質―線状体路を遮断することでEPSが出現する」。
抗精神病薬によるEPS(錐体外路症状)そのほかの副作用には、以下のようなものがある。
(同上,pp.847-848参照)

  • 治療早期の急性ジストニア(首や上肢の筋肉のつっぱりや眼球上転)。
  • パーキンソニズム(筋強剛や振戦など)。
  • 長期投与で出現する遅発性ジスキネジア(舌や口唇、下顎の不規則な不随意運動や四肢の粗大な振戦)。
  • プロラクチン値上昇(ドパミン神経の漏斗―下垂体路を遮断→月経異常や乳汁分泌、射精不能)。
  • ヒスタミンH1受容体やセロトニン5-HT2c受容体遮断に伴う肥満。
  • 抗コリン作用に伴う慢性便秘、多飲水(口渇)。

クロルプロマジン換算値(CP換算値)=薬の処方量÷等価換算×100
適正値は300mg~600mgであり、1,000mg以上は過剰投与の疑いがある。

「主な抗うつ薬の副作用、相互作用における比較」。(同上,p.853)

第一世代(定型)抗精神病薬ほか(従来薬)

定型抗精神病薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系)は、錐体外路症状が出やすい薬物である。
ただし、体重や血糖への影響は少ない。

  • フェノチアジン系(ウインタミンなど)
    抗コリン作用、アドレナリンα1作用が強い。
  • ブチロフェノン系(セレネースなど)
    ドパミンD2受容体に拮抗することで、妄想・幻覚などの陽性症状を改善する。
    抗コリン作用は弱いが、EPSやプロラクチン値上昇作用が強い。
  • ベンザミド系(ドグマチールなど)
    ドグマチール(スルピリド)は、抗潰瘍薬である。
    低用量(50~150mg)では抗うつ作用、高用量(300mg以上)では抗精神病作用が認められる。
    脳内移行が悪いため、高プロラクチン血症が出やすい。
    高齢者では、ESPが出やすい。

第二世代(非定型)抗精神病薬(第一選択薬)

非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬の副作用である「錐体外路症状」(EPS:extrapyramidal symptom)を軽減した薬物である。
ただし、体重増加や血糖・脂質上昇などの代謝系副作用がある。

薬剤間での治療効果には差がないとされている。
副作用の出やすさによって使い分けられる。
例えば、眠気、体重増加や性機能障害などである。

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA:Serotonin-Dopamine Antagonist)
    リスパダールなど:ドパミンD2受容体に加えてセロトニン5-HT2受容体にも拮抗して、意欲低下などの陰性症状も改善する。
    セロトニン5-HT2受容体に対する拮抗作用は、EPSを減らす要因ともなる。
    高プロラクチン血症←血液脳関門を通過しにくいため、血液脳関門の外にある下垂体に影響しやすい。
  • 多元受容体作用抗精神病薬(MARTA:Multi-Acting Receptor-Targeted Antipsychotics)
    ジプレキサなど:セロトニン・ドパミン以外のコリン、ヒスタミン、アドレナリンなど、多くの受容体に作用する。
    鎮静効果があるため睡眠薬の代わりに使用されることもある。
    EPSやプロラクチン値上昇はほとんどない。
    体重増加、脂質代謝異常や血糖上昇が問題となる。
  • ドパミンD2受容体部分作動薬(DPA:Dopamine D2 receptor partial agonist)
    エビリファイ:ドパミンD2受容体を部分的に刺激する部分作動薬である。
    ドパミン神経路を過度に遮断することがないので、EPSやプロラクチン値上昇はほとんどない。
    ただし、鎮静効果が弱い。

眠気と化学構造

クロルプロマジン、クエチアピンなどは、第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。
抗ヒスタミン作用を示し、BBBを通過する。
つまり、眠気がある。
そのほか、三環系抗うつ薬もよく似た構造の三環を持っている。(実践薬学2017,p.416)

医薬品各種(定型・非定型型精神病薬)

  • セレネース(一般名:ハロペリドール)、第一世代抗精神病薬
    錐体外路障害があり、第一選択薬とはならない。
  • リスパダール(一般名:リスペリドン)、第二世代抗精神病薬(SDA)
    第一選択薬である(世界100か国以上での使用実績が豊富)。
    入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬。
    高プロラクチン血症に注意。
  • ジプレキサ(一般名:オランザピン)、第二世代抗精神病薬(MARTA)
    入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、リスパダールと共に第一選択薬。
    糖尿病に禁忌、体重増加に留意。
  • エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)、第二世代抗精神病薬(DPA)
    外来(鎮静不要)、入院(鎮静不要あるいは短期の鎮静でよい)の場合、第一選択薬。

セレネース(一般名:ハロペリドール)

ブチロフェノン系抗精神病薬:
「抗幻覚妄想作用は強いが、錐体外路症状多い。抗α1作用があり、静注でのQT延長に注意」。(今日の治療薬2020,p.861)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

【禁忌】パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者〔錐体外路症状が悪化するおそれがある〕

(セレネース添付文書)

リスパダール(一般名:リスペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「抗幻覚妄想作用は強い。非定型薬の中では錐体外路症状やプロラクチン値上昇を来しやすい」。(今日の治療薬2020,p.864)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬となる。
高プロラクチン血症に注意する。

【効能・効果】
〈リスパダール錠1mg、リスパダール錠2mg、リスパダール細粒1%〉
○統合失調症
○小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
〈リスパダール錠3mg〉
統合失調症

【用法・用量】
6.1 統合失調症
通常、成人にはリスペリドンとして1回1mg 1日2回より開始し、徐々に増量する。
維持量は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
但し、1日量は12mgを超えないこと。

(リスパダール添付文書)

【適応外処方】

厚生労働省 保医発0928第1号「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」(2011)
原則として、「リスペリドン【内服薬】」を「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」、「パーキンソン病に伴う幻覚」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める。

リスパダールは、剤形が豊富である。
そして、それらはいずれも食事の影響を受けない
体調不良で食事が取れない日や、服薬時間がズレてしまった日でも、病状のコントロールをしやすい。
(参考:児島2017,p.281)

リスパダール細粒(1%)
リスパダール錠(1mg、2mg、3mg)
リスパダールOD錠(0.5mg、1mg、2mg)
リスパダール内用液(1mg/1mL、包装各種有り)
リスパダールコンスタ(筋注用:25mg、37.5mg、50mg)

リスペリドンは、CYP2D6の基質薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    リスペリドン:CR(CYP2D6)0.85、(PISCS2021,p.50)
    リスペリドン:CR(CYP2D6)0.16、(PISCS2021,p.50)
    (リスペリドンと代謝物の9-ヒドロキシリスペリドンに活性がある)

薬物相互作用ガイドライン、そのほかの資料では挙げられていない。

併用注意(併用に注意すること):
CYP2D6を阻害する薬剤(パロキセチン2)等
本剤及び活性代謝物の血中濃度が上昇することがある。
これらの薬剤の薬物代謝酵素阻害作用による。

相互作用:
本剤は主としてCYP2D6で代謝される。
また、一部CYP3A4の関与も示唆される。

(リスパダール添付文書)

リスペリドンは、代謝酵素CYP2D6によって代謝活性体のパリペリドンに変換され、薬効を発揮する。
ところが、代謝酵素CYP2D6の働きには、遺伝的素因による個人差が大きい。
したがって、リスペリドンの薬効は個人差が大きくなり、薬の効果や副作用が安定しないという問題がある。
⇒「インヴェカ」(改良品の開発)

腎機能低下時の用法・用量(リスペリドン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)統合失調症:1回1mgを1日2回より開始し、維持量1日2~6mgを分2、最大1日量12mg
    2)その他の適応は添付文書参照
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    活性代謝物が蓄積するため、1日1mgを分2より開始し、維持量2~6mg を分2、最大1日量6mg

インヴェカゼプリオン(一般名:パリペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「リスペリドンの代謝産物。鎮静は弱い。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.865)

パリペリドンは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。
入院が必要(鎮静不要、あるいは短期の鎮静でよい場合)。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

高プロラクチン血症に注意する。

パリペリドンは、リスペリドンの代謝活性体そのものであり、代謝酵素CYP2D6による代謝を必要としない。
代謝酵素CYP2D6の働きには、遺伝的素因による個人差が大きい。
代謝酵素CYP2D6を必要としないパリペリドンは、薬効に個人差を生じにくい。

インヴェカの錠剤は、浸透圧放出システム(OROS:Osmotic Controlled Release Oral Delivery System)を採用した徐放製剤になっている。
したがって、1日1回の服用で、24時間にわたって安定した血中濃度を維持することができる。

インヴェカは、朝食後に服用する。
空腹時服用では、吸収量が低下する。
Cmax(最高血中濃度)36%、AUC(血中濃度時間曲線化面積)37%、それぞれ低下する。
「夕食後などに服用すると、睡眠中の副交感神経優位の状態で腸の蠕動運動が活発になり、まだ錠剤が有効成分を放出している状態で排泄されてしまう恐れ」がある。(児島2017,p.286)

ゼプリオン(一般名:パリペリドンパルミチン酸エステル)
パリペリドンの注射薬。
1回の注射で効果が4週間持続する。

腎機能低下時の用法・用量(パリペリドン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1日1回6mg,朝食後より開始。1日12mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は5日間以上の間隔をあけて1日量として3mgずつ行うこと
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1日用量として3mgから開始し、1日用量は6mgを超えないこと
  • CCr(50mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(本剤の排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある)

ルーラン(一般名:ペロスピロン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「5-HT1a受容体に働くため、抗不安効果もあり、錐体外路系副作用は弱い」。(今日の治療薬2020,p.866)

ペロスピロンは、SDAの中では唯一「セロトニン5-HT1a受容体」にも作用する。
その結果、錐体外路障害を軽減するとともに、抗不安効果・抗うつ効果を発揮する。
ペロスピロンは、5-HT1a受容体への親和性が非常に高い。
(Ki値:nMは、極端に小さい)

ペロスピロンは半減期が短く(5~8時間)、せん妄の治療にも使いやすい。
持ち越し効果のリスクが少ない。
なお、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」は適応外処方(保険適応有り)となる。→リスペリドン参照。

空腹時に服用すると、吸収が大きく低下する。
日本国内のみで発売。

ロナセン(一般名:ブロナンセリン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「5-HT2a受容体にも働くが、ドパミンD2D3受容体により働く。錐体外路症状は出やすいが、メタボリックな副作用は少ない。鎮静は弱い」。(今日の治療薬2020,p.866)

ブロナンセリンは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。
入院が必要(鎮静不要、あるいは短期の鎮静でよい場合)。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

錐体外路症状(EPS)に注意する。

ブロナンセリンは、リスペリドンと比べて、起立性低血圧や食欲増進・体重増加といった副作用が少ない。
これは、アドレナリンα1やヒスタミンH1受容体への親和性が低いことによる。
(Ki値:nMは、極端に大きい)

空腹時に服用すると、吸収が大きく低下する。
日本・韓国・中国などで発売。

ブロナンセリンは、CYP3Aの基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
    CR(CYP3A4)0.94VS、(PISCS2021,p.46)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
    併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

グレープフルーツジュース(200mL)の飲用で、Cmax、AUCはそれぞれ約1.8倍まで上昇した。
(要約:ロナセン・インタビューフォーム)

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「鎮静作用が強い。錐体外路症状を生じにくい。気分安定効果あり。体重増加、血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬となる。
双極性障害(躁が前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善

糖尿病に禁忌、体重増加に留意する。

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

(ジプレキサ添付文書)

オランザピンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

セロクエルビプレッソ(一般名:クエチアピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「抗幻覚妄想効果は弱いが、鎮静は強い。錐体外路症状は生じにくい。抗うつ効果もあり。体重増加と血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

セロクエル細粒(50%)
セロクエル錠(25mg、100mg、200mg)
クエチアピン錠(12.5mg有り)
ビプレッソ徐放錠(50mg、150mg)

【効能・効果】
統合失調症

【用法・用量】
通常、成人にはクエチアピンとして1回25mg、1日2又は3回より投与を開始し、患者の状態に応じて徐々に増量する。
通常、 1日投与量は150~600mgとし、2又は3回に分けて経口投与する。
なお、投与量は年齢・症状により適宜増減する。
ただし、1日量として750mgを超えないこと。

(セロクエル添付文書)

なお、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」は適応外処方(保険適応有り)となる。→リスペリドン参照。

第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

クエチアピンは、米国においては睡眠薬として処方されることがある。(実践薬学2017,p.41)
不安・焦燥(イライラ)が強い場合、少量の抗精神病薬を用いる。(児島2017,p.253)
⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

(セロクエル添付文書)

ビプレッソ徐放錠(クエチアピンの徐放製剤)は、双極性障害(うつが前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害におけるうつ症状の改善

クエチアピンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、高度である。
    CR(CYP3A4)0.85S、(PISCS2021,p.46)、CYP3A基質薬

クロザリル(一般名:クロザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「効果は強いが体重増加、血糖上昇、無顆粒球症の危険があり、指定施設での入院治療を要する」。(今日の治療薬2020,p.868)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

クロザピンの適応は、以下のとおりである。
「どの抗精神病薬でも効果が得られない(反応性不良)、副作用の問題で必要量を増やせない(耐容性不良)といった場合」。(児島2017,p.276)

クロザピンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シクレスト(一般名:アセナピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「舌下錠。舌への刺激あり。比較的速く効く。鎮静作用あり。メタボリック系副作用は軽度」。(今日の治療薬2020,p.869)

エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)

ドパミン受容体部分作動薬(DPA):
「ドパミンD2受容体の部分アゴニスト。錐体外路症状やプロラクチン値上昇はほとんどみられない。鎮静は弱いが、投与早期の不安、焦燥、アカシジアに注意」。(今日の治療薬2020,p.869)

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    アリピプラゾール:CR(CYP3A4)0.45W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A基質薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    アリピプラゾール:CR(CYP2D6)0.31、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

アリピプラゾールは、外来対応が可能な場合、特に鎮静が不要であれば、第一選択薬となる。
また、入院では、鎮静不要あるいは短期の鎮静でよい場合には、第一選択薬となる。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

双極性障害(躁が前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害における躁症状の改善(高用量)

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)

ドパミン受容体部分作動薬(DPA):
「アリピプラゾールよりセロトニン5-HT2a受容体遮断を持ったため、アカシジアやパーキンソン症状が出にくい。用量の幅は狭い」。(今日の治療薬2020,p.870)

ブレクスピプラゾールは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。

オーラップ(一般名:ピモジド)

その他の抗精神病薬:

細粒(劇薬

ピモジドは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ドグマチール(一般名:スルピリド)

ベンザミド系抗精神病薬:
「低用量で抗うつ作用、高用量で抗精神病作用。潰瘍治癒促進効果あり。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.862)

カプセル、50mg錠を除く(劇薬

腎機能低下時の用法・用量(スルピリド)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)胃・十二指腸潰瘍:[50mg]1日150mgを分3
    2)統合失調症:[50, 100, 200mg]1日300~600mgを分割投与。1日1,200mgまで増量可
    3)うつ病・うつ状態:1日150~300mgを分割投与。1日600mgまで増量可
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日25~300mgを分3
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日25mgを分3
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日25mgを分1。HD患者ではHD日はHD後

グラマリール(一般名:チアプリド)

ベンザミド系抗精神病薬:(今日の治療薬2020,p.863)

腎機能低下時の用法・用量(チアプリド)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日75~150mgを分3。パーキンソニズムに伴うジスキネジアの患者では、1日1回25mgから開始
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日50~75mgを分2~3
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日25~50mgを分1

ウインタミン、コントミン、(一般名:クロルプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い」。(今日の治療薬2020,p.859)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
    第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

ウインタミン細粒(フェノールフタリン酸塩、10%)
コントミン糖衣錠、筋注
劇薬:12.5mg錠、25mg錠を除く)

ヒルナミン、レボトミン(一般名:レボメプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い。催眠作用もあり、少量で睡眠薬としても使用。注射剤は筋注で鎮静に使用」。(今日の治療薬2020,p.859)

  • 抗コリン作用有り。
    抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    レボメプロマジン:IR(CYP2D6)0.67、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

散(50%)
細粒(10%)
錠(5mg、25mg、50mg)
筋注(塩酸塩、25mg/1mL)
劇薬:5mg錠、25mg錠を除く)

ピーゼットシー、トリラホン(一般名:ペルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
「中力価。錐体外路症状は定型薬の中では少ない」。(今日の治療薬2020,p.860)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

散剤、注射剤(劇薬

ペルフェナジンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ペルフェナジン:CR(CYP2D6)0.86、(PISCS2021,p.50)

フルメジン、フルデカシン(一般名:フルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
「抗幻覚妄想作用は強力」。(今日の治療薬2020,p.860)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

錠剤を除く(劇薬

ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):(今日の治療薬2020,p.860)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
制吐作用有り。

ニューレプチル(一般名:プロペリシアジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):(今日の治療薬2020,p.861)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(BPSD

BPSDの原因となりうる心身の要因や環境要因を検討し、対処する。薬剤がBPSD を引き起こすこともあるため、関連が疑われる場合、まずは原因薬剤の中止を検討する。これらの対応で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討する。
(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、行動・心理症状)

  • 薬物療法としては、症状に応じた薬剤の使用を検討する。
  • 抗精神病薬は、幻覚、妄想、焦燥、興奮、攻撃などの症状に対して使用を考慮してもよいが、抗精神病薬のBPSDへの使用は適応外使用であることに留意する。
  • 定型抗精神病薬(ハロペリドール[セレネース]、クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)の使用はできるだけ控え、
  • 非定型抗精神病薬 (リスペリドン[リスパダール]、オランザピン[ジプレキサ]、アリピプラゾール[エビリファイ]、クエチアピン[セロクエル]など)は必要最小限の使用にとどめる。
  • 抑肝散が使用されることがあるが、甘草が含まれるため、偽アルドステロン症による低カリウム血症に注意する。
  • 抗うつ薬が認知症のうつ状態に用いられる場合がある。三環系抗うつ薬は、認知障害のさらなる悪化のリスクがあるためできる限り使用は控えるべきである。
  • 抗精神病薬は、認知症患者への使用で脳血管障害および死亡率が上昇すると報告があるため、リスクベネフィットを考慮し、有害事象に留意しながら使用する。認知機能低下、錐体外路症状、転倒、誤嚥、 過鎮静等の発現に注意し、低用量から効果をみながら漸増する。効果が認められても漫然と続けず、適宜漸減、中止できるか検討する。半減期の長い薬剤は中止後も有害事象が遷延することがあるので注意が必要である。
  • 非定型抗精神病薬には血糖値上昇のリスクがあり、クエチアピンとオランザピンは糖尿病患者への投与は禁忌である。
  • ブチロフェノン系(ハロペリドールなど)はパーキンソン病に禁忌である。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは肝代謝であり、高齢者では通常量より少ない量から開始することが望ましい。また、てんかん発作の閾値の低下を起こすことがある。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは主にCYPによる肝代謝を受け、 CYPの関与する相互作用に注意が必要である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【抗精神病薬】

  • フェノチアジン系抗精神病薬(クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)
  • 非定型抗精神病薬 (オランザピン[ジプレキサ]、クロザピン[クロザリル])

【制吐薬として】

  • プロクロルペラジン[ノバミン]

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチリン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

免疫抑制薬(メトトレキサート、タクロリムス、シクロスポリンなど)

医薬品各種(免疫抑制薬)

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs:Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)

免疫抑制薬の相互作用の概要

未完

リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)

免疫抑制薬(DMARDs):
「抗リウマチ薬のアンカードラッグ。5~6日/週の休薬が必須。ガイドラインで強い推奨」。(今日の治療薬2021,p.334)

腎機能低下時の用法・用量(メトトレキサート)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。
腎障害患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)関節リウマチ:6mg/週で開始し、4~8週間経過しても効果不十分であれば8~16mg/週まで増量。1週間あたりの投与量を1~3回に分割し、12時間間隔で1~2日間かけて投与(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    低用量から開始し,最初から葉酸の併用が望ましい(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)

プログラフ(一般名:タクロリムス)

免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬):
「わが国初の薬物。T細胞に特異的に作用し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制」。(今日の治療薬2021,p.337)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

食後の服用によって、空腹時及び食前の服用と比べて血中濃度が低下する。
柑橘類(CYP3A阻害作用)に注意する。

タクロリムスは、CYP3Aの基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    CR(CYP3A4)0.66M、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

タクロリムスの定常状態平均血中濃度を求める

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算

(どんぐり2019,p.91)

体重50kg、腎移植後の管理
タクロリムスカプセル1mg、1回3カプセル、1日2回朝夕、30日分

消失半減期(hr)= 7.93±5.16h(hr)
投与間隔/消失半減期=12/8=1.5<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=20±17.8%[成人腎移植患者9例に0.125~0.24mg/kg経口投与(カプセル)時]
塩係数(S)=0.98(小数点第3位繰上げ)、(H2O=18、(822.03-18)/822.03≒0.978)
1回投与量(Dose)=3mg
投与間隔(τ)=12時間
分布容積(Vd)=1.010±0.382L/kg
消失速度定数(Ke)=0.693/t1/2
=0.693/7.93≒0.087(/hr)

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.2×0.98×3mg/12hr)/(1.01L/kg×50kg(体重)×0.087hr)
=0.049/4.3935
=0.0112mg/L⇒11.2ng/mL

単回投与時の最高血中濃度(定常状態の血中濃度ふり幅
=(F×S×Dose)/(Vd)
=(0.2×0.98×3mg)/1.01L/kg×50kg(体重)
=0.588/50.5
=0.0116mg/L⇒11.6ng/mL

定常状態での最高血中濃度(Css.max)
= Css.ave + 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=11.2+11.6×1/2
⇒17.0ng/mL

定常状態での最低血中濃度(Css.max)
= Css.ave - 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=11.2-11.6×1/2
⇒5.4ng/mL

プログラフの有効血中濃度:
5~20ng/mL
おおむね有効血中濃度の範囲に入っている。

ネオーラル(一般名:シクロスポリン)

免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬):
「T細胞に特異的に作用し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制」。(今日の治療薬2021,p.336)

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune

シクロスポリンは、CYP2C8阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、高度である。
    CR(CYP3A4)0.8S、(PISCS2021,p.46)

シクロスポリンは、P-gp阻害薬である

シクロスポリンは、P糖蛋白(P-gp:排出トランスポーター)阻害薬である。

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

シクロスポリンは、OATP1B1阻害薬である

シクロスポリンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬である。
相互作用を受ける薬物(OATP1B1の基質):スタチン系薬物など。p.98

OATP1B1は肝臓の血管側膜に発現し、薬物の肝臓への取り込みを促進する。OATP1B1が阻害されると、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。

スタチン系薬は、OATP1B1の基質である。つまり、スタチン系薬はOATP1B1によって肝臓に取り込まれてその作用を発揮する。そこで両者が併用されていると、シクロスポリンのOATP1B1阻害作用によって、スタチン系薬が肝臓に取り込まれなくなる。その結果、スタチン系薬の血中濃度が大幅に上昇する。⇒詳細は「ネオーラルと併用できるスタチンはどれ?」pp.80-84

イムランアザニン(一般名:アザチオプリン)

免疫抑制薬[代謝拮抗薬(プリン代謝拮抗薬)]:
「6-MPのプロドラッグ。NUDT15遺伝子型で早期の重症骨髄抑制及び脱毛が予測可能」。(今日の治療薬2021,p.332)

イムラン:錠(50mg)

アロプリノールとの併用で、アザチオプリンの活性代謝物6-メルカプトプリン(6-MP)の代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼが阻害される。その結果、6-MPの血中濃度が上昇し、重篤な骨髄抑制が起きる可能性がある。(PharmaStyle No.9 June 2021,13)

セルセプト(一般名:ミコフェノール酸)

免疫抑制薬[代謝拮抗薬(プリン代謝拮抗薬)]:
「シクロホスファミドと同等の効果を有し、重篤な副作用は少ない。催奇形性のため妊婦には禁忌」。(今日の治療薬2020,p.329)

○腎移植後の難治性拒絶反応の治療
(既存の治療薬が無効又は副作用等のため投与できず、難治性拒
絶反応と診断された場合)
○下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
腎移植、心移植、肝移植、肺移植、膵移植
○ループス腎炎

腎機能低下時の用法・用量(ミコフェノール酸)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

オルミエント(一般名:バリシチニブ)

免疫抑制薬(JAK阻害薬):
「JAK(1と2)の阻害薬。強力だが安全性情報は不十分。腎排泄性のため腎障害では減量」。(今日の治療薬2020,p.335)

既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)。

腎機能低下時の用法・用量(バリシチニブ)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

薬物間相互作用

グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(免疫抑制薬)

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)

タクロリムス:CR(CYP3A4)0.66M、(PISCS2021,p.46)
シクロスポリン:CR(CYP3A4)0.8S、(PISCS2021,p.46)

タクロリムスシクロスポリンは、共にCYP3A4基質薬(中程度に影響を受けやすい)である。
グレープフルーツジュースとは、併用注意(併用に注意すること)となっている。

ネオーラル添付文書:
「本剤の血中濃度が上昇することがあるので、本剤服用時は飲食を避けることが望ましい」。

プログラフ添付文書:
「腎障害等の副作用が発現することがある。本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ減・休薬等の処置を行う」。

SGLT2阻害薬(尿糖排泄促進)

SGLT2阻害薬は、尿中に糖を排泄して血糖値を下げる

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

インスリンとは独立した血糖改善作用を有する

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、SGLT2阻害薬の特徴について、次のようにまとめている。

「(SGLT2阻害薬は)近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制して、尿糖排泄を促進し、血糖低下作用を発揮する。インスリンと独立した血糖改善作用を介して血糖コントロールの改善が得られ、体重の減少も認められる」。p.78

SGLT2薬は、αグルコシダーゼ阻害薬と同様に、インスリンとは独立した血糖改善作用を有する。

注)SGLT:sodium glucose cotransporter(sodium glucose transporter)の略で、「ナトリウム・グルコース共輸送体」と呼ばれるタンパク質の一種である。

SGLTの種類はいろいろあり、体内の様々な場所に存在する。しかしながら、SGLT2は腎臓の近位尿細管に限定的に存在している。

低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること

本剤(SGLT2阻害薬)の使用にあたっては、患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。

そのほかの糖尿病用薬(全ての種類)との併用によって、血糖降下作用の増強による低血糖発現の恐れがあるので併用注意(併用に注意すること)となっている。
特に、インスリン製剤、スルホニルウレア剤との併用では、併用薬の減量を検討する。
なお、速効型インスリン分泌促進剤又はGLP‒1受容体作動薬も減量の対象となっている薬物もある。

脱水、尿路・性器感染症、そして急性腎障害など

「(SGLT2阻害薬の)副作用としては、性器感染症の頻度を増加させ、体液量減少関連イベントを増加させる傾向がある。その他、急性腎障害、ケトン体増加関連事象の発症には注意が必要である」。(ガイドライン2019,p.78)

【参考資料】SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(策定:2014年6月13日、最新:2019年8月6日)、以下「」内引用。

1日+αとして500mL以上の水分摂取を心掛ける

「尿路感染症は腎盂腎炎膀胱炎など、性器感染症は外陰部膣カンジダ症などである」。

「これまでの大規模臨床試験や市販後調査の結果からは、SGLT2阻害薬が脳梗塞の発症数を増加させるエビデンスはないが、SGLT2阻害薬投与により初期には通常体液量が減少するので、適度な水分補給を行うよう指導すること、脱水が脳梗塞など血栓・塞栓症の発現に至りうることに改めて注意を喚起する」。

腎機能の確認(腎機能低下に伴いCmaxが低下する)

  • 重度の腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の効果が期待できないため、投与しないこと。
  • 中等度の腎機能障害のある患者では本剤の効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断すること。
    ⇒Cmaxは腎機能の低下に伴い低下する傾向を示した。

「急性腎障害を引き起こすことがあり、特に利尿薬、ACE阻害薬、ARB、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を併用する場合には注意が必要である」。

「1型糖尿病への適応が承認されたことに伴い、ケトアシドーシスの報告が増加している。インスリンの中止、極端な糖質制限、清涼飲料水多飲などが原因となっており、服薬開始時には十分な問診を行い、ケトアシドーシスやその初期症状を繰り返す場合や糖質制限が疑われる場合は投与を控えるべきである」。

「皮膚症状は掻痒症、薬疹、発疹、皮疹、紅斑などが副作用として多数例報告されているが、非重篤のものが大半を占める」。

消化器症状(軟便・下痢)

SGLT2阻害薬は、SGLT1にも作用して腸内の糖吸収を阻害する。
軟便下痢は、大腸内に残る糖が腸内細菌によって発酵され、ガスが発生することによる。
(どんぐり2019,p.30,232)

今後、心不全の適応が拡大していくだろうか

「エンパグリフロジンと日本の承認用量を超えたカナグリフロジンは、心血管イベントの発症リスクの高い患者において、大血管症の発症を有意に抑制することが示されている」。(ガイドライン2019,p.78)

こうした効果は、「血糖低下作用だけではなく、SGLT2阻害薬の多彩な薬理作用によるものと考えられている」。(実践薬学2017,p.402)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(糖尿病治療薬

  • メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド薬、メトグルコ)
  • シタグリプチンリン酸塩水和物(DPP-4阻害薬、グラクティブ、ジャヌビア)
    アログリプチン安息香酸塩(DPP-4阻害薬、ネシーナ) 他

医薬品各種(SGLT2阻害薬)

スーグラ(一般名:イプラグリフロジン)

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)

ルセフィ(一般名:ルセオグリフロジン)

Tmax: 1.11±0.546(h)、Cmax:100±22.3(ng/mL)、t1/2: 11.2±1.05(h)
1日1回2.5mg服用、24時間/11.2時間=2.1⇒定常状態がある薬物
定常状態に達するまでの時間、11.2時間×5=56時間⇒2.3日
(どんぐり2019,p.235)

デベルザ、アップルウェイ(一般名:トホグリフロジン)

カナグル(一般名:カナグリフロジン)

ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)

骨粗鬆症について

骨代謝

骨もほかの器官と同様に、常に新陳代謝を繰り返している。
つまり、古い骨が壊されて(骨吸収)、その代わりに新しい骨が作られている(骨形成)。
これを骨代謝といい、破骨細胞(骨吸収)と骨芽細胞(骨形成)が関わっている。

  • 破骨細胞
    古い骨を壊す(骨吸収を行う)細胞である。
    古くなった骨のカルシウムやコラーゲンを分解・吸収して、古い骨を壊す働きをする。
  • 骨芽細胞
    新しい骨を作る(骨形成を行う)細胞である。
    骨の表面にコラーゲンを作り、そこに血液から運ばれたカルシウムを付着させて、新しい骨を作る。

骨吸収と骨形成がバランスよく行われることで、健康な骨が維持されている。

注)骨吸収とは、骨から血中にカルシウムが吸収されることをいう。
その結果、骨のカルシウムは減ることになる。

⇒「ビスホスホネート(BP)製剤
⇒「活性型ビタミンD3製剤(エディロールなど)
⇒「選択的エストロゲン受容体モジュレーター(エビスタなど)

骨粗鬆症の定義

  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015
    http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
  • 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)

骨粗鬆症の定義:WHO(世界保健機関)

骨粗鬆症は骨折リスクが増大した状態である。(ガイドライン2015,p.2)

「WHO(世界保健機関)では、「骨粗鬆症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義している」。

つまり、「WHOは、骨粗鬆症は疾患であり、骨折を生じるに至る病的過程であり、骨折は結果として生じる合併症の一つであるとした」。

なお、2000年米国の国立衛生研究所(NIH)で開催されたコンセンサス会議では、骨粗鬆症について次のように定義している。

「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」。

そして、コンセンサス会議2000では、骨強度は骨密度と骨質の二つの要因によって規定されるとした。
つまり、従来の骨密度を中心とした考え方を改めて、骨質の役割が新たに注目されるようになった。

骨粗鬆症の診断基準とその対策

骨粗鬆症の診断は、「既存脆弱性骨折の有無と骨密度」により行う。(診断基準2012)

原発性骨粗鬆症の診断基準は、「脆弱性骨折なしの場合、骨密度がYAMの70%未満」としている。
(YAM:若年成人平均値(20~44 歳))

ヒトの骨量は、20~44歳で最大骨量を迎える。
そしてその後は、年齢を重ねるごとに骨吸収と骨形成のバランスが崩れてゆく。
その結果、骨はもろくなりスカスカとなる。

骨粗鬆症をめぐっては以下の観点が重要である。(ガイドライン2015,序文ⅱ)

  • 成長期に骨量を十分に増加させて高い最大骨量を獲得すること。
  • 女性においては閉経後急速に骨量が減少するので、閉経後女性の急速な骨量減少者を早期にスクリーニングし、骨量のさらなる減少をくい止めること。
  • 骨量がすでに著しく低下している高齢者においては、骨量の維持とともに転倒の防止が重要である。

続発性骨粗鬆症とは

「骨粗鬆症の病態は骨吸収と骨形成の平衡状態の破綻による骨量減少(骨密度低下)と酸化ストレスの蓄積などによる骨質の劣化であり、このような病態を惹起する遺伝的素質、生活習慣、自然閉経および加齢以外の特定の原因が認められる場合に、それを続発性骨粗鬆症と称する」。(ガイドライン,p.127)

「糖尿病は骨密度に依存せずに骨折リスクを上昇させる。その原因は骨質の劣化」と言われている。糖尿病以外では、「ステロイドや飲酒、タバコ、そして関節リウマチ」もその原因となる。(実践薬学p.148)

「罹病期間が長くHbA1cが高くインスリンを必要とするような糖尿病では、骨質劣化が原因となって大腿骨近位部骨折のリスクが上昇する。薬物治療の開始は原発性骨粗鬆症に対する薬物治療開始基準を参考にする。SERM、ビスホスホネート藥、テリパラチドは糖尿病関連骨粗鬆症にも有効と考えられる」。(ガイドライン,p.131)

「骨粗鬆症は長期ステロイド薬(GC)治療における最も重要な副作用の1つであり、長期GC治療を受けている患者の30~50%に骨折が起こるとの報告がある」。(ガイドライン,p.138)

「ステロイド性骨粗鬆症(glucocorticoid-induced osteoporosis:GIO)は患者数が多く、また小児から高齢者まで、閉経前女性や男性にも幅広く起きるため、社会生活への影響は大きい」。(ガイドライン,p.138)

「脂質異常症と高血圧についてはさまざまな因子が関与することもあり、疾患自体の骨への影響については一定の見解は得られていない。一方、COPDによる骨密度低下と骨折リスク上昇の相関についてはエビデンスが集積されつつある。COPDでは男性でも骨折リスクが高まること、また、椎体骨折による脊柱変形は呼吸機能低下に悪影響を及ぼすことから、性別にかかわらずCOPD患者では骨粗鬆症の評価が推奨される」。(ガイドライン,p.135)

「RAは骨折リスクの上昇をきたす疾患である。日本人女性RA患者ではビタミンD欠乏例が多いことが予想され、食物やサプリメントによるビタミンDの積極的な摂取や適度な日光浴などの生活指導が望まれる(グレードB)。骨粗鬆症治療薬の中でRA患者に対し有意な骨折抑制効果が確認されているのは、ビスホスホネート薬(グレードA)とテノスマブ(グレードA)である」。(ガイドライン,p.137)

「骨折リスクの上昇を来すと考えられている内分泌疾患(中略)のなかで骨折リスクがもっとも広く検討されているのが原発性副甲状腺機能亢進症である」。(ガイドライン,p.128)

「CKDと骨折罹患率はいずれも加齢とともに上昇するため、高齢者での両者の併存率は高くなる。因果関係は必ずしも明確ではなかったが、最近、両疾患ともにもう一方の病態を増悪させることが示されてきている。日本骨粗鬆症学会の「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド」ではCKDを糖尿病と並んで二次的に骨折リスクを上昇させる疾患と述べている」。(ガイドライン,p.132)

「乳癌または前立腺癌に対する内分泌療法は有意な骨密度低下を伴う(レベルⅠ)。乳癌に対するアロマターゼ阻害薬については有意な骨折リスクの上昇を伴い(レベルⅠ)、前立腺癌に対するADTについても骨折の増加を伴う可能性が高い(レベルⅡ)」。(ガイドライン,p.141)

「チアゾリジン薬は、閉経後女性において骨量を減少させ骨折リスクを高める(レベルⅡ)。SSRIは骨折リスクを高める(レベルⅠ)。プロトンポンプ阻害薬(レベルⅣa)、抗けいれん薬(レベルⅣb)ならびにループ利尿薬(レベルⅣa)は、長期間の使用により骨折リスクを高める可能性がある。抗凝固薬ならびに抗うつ薬の骨折リスクについては今後の検討が必要である」。(ガイドライン,p.143)

チアゾリジン薬(インスリン感受性亢進)

チアゾリジン薬は、インスリン抵抗性を改善する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、チアゾリジン薬の特徴について、次のようにまとめている。

「末梢組織でのインスリン感受性亢進、肝臓からのブドウ糖放出抑制作用により血糖を改善する。体液貯留作用と脂肪細胞の分化促進作用があるため、体重がしばしば増加する。ときに浮腫、心不全、骨折などをきたすことがあるため注意が必要である」。p.74

チアゾリジン薬は、核内受容体型転写因子(PPARγ)のアゴニストである

「脂肪細胞のPPARγを介してインスリン抵抗性を改善する」。(今日の治療薬2020,p.381)

「チアゾリジン薬はPPARγ(peroxisome proliferator-activated receptor γ)と呼ばれる核内受容体型転写因子のアゴニストである。脂肪細胞の分化を促して白色脂肪細胞における脂肪蓄積を促進させ、これにより、肥満に伴う骨格筋や肝臓の異所性脂肪蓄積を改善する。またPPARγの活性化は脂肪組織の質を改善して炎症性サイトカインの分泌を抑制し、アディポネクチンの分泌を促進して、インスリン抵抗性を改善させる」。(ガイドライン2019,p.74)

肥満を伴う2型糖尿病では、インスリン抵抗性を示すことが多い。インスリン抵抗性改善薬のチアゾリジン薬が良い適応となる。チアゾリジン薬はPPARγに結合し、代謝に関連する遺伝子の転写を調節してインスリン作用を増強させる。

チアゾリジン薬の長所と短所

糖尿病診療マスター 9巻5号 (2011年11月)医学書院
特集 糖尿病の治療―見て,見つめて,見つめなおす
Ⅲ薬物療法の意義と有用性 1)経口糖尿病治療薬―薬剤の特性と治療における意義
チアゾリジン薬の意義と有用性
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1415101233?p=firstTab&englishFlg=2

チアゾリジン薬の長所

  • 脂肪細胞をターゲットとした唯一のインスリン抵抗性改善薬である
  • 血糖降下作用が比較的強い一方で,低血糖のリスクが少ない
  • 抗動脈硬化作用があり,心血管疾患の二次予防のエビデンスがある
  • β細胞保護効果があり,長期の血糖コントロールに優れる

チアゾリジン薬の短所

  • 体重増加の副作用がある
  • 体液貯留により浮腫をきたしやすく,心不全のリスクを高める
  • 特に女性において骨折リスクを高める
  • そのほか,発癌のリスクなど,まだ完全に解決していない問題がある。

医薬品各種(チアゾリジン薬)

アクトス(一般名:ピオグリタゾン)

チアゾリジン(TZD)誘導体:
「動脈硬化リスク因子を改善させるが、体重増加・体液貯留のリスクもある」。(今日の治療薬2021,p.391)

チアゾリジン薬は、骨量を減少させ骨折リスクを高める(特に閉経後女性)

糖尿病自体が骨折リスクを高める。

「罹病期間が長くHbA1cが高くインスリンを必要とするような糖尿病では、骨質劣化が原因となって大腿骨近位部骨折のリスクが上昇する」。(ガイドライン,p.131)

そして、「チアゾリジン薬は、閉経後女性において骨量を減少させ骨折リスクを高める」。(ガイドライン,p.13)

「ピオグリタゾンを含むチアゾリジン薬の使用により、末梢骨を中心に骨折が閉経後女性で増加することが報告された。その一方で、男性での影響は少ないとされている。国内での検討でも、閉経後女性においてチアゾリジン薬服用者は有意に椎体骨折有病率が高いが、男性では差を認めなかった」。(ガイドライン,p.142)

「「いまどき、ピオグリタゾン?」、そんな声が聞こえてきそうです。僕が医師でも、そんなに使う機会はないように思います。でも実際には、糖尿病や循環器の医師から処方されてくるのですから、問題のある薬こそ、その処方箋を受け付けたときにどう対応すべきなのかをきちんと押さえておく必要があります」。(実践薬歴2018,p.18)

チアゾリジン薬は、体液貯留を伴う浮腫をきたしやすい(特に女性)

「浮腫が比較的女性に多く報告されているので、女性に投与する場合は、浮腫の発現に留意し、1日1回15mgから投与を開始することが望ましい」。(アクトス添付文書)

ピオグリタゾンは、CYP2C8の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    IC(CYP3A4)0.38倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(糖尿病治療薬

  • メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド薬、メトグルコ)
  • シタグリプチンリン酸塩水和物(DPP-4阻害薬、グラクティブ、ジャヌビア)
    アログリプチン安息香酸塩(DPP-4阻害薬、ネシーナ) 他

グリニド薬(速効型インスリン分泌促進薬)

グリニド薬は、食後の高血糖を是正する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、即効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)の特徴を、次のようにまとめている。

「インスリン分泌を速やかに促進し、食後の高血糖を是正する薬剤である。短時間でその作用が消失するため、低血糖の発症リスクが低い」。p.75

毎食直前(10分以内)に服用すること

グリニド薬は、「SU薬と同様にβ細胞のSU受容体を介してインスリン分泌を促進するが、SU薬に比べて作用発現時間が速く、作用持続時間は短い(3~4時間)」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.75)

【用法・用量に関連する使用上の注意】(シュアポスト添付文書)

「本剤は食後投与では速やかな吸収が得られず効果が減弱する。効果的に食後の血糖上昇を抑制するため、本剤の投与は毎食直前(10分以内)とすること。また、本剤は投与後速やかに薬効を発現するため、食事の30分以上前の投与では食事開始前に低血糖を誘発する可能性がある」。(注:グルファストでは5分以内)

そのほか、次のような記述がみられる。

「グリニド薬はSU薬より吸収が速くて、食後だとCmaxの低下とTmaxの遅延が生じるから食直前」投与となっている。(実践薬学2017,p.369)

グリニド薬は、「食後高血糖がみられる患者に、特に適した薬物である。食後に服用すると吸収が阻害されて効果が十分に得られず、また食前30分では低血糖の危険性が増すため、食直前の服用が必要である」。(ガイドライン2019,p.75)

グリニド薬は、「インスリンの追加分泌を促進して食後高血糖を改善。空腹時血糖への影響が少ない」。(今日の治療薬2020,p.381)

グリニド薬は、インスリン分泌パターンの異常を改善する

「実践薬学2017」では、グリニド薬は欧米での評価は非常に低いものの、日本人の食後インスリンパターンを改善するためにうまく使えるのではないかとしている。(以下、「」内引用)

「欧米人では15~30分が食後インスリンのピークであるのに対して、日本人の多くは60分がピークであるとされる」。つまり、「日本人では食後のインスリン分泌が後ろにずれているパターンが多い」。pp.371-372

「グリニド薬は、日本人に多いインスリン分泌の遅れ、本来あるはずの血糖上昇に合わせた速やかなインスリン分泌を回復する」。つまり、グリニド薬はインスリン分泌パターンの異常を改善する薬物であるといえる。p.371

グリニド薬は、「余分なインスリン分泌を刺激せずに、分泌パターンのみを改善する」。したがって、「インスリン分泌パターンの異常に起因する低血糖や空腹感の増強、体重の増加を来しにくくなる」。p.371

グリニド薬の受容体(SUR1)に対する結合力は、SU薬ほど強くはない

グリニド薬は、SU薬と同様に、膵β細胞上のSU受容体(SUR1)に結合し、「ATP感受性K+チャネル」(K-ATPチャネル)を血糖非依存的に閉鎖することによって、インスリン分泌を促進する。(実践薬学2017,p.356、インスリンの分泌機序とSU薬の薬理作用)

グリニド薬は、SU薬(グリベンクラミド)からの派生品である。p.373

「グリベンクラミドのスルホニルウレア基とシクロヘキシル基をカルボキシル基(必須官能基)に変換したものがメグリチニド。メグリチニド類縁体(アナログ)がグリニド薬」である。p.373

グリニド薬の半減期は、SU薬よりも短く(0.8~1.3hr)、作用時間はさらに短い(3~4hr)。p.370(表8:各SU薬、グリニド薬の半減期と作用時間)

ナテグリニドとミチグリニドの場合、「カルボキシル基と不斉炭素からなる構造がスルホニルウレア基の三次元構造と類似」しており、受容体(SUR1)の「トルブタミド結合部位に結合する」。p.371

「レバグリニドはベンズアミド類似骨格を持つためベンズアミド結合部位に結合する」。p371

いずれの薬物も、受容体(SUR1)との結合部位は1か所であり、グリベンクラミドやグリメピリドの2か所ほどの結合力は持たない。

医薬品各種(グリニド薬)

グリニド薬は、いずれも水溶性であるが、代謝を受けてさらに水溶性となって排泄される。
その代謝過程がそれぞれ異なっている。
なお、グリニド薬は、いずれも不斉炭素原子を持っている。

以下、主として「実践薬学2017」(pp.373-378)を参考にまとめた。

ファスティック、スターシス(一般名:ナテグリニド)

「空腹時血糖への影響が少なく、インスリンの分泌ピークを早期にシフトさせ、食後高血糖を改善」。(今日の治療薬2020,p.385)

ナテグリニドは、透析患者には禁忌である

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)
透析を必要とするような重篤な腎機能障害のある患者
低血糖を起こすおそれがある。(ファスティック添付文書より)

透析患者などの重篤な腎機能障害のある患者において、低血糖性昏睡に至り回復せず死亡した症例が市販後に報告されている。

これは、遷延性低血糖によるものであり、その原因は、ナテグリニドの主代謝物が活性を持っていることによると考えられている。
以下のとおりである。

ナテグリニドの未変化体の尿中排泄率は5%である。
しかしながら、「ナテグリニドの主な代謝物であるM1は、活性こそ未変化体の1/6~1/5にすぎないものの、尿中排泄率は80%にもなる。これが遷延性低血糖の原因と考えられている」。
なお、この主代謝物であるM1(イソプロピル基の水酸化体)が主代謝産物全体の40%を占める。
(実践薬学2017,p.374-375、図16:ナテグリニドの代謝経路)

さらに、「尿毒素の蓄積に起因すると考えられる、OATP1B1を介した肝細胞への取り込み阻害も起きている可能性がある」。p.378 ⇒参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ナテグリニドは、高齢者ではAUCの増加が認められる

ナテグリニドを65歳以上の高齢者に投与したところ、非高齢者と比べてAUCの増加が認められた。P.376-377

腎機能低下時の用法・用量(ナテグリニド)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回90mgを1日3回、毎食直前、最大1回120mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    活性代謝物が蓄積しやすいため慎重投与
  • CCr(30mg/dL未満)
    禁忌(透析を必要とするような重篤な腎機能障害のある患者は、活性代謝物が蓄積することによって低血糖が起こりやすい)

ナテグリニドは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    ナテグリニド:CR(CYP2C9)0.48、(PISCS2021,p.52)

グルファスト(一般名:ミチグリニド)

ナテグリニドに準ずる。
透析患者:慎重投与。

ミチグリニド服用患者では、腎機能の程度に応じてt1/2(hr)が大幅に延長する

ミチグリニド(肝消失型薬物)は、大部分(約74%)が肝臓でグルクロン酸抱合を受ける。
そして、尿細管で再吸収を受けることなく尿中に排泄される。
したがって、腎機能低下患者には安全に使用できる薬物のはずである。p.375

ところが、ミチグリニドのインタビューフォームには、腎機能正常患者、腎機能低下患者そして慢性腎不全患者(透析実施中)というようにCCrが低下するに伴い、ミチグリニドのt1/2(hr)が1.48、3.22、そして11.7と延長するというデータが示されている。p.375-376

これは、「代謝物の蓄積により親化合物の消失速度を低下させる」現象が起こっているためと考えられる。
「クロフィブラート、ロラゼパム、アセトアミノフェンなどで報告されている」現象と同じである。p.376

ミチグリニドは、高齢者でも安心して使用できる薬物である

ミチグリニドはCYPの代謝を受けずほとんどグルクロン酸抱合である。したがって、加齢の影響を受けにくい。

高齢者(65歳以上)でCmaxがやや低下するものの、そのほかのパラメータでは非高齢者(20~35歳)との間に差は認められない。p.376

シュアポスト(一般名:レパグリニド)

「ナテグリニド、ミチグリニドよりインスリン分泌を促進する時間が長く、血糖降下作用が大きい」。(今日の治療薬2020,p.386)
透析患者:慎重投与。

レパグリニドは、CYP2C8の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

レパグリニドは、主として薬物代謝酵素CYP2C8及び一部CYP3A4で代謝される。

そして、クロピドグレルとの併用によりレパグリニドの血糖降下作用が増強される。作用機序は、以下のとおりである。

「プラビックス(クロピドグレル硫酸塩)のグルクロン酸抱合体は強力なCYP2C8阻害薬であり、主にCYP2C8で代謝されるレパグリニドのCmaxおよびAUCを上昇させる」。その結果、レパグリニドの血糖降下作用が増強される恐れがある。(実践薬学,p.126)

併用時の血中濃度の上昇度は、以下のとおりである。

  • プラビックス300mg/レパグリニド0.25mg併用:Cmax2.5倍、AUC5.1倍、t1/2,1.4倍
  • プラビックス75mg/レパグリニド0.25mg併用:Cmax2.0倍、AUC3.9倍、t1/2,1.2倍

「健康成人(外国人)に、クロピドグレル(1日1回3日間、1日目300mg、2~3日目75mg)を投与し、1日目と3日目に本剤(0.25mg)を併用したとき、レパグリニドのCmax及びAUC0-∞は、本剤を単独投与したときと比較して1日目は2.5及び5.1倍、3日目は2.0及び3.9倍に増加した。また、t1/2は1.4及び1.2倍であった」。(シュアポスト添付文書)

レパグリニドとプラビックスは、併用注意(併用禁忌ではなく)である

プラビックス300mg/レパグリニド0.25mg併用時、レパグリニドのAUC5.1倍となっている(前述)。

これを、健康成人でレパグリニド0.25mg×5倍=1.25mg投与した場合に相当すると考えると、レパグリニドの最大用量1mg(1回量を1mgまで増量することができる)を超えていることになる。

当然、併用禁忌の措置がとられてもおかしくない組合せであると考えられる。ただし、実際には併用注意となっている。それには、次のような理由が考えられる。

シュアポスト錠0.25mgは割線入りである。つまり、用量調節が可能であり、最小用量は0.125mgということになる。そうなると、0.125mg×5倍=0.625mgとなって、最大用量1mgの範囲に収まっている。

ただし、これはあくまでも推測に過ぎない。危ない組み合わせであると感じる現場感覚が大切である。そして、実際には、ミチグリニド(CYP2C8が関与しない)に変薬を提案することなどが考えられる。(実践薬学2017,p.128)

レパグリニドはOATP1B1の基質であり、腎機能低下の影響を受ける

レパグリニド(肝消失型薬物)は、主として薬物代謝酵素CYP2C8(一部CYP3A4)で代謝される。
そして、代謝物の大部分は胆汁から排泄される(尿中排泄率<8%)ので、腎機能低下による影響はないと思われる。

ところが、レバグリニドはOATP1B1の基質薬であり、腎機能低下(CCr<30mL/分)に伴う尿毒素の蓄積によって、レバグリニドのAUCは3倍程度まで上がってしまう。p.378(表9:OATP1B1により肝に取り込まれる薬剤の体内動態と腎機能の影響)

レパグリニドは、2型糖尿病高齢者ではAUCの増加が認められる

レパグリニドを2型糖尿病高齢者に投与したところ、健康成人と比べてAUCの増加が認められた。p.377

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(糖尿病治療薬

  • メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド薬、メトグルコ)
  • シタグリプチンリン酸塩水和物(DPP-4阻害薬、グラクティブ、ジャヌビア)
    アログリプチン安息香酸塩(DPP-4阻害薬、ネシーナ) 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(CYP2C9)

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

狭心症治療薬(硝酸薬など)

狭心症(概略)

狭心症の治療では、狭心症の発作を予防すると共に、心筋梗塞を予防することが最も大切である。

「狭心症の治療は、高度狭窄病変による狭心症発作を予防することの他、普遍的に存在する内膜肥厚内のプラークを安定化させて心筋梗塞への移行を阻止することも目標となる」。(今日の治療薬2020,pp.637-638)

「狭心症は心筋梗塞を予防することが最も大事である。何よりも普段からの血圧や脂質異常症、糖尿病の管理、禁煙などを心がけることが大切である」。(同上,p.644)

狭心症の分類

(今日の治療薬2020,p.637)

狭心症では、胸の痛みやしめつけ、息苦しさなどの症状があらわれる。

発作発現メカニズム

  • 労作性狭心症
    冠動脈の基質的病変により冠血流の増加が制限され、酸素供給量が酸素需要の増大に間に合わないために起こる。
  • 安静時狭心症(異型狭心症)
    冠動脈スパズム(攣縮)による血流量の低下が主体となって起こる。
  • 労作性兼安静時狭心症
    両者が組み合わさって起こる。

発作様式

  • 安定狭心症
    経過が安定し、発作はあまり出現しないか、または出現しても一定の条件下で出現し、予測がある程度可能である。このような場合は予後が良好で、発作のコントロールも1~2製剤で可能な場合が多い。p.643
  • 不安定狭心症
    最近発症あるいは再発した狭心症で、経過中重症型(安静時や軽度の労作で誘発される、頻発する、持続が20分以上、冷汗、吐き気などの随伴症状)に増悪する狭心症をいう。

医薬品各種(硝酸薬など)

硝酸薬は、心臓の冠動脈を広げて血流量を増やし、心臓に酸素などを補給したり全身の血管抵抗を減らすことで心臓の負担を軽くする薬物である。

硝酸薬は、体内で一酸化窒素(NO)を生成することによって血管拡張作用を発揮する。

ニトロペン(一般名:ニトログリセリン)

速効性硝酸薬(NTG、ニトログリセリン):
「【舌下錠】ニトログリセリンの揮発性を抑えた安定な製剤。【スプレー】噴霧の定量性・易吸収部位への到達性、唾液の少ない高齢者に使用しやすい」。(今日の治療薬2020,p.645)

ニトロペン舌下錠(0.3mg)

「NTGは胸が痛い時に寝た姿勢あるいは座った姿勢で舌の下に含ませる。約5分毎に1錠ずつ3回追加しても無効なら、心筋梗塞の危険があるため直ちに医師に連絡するよう指導する」。(今日の治療薬2020,p.644)

【効能・効果】
狭心症、心筋梗塞、心臓喘息、アカラジアの一時的緩解

【用法・用量】
ニトログリセリンとして、通常成人0.3~0.6mg(本剤1~2錠)を舌下投与する。
狭心症に対し投与後、数分間で効果のあらわれない場合には、更に0.3~0.6mg(本剤1~2錠)を追加投与
する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

(ニトロペン舌下錠・添付文書)

舌下錠を服用すると、口腔粘膜(舌下の静脈)からニトログリセリンが吸収され、肝臓を経由することなく直接循環血液中へ移行する。
その結果、速やかな効果が得られる。

ニトログリセリンは、初回通過効果(first-Pass effect)が大きい薬物として知られている。
ニトログリセリンを内服すると、大部分が肝臓で分解されてしまうため、その効果を発揮することはできない(決して内服しないこと)。

「1)投与後、数分間で効果をあらわすが、効果があらわれない場合には更に1~2錠を追加投与すること。
2)1回の発作に3錠まで投与しても効果があらわれない場合、発作が15~20分以上持続する場合には、直ちに主治医に連絡するよう患者を指導すること」。(ニトロペン舌下錠・添付文書)

「ニトロペンは一般的には1~2分で効くんですが、口が渇いていたりすると、ちょっと効きがおそくなることがあります。少し口の中を湿らせてから、ベロの下に置いてください。そして、追加するときは、5分間は空けるようにしてください」。(実践薬歴2018,p.48)

起立性低血圧やめまい・失神などに注意するため、立ったまま服用しないこと。
なお、「主な副作用として頭痛、脳貧血、血圧低下、熱感、潮紅などが認められる」。
(ニトロペン舌下錠・インタビューフォーム)

ニトロダームTSS(一般名:ニトログリセリン)

持続性硝酸薬(NTG):
「(TSS)経皮吸収製剤で放出制御膜により一定の放出量。(メディトランス)経皮吸収製剤、表面不織布」。(今日の治療薬2020,p.646)

ニトロダームTSS25mg

ニトロダームTSSは放出抑制膜を利用し、24時間持続的に一定量の放出が可能である(パッチ製剤)。

【効能又は効果】
狭心症
〈効能又は効果に関連する使用上の注意〉
本剤は狭心症の発作緩解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。

【用法及び用量】
通常、成人に対し1日1回1枚(ニトログリセリンとして25mg含有)を胸部、腰部、上腕部のいずれかに貼付する。
なお、効果不十分の場合は2枚に増量する。

(ニトロダームTSS・添付文書)

ニトロールR(一般名:硝酸イソソルビド徐放剤)

長時間作用型硝酸イソソルビド(ISDN)製剤:(今日の治療薬2020,p.647)

ニトロール徐放カプセル(20mg)
イソコロナールRカプセル(20mg)
硝酸イソソルビド徐放錠、徐放カプセル(20mg)

Rカプセルは、長時間作用持続型の製剤で主に発作予防に使用する。
錠剤は、発作時(舌下投与)と発作予防のどちらにも使用する。

【効能・効果】
狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患
〈効能・効果に関連する使用上の注意〉
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸
エステル系薬剤を使用すること。

【用法・用量】
通常成人は、 1回 1カプセル(硝酸イソソルビドとして20mg)を1日2回、経口投与する。
なお、年齢・症状により適宜増減する。

(ニトロールR・添付文書)

前負荷、後負荷の軽減作用
冠血管拡張作用

フランドル・テープ(一般名:硝酸イソソルビド徐放剤)

長時間作用型硝酸イソソルビド(ISDN)製剤:
「血中濃度のバラツキの少ない持続性製剤」。(今日の治療薬2020,p.647)

フランドル錠(20mg)
フランドルテープ(40mg)

テープ剤は、主に発作予防で使用する(通常は1回1枚、胸部、上腕部又は背部のいずれかに貼付する)。

【効能・効果】
狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患
<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝
酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。

【用法・用量】
通常、成人に対し、1回1枚(硝酸イソソルビドとして40mg)を胸部、上腹部又は背部のいずれかに貼付する。
貼付後24時間又は48時間ごとに貼りかえる。
なお、症状により適宜増減する。

(フランドルテープ・添付文書)

アイトロール(一般名:一硝酸イソソルビド)

長時間作用型硝酸(一硝酸イソソルビド、ISMN):
「ISDNの活性代謝物。血中濃度のバラツキの少ない持続性製剤。ISDNより強力」。(今日の治療薬2020,p.647)

アイトロール錠(10mg、20mg)

硝酸イソソルビド(ニトロール、フランドルなど)に比べ肝臓での代謝を受けにくく、肝機能による治療効果の違いが少ないとされる。(日経メディカル/処方薬事典)

【効能・効果】
狭心症
<効能・効果に関連する使用上の注意>
本剤は狭心症の発作寛解を目的とした治療には不適であるので、この目的のためには速効性の硝酸・亜硝酸エステル系薬剤を使用すること。

【用法・用量】
通常、成人には一硝酸イソソルビドとして1回20㎎1日2回を経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、効果不十分な場合には 1回40㎎1日2回まで増量できる。
ただし、労作狭心症又は労作兼安静狭心症で発作回数及び運動耐容能の面で重症と判断された場合には1回40
㎎1日2回を経口投与できる。

一硝酸イソソルビドは、冠血流の増加作用に加えて静脈還流量の減少による前負荷減少作用と全末梢血管抵抗の減少による後負荷減少作用が心筋酸素需給のアンバランスを改善して抗狭心症作用を発現すると考えられ、主にcGMPによって媒介される静脈血管の弛緩作用が重要であると考えられる。

(アイトロール添付文書)

ペルサンチン(一般名:ジピリダモール)

そのほかの冠拡張薬。
「血小板凝集抑制作用、血栓・塞栓の抑制、尿蛋白減少作用」を有する。(今日の治療薬2020,p.648)

【効能・効果】12.5mg錠
狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患、うっ血性心不全

【効能・効果】25mg錠
1 .狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患、うっ血性心不全
2 .ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制
3 .つぎの疾患における尿蛋白減少:ステロイドに抵抗性を示すネフローゼ症候群

【効能・効果】100mg錠
1 .ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制
2 .つぎの疾患における尿蛋白減少:ステロイドに抵抗性を示すネフローゼ症候群

【効能・効果】Lカプセル150mg
1 .ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制
2 .つぎの疾患における尿蛋白減少:慢性糸球体腎炎(ステロイドに抵抗性を示すネフローゼ症候群を含む)

コメリアン(一般名:ジラゼプ)

そのほかの冠拡張薬。
「アデノシン増強作用」を有する。(今日の治療薬2020,p.648)

【効能・効果】
〇狭心症、その他の虚血性心疾患(心筋梗塞を除く)
〇下記疾患における尿蛋白減少
腎機能障害軽度~中等度のIgA腎症

シグマート(一般名:ニコランジル)

そのほかの冠拡張薬。
「ATP感受性Kチャネル開口作用と亜硝酸薬の両方の作用を有し、難治性の冠攣縮性狭心症や虚血時の心筋保護薬として使用」される。(今日の治療薬2020,p.649)

【効能・効果】狭心症

心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawah_h.pdf

「ニコランジルはNOドナーであるため、日本循環器学会ガイドライン2006年改訂版2)では硝酸薬の項に含んでいたが、今回から独立して項目を作成することになった」。ペルサンチン、コメリアンの記載はない。(以下、同ガイドライン2011,p.32)

クラス分類、p.31
クラスⅠ:手技・治療が有用・有効であることについて証明されているか、あるいは見解が広く一致している。
1.安定狭心症を伴う陳旧性心筋梗塞患者に対して長期間投与する。(エビデンスB)
2.梗塞後狭心症の症状改善、心筋虚血の改善目的に投与する。(エビデンスB)

「ニコランジルは我が国で開発された、ATP感受性カリウム(KATP)チャネル開口薬である。ジアゾキサイドをはじめとする他のKATPチャネル開口薬と異なり、硝酸薬様の作用を併せ持つ特徴があり、冠血管拡張作用による心筋虚血の改善効果に加え、心筋保護作用を有することが知られている」。p.31

「ニコランジルの主な作用機序として、心筋細胞内のミトコンドリアKATPチャネルの活性化が重要な役割を果たしていると考えられている」。p.31

「ミトコンドリアKATPチャネルは心筋の虚血耐性を亢進する虚血プレコンディショニングの最終作用部位の1つであると考えられており、同チャネルに直接作用するニコランジルは心筋保護効果を発揮あるいは高める」。p.31

「グリベンクラミドはK-ATPチャネル遮断薬で、虚血プレコンディショニングという心筋保護機構を消失させる。対して、ニコランジルはK-ATPチャネル開口薬で、薬剤による虚血プレコンディショニング様作用を発揮し、心筋壊死の軽減や梗塞サイズの縮小といった効果が期待されている」。(実践薬学2017,p.367)

DPP-4阻害薬(インクレチン関連薬)インスリン分泌促進

DPP-4阻害薬は、食後のインスリン分泌を促進する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、DPP-4阻害薬の特徴について、次のようにまとめている。

「血糖値に依存して食後のインスリン分泌を促進させると同時にグルカゴン分泌を抑制する。その結果、主に食後の高血糖を改善させる」。p.75

参考)グルカゴンの主な作用は、肝においてグリコーゲン分解と糖新生によるブドウ糖の産生・放出を促進し、血糖を上昇させることである。「糖尿病治療におけるグルカゴン分泌制御の重要性」(日本大学医学部)https://www.med.nihon-u.ac.jp/department/dmet/research/subject_dpp-4.html

食後のインクレチン分泌とDPP-4阻害薬の働き

インスリンの分泌機構を二段階に分けて考える

インスリン分泌促進作用は、次のような二段階で考えると分かりやすい。

  1. インスリンの分泌⇒惹起経路(SU薬とグリニド薬による)
  2. インスリンの増幅⇒増幅経路(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬による)
    (実践薬学2017,p.381「インクレチン関連薬によるインスリン分泌促進作用」)

インクレチン(消化管ホルモン):GLP-1とGIP

  • インクレチン(GLP-1):グルカゴン様ペプチド-1
  • インクレチン(GIP):グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド

インクレチン(GLP-1)は、「食事の摂取により小腸下部のL細胞から分泌される消化管ホルモンである」。
「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞からの過剰のグルカゴン分泌を抑制する」。(実践薬学2017,p.379-380)

食事によって分泌されるインクレチン(GLP-1)は、膵臓からのインスリン分泌を促進し、血糖値を下げる作用を有している。
ただし、インクレチン(GLP-1)は、酵素DPP-4(dipeptidyl deptidase-4)によって速やかに分解されてしまう(半減期2~3分)ため、血糖降下作用は長続きしない。

DPP-4阻害薬は、酵素DPP-4の働きを阻害することによって内因性のGLP-1濃度を高め、血糖依存的に血糖降下作用を発揮する。(児島2017,p.51)、(実践薬学2017,p.380)

なお、インクレチン(GIP)は、「食事摂取により小腸上部のK細胞から分泌される」消化管ホルモンである。「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞では、グルカゴンの分泌を促進する」。(同上p.381)

インクレチン(GLP-1とGIP)によるインスリン分泌増幅作用

「GIP並びにGLP-1が膵β細胞上に発現するGIP受容体、GLP-1受容体に結合すると、アデニル酸シクラーゼが活性化され、細胞内のサイクリックAMP(cAMP)が上昇する。これが、Epac2(exchange protein directly activated by cAMP)やPKA(protein kinase A)を活性化し、惹起経路によるインスリン分泌の開口放出を増幅させる」。(実践薬学2017,p.380)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(糖尿病治療薬

  • メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド薬、メトグルコ)
  • シタグリプチンリン酸塩水和物(DPP-4阻害薬、グラクティブ、ジャヌビア)
    アログリプチン安息香酸塩(DPP-4阻害薬、ネシーナ) 他

DPP-4阻害薬の副作用やクラス分類について

SU薬やインスリンとの併用で低血糖のリスクが高まる

DPP-4阻害薬は、「単独投与では低血糖のリスクは極めて少ないが、SU薬やインスリンとの併用の際は、低血糖の発症頻度が増加する可能性があり、併用薬の減量を考慮すべきである」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.75)

DPP-4阻害薬は、「血糖依存性にインスリン分泌を増幅。SU類併用時はSU類の減量を検討する」。(今日の治療薬2020,p.381)

DPP-4阻害薬の発売(2009年12月)直後から、SU薬への上乗せによる重症低血糖が散見されたため、専門医らによるRecommendationが発表された。

その後、シタグリプチンでインスリンとの併用療法の効能が追加された(2011年9月16日)ことを受けて、提言はさらに改善されている。(インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会(旧「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」)2011年9月29日修正)

副作用として、急性膵炎や水疱性類天疱瘡などに注意する

DPP-4阻害薬は、「大血管症の発症を増加させず、基本的には安全性が高いと考えられる。急性膵炎や水疱性類天疱瘡などの発症に関しては注意が必要である」。(ガイドライン2019,p.75)

【重大な副作用】類天疱瘡(頻度不明)、例えばジャヌビア添付文書(2016年4月21日 薬生安発0421第1号 別紙6)
「水疱、びらん等があらわれた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うこと」。

【重要な基本的注意】、例えばスイニ―添付文書(2018年3月20日 薬生安発0320第1号 別紙4)
「急性膵炎があらわれることがあるので、持続的な激しい腹痛、嘔吐等の初期症状があらわれた場合には、速やかに医師の診察を受けるよう患者に指導すること」。

結合様式(結合ポケット)の違いによるクラス分類

DPP-4阻害薬は、結合様式(結合ポケット)の違いによってクラス分類が可能である。
無効例があった場合の変薬候補を考える際などの参考になるであろう。(実践薬学2017,pp.386-390)

  • クラス1:シアノピロリジン系が結合する
    ビルダグリプチン(エクア)、サキサグリプチン(オングリザ)
  • クラス2:非ペプチド型が結合する
    アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン(トラゼンタ)、トレラグリプチン(ザファテック)
  • クラス3:シアノピロリジン系以外のジペプチド型が結合する
    シタグリプチン(グラクティブ、ジャヌビア)、テネリグリプチン(テネリア)、オマリグリプチン(マリゼブ)、アナグリプチン(スイニー)はシアノピロリジン系だが結合様式が異なる

医薬品各種(DPP-4阻害薬)

「胆汁排泄型のリナグリプチンやテネリグリプチンは薬物動態にさほど影響を受けないため透析を含めて腎機能障害時の用法、用量の変更は必要ない。しかし、その他の薬剤は腎排泄型のため、腎機能に応じて用量調節をする必要がある」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.76)

DPP-4阻害薬は、現在9成分10品目が上市されている。これらは、患者の服薬状況(投与回数)や腎機能・肝機能に応じて使い分けられる。(実践薬学2017,pp.383-385「日本で使用されているDPP-4阻害薬の一覧」)

Prof.Sawadaの薬剤師ヒヤリ・ハット・ホット/澤田康文
腎機能低下者に通常用量でシタグリプチンが処方(事例104)
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/104/?route_no=6674

下記各品目の第1行目は、実践薬学と澤田康文及び各薬剤添付文書の数値を突き合わせて作成した。

グラクティブ、ジャヌビア(一般名:シタグリプチン)

1回50mg/1日1回投与(増量可)、主に腎排泄型(尿中未変化体排泄率79~88%)、CCrなどに応じて用量調節。

酵素DPP-4を阻害する

(どんぐり2019,pp.19-26)

DPP-4阻害薬は、酵素DPP-4の働きを阻害することによって内因性のGLP-1濃度を高める。
その結果、血糖依存的に血糖降下作用を発揮する。

重大な副作用⇒低血糖
単独投与では低血糖のリスクは極めて少ないが、SU薬、グリニド薬やインスリンとの併用の際は、低血糖の発症頻度が増加する。

副次的な副作用⇒GLP-1濃度の上昇による
「GLP-1には、消化管の蠕動運動を抑制し、幽門筋の収縮力を高め、経口摂取された食物の十二指腸への流入を遅延させる働きがある。
胃腸障害は副次的な薬理作用であり、GLP-1濃度が高くなると腹部膨満吐き気便秘などの胃腸障害が起こりやすくなる」。(どんぐり2019,p.20)

「(副次的な薬理作用によって胃腸障害が起きることがあります)。
しばらく飲み続けると体がお薬に慣れてきて、症状がなくなることが多いので、ひどくなければ、このまま飲み続けてください。
ただ、腹痛や吐き気がしたり症状がひどくなるようなことがあれば、我慢せずにすぐご連絡ください」。(同上p.26)

酸化マグネシウム(緩下薬)がシタグリプチンと併用されている場合、シタグリプチンの副作用としての便秘の可能性も考える。(どんぐり2019,pp.34-35)

併用薬の副作用(便秘)を疑う:
⇒「便秘薬(マグミットとプルゼニドなど)

腎機能低下時の用法・用量(シタグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回50~100mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回25mg、最大1日1回50mg
  • CCr(15~30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回12.5mg、最大1日1回25mg

用量調節(割線入り製剤)と投与禁忌の解除

以下、グラクティブの事例を抜き出してみた。

まず、新発売後数年を経て、割線入り製剤(25mg錠)への変更が行われた。
そのことによって用量調節が可能となり、重度腎機能障害のある患者で、投与禁忌から慎重投与に変更となった。
さらに引き続いて、割線で分割しなくても済むように、最小mg数の錠剤(12.5mg錠)が新発売となった。

  • 2009年12月、グラクティブ錠25mg、50mg、100mg新発売
  • 2013年6月、グラクティブ25mg錠の割線入り製剤への変更の承認を取得
  • 2013年8月、「血液透析又は腹膜透析を要する患者を含む重度腎機能障害のある患者」への投与禁忌が解除となり、慎重投与に変更
  • 2013年11月、グラクティブ錠12.5mg新発売

この間の事情については、下記の文章(小野薬品工業株式会社、2013年8月2日付け)が分かりやすい。

「グラクティブは、重度腎機能障害のある患者さんへ投与する場合には、通常用量50mgの1/4量(12.5mg)への用量調整が必要ですが、12.5mg が投与可能な製剤がないことから禁忌となっていました。しかし、今年6月に25mg錠の割線入り製剤への変更の承認を取得し、用量調整が可能となったため、重度腎機能障害のある患者さんへの投与禁忌が解除となり、慎重投与に変更されました」。

エクア(一般名:ビルダグリプチン)

1回50mg/1日2回投与、血中内で加水分解(尿中未変化体排泄率22.7%)、中等度以上は1日1回投与。

ネシーナ(一般名:アログリプチン)

1回25mg/1日1回投与、主に腎排泄型(尿中未変化体排泄率73%)、CCrなどに応じて用量調節。

腎機能低下時の用法・用量(アログリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日1回25mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1日1回12.5mg
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日1回6.25mg

トラゼンタ(一般名:リナグリプチン)

1回5mg/1日1回投与、未変化体で胆汁中排泄(尿中未変化体排泄率0.6%)、用量調節不要。

Tmax:中央値6.00(最小最大値2.00-8.00)(h)、Cmax:幾何平均値9.00(幾何変動係数40.6%)(nM)、t1/2:幾何平均値105(幾何変動係数8.26%)(h)
1日1回5mg服用、24時間/105時間=0,2⇒定常状態がある薬物
定常状態に達するまでの時間、105時間×5=525時間⇒約22日
(どんぐり2019,p.235)

「半減期が長いから、効果が発現するまでに時間を要するのかというと、そうではない」。
「AUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間」であり、「1日1回タイプの他のDPP-4阻害薬と変わらない」。(実践薬学2017,pp.383-384)

適応症:2型糖尿病(以下、トラゼンタ・インタビューフォームより)
通常、成人にはリナグリプチンとして5mgを1日1回経口投与する。
未変化体で胆汁中に排泄(尿中未変化体排泄率、0.6%)。
日本人健康成人男性に本剤5mgを12日間反復投与した定常状態における見かけの分布容積(Vz/Fss)は11300Lであった。
t1/2:終末相での半減期(105hr)
本薬の薬物動態的な特徴を表すと考えられるAUCの累積係数から算出した半減期は12.2時間であった。

リナグリプチンの半減期は105時間と非常に長くなっている。
これは組織移行性の大きさ、つまり分布容積が非常に大きいことによるものである(t1/2=0.693×Vd/CL)。
ただし、この半減期は終末相のものである。(実践薬学2017,p.383)

もっとも、この長い終末相の半減期によって、効果が持続する可能性を示すデータがある。

胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤:トラゼンタ(リナグリプチン)。(実践薬学2017,p.167)

テネリア(一般名:テネリグリプチン)

1回20mg/1日1回投与(増量可)、肝消失2/3,腎排泄1/3(尿中未変化体排泄率21.0~22.1%) 、用量調節不要。

スイニー(一般名:アナグリプチン)

1回100mg/1日2回(増量可)、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率49.9%)、重度・末期は1日1回投与。

腎機能低下時の用法・用量(アナグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

アナグリプチンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.129,254)

70歳女性、体重43kg、血清クレアチニン1.0mg/dL
糖尿病と診断され、アナグリプチンが追加投与された。

ビソプロロールフマル酸塩5mg、1回1錠、1日1回朝食後、14日分
ベザフィブラート徐放錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分
アナグリプチン錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-70)/(72×(1.0+0.2))}×43×0.85
=(70/86.4)×43×0.85
=29.6mg/dL

重度腎機能障害のある患者又は透析中の末期腎不全の患者:用量調節すること。排泄の遅延により本剤の血中濃度が上昇する。
重度腎機能障害患者/末期腎不全患者:クレアチニンクリアランス(mL/分)Ccr<30、投与量100mg、1日1回。
(スイニー添付文書)

重度腎機能障害のある患者(Ccr<30)に該当するので、投与量は1日1回(100mg)が適当である。

尿中未変化体排泄率(fu)

fu=尿中未変化体排泄量/(投与量×バイオアベイラビリティ)

健康成人男性 6 例にアナグリプチン 100mg を空腹時単回経口投与したとき、投与 72 時間後までのアナグリプチンの尿中排泄率は 49.87±8.39%(平均値±標準偏差)であった。
健康成人男性 6 例に[14C]アナグリプチン 100mg を空腹時単回経口投与したとき、総放射能の尿中排泄率からアナグリプチンの吸収率は少なくとも 73.2%と見積もられた。
(スイニー・インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率49.9%は経口投与時のデータであり、バイオアベイラビリティで補正をする必要がある。
つまり、「体内に吸収された薬物量(投与量×バイオアベイラビリティ)」と「尿中に未変化のまま排泄された薬物量(尿中未変化体排泄量)」の比を求める。

尿中未変化体排泄率(fu)=200×0.499/200×0.73(1日投与量200mgとして)
=0.6835⇒約68.4%(腎排泄型)

注)(どんぐり2019,p.129,254)では、なぜだか、動物試験データ(ラット、イヌ、サル)から、バイオアベイラビリティ:60%(50.2%~77.7%の幅の平均値として)を採用している。

Giusti-Hayton法より、補正係数(G)を求める。

補正係数(G)=1-尿中未変化体排泄率(fu)×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-0.684×(1-29.6/100)
=0.5185

腎機能低下患者の投与量=常用量×補正係数(G)
=200×0.52⇒104mg/日

以上から、Cockcroft&Gaultの式(→添付文書)やGiusti-Hayton法共に、
アナグリプチンの投与量は、1日100mgが適当であることを示している。

なお、併用薬のビソプロロール、ベザフィブラート共に糖尿病用薬との併用注意(併用に注意すること)となっている。

結論)疑義照会をする。
薬理作用の過剰発現による重大な副作用である低血糖症状を避けるため減量する。

オングリザ(一般名:サキサグリプチン)

1回5mg/1日1回投与、肝腎(尿中未変化体排泄率15.8%、活性代謝物22.2%)、中等度以上は1回2.5mg投与。

腎機能低下時の用法・用量(サキサグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ザファテック(一般名:トレラグリプチン)

1回100mg/週1回投与、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率76%)、CCrなどに応じて用量調節。

ネシーナ+フッ素(F)⇒半減期延長
世界初、週1回投与の経口血糖降下薬である
「血液中から薬が消失しても薬の活性が続くように設計」されている。
「腎障害で薬の排泄が遅れると、薬の血中濃度が上がり、必要以上に薬が効き過ぎてしまう恐れ」がある。
(児島2017,p.52)

なお、ザファテックの禁忌から「高度の腎機能障害や透析の患者」が削除(2019年9月)されている。
児島(2017,p.52)の禁忌情報はそれ以前のものである。

実際の添付文書情報(ザファテック)は以下のとおりである。

高度腎機能障害患者/末期腎不全患者
血清クレアチニン(mg/dL)、男性:>2.4、女性:>2.0
クレアチニンクリアランス(Ccr, mL/min)、<30
25mg、週1回

「週1回の薬で、かえって飲み忘れが増えることもある」。(児島2017,p.53)

本剤の服用を忘れた場合:(ザファテック・インタビューフォーム)
「気づいた時点で決められた用量を服用し、その後はあらかじめ定められた曜日に服用する。次の予定日以降に気づいた場合は、気づいたときに1錠のみ、以降は予定通り服用するように指導すること。絶対に2錠まとめて服用しないこと」。

腎機能低下時の用法・用量(トレラグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回100mgを1週間に1回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回50mgを1週間に1回
    健康成人と比較して,AUCは約2.1倍となる
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    25mgを1週間に1回
    健康成人と比較して,AUCは約3.7倍となる

マリゼブ(一般名:オマリグリプチン)

1回25mg/週1回投与、主に腎排泄(尿中未変化体排泄率74%)、重度・末期は1回12.5mg投与。

週1回投与の経口血糖降下薬である。
マリゼブは、腎臓で一旦ろ過された後、大部分が再吸収されて血液中に戻る。
薬が長く体内を循環するため、効き目が1週間続く。(児島2017,p.52)

腎機能低下時の用法・用量(オマリグリプチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回25mgを1週間に1回
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    腎機能正常者と同じ
    健康成人に比しAUCが1.3倍となる
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回12.5mgを1週間に1回
    健康成人に比しAUCが2.0倍となる

便秘薬(マグミットとプルゼニドなど)

便秘薬の使い分け

便秘薬は、「便秘の原因や併用薬・生活スタイルに合わせて使い分けるのが一般的」である。(児島2017,p.243)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(緩下薬)

便秘の原因となる薬剤を使用している場合は、原因となる薬剤の変更・中止を検討する。水分制限がある疾患でなければ、水分摂取を促し、食物繊維を取り入れた食事療法と適度な運動で改善を図る。(緩下薬)

  • マグネシウム製剤(酸化マグネシウム)は浸透圧下剤として用量調節しやすく、頻用されているが、高齢者は腎機能が低下しており、 高マグネシウム血症に注意が必要である。
  • ルビプロストン[アミティーザ]は、クロライドチャネルアクチベーターであり、血清中電解質に影響なく便をやわらかくさせるため、硬便のため排便困難となっている症状に使用を検討する。
  • ナルデメジン[スインプロイク]は、オピオイド誘発性の難治性便秘であれば使用を検討する。
  • マグネシウム製剤を使用する場合は、低用量から開始し、高用量の使用は避ける。
    定期的に血清マグネシウム値を測定し、高マグネシウム血症の症状である悪心・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、傾眠などの症状がある場合はマグネシウム製剤の中止と受診をすすめる。
  • 刺激性下剤は長期連用により耐性が生じて難治性便秘に発展することがある。
    また、センナなどに含まれるアントラキノン誘導体は大腸運動異常や偽メラノーシスを引き起こす。
    刺激性下剤の使用は頓用にとどめるべきである。
  • マグネシウム製剤は、フルオロキノロン系・テトラサイクリン系抗菌薬などの吸収を低下させるため、これらの薬剤との服用間隔を2時間程度空ける必要がある。

マグミット(一般名:酸化マグネシウム)

腸に水分を集めて便を柔らかくする(やさしい便秘薬)

マグミットは、便が硬くて便秘になっている患者に適する。(以下、マグミット・インタビューフォームから引用)

マグミットは、「腸内において重炭酸塩となり、腸内の浸透圧を高めて腸内腔へ水分を引き寄せ、腸内容物を軟化させるとともに、腸管内容物が膨張し、腸管に拡張刺激を与え、排便を促し、緩下剤としての作用を発揮する」。

マグミットは、「胃内において制酸作用を呈し、その際二酸化炭素を発生しないため刺激が少ないとされる」。

マグミットは、(プルゼニドと比べて)腹痛といった副作用が無く耐性もできにくいことから、やさしい便秘薬とされている。

薬が効き始めるまでの時間にばらつきがある

マグミットが「効きはじめるまでの時間は、早い人で1時間、遅い人で7時間程度と、大きくばらつき」がある。それには、以下のような理由が考えられる。(児島2017,p.244)

  • 効き目に個人差がある
  • 剤形が多い(200mg、250mg、330mg、500mg)

マグミットの併用薬に注意する

次のような薬物と併用されている場合、併用薬の副作用(便秘)ではないかと疑う。(どんぐり2019,pp.34-35)

シタグリプチン
アムロジピン
トリアゾラムなど

マグミットの相互作用

「本剤は吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある」。(以下、マグミット添付文書より引用)

  • テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌剤、ビスホスホン酸塩系骨代謝改善剤
    これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
    マグネシウムと難溶性のキレートを形成し、薬剤の吸収が阻害される。
  • セフジニル、セフポドキシム プロキセチル、ミコフェノール酸、モフェチル、デラビルジン、ザルシタビン、ペニシラミン
    これらの薬剤の吸収が低下し、効果が減弱するおそれがあるので、同時に服用させないなど注意すること。
    機序不明
  • アジスロマイシン、セレコキシブ、ロスバスタチン、ラベプラゾール、ガバペンチン
    これらの薬剤の血中濃度が低下するおそれがある。
    機序不明
  • ジギタリス製剤、鉄剤、フェキソフェナジン
    これらの薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがあるので、服用間隔をあけるなど注意すること。
    マグネシウムの吸着作用又は消化管内・体液のpH上昇によると考えられる。
  • ポリカルボフィルカルシウム
    ポリカルボフィルカルシウムの作用が減弱するおそれがある。
    ポリカルボフィルカルシウムは酸性条件下でカルシウムが脱離して薬効を発揮するが、本剤の胃内pH上昇作用によりカルシウムの脱離が抑制される。
  • 高カリウム血症改善イオン交換樹脂製剤
    これらの薬剤の効果が減弱するおそれがある。
    また、併用によりアルカローシスがあらわれたとの報告がある。
    マグネシウムがこれらの薬剤の陽イオンと交換するためと考えられる。
  • 活性型ビタミンD3製剤
    高マグネシウム血症を起こすおそれがある。
    マグネシウムの消化管吸収及び腎尿細管からの再吸収が促進するためと考えられる
  • 大量の牛乳、カルシウム製剤
    milk-alkali syndrome(高カルシウム血症、高窒素血症、アルカローシス等)があらわれるおそれがあるので、観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には投与を中止すること。
    機序:代謝性アルカローシスが持続することにより、尿細管でのカルシウム再吸収が増加する。
    危険因子:高カルシウム血症、代謝性アルカローシス、腎機能障害のある患者
  • ミソプロストール
    下痢が発現しやすくなる。
    ミソプロストールは小腸の蠕動運動を亢進させ、小腸からの水・Naの吸収を阻害し、下痢を生じさせる。
    本剤には緩下作用があるので、両者の併用で下痢が発現しやすくなる

高マグネシウム血症にも注意する

重要な基本的注意:

本剤の投与により、高マグネシウム血症があらわれることがある。特に、便秘症の患者では、腎機能が正常な場合や通常用量以下の投与であっても、重篤な転帰をたどる例が報告されているので、以下の点に留意すること。(「4.副作用 1)重大な副作用」の項参照)

1)必要最小限の使用にとどめること。
2)長期投与又は高齢者へ投与する場合には定期的に血清マグネシウム濃度を測定するなど特に注意すること。
3)嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠等の症状があらわれた場合には、服用を中止し、直ちに受診するよう患者に指導すること。

プルゼニド(一般名:センノシド)

腸に刺激を与えて蠕動運動を活発にさせる(大腸刺激性下剤)

プルゼニドは、腸の動きが弱っていることが原因で便秘になっている患者に適する。(以下、プルゼニド・インタビューフォームから引用)

「プルゼニド錠12㎎はセンノシドA・Bを主成分とする緩下剤であり、大腸粘膜下のアウエルバッハ神経叢を刺激して蠕動を亢進し、排便を促す」。

注)「センナは、古くから緩下剤として知られた生薬であったが、1941 年 Stoll,A らサンドファーマ社(現:ノバルティスファーマ社、スイス)によって主成分センノシド A・B が分離抽出された」。

プルゼニドは、「腸管運動を促進することにより腹痛、悪心・嘔吐、腹鳴等が現れることがある」。

プルゼニドは、「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避けること。

(解説)
常習便秘の患者では下剤を長期服用する場合が多く、用量が増加する傾向がみられる。下剤は適用量より多量に使用されると腸管が痙攣し、逆に排便不十分となりさらに増量して下痢を起こすようになる。これは、特に本剤等のアントラキノン系下剤の長期投与で多くみられるとされている」。

プルゼニド錠で一番多い副作用は腹痛である。
また、長期服用による耐性が問題となることから、頓用での服用が望ましい。

プルゼニドの効きはじめは予測しやすい

プルゼニドは、「用量にかかわらず8~10時間で効きはじめる」。
そこで、翌朝の排便を期待するならば、前日寝る前に服用しておく、といったように効きはじめから逆算した飲み方が可能である。(児島2017,p.245)

プルゼニドの相互作用

プルゼニドでは、特に相互作用が問題となる薬物は無い。

医薬品各種(便秘薬)

マグミット(一般名:酸化マグネシウム)

浸透圧性下剤(塩類下剤):
「制酸剤、緩下剤。各種薬剤の配合剤としても使用」。(今日の治療薬,p.799)

腸管内容を軟化し、腸管を刺激する。

【効能・効果】
○下記疾患における制酸作用と症状の改善
胃・十二指腸潰瘍、胃炎(急・慢性胃炎、薬剤性胃炎
を含む)、上部消化管機能異常(神経性食思不振、いわ
ゆる胃下垂症、胃酸過多症を含む)
○便秘症
○尿路蓚酸カルシウム結石の発生予防

末(96%以上)
細粒(83%)
錠(200mg、250mg、300mg、330mg、400mg、500mg)

プルゼニド(一般名:センノシド)

大腸刺激性下剤:
「腸内細菌の作用でレインアンスロンを生成し大腸の蠕動運動を亢進、よく使用されている」。(今日の治療薬,p.801)

センナ(生薬)から分離抽出されたセンノシドA・Bを主成分とする。

便秘症
センノシドA・Bとして、通常成人1日1回12~24mgを就寝前に経口投与する。

錠(12mg)

アローゼン(一般名:センナ)

大腸刺激性下剤:
「よく使用されている」。(今日の治療薬,p.801)

【効能・効果】
便秘(ただし、痙攣性便秘は除く)
駆虫剤投与後の下剤

  • アローゼン顆粒(センナ製剤、0.5g、1g)
    通常成人1回0.5~1.0gを1日1~2回経口投与する。
  • ピムロ顆粒(センナ製剤、0.5g)
    通常成人1回0.5~1.0gを1日1~2回経口投与する。
  • ヨーデルS糖衣錠(センナ製剤、80mg)
    センナエキスとして、通常成人1回80㎎を就寝前に経口投与する。

ラキソベロン(一般名:ピコスルファート)

大腸刺激性下剤:
「腸内細菌叢由来のアリルスルファターゼにより発生するジフェノール体の大腸刺粘膜刺激によって下剤作用。液剤は内服量調整に便利」。(今日の治療薬,p.802)

「ピコスルファートナトリウム水和物は、胃、小腸ではほとんど作用せず、大腸細菌叢由来の酵素アリルスルファターゼにより加水分解され、活性型のジフェノール体となる(ラット)。
ジフェノール体は、腸管粘膜への以下の作用により瀉下作用を示す。
1. 腸管蠕動運動の亢進作用(ラット)
2. 水分吸収阻害作用(ラット)」。(ラキソベロン・インタビューフォーム)

アミティーザ(一般名:ルビプロストン)

上皮機能変容薬(クロライドチャネルアクチベーター)。
「腸管内への腸液の分泌を増加させ便を柔軟化、排便を促進」。(今日の治療薬,p.798)

「ルビプロストンは、小腸上皮頂端膜(腸管内腔側)に存在する ClC-2 クロライドチャネルを活性化し、腸管内への水分分泌を促進し、便を軟らかくし、腸管内の輸送を高めて排便を促進する。ルビプロストンの作用は腸管局所にて発現し、吸収された後速やかに代謝される」。(アミティーザ・インタビューフォーム)

慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
通常、成人にはルビプロストンとして1回24μgを1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与する。
なお、症状により適宜〈減量〉する。

「承認時における安全性評価対象例(1日48μg投与例)315例中、196例(62%)に臨床検査値異常を含む
副作用が認められました。主な副作用は下痢95例(30%)、悪心73例(23%)等でした」。(アミティーザ総合製品情報概要,p.30)

「副作用の発現率は用量依存的でしたが、薬理作用によると考えられる消化器症状が主で、減量や投与中止による回復がみられました。以上のことから、至適な用法・用量は48μg/日(24μg×2回/日)と考えられました」。(同上,p.13)

カプセル(12μg、24μg)

グーフィス(一般名:エロビキシバット)

胆汁酸トランスポーター阻害薬:
「回腸で胆汁酸の再吸収を阻害。大腸に流入した胆汁酸が大腸管腔内への水分分泌・消化管運動を促進」。(今日の治療薬,p.803)

慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。
なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。

エロビキシバットは、「大腸内に流入する胆汁酸の量を増加させ、排便を促す」。(以下、グーフィス・インタビューフォームから引用)

エロビキシバットは、「胆汁酸の再吸収に係わるトランスポーターであるIBAT(ileal bile acid transporter)を阻害する作用を持つ低分子化合物である」。

エロビキシバットは、「回腸末端部においてIBATを阻害し、胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸内に流入する胆汁酸の量を増加」させる。

エロビキシバットは、「大腸に流入した胆汁酸により、水分分泌と大腸運動促進の2つの作用(Dual Action)で排便効果を促す」。

錠(5mg)

新レシカルボン(一般名:炭酸水素ナトリウム/無水リン酸ナトリウム)

大腸刺激性下剤(坐剤):
「腸内で炭酸ガスを発生し蠕動運動を亢進することにより排便を促進」する。(今日の治療薬,p.798)

テレミンソフト(一般名:ビサコジル)

大腸刺激性下剤(坐剤):
「結腸・直腸の粘膜に選択的に作用し、蠕動運動を促進」する。(今日の治療薬,p.798)

グリセリン(一般名:グリセリン)

浣腸剤:

スインプロイク(一般名:ナルデメジン)

オピオイド誘発性便秘症治療薬:
「末梢性μオピオイド受容体拮抗薬」。(今日の治療薬,p.803)

糖尿病の血糖コントロール(特に高齢者の場合)

糖尿病の合併症は、糖尿病性網膜症や腎症から歯周病や認知症まで多岐にわたる

糖尿病の合併症は、細小血管障害と大血管障害に大別される。また最近では、糖尿病足病変や歯周病、そして認知症も合併症としてとらえられるようになっている。(実践薬歴2018,pp.110-116)

糖尿病の合併症(慢性)

  • 細小血管障害(三大合併症)
    • 糖尿病性網膜症
    • 糖尿病腎症/糖尿病性腎臓病
    • 糖尿病性神経障害
  • 大血管障害
    • 脳梗塞
    • 狭心症
    • 心筋梗塞
    • 閉塞性動脈硬化症
  • そのほか
    • 糖尿病足病変
    • 歯周病
    • 認知症

糖尿病の合併症(急性)

急性の合併症には、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、感染症などがある。

さらに、高齢者(特に75歳以上)では、以下のような特徴的な症状が起こりやすい。

  • 日常生活動作(ADL)の低下や転倒・骨折
  • 認知機能低下、認知症
  • 無自覚性低血糖、重症低血糖など

糖尿病の診断と血糖コントロール

糖尿病の診断では、血糖値の測定が基本となる。HbA1c値は、血糖値を補完する診断基準として、糖尿病診療ガイドライン2016から採用されている。

注)血糖値には、空腹時血糖値、ブドウ糖負荷試験の2時間値(OGTT)あるいは随時血糖値がある。

「糖尿病治療の目標と指針」(糖尿病診療ガイドライン2019,p.24)では、血糖コントロールの目標について、次のようにまとめている。http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

血糖コントロールの目標:

細小血管症を抑制するためには空腹時血糖値およびHbA1c(過去1,2ヵ月間の平均血糖値を反映する)の是正が重要であり、大血管症を抑制するためにはさらに食後高血糖の是正も必要である。

ただし、血糖コントロールの急激な是正あるいは厳格過ぎる血糖コントロールは、ときに重篤な低血糖、細小血管症の増悪、突然死などを起こしうるので、血糖コントロールの目標は、年齢、罹病期間、併発症の状態、低血糖のリスクならびにサポート体制などを考慮して、個別に設定すべきである。

高齢者には厳格な血糖コントロールは禁物である

「HbA1c値」は、過去1~2か月間の平均血糖値を反映するとされている。が果たしてその表現は正しいのであろうか。

参考)HbA1cはいつの血糖を表すか?/日経メディカル/田原保宏

HbA1c値は、血糖値と組み合せることによって、糖尿病の診断基準の一つとなっている。また、血糖コントロールの指標として重要である。

ただし、大規模臨床試験によって「HbA1c値と心血管イベント(心血管死を含む)の間にはJカーブ現象がある」ことが証明されている。つまり、HbA1c値を下げ過ぎると、逆に心血管イベントの発症率が高まるのである。

そしてその原因は、重篤な低血糖にあるのではないかと考えられている。高齢者では低血糖のリスクが高いため、HbA1c値を下げ過ぎて低血糖症状を招くことのないよう注意する。

HbA1c値のコントロール目標値(高齢者以外)

糖尿病診療ガイドライン2019では、「合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7.0%未満とする」としている。

そして、「血糖正常化を目指す際の目標は6.0未満」である。

ただしこれは、「適切な食事療法や運動療法で達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用もなく達成可能な場合の目標」である。

「治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する」ことになる。

HbA1c値のコントロール目標値(高齢者では高めに設定)

高齢者は、認知機能の程度やADL(日常生活動作)自立の程度によって3段階(カテゴリー1,2,3)に分けられ、カテゴリーに応じてコントロール目標値は引き上げられている(緩和されている)。

「さらに、患者が気づかない無自覚性低血糖のリスクも鑑みて、目標値には下限も設定されている」。つまり、目標値の幅が「1.0%」になるように設定されている。(実践薬学2017,p.355)

【カテゴリー1】
認知機能正常かつADL自立している場合:
「HbA1cの目標値は7.0%未満」(通常と同様)である。

そして、カテゴリー1の高齢者が、重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)を使用している場合、HbA1c値のコントロール基準値は以下のようになる。(0.5~1.0%緩和)

  • 65歳以上~75歳未満、7.5%未満(下限6.5%)
  • 75歳以上、8.0%未満(下限7.0%)

【カテゴリー2】
軽度認知障害~軽度認知症、または手段的ADL低下、基本的ADL自立している場合:
「HbA1cの目標値は7.0%未満」(通常と同様)である。

そして、カテゴリー2の高齢者が、重症低血糖が危惧される薬剤(同上)を使用している場合、「HbA1c値のコントロール基準値は8.0%未満」(下限7.0%)となる。(1.0%緩和)

【カテゴリー3】
中等度以上の認知症、または基本的ADL低下、または多くの併存疾患や機能障害:
「HbA1cの目標値は8.0%未満」である。(1.0%緩和)

そして、カテゴリー3の高齢者が、重症低血糖が危惧される薬剤(同上)を使用している場合、「HbA1c値のコントロール基準値は8.5%未満」(下限7.5%)となる。(1.5%緩和)

参考)高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)、(実践薬歴2018,p.112)
(高齢者糖尿病診療ガイドライン2017)

低血糖が起きた場合どのように対応すべきか

糖尿病治療では、低血糖を起こさないことが非常に大切である。それでは、実際に低血糖が起きたときどのように対応すればよいのか、同診療ガイドラインでは次のように述べている。

    • Q20-4 低血糖にはどう対応するか?(糖尿病診療ガイドラインp.334)
  • 動悸、発汗、脱力、意識レベルの低下などの低血糖症状がある、または通常血糖値が70mg/dL未満の場合、低血糖と診断し対応する。
  • 低血糖の際は、速やかにブドウ糖を中心とした糖質の経口摂取(ブドウ糖として5~10g)、ブドウ糖の静脈内投与(ブドウ糖として10~20g)、またはグルカゴンの筋注を行う。いったん症状が回復しても再発や遷延があるため、注意深い経過観察と処置が必要である。

低血糖にはブドウ糖(単糖類)を用いる

ブドウ糖(グルコース)は、自然界に最も多く存在する代表的な単糖類(六単糖)であり、生体内では最も重要なエネルギー源となっている。

これに対して、砂糖(グラニュー糖や氷砂糖など)の主成分であるショ糖は、六単糖であるブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が結合した二糖類である。

体内に吸収されたショ糖(二糖類)が分解されて、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)になるには少し時間がかかる。したがって、低血糖状態という緊急事態では、ショ糖(二糖類)よりもブドウ糖(単糖類)を摂取する方が望ましい。

特に、αグルコシダーゼ阻害薬服用時は、二糖類を分解する作用が阻害されており、ブドウ糖を摂取しなければならない。⇒αグルコシダーゼ阻害薬

シックデイ・ルールは患者はもちろんのこと家族も含めて理解しておく

シックデイとは、糖尿病患者がほかの病気によって体調を崩した状態のことを言う。そして、シックデイ時の対応の基本をシックデイ・ルールと言う。

シックデイ・ルールは、患者本人はもちろんのこと、家族も含めて理解しておかなければならない。なぜならば、患者本人では対応することができなくなった場合、家族に頼ったり医療機関に連絡してもらったりしなければならないからである。

いずれにしても、緊急時の医療機関との連携体制を確立しておくことが必要になる。そして、より具体的な内容は、あらかじめ主治医とよく相談して決めておくことが大切となる。

最後に、糖尿病診療ガイドライン2019では、「シックデイとは何か。そして、糖尿病患者はシックデイ(体調の悪い日)にはどう対応すべきか?」について以下のように述べている。

「糖尿病患者が、感染症などによる発熱、下痢、嘔吐や食欲不振のために食事が摂れない状態をシックデイと呼ぶ。様々なストレスに対して、カテコールアミン、コルチゾールなどのインスリン抵抗ホルモンが増加することで高血糖となることが多い。そのため、高血糖・ケトアシドーシスなどを回避するための特別な対応が必要となる」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.340)

    • Q20-8 シックデイにはどう対応するか?(糖尿病診療ガイドラインp.340)
  • 日ごろから、シックデイの際に医療機関に相談できる体制を確立しておく。
  • 日ごろから、決して自己判断で経口血糖降下薬やインスリンを中断しないように指導する。
  • 食事摂取が困難な際は早期に医療機関に連絡し、指示を受ける。
  • シックデイの際には、脱水予防のため、十分に水分を摂取し、できるだけ摂取しやすい形(お粥、麺類、果汁など)で糖分を摂取し、エネルギーを補給する。
  • できるだけ血糖自己測定やケトン体測定を頻回に行う。

「経口血糖降下薬については原則、減量、中止が基本」(実践薬歴2018,p.116)となる。ただし、その具体的内容は、患者個々の病態に応じて異なってくる。

血糖コントロールに影響を与える薬物

血糖降下作用を増強する薬剤

  • β-遮断薬
  • サリチル酸系薬剤
  • MAO 阻害薬
  • フィブラート系薬剤

血糖降下作用を減弱する薬剤

  • アドレナリン
  • 副腎皮質ホルモン
  • 甲状腺ホルモン