免疫調節薬(ペンタサ、アサコールなど)

免疫調節薬(概要)

炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)
一般的には、原因不明の「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」の2つを指す。
共に比較的若年に発症し、10歳代後半から30歳代前半に好発する。
治療薬は、従来の炎症抑制を主体としたものから、2000年以降、免疫抑制を主体としたものに変化している。

潰瘍性大腸炎(UC:ulcerative colitis):
大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性疾患である。
病変は直腸から連続的に、そして上行性に広がる(最大で直腸から結腸全体まで)。
持続性または反復性の血性下痢で、腹痛や頻回の便意を伴う。
クローン病(CD:crohn’s disease):
病変は口腔から肛門まで消化管のどの部位にも生じる可能性がある。

5-ASA製剤が、軽症~中等症の潰瘍性大腸炎に対する寛解導入、寛解維持の第一選択薬として用いられる。

「(潰瘍性大腸炎(UC)では)重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択する。軽症~中等症の活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤(SASP、メサラジン)を用いる」。(今日の治療薬2020,p.318)

メサラジンは、内服することによって、通常は小腸で吸収されてしまう。
これを、大腸まで届けるため、各薬剤で製剤的特徴を凝らしている。
このドラッグ・デリバリー・システム(Drug Delivery System:DDS)の違いによって、適応症に差が出てくる。

潰瘍性大腸炎は、ペンタサやアサコールの服用で9割近くが寛解を維持できる。
ただし、飲み忘れなどがあると、その効果は4割程度にまで落ち込んでしまう。

免疫調節薬では、炎症性腸疾患のほかに、関節リウマチや乾癬などが治療対象となる。

医薬品各種(免疫調節薬)

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs:Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)

ペンタサ(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「5-ASAをエチルセルロースでコーティング。小腸から大腸にかけて徐々に5-ASAを放出」。(今日の治療薬2020,p.325)

有効成分のメサラジンを、エチルセルロースでコーティングした放出調整製剤である。
つまり、コーティングの小さな穴から薬が徐々に放出されていく仕組みになっている。

小腸から回腸・大腸にかけて広い範囲で作用する。
小腸に病変のあるクローン病にも効果がある。

【共通】潰瘍性大腸炎(重症を除く)
【内服のみ】クローン病
通常、成人にはメサラジンとして1日1,500mgを3回に分けて食後経口投与する。

かんだり砕いたりしないこと(ペンタサは、2分割までは可)。

ペンタサ:顆粒(94%、250mg/包、500mg/包、1,000mg/包、2,000mg/包)
ペンタサ:錠(250mg、500mg)
ペンタサ:注腸液(1g/100mL)
ペンタサ:坐剤(1g)

アサコール(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「pH依存性(pH7.0以上でコーディングが崩壊)に大腸で5-ASAを放出」。(今日の治療薬2020,p.326)

有効成分のメサラジンを、pH7.0以上で崩壊する皮膜で包んでいる。
つまり、pH酸性に傾いている胃内では崩壊せず、pH7以上になる回腸・大腸に達してはじめて崩壊する仕組みになっている。

大腸に高濃度のメサラジンを届けることができる。
かまずに服用、粉砕も不可。

○潰瘍性大腸炎(重症を除く)
通常,成人にはメサラジンとして1日2,400mgを3回に分けて食後経口投与する。

アサコール:錠(400mg)

リアルダ(一般名:メサラジン、5-ASA)

免疫調節薬:
「pH依存性コーティング及び親水性・親油性基剤によって5-ASAを大腸で徐々に放出」。(今日の治療薬2020,p.326)

アサコールに準ずる。
高用量製剤となっており、1日1回の服用で済む。

○潰瘍性大腸炎(重症を除く)
通常、成人にはメサラジンとして1日1回2,400mgを食後経口投与する。

リアルダ:錠(1,200mg)

サラゾピリン(一般名:サラゾスルファピリジン、SASP)

免疫調節薬:
「大腸で腸内細菌によってアゾ結合が切断されて5-ASAを放出。副作用に注意」。(今日の治療薬2020,p.325)

潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、非特異性大腸炎
通常1日4~8錠(2~4g)を4~6回に分服する。

サラゾピリン:錠(500mg)
サラゾピリン:坐剤(500mg)

アザルフィジンEN(一般名:サラゾスルファピリジン、SASP)

免疫調節薬(DMARDs):
「わが国の承認用量は海外の半量。ガイドラインで強い推奨」。(今日の治療薬2020,p.324)

○関節リウマチ
本剤は、消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。
通常、サラゾスルファピリジンとして成人1日投与量1gを朝食及び夕食後の2回に分割経口投与する。

アザルフィジンEN:腸溶錠(250mg、500mg)

腸溶錠であるため、原則として噛まずに服用すること。

ケアラム(一般名:イグラチモド)

免疫調整薬:
「25mgより漸増することにより肝障害軽減」。(今日の治療薬2021,p.330)

○関節リウマチ

ケアラム:錠(25mg)

リマチル(一般名:ブシラミン)

免疫調節薬(DMARDs):
「わが国発のペニシラミンと同様SH基製剤。安全性から200mg/日以下の投与が推奨」。(今日の治療薬2020,p.324)

○関節リウマチ
本剤は消炎鎮痛剤などで十分な効果が得られない場合に使用すること。
通常成人、1回ブシラミンとして100mgを1日3回(300mg)食後に経口投与する。

リマチル:錠(50mg、100mg)

腎機能低下時の用法・用量(ブシラミン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3、食後、最大1日300mg
  • CCr(60mg/dL未満)
    禁忌(ネフローゼ症候群等の重篤な腎障害を起こすおそれがある)
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    腎機能の廃絶した透析患者の用量は1回100mgを週3回HD後

シオゾール(一般名:金チオリンゴ酸ナトリウム)

免疫調整薬(DMARDs):
「水溶性金製剤。ときに寛解例あるが、重篤な副作用多く使用は減少」。(今日の治療薬2020,p.322)

○関節リウマチ

オテズラ(一般名:アプレミラスト)

免疫調整薬(PDE4阻害薬):
「主に炎症性細胞に分布するPDE4を阻害することで、炎症性サイトカインの産生を抑制する」。(今日の治療薬2020,p.327)

○局所療法で効果不十分な尋常性乾癬
○関節症性乾癬
○局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍

腎機能低下時の用法・用量(アプレミラスト)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

抗真菌薬(爪白癬治療・外用薬)

抗真菌薬(爪白癬治療・外用薬)概要

爪白癬の治療には、内服の抗真菌薬が使われてきた。
しかし、それらの薬は、副作用があったり相互作用(禁忌)が多かったりして使いづらかった。

外用薬で爪白癬の治療ができることは、非常に画期的なことである。
ただし、爪の大部分が白癬菌に感染して濁ってしまっているような場合、外用薬だけでは治療できない。
適切な薬物を適切に使用して、一度きちんと治療を完了させることが大切である。

なお、内服の新しい薬が2018年5月に薬価収載されている。

医薬品各種(爪白癬治療・外用薬)

ルナコック(一般名:ルリコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.131)

ルリコナゾールの最小発育阻止濃度(MIC)は、既存の抗真菌薬のなかで最も小さい。
つまり、それだけ強い抗真菌作用を有している。

ルナコックは、このように元々強い抗真菌作用を持っているルリコンを、さらに改良した薬物である。
つまり、有効成分(ルリコナゾール)の濃度が、ルリコンの5倍になっている。

濃度を高くすることによって、薬が浸透しにくい爪でも効果が得られやすくなっている。
そして、有効成分は同じであることから、未知の副作用が出る心配が少ない。
また、価格も安い。

ルナコックは、容器の先端を爪に押し当てて、薬液を染み出させるようにして使う。
従来の抗真菌薬と同じ使い方であるが、高齢者などでは多少使いづらい。

クレナフィン(一般名:エフィナコナゾール)

表在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「ハケと一体型ボトルで塗布しやすい」。(今日の治療薬2020,p.131)

クレナフィンには刷毛(はけ)が付いているため、爪に塗りやすくなっている。
非常に使い勝手がよく、薬を出し過ぎてしまうという失敗も少ない。

クレナフィンは、爪の主成分であるケラチンへの吸着率が、ほかの抗真菌薬よりも低くなっている。
(クレナフィン:85.7%、そのほかの抗真菌薬98.1~99.5%)
このことによって、クレナフィンは爪に全て吸着されてしまうことなく、爪床(爪と皮膚の接触面)まで届き、爪全体の白癬菌に効果を発揮することができる。

経口アゾール系抗真菌薬(フルコナゾールなど)

経口アゾール系抗真菌薬(概要)

経口アゾール系抗真菌薬(4種類):

  • イミダゾール系:ミコナゾール(MCZ)
  • トリアゾール系:フルコナゾール(FLCZ)、ボリコナゾール(VRCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)

「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014」によれば、第一選択薬は、口腔咽頭カンジダ症や食道カンジダ症ならば、ジフルカン(FLCZ)かイトリゾール(ITCZ)、第二選択薬は、ブイフェンド(VRCZ)が適当である。

MCZ(フロリード)も上記2疾患が適応症となっている。
しかしながら、口腔咽頭カンジダ症では第二選択薬になっているものの、食道カンジダ症では第二選択薬にも推奨されていない。

イトリゾール(ITCZ)のカプセルには、爪白癬(内服)の適応があり、パルス療法が行われる。

経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌(ワーファリンの場合)

(以下、ワーファリン添付文書より)

併用禁忌(併用しないこと)
ミコナゾール(ゲル剤・注射剤・錠剤)
(フロリードゲル経口用、フロリードF注、オラビ錠口腔用)

本剤の作用を増強することがある。また、併用中止後も、本剤の作用が遷延し、出血やINR上昇に至ったとの報告もある。患者が本剤による治療を必要とする場合、本剤による治療を優先し、ミコナゾール(ゲル剤・注射剤・錠剤)を投与しないこと。

ミコナゾールが本剤の肝薬物代謝酵素を阻害する。

「ワルファリンとミコナゾールとの併用による出血やINTの延長が多数報告されています」。(PISCS2021,p.150)
「CYPの阻害薬であるアゾール系抗真菌薬の中でも、ミコナゾールは特にCYP2C9の阻害作用が強い薬剤です」。(PISCS2021,p.150)
「定量限界が十分に低いとはいえないこと、また反復投与時の肝臓中濃度はさらに高くなっている可能性がある」。(PISCS2021,p.150)
「ミコナゾール投与終了後も相互作用を生じた事例や、相互作用発現後にミコナゾールゲルを中止しても数カ月にわたって相互作用の影響が遷延していた報告が複数」ある。(PISCS2021,p.150)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬

以下、「ワーファリンとフロリードゲル、併用禁忌の裏側」(実践薬学2017,pp.154-159)による。

「2016年10月、ワーファリン(一般名ワルファリンカリウム)とフロリードゲル(ミコナゾール経口ゲル製剤)の添付文書が改訂され、両剤は併用禁忌となった」。
その理由は、従来から併用注意であったが、「ミコナゾール(ゲル)とワルファリンとの併用中または併用中止後の重篤な出血傾向が多数集積」されたためである。p.154

ここで、併用禁忌の対象がフロリード(ゲル)であることは重要である。

「(フロリードゲル)2.5gおよび5g投与群では、いずれの被験者の血漿中にもミコナゾールは定量限界未満(0.1μg/mL)であった」として「安全な抗真菌薬」とされていた。(フロリードゲル経口用のインタビューフォームより)

しかし実際には、「経口miconazoleゲル製剤とwarfarinの併用は、入院治療を要するほどのINR値上昇を引き起こし、またINR値への影響が長期間に及ぶ」というデータが示されている。p.158

ワルファリン(WF)の薬効の本体はCYP2C9で代謝されるS-WFであり、経口アゾール系抗真菌薬はそれぞれCYP2C9そのほかの阻害薬である。
したがって、ミコナゾール(MCZ)以外の経口アゾール系抗真菌薬をWFと併用するにしても、「INR測定やトロンボテストの回数を増やすなど慎重に投与する必要がある」。p.158

医薬品各種(経口アゾール系抗真菌薬)

イトリゾール(一般名:イトラコナゾール)

深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「内服での吸収性がやや弱い。抗アスペルギルス活性良好」。(今日の治療薬2020,p.126)

  • 爪白癬(内服)の適応がある(児島2017,pp.204-207)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

イトラコナゾールは、CYP2C8阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

イトラコナゾールは、CYP2C19阻害薬である(強い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

イトラコナゾールは、CYP3A阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、極めて高度である。
    イトラコナゾール:IR(CYP3A4)0.95VS、(PISCS2021,p.47)、CYP3A4阻害薬

イトラコナゾールは、P-gp阻害薬である

  • 「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune

イトラコナゾールは、P糖蛋白(P-gp:排出トランスポーター)阻害薬である。
相互作用を受ける薬物(P-gpの基質):アリスキレン(ラジレス)、ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、リオシグアト(アデムパス)、以上併用禁忌(上記CYP関連を含む禁忌薬参照)。

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌(イトラコナゾール)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 同系統薬共通
    睡眠薬・トリアゾラム、片頭痛薬・エルゴタミン(クリアミンに配合)、抗不整脈薬・キニジン
  • 脂質異常症薬・シンバスタチン
  • Ca拮抗薬・アゼルニジピン、ニソルジピン
  • 抗精神病薬・ブロナンセリン、ピモジド
  • 抗凝固薬・ダビガトラン、リバーロキサバン
  • 抗C型肝炎ウイルス薬・アスナプレビル
  • 抗不整脈薬・ベプリジル
  • 勃起不全改善薬・バルデナフィル、シルデナフィル
  • 血管拡張薬・タダラフィル
  • 降圧関連薬・エプレレノン、アリスキレン
  • 新しい睡眠薬・スボレキサント
  • 血管拡張薬・リオシグアト
  • 抗悪性腫瘍薬・イブルチニブ

ブイフェンド(一般名:ボリコナゾール)

深在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「視覚異常、東洋人では代謝不良、高血中濃度が高率に認められる」。(今日の治療薬2020,p.125)

  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

ボリコナゾールは、CYP2C19阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    ボリコナゾール:IR(CYP2C19)0.64、(PISCS2021,p.54)、CYP2C19阻害薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    ボリコナゾール:IR(CYP2C9)0.66、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

ボリコナゾールは、CYP2C19の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    ボリコナゾール:CR(CYP2C19)0.68、(PISCS2021,p.54)、CYP2C19基質薬

ボリコナゾールは、CYP3A阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、極めて高度である。
    ボリコナゾール:IR(CYP3A4)0.98VS、(PISCS2021,p.47)、CYP3A4阻害薬

経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌(ボリコナゾール)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 同系統薬共通
    睡眠薬・トリアゾラム、片頭痛薬・エルゴタミン(クリアミンに配合)、抗不整脈薬・キニジン
  • 抗結核薬・リファンピシン、リファブチン
  • 抗てんかん薬・カルバマゼピン、フェノバルビタール
  • 抗HIV薬・エファビレンツ、リトナビル(配合薬も有り)

ジフルカン(一般名:フルコナゾール)

深在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「組織移行性良好」。(今日の治療薬2020,p.123)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(フルコナゾール)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(77~81%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    50~400mg分1
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1 回50~200mgを24時間毎
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1 回50~200mgを週3回、HD患者では毎HD後

フルコナゾールは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フルコナゾール:IR(CYP2C9)0.48(100mg/日投与)、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬
    フルコナゾール:IR(CYP2C9)0.65(100mg/日投与)、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

フルコナゾールは、CYP2C19阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    フルコナゾール:IR(CYP2C19)0.78、(PISCS2021,p.54)、CYP2C19阻害薬

フルコナゾールは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、やや高度である。
    フルコナゾール:IR(CYP3A4)0.79SS、(PISCS2021,p.47)、CYP3A4阻害薬

経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌(フルコナゾール)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 同系統薬共通
    睡眠薬・トリアゾラム、片頭痛薬・エルゴタミン(クリアミンに配合)、抗不整脈薬・キニジン

フロリード(一般名:ミコナゾール)

深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「注射は深在性、ゲル経口用・膣坐剤・外用は表在性」。(今日の治療薬2020,p.123)

ミコナゾールは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    ミコナゾール:IR(CYP2C9)0.79、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

ミコナゾールは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌(ミコナゾール)

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)

  • 同系統薬共通
    睡眠薬・トリアゾラム、片頭痛薬・エルゴタミン(クリアミンに配合)、抗不整脈薬・キニジン
  • 脂質異常症薬・シンバスタチン
  • Ca拮抗薬・アゼルニジピン、ニソルジピン
  • 抗精神病薬・ブロナンセリン
  • 抗血栓薬・リバーロキサバン、ワルファリン
  • 抗C型肝炎ウイルス薬・アスナプレビル

ノクサフィル(一般名:ポサコナゾール)

深在性抗真菌薬(トリアゾール系):
「既存の抗真菌薬が無効あるいは忍容性に問題がある真菌症の治療に適応あり」。(今日の治療薬2021,p.125)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬)

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

ホスホマイシン系抗生物質(ホスミシンなど)

ホスホマイシン系抗生物質(概要)

ホスホマイシン系薬:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)
細胞壁peptidoglycanの生合成を初期段階で阻害することにより抗菌作用を示す。
(β-lactam系抗生物質は最終段階で阻害する)。(ホスミシン・インタビューフォーム)

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬)

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

医薬品各種(ホスホマイシン系薬)

ホスミシン(一般名:ホスホマイシン)

ホスホマイシン系:
「細胞壁合成初期を阻害。広域抗菌スペクトルを有する。ESBL産生菌にも有効」。(今日の治療薬2020,p.63)

「ESBL産生菌は、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended spectrum β-lactamases:ESBL)とよばれる酵素を産生する細菌の総称です。薬剤耐性菌の一種であり、大腸菌、肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリス等の腸内細菌から多く検出されています。近年では日本でも増加傾向にあり、入院歴のない一般の人からも分離されるようになってきました」。(サラヤ福祉ナビ>>感染症の基礎知識)

抗菌スペクトル:
ブドウ球菌属、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア・レットゲリ、緑膿菌、カンピロバクター属

ループ利尿薬(ラシックスなど)そのほか

ループ利尿薬(概要)

ループ利尿薬は、心不全や浮腫などの治療のため、Naや水分を大量に排出するために用いることが多い。

ループ利尿薬は、「腎臓でのNa再吸収を阻害することで、Naや水の排出を促進する作用」がある。
つまり、利尿薬として用いることが多く、降圧薬として用いることは少ない。(児島2017,p.38)
注:フロセミドには高血圧の保険適応があるが、高血圧の第一選択薬ではない。

強力な利尿作用。
腎障害にも使用可。
利尿目的には第一選択薬。
薬剤によって作用時間が異なる。
(今日の治療薬2020,p.708)

注)カリウム保持性利尿薬(スピノロラクトンなど)⇒「アルドステロン拮抗薬/カリウム保持性利尿薬」
注)サイアザイド系利尿薬(フルイトランなど)⇒「サイアザイド系利尿薬(フルイトランなど)」

糸球体におけるNaの再吸収

腎臓の糸球体では、血液中の老廃物や塩分を濾過して、1日およそ150L(リットル)の原尿を作っている。

この原尿の中には、老廃物以外に各種栄養素やさまざまな電解質も含まれている。
そこで、糸球体では、それらを再吸収することによって体内の水分量や電解質バランスなどを保っている。

その結果、体外に排出される尿量は、1日およそ1.5Lとなる。
つまり、原尿の約99%は再吸収されることになる。
再吸収が行われる場所とその量は以下のとおりである。(今日の治療薬2016)

場所ごとの再吸収率(%)は、文献によって異なるものの、近位尿細管>ヘンレ上行脚>遠位尿細管の順となっている。

【糸球体ろ過】

  • 近位尿細管(全体の60%)
  • ヘンレ上行脚(全体の30%)、ループ利尿薬
  • 遠位尿細管(全体の7%)、サイアザイド系利尿薬、カリウム保持性利尿薬

ループ利尿薬(心不全や浮腫などの治療薬)

ループ利尿薬は、〈ヘンレ係蹄(ヘンレループ)〉の上行脚に作用してNaの再吸収を阻害する。
その利尿作用(Naや水の排出作用)はサイアザイド系薬物よりも強く、例えば、ラシックスの利尿作用はサイアザイド系薬物の約3倍程度とされている。

「本剤の利尿効果をラットの尿中Na排泄量でみると,その最大Na排泄量はチアジド系薬剤の約3倍を示し,最小有効量10mg/kg から最大有効量100mg/kgと幅広い薬用量を持つ」。(ラシックス・インタビューフォーム)

ループ利尿薬は、「心不全や浮腫などの治療で水分やNaを大量に排出する際によく使用」される。(児島2017,p.38)

利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。

脱水や低カリウム血症に注意する

「「ループ利尿薬」は強力な作用をもつため、脱水や「低K血症」の副作用に注意し、また就寝後や通勤中のトイレが問題とならないよう、生活習慣に合わせたタイミングで服用することを指導する必要」がある。(児島2017,p.42)

低K(カリウム)血症で最も危険な症状は、致死的な不整脈である。
以下の症状に注意すること。

  • 消化器症状(吐き気・食欲不振)
  • 骨格筋症状(脱力感・震え)
  • 尿量の異常な増加など

これらの症状を加齢や疲れによるものと見誤らないこと。
また、普段からカリウムの豊富な野菜や果物を積極的に摂取することが大切である。

医薬品各種(ループ利尿薬など)

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)
ループ利尿薬が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。

ラシックス(一般名:フロセミド)

ループ利尿薬:
「利尿作用は強いが降圧効果は弱く、持続も短い。腎機能を悪化させない。(オイテンシン)フロセミド持効製剤。最大利尿作用が低下」。(今日の治療薬2020,p.708)

効能・効果:
高血圧症(本態性高血圧症、腎性高血圧症等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症、末梢血管障害による浮腫、尿路結石排出促進。

特に、心不全や浮腫が対象となる。
さらに、高血圧症にも保険適用がある。

ラシックス(ループ利尿薬)には、ほかのループ利用薬と異なり高血圧の保険適用がある。
ただし、高血圧の第一選択薬ではない。
第一選択薬とされる利尿薬とは、あくまでも降圧効果に優れたサイアザイド系の利尿薬のことである。

ラシックスの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.164-168、服薬指導例・薬歴記載例有り)

Cmax(μg/mL)= 0.9
tmax(hr)= 1~2
t½ (hr)= 0.35

ラシックスの最高血中濃度到達時間(tmax)は、1~2時間である。
そして、0.35×5=1.75時間で血中から大部分消失する。

なお、フロセミドは、定常状態のない薬物である。
1日1回24時間ごと投与/消失半減期0.35時間
=68.6>4.0

下記インタビューフォームによれば、
ラシックスの利尿効果は、「経口投与後1時間以内に発現し,約6時間持続する」。
つまり、ラシックスの作用時間は短く、6時間くらいである。
就寝後のトイレを防ぐには、午前~昼に服用するとよい。

ただし用法は、1日1回あるいは隔日投与となっている。

「本剤の利尿効果は,健康成人に経口投与した場合,経口投与後1時間以内に発現し,約6時間持続する」。
「健康成人3例にフロセミド錠40mgを経口投与した場合,1~2時間後に0.9µg/mLの最高血中濃度に達する。その後,約0.35時間の半減期で血中より消失する(HPLC法)」。(ラシックス・インタビューフォーム)

「本剤は腎血流量,糸球体濾過値を上昇させる作用を持ち,腎機能が低下(慢性腎不全患者)している場合(GFRが20mL/min以下)でも利尿効果が期待できる」。(ラシックス・インタビューフォーム)

ダイアート(一般名:アゾセミド)

ループ利尿薬:
「フロセミドに類似するがより持続」。(今日の治療薬2020,p.709)

効能又は効果:
心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫

利尿作用の強さ:ラシックス40mg=ダイアート60mg。
ダイアートの作用は長続きするため、急な体液・血圧変動を起こしにくく、心不全予後の改善効果はラシックスよりも高い。(児島2017,p.43)

日経メディカル
ラシックスとダイアートはどう使い分ける?
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/survey/201803/555352.html
「アゾセミドは効果がマイルドで長時間ゆるやかに効くことを評価する声が目立った」

ルプラック(一般名:トラセミド)

ループ利尿薬:
「利尿作用が強く、低K血症を発現しにくい。遠位尿細管にも作用」。(今日の治療薬2020,p.709)

「用量依存的な利尿作用を有する(ラット)。
本剤の効力は類薬フロセミドに比較して,利尿作用で約10~30倍,抗浮腫作用で約10倍強力である」。(ルプラック・インタビューフォーム)

抗アルドステロン作用(K保持性)を併せ持っているため、ほかのループ利用薬と比べて、K(カリウム)の排泄量が少ない。⇒低K血症を起こしにくい。

「尿中ナトリウム/カリウム比が高い(ラット)。
本剤は抗アルドステロン作用を有しており,他のループ利尿剤と比較して尿中へのカリウム排泄量が軽減されていることから,尿中ナトリウム/カリウム比が高い」。(ルプラック・インタビューフォーム)

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    トラセミド:CR(CYP2C9)0.77、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬

ダイアモックス(一般名:アセタゾラミド)

炭酸脱水酵素阻害薬:
「温和なNa利尿と尿中HCO3-の排泄増加。一般的な利尿薬としてはあまり使用されない」。(今日の治療薬2019,p.697)

腎機能低下時の用法・用量(アセタゾラミド)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。
無尿、急性腎不全の患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)緑内障:1日250~1,000mgを分割投与
    2)てんかん:1日250~750mgを分割投与
    3)肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善、心性・肝性浮腫:1日1回250~500mg
    4)月経前緊張症:1日1回125~375mgを月経前5~10日間又は症状が発現した日から投与
    5)メニエル病及びメニエル症候群:1日1回250~750mg
    6)睡眠時無呼吸症候群:[錠のみ]1日250~500mgを分割投与
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1回125又は250mgを1日2回
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1回125mgを1日1~2回
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回125mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回125mgを週3回、ただし無尿、急性腎不全の患者には禁忌

イソバイド(一般名:イソソルビド)

浸透圧利尿薬:
「浸透圧による利尿作用。脳圧・眼圧・内リンパ圧降下作用。心不全に注意」。(今日の治療薬2020,p.711)

イソバイド・シロップ(70%:20mL/包、23mL/包、30mL/包、500mL/瓶)

メニエール病に、30mL/包が盛用されている。

【効能・効果】
脳腫瘍時の脳圧降下、頭部外傷に起因する脳圧亢進時の脳圧降下、腎・尿管結石時の利尿、緑内障の眼圧降下、メニエール病

【用法・用量】
脳圧降下、眼圧降下、及び利尿を目的とする場合には、通常成人1日量70~140mLを2~3回に分けて経口投与する。
症状により適宜増量する。
メニエール病の場合には、1日体重当り1.5~2.0mL/kgを標準用量とし、通常成人1日量90~120mLを毎食後3回に分けて経口投与する。
症状により適宜増減する。
必要によって冷水で2倍程度に希釈して経口投与する。

イソソルビドは非常に酸味と苦みが強い。
水で薄める、リンゴ酢や柑橘系のジュースと混ぜるなどの工夫が必要である。
また、1日2~3回投与であり、アドヒアランスを高めることが不可欠である。

サムスカ(一般名:トルバプタン)

バソプレシン拮抗薬(選択的V2受容体拮抗作用):
「既存利尿薬で効果不十分・低Na血症合併の心不全・肝硬変に有効」。(今日の治療薬2019,p.699)

腎機能低下時の用法・用量(トルバプタン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

トルバプタンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

デスモプレシン(一般名:デスモプレシン)

下垂体後葉ホルモン:
バソプレシンV2受容体に作用して抗利尿作用。
スプレー、点鼻液の適応症:尿崩症・夜尿症(規格によって適応外含む)。

イルトラ配合錠(イルベサルタン+トリクロルメチアジド)

プロミネント配合錠(ロサルタン+ヒドロクロロチアジド)、ロサルヒド

エカード配合錠(カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド)、カデチア

コディオ配合錠(バルサルタン+ヒドロクロロチアジド)、バルヒディオ

ミコンビ配合錠(テルミサルタン+ヒドロクロロチアジド)、テルチア

ミカトリオ配合錠(テルミサルタン+アムロジピン+ヒドロクロロチアジド)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(高血圧治療薬)

高齢者においても降圧目標の達成が第一目標である。
降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無いが、服薬アドヒアランス等を考慮して薬剤数はなるべく少なくすることが推奨される。
(高血圧治療薬)

  • Ca拮抗薬(アムロジピン[ノルバスク、アムロジン]、ニフェジピン [アダラートCR]、ベニジピン[コニール]、シルニジピン[アテレック]など)、ARB(オルメサルタン[オルメテック]、テルミサルタン [ミカルディス]、アジルサルタン[アジルバ]など)、ACE阻害薬(イミダプリル[タナトリル]、エナラプリル[レニベース]、ペリンドプリル[コバシル]など)、少量のサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)が、心血管疾患予防の観点から若年者と同様に第一選択薬であるが、高齢患者では合併症により降圧薬の選択を考慮することも重要である。
  • α遮断薬(ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など)は、起立性低血圧、転倒のリスクがあり、高齢者では可能な限り使用を控える。
  • β遮断薬(メトプロロール[セロケン]など)の使用は、心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対して考慮する。
  • Ca拮抗薬の多くは主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用に十分に注意する。
  • ACE阻害薬は、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には誤嚥予防も含めて有用と考えられる。
  • サイアザイド系利尿薬の使用は、骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。
  • 過降圧を予防可能な血圧値の設定は一律にはできないが、低用量(1/2量)からの投与を開始する他、降圧による臓器虚血症状が出現した場合や薬物有害事象が出現した場合に降圧薬の減量や中止、変更を考慮しなければならない。
  • レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。(消炎鎮痛薬の項より引用)

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【ループ利尿薬】

  • フロセミド[ラシックス]など
  • 腎機能低下、起立性低血圧、転倒、電解質異常
  • 必要最小限の使用にとどめ、循環血漿量の減少が疑われる場合、 中止または減量を考慮する。
    適宜電解質・腎機能のモニタリングを行う。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

参考URL

フルイトランと私の長い付き合い ⇒フルイトランの販売元は塩野義製薬(株)

グリコペプチド系抗生物質(塩酸バンコマイシンなど)

グリコペプチド系抗生物質(概要)

グリコペプチド系薬:
作用機序(細胞壁合成阻害作用を有する)。
(βラクタム系、グリコペプチド系、ホスホマイシン系が同様の作用を有する)

バンコマイシン塩酸塩:腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。(アミノグリコシド系抗菌薬、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム、アシクロビルなども同様である)

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

なお、腎機能低下患者に対する塩酸バンコマイシン投与計画の立案のためのプログラム(ソフトウエア)が従来から当該メーカーによって提供されており、対象年齢を限らず使用されている。

点滴静注用塩酸バンコマイシン TDMデータ薬物速度論的解析支援用ソフトウェア
「SHIONOGI-VCM-TDM S-edition Ver.2014 for Windows」
(塩野義製薬株式会社)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬)

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

医薬品各種(グリコペプチド系薬)

塩酸バンコマイシン(一般名:バンコマイシン塩酸塩)

グリコペプチド系薬:
「腸管からは吸収されないことから腸管感染症(特にクロストリディオス・ディフィシル)には内服として用いる」。(今日の治療薬2020,p.61)

クロストリディオス・ディフィシルは、従来クロストリジウム・ディフィシルと呼ばれていた。
しかしながら、2016年、表現型、化学分類学、系統発生学による分類に基づいて、新しい属としてクロストリディオイデス属(Clostridioides spp.)が提案され、そこに属することになった。
なお、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)は、従来どおりクロストリジウム属のままである。

抗菌スペクトル:
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)など

抗ヘルペスウイルス薬(バルトレックスなど)

抗ヘルペスウイルス薬(概要)

アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルは、代表的な腎排泄型薬物である。
腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
腎不全で精神神経障害や痙攣を起こす代表的な薬物の一つである。
(アシクロビル脳症)

  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
    別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)
    アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩

単純ヘルペスウイルスと水痘・帯状疱疹ウイルス

ヘルペスウイルスは数種類存在するが、一般的には、単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の2種類を「ヘルペス」と呼ぶことが多い。

単純ヘルペスウイルス(HSV)には、HSV-1とHSV-2の2種類の型があり、全身の様々な部位でHSV感染症(単純疱疹)を引き起こす可能性がある。
その中で、HSV-1による口唇ヘルペス(口の周りにできるヘルペス)が最も多く、HSV-2による再発型性器ヘルペス(陰部にできるヘルペス)がそれに続く。
いずれのウイルスも、初発感染後は知覚神経節の神経細胞の核内に潜伏しており、体調の悪化など細胞性免疫の低下などをきっかけに再増殖して、再発を繰り返す。

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によって、主に小児で水痘、いわゆる水ぼうそうを発症することがあり、9歳以下での発症が90%以上を占めると言われている。

水ぼうそうが治った後も、ウイルス(VZV)は脊髄から出る神経節に潜伏している。
そして後年(多くは50歳以上で)、加齢、疲労やストレスなどによって免疫力が低下すると、再びウイルスが増殖を始めて、いわゆる「胴巻き」といわれる帯状疱疹を引き起こす。

帯状疱疹は、ウイルス(VZV)が神経の流れに沿って神経節から皮膚へと移動し、帯状に痛みや発疹を生じる疾患である。

なお、小児の水痘(水ぼうそう)も成人の帯状疱疹も、原因となるウイルスは同じ水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)である。
ただし、水痘が感染によって広がるのに対して、帯状疱疹は他人から感染するのではなく、自分自身の体内に潜んでいたウイルスが原因となる。
通常は生涯に一度しか発症することはない。

アシクロビル脳症

1)どんぐり2019,p.107

アシクロビル脳症は、アシクロビルやそのプロドラッグであるバラシクロビルにより引き起こされる精神神経症状である。
めまい、頭痛、ろれつがまわらなくなる、あるいは意識障害などの症状が出る。

発生機序は、副次的な薬理作用によるものである。
アシクロビルは蛋白結合率が低く、中枢に移行して蓄積しやすいため起こると考えられている。

なお、当然ながら、バラシクロビルの血中濃度が高くなると、活性代謝物であるアシクロビルの濃度も高くなる。
バラシクロビルは腎排泄型薬物であり、腎機能低下患者、透析患者、そして高齢者などでは、投与量の調節など特に注意が必要である。

2)平田純生,腎薬ニュース第5号(2007年6月;2012年1月加筆修正)

「添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は?」

2007年2月、バルトレックスの添付文書改訂(自主改訂)
「透析患者に当たる末期腎不全であるクレアチニンクリアランス15mL/min未満の患者には1000mgを1日1回だったのが、クレアチニンクリアランス10mL/minの患者には500mgを24時間間隔と実質上減量となりました」。

「アシクロビルの投与量が高くなればなるほど吸収率が低下するため、小腸における吸収は受動拡散ではなく何らかのトランスポーターを介して吸収されるものと考えられます(トランスポーターによる吸収は飽和過程があるからです)」。

医薬品各種(抗ヘルペスウイルス薬)

ゾビラックス(一般名:アシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「単純ヘルペスウイルス、水痘ヘルペスウイルスに対して効果あり」。(今日の治療薬2020,p.98)

アシクロビルは、腎排泄型薬物である

「代謝・排泄
健康成人にアシクロビル200mg及び800mgを単回経口投与した場合、48時間以内にそれぞれ投与量の25.0%及び12.0%が未変化体として尿中に排泄された」。(ゾビラックス錠添付文書)

これは、投与量が増えると「消化管での吸収が飽和して吸収率が低下する」ことを示している。
いずれにしても、投与した薬物の25.0%(200mg投与時)~12.0%(800mg投与時)が尿中に排泄される。

「腎機能障害者における薬物動態(外国人における成績)
腎機能障害のある患者では点滴静注時、アシクロビルの生体内半減期の延長及び全身クリアランスの低下が認められた。
これらの結果から、患者の腎機能に対応する本剤の減量の目安を算出した(「用法・用量に関連する使用上の注意」の項参照)」。(ゾビラックス錠添付文書)

腎機能障害患者では全身クリアランスの低下が認められることから、腎機能に対応する減量の目安が算出されている。

「バイオアベイラビリティ:10~20%(用量増加により低下)」。(ゾビラックス錠インタビューフォーム)

尿中未変化体排泄率
=(尿中回収率25~12%)/(バイオアベイラビリティ10~20%)
=1.0前後⇒腎排泄型薬物である

腎機能低下時の用法・用量(アシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(25mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回800mgを1日5回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症の発症抑制:1回200mgを1日5回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回200mgを1日5回
  • CCr(10~25mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日3回
    2)3)1回200mgを1日5回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)1回800mgを1日2回
    2)3)1回200mgを1日2回。保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)1日1回体重に応じて400~800mg。HD患者では毎HD後
    2)3)1回200mgを1日1~2回

アシクロビルは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

バルトレックス(一般名:バラシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「アシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.99)

バラシクロビルは、アシクロビルのプロドラッグである

「バラシクロビルはアシクロビルのL-バリルエステルであり、経口投与後、主に肝初回通過効果によりアシクロビルに加水分解され、アシクロビルとして抗ウイルス作用を発現する。プロドラッグ化により経口吸収性が改善され、アシクロビル経口製剤より高いAUCが得られる。なお、バラシクロビルの消化管吸収にはペプチドトランスポーター(PEPT1)の関与が示唆されている」。(バルトレックス添付文書)

プロドラッグ化によって経口吸収性が高まり、1日服用回数はゾビラックスよりも少なくて済むようになっている。

バラシクロビルは、腎排泄型薬物である

「6例の健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合、主な排泄経路は尿中であり、24時間以内の尿中に未変化体、アシクロビル及び9-カルボキシメトキシメチルグアニン(既知のアシクロビルの代謝物)がそれぞれ投与量の0.4%、43.1%及び5.0%排泄された」。(バルトレックス添付文書)

「バイオアベイラビリティー(外国人における成績):健康成人にバラシクロビル1000mgを単回経口投与した場合のアシクロビルの生物学的利用率は54.2%であった」。(同上)

アシクロビル(活性代謝物)の尿中未変化体排泄率(fu)=
投与量2000mg×アシクロビルの尿中排泄率43.1%/投与量2000mg×アシクロビルのバイオアベイラビリティ54.2%
=0.795⇒腎排泄型薬物

腎機能低下時の用法・用量(バラシクロビル)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(アシクロビルとして85%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、下記データとほぼ同等。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)帯状疱疹:1回1,000mgを1日3回
    2)造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制:1回500mgを1日2回、造血幹細胞移植施行7日前より施行後35日まで投与
    3)単純疱疹:1回500mgを1日2回
    4)水痘:1回1,000mgを1日3回
    5)性器ヘルペスの再発抑制:1日1回500mg。HIV感染症患者には1回500mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを12時間毎
    2)3)1回500mgを12時間毎
    5)1回500mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを12時間毎
  • CCr(10~30mg/dL未満)
    1)4)1回1,000mgを24時間毎
    2)3)1回500mgを4時間毎
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • CCr(10mg/dL未満)
    1)4)1回500mgを24時間毎
    2)3)1日1回500mg、保存期では脱水予防、尿量確保する必要あり
    5)1回250mgを24時間毎。HIV感染症患者では1回500mgを24時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1)体重60kg以上で非高齢者では1回500mgを週3回HD後、それ以外の症例には他剤を選択。
    3)1回250mgを週3回HD後

アラセナ-A(一般名:ビダラビン)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ウイルスのDNA依存DNAポリメラーゼを阻害。アシクロビル耐性のウイルスにも有効」。(今日の治療薬2020,p.101)

ファムビル(一般名:ファムシクロビル)

抗ヘルペスウイルス薬:
「ペンシクロビルのプロドラッグ。生物学的利用率が高い」。(今日の治療薬2020,p.100)

腎機能低下時の用法・用量(ファムシクロビル)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

抗真菌薬(白癬治療・外用薬)

抗真菌薬(白癬治療・外用薬)概要

(児島2017,pp.209-212)

水虫(白癬)の治療に使う抗真菌薬(外用薬)には様々な種類がある。
主な薬物に、アスタット、ルリコン、ゼフナート、ラミシールがある。
ただし、白癬治療において、基本的には効果や安全性に大きな違いはない。
(カンジダ症などでは、第一選択薬が決まっている場合もある)

いずれの薬物も、マイコスポール(イミダゾール系、ビホナゾール)と比べて、同等の効果・安全性を有している。
そして、強い抗真菌力(MICが小さい)を持っている。

したがって、剤形の違い(軟膏・クリーム・ローションなど)や医師の経験上の判断によって選択される。
軟膏:刺激は少ないが、べたつき感がある。
外用液:べたつき感は少ないが、刺激を感じることが多い。
クリーム:上記2者の中間くらい。

また、効果がなかった場合には、系統を変えることも考えられる。
その場合には、メンタックスやペキロンも対象となる。
(イミダゾール系、チオカルバメート系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、モルホリン系)

薬の選択よりも、薬を正しく使うことの方が大切である

抗真菌薬は、真菌が完全に消失するまで使い続ける必要がある。
赤みやかゆみといった自覚症状が治まった段階では、真菌はまだ皮膚に残っていることが多い。
ここで治療を中断していると、水虫を何回もぶり返すことになる。

抗真菌薬は、自覚症状のない部分にもしっかりと塗ることが大切である。
真菌は、赤みやかゆみのない部分にも潜んでいるからである。

抗真菌薬は、症状のない部分も含めて、両足全体に塗る必要がある。
1か月分の分量は、軟膏・クリームで30~40gが一般的である。

水虫にステロイドを使用することもある

一般的には、水虫の赤みやかゆみに対してステロイドは使わない。
理由は、以下のとおりである。

水虫は、白癬菌による感染症である。
そして、ステロイドは、免疫抑制薬である。
したがって、水虫に対してステロイドを使うと、白癬菌を抑える免疫が弱まり、かえって症状を悪化させることになるからである。

ただし、患部の炎症やかゆみがひどい場合には、抗真菌薬を使うことができない。
そうした場合には、一旦ステロイドを使って炎症やかゆみを抑えてから、抗真菌薬を使い始めることがある。

つまり、水虫にステロイドを使わないのは原則ではあるが、例外もある。

医薬品各種(白癬治療・外用薬)

アスタット(一般名:ラノコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。良好な角質浸透性・貯留性」。(今日の治療薬2020,p.130)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、外用液(1%10mL)

ルリコン(一般名:ルリコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.131)

軟膏(1%10g)、クリーム(1%10g)、液(1%10mL)
爪外用液(5%、ルナコック)

ゼフナート(一般名:リラナフタート)

表在性抗真菌薬(チオカルバメート系):
「皮膚貯留性が良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

クリーム(2%10g)、外用液(2%10mL)

ラミシール(一般名:テルビナフィン)

深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系):(今日の治療薬2020,p.128)

錠(125mg)、爪白癬に適応有り(内服)
クリーム(1%10g)、外用液(1%10g)、外用スプレー(1%10g)

テルビナフィンは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

メンタックス、ボレー(一般名:ブテナフィン)

表在性抗真菌薬(ベンジルアミン系):
「持続性。皮膚への浸透性良好」。(今日の治療薬2020,p.131)

ペキロン(一般名:アモロルフィン)

表在性抗真菌薬(モルホリン系):
「持続性が良好」。(今日の治療薬2020,p.132)

エンペシド(一般名:クロトリマゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.129)

マイコスポール(一般名:ビホナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):(今日の治療薬2020,p.130)

ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)

表在性抗真菌薬(イミダゾール系):
「高い抗真菌活性。角質親和性が高いため皮膚貯留性が高い」。(今日の治療薬2020,p.130)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
(日本では内服無し)

抗結核薬(イソニアジドなど)

抗結核薬(概略)

リファンピシン:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)
細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用しRNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
動物細胞のRNAポリメラーゼは阻害しない。(抗菌薬インターネットブック)

リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である。

感染症TODAY(ラジオNIKKEI)2019年2月20日放送
『結核医療の基準』2018年の改定のポイント
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-190220.pdf

イソニアジド、リファンピシン、ストレプトマイシン、ピラジナミドなど併用療法での長期間投与として使用される。(今日の治療薬2020,p.34)

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

医薬品各種(抗結核薬)

イスコチン、ヒドラ(一般名:イソニアジド)

抗結核薬:
「代謝には遺伝的多様性があり、人種差がみられる」。(今日の治療薬2020,p.90)

  • 分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)
    イスコチン錠、670mL/kg
  • 非選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)→選択的~(エフピー)

リファジン(一般名:リファンピシン)

抗結核薬:
「細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに作用し、RNA合成を阻害。単独では耐性菌出現しやすい」。(今日の治療薬2020,p.92)

リファンピシンは、CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    IC(CYP3A4)7.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

リファンピシンは、強力なCYP3A4誘導薬であると共に、CYP2C9の強力な誘導薬でもある。
リファンピシン併用開始1週間以内に抗凝固作用の減弱が認められ、ワルファリンの用量を2~3倍にする必要があった(複数報告)。(PISCS2021,p.154)、相互作用の記載はリファジンには無い。

リファンピシンは、OATP1B1阻害薬(かつ誘導薬)である

リファンピシンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬であり、かつ誘導薬でもある。

薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019/PharmaTribune:
「リファンピシンは、OATP1B1の阻害剤でもあり、かつOATP1B1の誘導により肝取り込み能力が上昇することで、基質薬物の血中濃度が低下することが報告されている。従って、反復投与時に基質薬物を同時投与する場合は、阻害・ 誘導両方の作用が見られることから、その影響の予測は容易でないと考えられる」。⇒詳細は「オイグルコンとリファンピシンの併用で低血糖が起きたのはなぜ?」pp.85-87

リファンピシンは、P-gp誘導薬である

リファンピシンは、P-gp(排出トランスポーター)誘導薬である。

リファンピシンとジゴキシンを併用(経口投与)すると、小腸においてリファンピシンによって誘導されたP-gpが、ジゴキシンを腸管内にくみ出すため、ジゴキシン血中濃度の上昇が抑えられる(AUCは有意に減少、BAは30%減少する)。p.105-106

エサンブトール(一般名:エタンブトール)

抗結核薬:
「結核菌の核酸合成経路を阻害し、分裂を抑制」。(今日の治療薬2020,p.92)

腎機能低下時の用法・用量(エタンブトール)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(85%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)肺結核及びその他の結核:1日0.75~1gを分1~2
    2)MAC症を含む非結核性抗酸菌症:1日0.5~0.75gを分1
    1日15mg/kgを分1、最大1日量750mg、初期2か月は1日20 mg/kgを分1、最大1日量1000mg(結核診療ガイドライン・改訂第3版)
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    減量して連日投与(結核診療ガイドライン・改訂第3版)
  • CCr(15mg/dL未満)
    1 回15~20mg/kgを48時間毎
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1 回15~20mg/kgを48時間毎、HD患者ではHD日にはHD後に投与

ミコブティン(一般名:リファブチン)

抗結核薬:
「RFPに比べてCYP3A4の誘導は弱い」。(今日の治療薬2020,p.93)

腎機能低下時の用法・用量(リファブチン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

リファブチンは、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP2C19

【基質】
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬(PPI)、オメプラール、オメプラゾン)
ランソプラゾール (プロトンポンプ阻害薬(PPI)、タケプロン)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

ニューキノロン系薬(クラビットなど)

ニューキノロン系薬(概要)

ニューキノロン系薬:
作用機序(DNA、RNA合成阻害作用を有する)。
(キノロン系、リファンピシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリムなどが同様の作用を有する)

PK/PD理論(濃度依存性、concentration dependence):
ニューキノロン系やアミノグリコシド系の抗菌薬は、濃度依存性に抗菌力を発揮する。
副作用の出ない安全な範囲で、できるだけ薬物血中濃度を高めた方が効果的である。
1日量を1回にまとめて投与する。
参考)時間依存性→βラクタム系(ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系など)。

フルオロキノロン系抗菌薬は、濃度依存性(Cmax/MICに依存)抗菌薬であり、濃度依存的に殺菌作用を示す(PAE効果も有する)。(アミノグリコシド系も同様)

フルオロキノロン系抗菌薬は、代表的な腎排泄型薬物である。
また、シプロフロキサシンは、CYP1A2の強い阻害薬である。

フルオロキノロン系抗菌薬は、NSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意すること。

フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、難溶性のキレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空けること。
(テトラサイクリン系抗菌薬も同様)

ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。(抗菌薬全般)

医薬品各種(ニューキノロン系薬)

ニューキノロン系:「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

クラビット(一般名:レボフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「OFLXの光学活性S(-)体でOFLXの約2倍の抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.81)

光学異性体(S体)⇔オフロキサシン(ラセミ体:S + R)
抗菌力の増強、副作用の軽減(実践薬学2017,p.24)

抗菌スペクトル(適応菌種):
ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、結核菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
効果がない菌:百日咳菌、ジフテリア菌など

  • 中耳炎や副鼻腔炎(主な起炎菌は肺炎球菌やインフルエンザ菌)⇒βラクタム系
  • 呼吸器感染症(百日咳、マイコプラズマ属が起炎菌の場合)⇒マクロライド系
    百日咳(菌)は、クラリスロマイシンでは適応となっていない。
    エリスロマイシンでは適応(菌)となっている。
  • 肺炎(レジオネラやクレブシエラ属が起炎菌の場合)⇒ニューキノロン系
    (児島2017,p.188)あくまでも参考

腎機能低下時の用法・用量(レボフロキサシン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(87%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日1回
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初日500mgを1回、以後1回250mgを1日1回
  • CCr(20mg/dL未満、透析患者を含む)
    初日500mgを1回、3日目以降1回250mgを2日に1回

タリビット(一般名:オフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.81)

ラセミ体(S+R)である。⇒レボフロキサシン(S体)

腎機能低下時の用法・用量

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日300~600mgを分2~3。ハンセン病の場合は1日400~600mgを分2~3。腸チフスの場合は1回200mgを1日4回、14日間投与
  • CCr(10~50mg/dL未満)
    1回200mgを1日1回
  • CCr(10mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回100mgを1日1回、HD患者はHD日はHD後に投与

アベロックス(一般名:モキシフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌に強い活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

オゼックス(一般名:トスフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「マクロライドやペニシリンに耐性を示す肺炎球菌・インフルエンザ菌に強い活性。小児に適応を有するニューキノロン薬」。(今日の治療薬2020,p.84)

ジェニナック(一般名:ガレノキサシン)

ニューキノロン系薬:
「呼吸器感染症の原因菌であるペニシリン耐性肺炎球菌、多剤耐性肺炎球菌を含む肺炎球菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.86)

腎機能低下時の用法・用量(ガレノキサシン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

グレースビット(一般名:シタフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性・陽性菌、マイコプラズマ、レジオネラに強い活性。嫌気性菌に対する抗菌活性も高い」。(今日の治療薬2020,p.87)

腎機能低下時の用法・用量(シタフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回50mgを1日2回、又は1回100mgを1日1回。効果不十分の場合は1回100mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回50mgを1日1回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回50mgを2日に1回
  • HD血液透析・PD腹膜透析
    1回50mg又は00mgを週3回HD後に投与

スオード(一般名:プルリフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「プロドラッグ。活性体UFXが効力。大腸菌、緑膿菌に強い抗菌活性」。(今日の治療薬2020,p.85)

腎機能低下時の用法・用量(プルリフロキサシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1回200mgを1日2回。1回最大量は300mg。肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染には、1回300mgを1日2回
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1 回200mgを24時間毎
  • CCr(15~30mg/dL未満)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回200mgを48時間毎

シプロキサン(一般名:シプロフロキサシン)

ニューキノロン系薬:
「グラム陰性菌での抗菌力はNFLX,OFLXの2~4倍。但し経口での吸収率は高くない」。(今日の治療薬2020,p.82)

シプロフロキサシンは、CYP1A2阻害薬である(強い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

CYP1A2(阻害薬)⇒チザニジン(基質薬)

シプロフロキサシンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

ラスビック(一般名:ラスクフロキサシン)

ニューキノロン系薬:(今日の治療薬2020,p.87)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗微生物薬)

急性気道感染症のうち感冒や、成人の急性副鼻腔炎、A群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎、慢性呼吸器疾患等の基礎疾患や合併症のない成人の急性気管支炎(百日咳を除く)、および軽症の急性下痢症については、抗菌薬投与を行わないことが推奨されている。
一方、高齢者は上記の感染症であっても重症化する恐れがあることに注意が必要である。(抗微生物薬)

  • 細菌感染症が想定され抗菌薬を開始する場合は、原則的にはその細菌感染症の想定されるまたは判明している起因菌に感受性を有する抗菌薬を選択する必要がある。
  • 不必要に広域なスペクトラムを有する抗菌薬の長期使用は、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 治療期間についても、原則的には感染症の種類毎の標準的な治療期間を遵守する。
    治療期間が短すぎる場合には治療失敗や再発の恐れが、また治療期間が不必要に長過ぎる場合は薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れがあるため注意が必要である。
  • 投与量に関しては、疾患や抗菌薬の種類毎に標準的な投与量を遵守するが、高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合も多いため、それらの状況に応じて適切な用法・用量の調整を行う。
    ただし、急性疾患では、まず十分量を投与し有効性を担保することが、治療タイミングを逸しないためにも肝要であり、高齢者であるからといって少なすぎる投与量で使用した場合、有効性が期待できないだけでなく、薬剤耐性菌の増加に繋がる恐れもあるため注意が必要である。
  • 投与量を調整する場合、一回投与量を減ずるか、または投与間隔を延長するかの判断は、薬理作用等の薬剤特性を考慮して行う。
    例えば、フルオロキノロン系抗菌薬(ガレノキサシン[ジェニナック]、シタフロキサシン[グレースビット]、レボフロキサシン[クラビット]、トスフロキサシン[オゼックス]など)等の濃度依存性抗菌薬の場合は、一回投与量は減ずること無く、投与間隔を延長するほうがよいと考えられる。
  • バンコマイシン塩酸塩やアミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬、セフェピム[マキシピーム]、アシクロビル[ゾビラックス]などの薬剤については、腎機能の低下した高齢者では薬物有害事象のリスクが高いため特に注意が必要である。
  • マクロライド系抗菌薬(クラリスロマイシン[クラリス、クラリシッド]、エリスロマイシン[エリスロシン])やアゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール[イトリゾール]、ミコナゾール[フロリード]、ボリコナゾール[ブイフェンド]、フルコナゾール[ジフルカン])はCYPの阻害作用が強く、この経路で代謝される他の薬剤の血中濃度が上昇し薬物有害事象が問題となる恐れがある。
  • カルバペネム系抗菌薬は、バルプロ酸ナトリウム[デパケン]と併用した場合、バルプロ酸の血中濃度が低下するため併用禁忌である。
  • フルオロキノロン系抗菌薬はNSAIDsとの併用で痙攣誘発の恐れがあるため注意が必要である。
  • テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン[ミノマイシン]、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]、アクロマイシン)、フルオロキノロン系抗菌薬は、アルミニウムまたはマグネシウム含有薬剤、鉄剤との同時服用で、キレートを形成し吸収が低下するため、併用を避けるか、服薬間隔を空ける必要がある。
  • ワルファリンは抗菌薬との併用時に抗菌薬の腸内細菌抑制作用によりビタミンK産生が抑制され、抗凝固作用が増強する恐れがあるため、血液凝固能を注意深くモニタリングし必要に応じ用量を調整する必要がある。
  • 抗HIV薬、抗HCV薬は、薬物相互作用が問題となる組み合わせが多岐にわたり、かつ血中濃度の変動も大きいものが多いため、問題がないかどうか個別に注意深く確認する必要がある。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)

  • フルオロキノロン系抗菌薬(レボフロキサシン他)
  • バンコマイシン塩酸塩
  • アミノグリコシド系抗菌薬(ゲンタマイシン硫酸塩)他
  • バラシクロビル塩酸塩
  • アシクロビル
  • オセルタミビルリン酸塩 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)胃酸分泌抑制薬

胃酸分泌抑制薬(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)概略

「上部消化管疾患では、高齢者の増加、H.pylori感染者の減少と除菌治療の普及(毎年100~150万人が除菌治療を受けている)などにより、疾患分布が大きく変化している。
すなわち、消化性潰瘍が減少し、胃食道逆流症(GERD)や機能性ディスペプシア(FD)が増加している」。(今日の治療薬2020,p.756)

  • H2ブロッカーは、胃粘膜にある胃壁細胞の「ヒスタミンH2受容体」に拮抗することで酸の分泌を抑える。
  • プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、酸分泌の最終段階である「プロトンポンプ(H+/K+ ATPase)」を阻害することで酸の分泌を抑える。

PPIの胃酸抑制効果は、H2ブロッカーよりも強力であり、24時間持続する。
PPI(日中の胃酸過多に効果的)、H2ブロッカー(夜間の胃酸過多に効果的)の違いもある。

PPIは、消化性潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群に効果があり、第一選択薬とされる。
ただしPPIでは、保険適応上の投与日数に上限があるため、長期間の治療ではH2ブロッカーを使用することになる。

つまり、使い分けとしては、PPI(初期)、H2ブロッカー(長期維持療法)となる。
また、1日投与回数は、PPI(1日1回)、H2ブロッカー(多くの場合、1日2回)となる。

注)機能性ディスペプシア(FD:functional dyspepsia)
症状の原因となる明らかな異常(器質的、全身性、代謝性疾患)がないにもかかわらず、慢性的にみぞおちの痛み(心窩部痛)や胃もたれなどの腹部症状(ディスペプシア症状)を呈する疾患
「機能性ディスペプシア(FD)ガイドQ&A」(日本消化器病学会ガイドライン)

医薬品各種(H2ブロッカー)

H2ブロッカーは、「胃の壁細胞に存在するH2受容体を遮断することにより、アデニル酸シクラーゼの活性化を抑え、cAMPの上昇を減らすことで、壁細胞膜に存在するプロトンポンプの活性化を抑制、胃酸分泌を抑える」。(どんぐり2019,p.201)

H2ブロッカーには腎排泄型薬物が多い。
そうした中で、ラフチジンは肝消失型薬物である。
また、PPIも肝消失型である。

タガメット(一般名:シメチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「胃酸及びペプシン分泌抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.769)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

海外での副作用報告では、いずれも800mg/日を超える投与量となっている。
これに対して、日本における投与量は、400mg/日が主流である。(実践薬学2017,p.150)

細粒(20%)
錠(200mg、400mg)
注射液(200mg/2mL)

腎機能低下時の用法・用量(シメチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)には記載無し。
「健康成人に経口投与した場合、大部分が24時間以内に尿中に排泄された」。(タガメット添付文書)
尿中未変化体排泄率(77%)。(実践薬学2017,p.149)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍:1日800mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を分4(毎食後・就寝前)もしくは1回(就寝前)も可
    2)吻合部潰瘍、ゾリンジャーエリソン症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血:1日800mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を分4 (毎食後・就寝前)も可
    3)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:1日400mgを分2、朝食後・就寝前。1日量を1回(就寝前)も可
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回200mgを1日3回(8時間毎)
  • CCr(5~30mg/dL未満)
    1回200mgを1日2回(12時間毎)
  • CCr(5mg/dL未満、透析患者を含む)
    1回200mg1日1回(24時間間隔)、HD患者はHD日にはHD後に投与

シメチジンは、CYPの非特異的な阻害薬である(特に、CYP2D6、CYP3A)。
シメチジンは、MATE阻害薬である。

シメチジンは、CYP1A2阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シメチジンは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シメチジンは、CYP3A阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    IR(CYP3A4)0.44W、(PISCS2021,p.47)

1つの薬をADMEで追ってみる

実践薬学2017,pp.112-115

ガスター(一般名:ファモチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「内分泌系へ影響を及ぼさない」。(今日の治療薬2020,p.768)

「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

散(2%、10%)
錠(10mg、20mg)
D錠(10mg、20mg、口腔内崩壊錠)
注射液(10mg、20mg)

副作用機序別分類(ファモチジン)

「重大な副作用」:肝機能障害、黄疸
薬物過敏症によるものと考えられる。

「その他の副作用」:AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇
薬物代謝を繰り返す過程において、肝臓に負荷がかかることによる薬物毒性

どんぐり2019,p.227では上記の分類法を提示している。

薬物性肝障害の早期発見と早期対応のポイント:
「倦怠感」、「発熱」、「黄疸」、「発疹」、「吐き気・おう吐」、「かゆみ」などがみられ、これらの症状が急に出現したり、持続したりするような場合であって、医薬品を服用している場合には、放置せずに医師、薬剤師に連絡をしてください。
(「重篤副作用疾患別対応マニュアル・薬物性肝障害」厚生労働省2008)

ファモチジンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.198-202、服薬指導例・薬歴記載例有り)

77歳男性、体重64kg(身長165㎝)、血清クレアチニン1.34mg/dL
ファモチジンD錠20mg、1回1錠、1日2回朝・夕食後、21日分
多種類の薬物を服用しているが、その中にファモチジン(腎排泄型薬物)がある。
たまに、ふらつき、眠気が起こることがある。

Cockcroft&Gaultの式より、

CCr={(140-77)/(72×(1.34+0.2))}×64
=(63/110.88)×64
=36.36mg/dL

日本腎臓病薬物療法学会(eGFR・CCrの計算)

◎〈血清クレアチニン1.34mg/dLそのほかを代入する〉

  • eGFRcreat:40.49mL/min/1.73m2
    体表面積1.73m2で補正した値である。
    CKD重症度分類より、G3bであり、中等度~高度低下と判断できる。
  • 体表面積未補正eGFRcreat:39.9mL/min
  • CCr(CG式):42.41mL/min/1.73m2
    体表面積1.73m2で補正した値である。
  • 体表面積未補正CCr:41.79mL/min
    Cockcroft&Gaultの式(手計算(酵素法)と同一の値となる。

◎〈血清クレアチニン1.34+0.2mg/dLそのほかを代入する〉

  • 体表面積未補正CCr:36.36mL/min
    Cockcroft&Gaultの式(手計算(Jaffe法変換後)と同一の値となる。

腎機能低下患者への投与法

ファモチジンは主として腎臓から未変化体で排泄される。腎機能低下患者にファモチジンを投与すると、腎機能の低下とともに血中未変化体濃度が上昇し、尿中排泄が減少するので、次のような投与法を目安とする。

1 回20mg1日2回投与を基準とする場合:
60>Ccr>30、1 回20mg1日1回または1回10mg1日2回
(前後略、略記)、ガスターD錠添付文書

減量またはラフチジン(肝消失型)、あるいはPPI(全て肝消失型)への変更を処方提案する。

ファモチジン(H2受容体拮抗薬)は、少量ながら血液脳関門を通過する。
H2受容体は中枢にも存在しているので、ファモチジンによる中枢抑制作用が引き起こされ、精神神経系の副作用(ふらつき、眠気)が生じる可能性が考えられる。

腎機能低下時の用法・用量(ファモチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(80%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群:
    1回20mgを1日2回、朝・夕食後又は就寝前。1日1回40mg、就寝前も可
    2)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:
    1回10mgを1日2回、朝・夕食後又は就寝前。1日1回20mg、就寝前も可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1日20mgを分1~2
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1回20mgを2~3日に1回又は1日1回10mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回10mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日1回10mg、HD患者では1回20mgを週3回HD後も可

ザンタック(一般名:ラニチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「胃酸及びペプシン分泌抑制作用」。(今日の治療薬2020,p.769)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、軽度である。
    IR(CYP3A4)0.37W、(PISCS2021,p.47)

錠(75mg、150mg)
注射液(50mg/2mL、100mg/4mL)

腎機能低下時の用法・用量(ラニチジン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(70mg/dL以上)、常用量
    1)胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群、逆流性食道炎、上部消化管出血:1回150mgを1日2回、朝食後・就寝前。1日1回300mg、就寝前も可
    2)急性胃炎、慢性胃炎の急性増悪期:1回75mgを1日2回、朝食後・就寝前。1日1回150mg、就寝前も可
    3)麻酔前投薬:1回150mgを2回、手術前日就寝前及び当日麻酔導入2時間前
  • CCr(30~70mg/dL未満)
    1回75mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1日1回75mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日1回75mg又は1回150mgを週3回。HD患者はHDにはHD後に投与

プロテカジン(一般名:ラフチジン)

ヒスタミン(H2)受容体拮抗薬:
「持続的な酸分泌抑制作用とカプサイシン胃粘膜防御因子増強作用」。(今日の治療薬2020,p.771)

肝消失型薬物。

錠(5mg、10mg)
OD錠(5mg、10mg)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(消化性潰瘍治療薬)

消化性潰瘍治療薬は特に逆流性食道炎(GERD)において長期使用される傾向にあるが、薬物有害事象も知られており、長期使用は避けたい薬剤である。(消化性潰瘍治療薬)

  • H2受容体拮抗薬も有効な治療薬であるが、腎排泄型薬剤であることから腎機能低下により血中濃度が上昇し有害事象の生じる可能性が高くなる。
    また、高齢者ではせん妄や認知機能低下のリスクの上昇があり、可能な限り使用を控える。
    (PPIとの比較)
  • H2受容体拮抗薬(ファモチジン[ガスター]、ニザチジン[アシノン]、 ラニチジン[ザンタック])は、腎排泄型であり、腎機能が低下している患者の使用の際に注意する。
  • H2受容体拮抗薬のうち、シメチジン[タガメット]は複数のCYP分子種を阻害することから、薬物相互作用に注意を要する。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【H2受容体拮抗薬】

  • すべてのH2受容体拮抗薬 (シメチジン[タガメット]、ラニチジン[ザンタック] など)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(H2受容体拮抗薬)

  • ファモチジン
  • ラニチジン塩酸塩 他

参考:
ラフチジン(肝消失型)を除く

抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

抗パーキンソン病薬(レボドパ含有製剤など)

パーキンソン病治療薬として、レボドパ(L-ドパ)は依然として最も有効な薬物であることに変わりはない。

「パーキンソン病診療ガイドライン2018」においては、「ドパミンアゴニストを第一推奨薬としていた以前のガイドラインと比較して、より積極的なL-ドパ使用に舵を切っている」。
同ガイドラインにおいて、「それぞれの運動症状、非運動症状に対する薬物療法、非薬物療法がQ&Aで記載されており、これに準拠した治療選択が推奨される」。(今日の治療薬2020,p.944)

医薬品各種(抗パーキンソン病薬)

ネオドパストン配合、メネシット配合(一般名:レボドパ・カルビドパ(10:1)配合)

レボドパ含有製剤:
「レボドパ脱炭素酵素阻害薬の併用で、中枢以外での脱炭酸反応を抑制してレボドパの末梢性副作用を軽減、脳内への移行を高める」。(今日の治療薬2020,p.948)

「パーキンソン病ではドパミンが減少しているので、レボドパ(L-ドパ)を投与してドパミンを補う治療法が最も理に適っている」。(今日の治療薬2020,p.942)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

ビ・シフロール、ミラペックス(一般名:プラミペキソール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体ファミリーに強い親和性。非麦角系D2受容体刺激作用」。(今日の治療薬2020,p.952)

「ドパミンアゴニストは軽症・若年発症者の初期治療薬として有効であるが、現在主流となっている非麦角系アゴニストでは突発性睡眠の副作用が看過できず、(中略)MAO-B阻害薬やアマンタジン、あるいはL-ドパでの治療開始を選択肢として考えるべきである」。(今日の治療薬2020,p.944)

「警告:前兆のない突発性睡眠・傾眠等を患者に説明。服用中は自動車運転、機械操作、高所作業等危険を伴う作業に従事不可」。(今日の治療薬2020,p.952)

抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

腎機能低下時の用法・用量(プラミペキソール)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン病:1日0.25mgより開始し、2週目に1日0.5mgとし、1週間毎に1日量として0.5mgずつ増量。標準維持量1日1.5~4.5 mg。1日量が1.5 mg 未満は分2、朝夕食後、1.5mg以上は分3、毎食後。最大1日量4.5mg
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    初回1日0.25mgを分2。最大1日量2.25mgを分2
  • CCr(20mg/dL未満)
    初回1日0.125mgを分1、最大1日量1.5mgを分1
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    十分な使用経験がないので, 状態を観察しながら慎重投与

エフピー(一般名:セレギリン)

モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬:
「脳内ドパミンの代謝を抑制、ドパミンモジュレーターとして治療効果を延長。覚醒剤原料」。(今日の治療薬2020,p.949)

選択的モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-B阻害薬、MAO阻害薬)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

アーテン(一般名:トリヘキシフェニジル)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「震戦などの初期症状に有効。認知症症状を来たしやすいといわれており、高齢者での使用は注意を要する」。(今日の治療薬2020,p.954)

抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
しかしながら、添付文書の【禁忌(次の患者には投与しないこと)】では、抗コリン作用があることを示している。

アキネトン(一般名:ビペリデン)

副交感神経遮断(抗コリン)薬:
「トリヘキシフェニジル参照+抗振戦・抗硬直・抗カタレプシー作用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケールに関してもトリヘキシフェニジルに準ずる。

シンメトレル(一般名:アマンタジン)

ドパミン遊離促進薬(NMDA受容体拮抗薬):
「抗パーキンソン作用、抗Aインフルエンザウイルス作用(但し大部分が耐性)、ドパミン放出促進作用、ジスキネジア抑制作用あり。軽症患者での治療導入、レボドパ補助薬として使用」。(今日の治療薬2020,p.955)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(アマンタジン)

脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載有り。
透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)パーキンソン症候群:初期量1日100mgを分1~2、1週間後に維持量1日200mgを分2、最大1日量300mgを分3
    2)脳梗塞後遺症:1日100~150mgを分2~3 → インフルエンザ感染症は別途
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1回100mgを2~3日毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    1回50~100mgを7日毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌

コムタン(一般名:エンタカポン)

カテコール・Oメチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬:
「レボドパの代謝を阻害、その血中濃度を保ち、脳内移行を増加」。(今日の治療薬2020,p.950)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

レキップ(一般名:ロピニロール)

ドパミン受容体刺激(作動)薬(アゴニスト):
「D2受容体系に選択的に作用する非麦角系。ジスキネジア発現遅延効果及びレボドパ製剤併用例(進行期パーキンソン病患者)で症状が悪くなる(off)時間の短縮効果」。(今日の治療薬2020,p.953)

ロピニロールは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ノウリアスト(一般名:イストラデフェリン)

アデノシンA2a受容体拮抗薬:
「アデノシンA2a受容体拮抗薬」。(今日の治療薬2020,p.954)

イストラデフェリンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

レグナイト(一般名:ガバペンチン)

レストレスレッグス症候群治療薬:(今日の治療薬2020,p.957)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【パーキンソン病治療薬】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)】

  • トリヘキシフェニジル[アーテン]、ビペリデン[アキネトン]
  • 認知機能低下、せん妄、過鎮静、口腔乾燥、 便秘、排尿症状悪化、 尿閉
  • 可能な限り使用を控える。代替薬:L-ドパ

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

抗てんかん薬(デパケン、テグレトールなど)

抗てんかん薬(概要)

てんかんとは

「てんかん診療ガイドライン2018」(日本神経学会)は、てんかんについて、次のように要約している。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html

てんかんとは、てんかん性発作を引き起こす持続性素因を特徴とする脳の障害である。
すなわち、慢性の脳の病気で、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こる。
発作は突然に起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化などが生じる。
明らかなけいれんがあればてんかんの可能性は高い

また、てんかんの多彩な症状として、次のようなものが挙げられている。

  • ひきつけ、けいれん
  • ボーっとする
  • 体がピクッとする
  • 意識を失ったまま動き回ったりするなど

てんかんの分類と第一選択薬

てんかんの分類は、全般発作と部分発作に大別される。
そして、全般発作、部分発作の別で第一選択薬は異なってくる。
ただし、部分発作という用語はガイドライン2010でなくなり、焦点発作(意識障害あり、なし)に統一された。

  • 全般発作:
    全般性とは、発作が両側大脳半球のネットワーク内に起こり、このネットワークが急速に発作に巻き込まれるものをいう。
  • 焦点発作(意識障害有り、無し):←従来の部分発作という用語はなくなった
    焦点性とは、発作が一側大脳半球だけのネットワークに起始し、はっきりと限局する。
    あるいはそれよりももう少し広汎に一側半球内に広がったものをいう。
    つまり、従来の部分発作という用語はなくなり、焦点性に再定義された。

とはいうものの、同ガイドライン2010においても、全般(発作)・部分(発作)の用語を下記のとおり使用している。

新規発症の全般てんかんでの選択薬はなにか:

  • 全般性強直間代発作に対して、バルプロ酸が第一選択薬として推奨される。
    第二選択薬として、ラモトリギン、レベチラセタム、トピラマート、ゾニサミド、クロバザム、フェノバルビタール、フェニトイン、ペランパネルが推奨される。
    妊娠可能年齢女性ではバルプロ酸以外の薬剤治療を優先する。
  • 欠神発作では、バルプロ酸、エトスクシミド、ついでラモトリギンが推奨される。
  • ミオクロニー発作では、バルプロ酸、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマートが推奨される。

新規発症の部分てんかんでの選択薬はなにか:

  • 第一選択薬としてカルバマゼピン、ラモトリギン、レベチラセタム、次いでゾニサミド、トピラマートが推奨される。
  • 第二選択薬としてフェニトイン、バルプロ酸、クロバザム、クロナゼパム、フェノバルビタール、ガバペンチン、ラコサミド、ペランパネルが推奨される。

治療薬物モニタリング(TDM)を必要とする薬物がある

抗てんかん薬TDM標準化ガイドライン 2018【電子版】
一般社団法人 日本TDM学会 (編)

概要
抗てんかん薬の効果と副作用の発現には個人差が大きい。そのため、日常臨床における治療薬物モニタリング(TDM)が投与計画を決定するうえで重要な手段となり、各種抗てんかん薬の薬物動態に基づいたTDMを行う必要がある。本書では11種類の抗てんかん薬について、TDMの標準的な手法が薬剤別にまとめられた。TDMに携わる薬剤師や臨床検査技師、TDMをオーダーする医師必携のガイドラインである。
https://store.isho.jp/search/detail/productId/1905135190

片頭痛の予防薬

「慢性疼痛治療ガイドライン2018」頭痛・口腔顔面痛

  • バルプロ酸、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防の保険適応有り)
  • トピラマート、1A(使用することを強く推奨する)(片頭痛予防薬として)
  • カルバマゼピン、推奨度なし
  • ラモトリギン、推奨度なし
  • ガバペンチン、推奨度なし

(注:実践薬学2017,p.316「片頭痛の予防薬(グループ別)」は、「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」,p.150(日本頭痛学会)からの引用である。「慢性疼痛治療ガイドライン2018」では、上記のように評価されている)

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)」

てんかん診療ガイドライン2018(日本神経学会)
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/tenkan_2018.html
てんかんと自動車運転(日本てんかん協会)
https://www.jea-net.jp/epilepsy/drive

薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9誘導薬―

抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール)は、CYP2C9の誘導薬であり、ワルファリンの抗凝固作用を明らかに減弱させる。
その作用はリファンピシンよりも弱く、S-ワルファリンのクリアランスの増大は、おおよそ1.25~2倍程度と考えられる。
ただし、ワルファリンとカルマバゼピンとの長期併用でコントロールができていたケースで、カルマバゼピンを中止したところ、プロトロンビン時間の延長がみられたとの報告がある。
併用中の酵素誘導薬を中止する場合、ワルファリンの用量調節を考慮する必要がある。(PISCS2021,p.155)

医薬品各種(抗てんかん薬)

デパケン(一般名:バルプロ酸)

抗てんかん薬(複合作用):
「全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

デパケン細粒(20%、40%)
デパケン錠(100mg、200mg)
シロップ(5%、50mg/mL)

新規発症の全般てんかんでは、第一選択薬となる。
(全般性強直間代発作、欠神発作、ミオクロニー発作)
ただし、部分発作での選択順位は高くない。
新規発症の部分てんかんでは、第二選択薬となる。

双極性障害(躁が前景の場合)では、第一選択薬の一つとなる。
なお、妊娠可能年齢女性では、バルプロ酸以外の薬剤治療を優先する(催奇形性有り)。
統合失調症の入院患者で鎮静が必要な場合、統合失調症治療薬に加えることがある。(今日の治療薬,p.845)

【効能・効果】
○各種てんかん(小発作・焦点発作・精神運動発作ならびに混合発作)およびてんかんに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等)の治療
○躁病および躁うつ病の躁状態の治療
○片頭痛発作の発症抑制

【用法・用量】
〈各種てんかんおよびてんかんに伴う性格行動障害の治療、躁病および躁うつ病の躁状態の治療〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~1,200mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢・症状に応じ適宜増減する。
〈片頭痛発作の発症抑制〉
通常1日量バルプロ酸ナトリウムとして400~800mgを1日2~3回に分けて経口投与する。
なお、年齢・症状に応じ適宜増減するが、1日量として1,000mgを超えないこと。

(デパケン添付文書)

バルプロ酸は、CYP2C9阻害薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    バルプロ酸:IR(CYP2C9)0.61(800mg/日投与)、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

バルプロ酸は、片頭痛発作の発症抑制が適応となっている

「抗てんかん薬:バルプロ酸は予防薬として国際的にも広く使われている。てんかんよりも少量で有効」。(今日の治療薬2020,p.932)

【適応症の一つ】片頭痛発作の発症抑制
「本剤は、片頭痛発作の急性期治療のみでは日常生活に支障をきたしている患者にのみ投与すること」。(デパケン添付文書)

推奨度は高いが、眠気の副作用や催奇形性など注意事項も多い。

⇒「片頭痛、慢性頭痛治療薬(トリプタン系薬など)」

バルプロ酸は、代表的な「非線形型薬物」である

  • バルプロ酸は、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

バルプロ酸は蛋白結合率の高い薬物であり、タンパク結合の飽和が原因で血中濃度が頭打ちとなる。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~」

血漿中蛋白結合率
>90%(およそ100μg/mL以上の濃度では結合が飽和する)

(デパケン添付文書)

テグレトール(一般名:カルバマゼピン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.916)

新規発症の部分てんかんでは、第一選択薬となる。

カルバマゼピンは、非線形型薬物である

  • カルバマゼピンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

カルバマゼピンは、薬物代謝酵素の自己誘導を起こす

カルバマゼピンは、代謝の自己誘導を起こすことが知られている。
日常臨床において、治療薬物モニタリング(TDM)実施の対象となる。
「血清内濃度/投与量の比は投与開始10日までは上昇するが、その後低下し、血清内濃度は服薬日数に依存して変動することが認められる」。(テグレトール添付文書)

主として CYP3A4 による代謝を受ける。
自己誘導を起こすため、消失半減期は投与初期で 10-36 時間であるのに対し、連続投与時では 10-24 時間に短縮される。
抗てんかん薬のTDMガイドライン(案)Draft version 1.2,p.15
http://plaza.umin.ac.jp/~jstdm/news/osirase_public2012_4.pdf

カルバマゼピンは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    カルバマゼピン:IC(CYP3A4)3.0倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

カルバマゼピンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.90)

86歳女性、体重42kg、三叉神経痛
カルバマゼピン錠100mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、7日分

消失半減期(hr)=約16~24時間
投与間隔/消失半減期=12/16~12/24=0.75~0.5<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=0.75~0.85(中間値をとって0.8とする)
塩係数(S)=1.0
1回投与量(Dose)=100mg
投与間隔(τ)=12時間
分布容積(Vd)=0.8~1.8L/kg(中間値をとって1.3L/kgとする)
消失速度定数(Ke)=0.028/hr

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.8×1.0×100mg/12hr)/(1.3L/kg×42kg(体重)×0.028/hr)
=6.6667/1.5288
=4.36mg/L⇒4.4μg/mL

テグレトールの有効血中濃度:
4~8μg/mL
有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算」

リボトリール、ランドセン(一般名:クロナゼパム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.914)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

「作用機序:
抑制性のGABAニューロンのシナプス後膜に存在するベンゾジアゼピン受容体にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることにより、GABAニューロンの作用を特異的に増強すると考えられている」。(リボトリール添付文書)

クロナゼパムの用法・用量を考える

「健康成人男子6例にクロナゼパム1mgを単回経口投与したとき、未変化体の血中濃度は投与2時間後に最高に達し(6.5ng/mL)、半減期は約27時間であった」。(リボトリール添付文書)

(どんぐり2019,p.203-206、服薬指導例・薬歴記載例有り)

20歳女性、自覚症状(ジストニア症状)に対する対症療法
クロナゼパム錠0.5mg、1回1錠、1日1回、就寝前、14日分
⇒増量(1回1錠、1日2回、朝食後と就寝前、90日分)

投与間隔12~24時間/半減期27時間=0.44~0.89<3.0
⇒半減期のある薬物
半減期27時間×5=135⇒約5.6日
効果が発現するには5日以上かかる。

増量(投与回数1日1回から2回へ)されたことから、薬理作用に伴う副作用として、精神神経系の「眠気(13.9%)、ふらつき、意識障害」が起こる可能性がある。

注)ジストニア:持続的に筋肉が収縮する運動であり、ある特定の肢位を維持し続ける様になる
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル(ジスキネジア)」2009年5月

イーケプラ(一般名:レベチラセタム)

抗てんかん薬(主にSV2a結合):
「特異な作用機序。薬物相互作用がほとんどない」。(今日の治療薬2020,p.922)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)、新規発症の部分てんかん。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

レベチラセタムは、非線形型薬物である

  • レベチラセタムは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,P.234)
    250mgから3000mgまでの増量では線形、3000mg以降は非線形である。

腎機能低下時の用法・用量(レベチラセタム)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1回500mgを1日2回、最大1回1,500mgを1日2回
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1回500mgを1日2回、最大1回1,000mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回750mgを1日2回
  • CCr(30mg/dL未満)
    1回250mgを1日2回、最大1回500mgを1日2回
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回500mgを1日1回、最大1回1,000mgを1日1回、HD患者はHD後に1回250mg、最大1回500㎎を補充

エクセグラン(一般名:ゾニサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「幅広い発作型(部分発作、全般発作)に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

ゾニサミドは、非線形型薬物である

ゾニサミドは、高用量では「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
ゾニサミドは、治療用量範囲では線形型を示し、高用量では非線形型となる。

アレビアチン、ヒダントール(一般名:フェニトイン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「血中濃度は飽和動態に従う(指数関数的に上昇)」。(今日の治療薬2020,p.916)

劇薬(錠を除く)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェニトインは、代表的な「非線形型薬物」である

  • フェニトインは、「血中濃度急上昇タイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

肝消失型薬物であり、投与量が増加して薬物代謝酵素(CYP2C9など)が飽和すると、体内からの消失が遅くなり急激に血中濃度が上昇する。
⇒「非線形性~肝クリアランス(肝固有クリアランスと代謝の飽和)~」
(添付文書への記載は無し)

フェニトインは、CYP2C9の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェニトイン:CR(CYP2C9)0.72、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬
    フェニトイン:IR(CYP2C9)0.68、(PISCS2021,p.53)、CYP2C9阻害薬

フェニトインは、CYP3A4阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 誘導薬の臨床用量における見かけのCYP3A4のクリアランスの増加IC(CYP3A4)
    フェニトイン:IC(CYP3A4)4.7倍、(PISCS2021,p.48)、CYP3A4誘導薬

ラミクタール(一般名:ラモトリギン)

抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害):
「幅広い抗てんかんスペクトラムを有す」。(今日の治療薬2020,p.918)

第一選択薬:新規発症の部分てんかん
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作、欠神発作)

  • ラモトリギンは、線形型薬物である。(どんぐり2019,P.234)

ガバペン(一般名:ガバペンチン)

抗てんかん薬(複合作用):
「全般発作の第一選択薬」。(今日の治療薬2020,p.922)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

ガバペンチンは、非線形型薬物である。

  • ガバペンチンは、「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ガバペンチン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(ほぼ100%)、減量法の記載有り。
  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    初日1日600mg、2日目1日1,200mg、3日目以降は維持量として1日1,200~1,800mgをいずれも分3、最大1日量2,400mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    初日1日400mg、維持量として1日600~800mgをいずれも分2、最大1日量1,000mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    初日1日200mg、維持量として1日300~400mgをいずれも分1、最大1日量500mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg又は2日に1回300mg、最大1日量200mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    初日1日200mgを分1、維持量として1日1回200mg、HD日にはHD後。又は維持量として週3回HD後に1回200~400mg。CAPD患者ではGFR<15mL/minに準じる

フェノバール(一般名:フェノバルビタール)

抗てんかん薬(バルビツール酸系):
「半減期が長い」。(今日の治療薬2020,p.913)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

フェノバルビタールは、CYP2C9基質薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    フェノバルビタール:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬

フェノバルビタールは、CYP3A阻害薬である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)
    フェノバルビタール:CR(CYP3A4)データ無し、(PISCS2021,p.47)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

マイスタン(一般名:クロバザム)

抗てんかん薬(ベンゾジアゼピン系、向精神薬):
「ベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合し、GABAニューロンの作用を増強」。(今日の治療薬2020,p.915)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

  • クロバザムは、「線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)

クロバザムは、CYP2C19の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C19のCRおよびIR値
    クロバザム:CR(CYP2C19)データ無し、(PISCS2021,p.54)

クロバザムは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    クロバザム:IR(CYP2D6)データ無し、(PISCS2021,p.50)

トピナ(一般名:トピラマート)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「難治性部分発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(ミオクロニー発作)。
第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)。

  • トピラマートは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(トピラマート)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ビムパット(一般名:ラコサミド)

抗てんかん薬(主にNa/Caチャネル阻害):
「薬物相互作用が少ない」。(今日の治療薬2020,p.920)

第二選択薬:新規発症の部分てんかん。

  • ラコサミドは、線形型薬物である。(どんぐり2019,p.234)

腎機能低下時の用法・用量(ラコサミド)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

エピレオプチマル、ザロンチン(一般名:エトスクシミド)

抗てんかん薬(主にCaチャネル阻害):
「欠神発作に有効」。(今日の治療薬2020,p.921)

第一選択薬:新規発症の全般てんかん(欠神発作)。

フィコンパ(一般名:ペランパネル)

抗てんかん薬(AMPA受容体拮抗):
「特異な作用機序」。(今日の治療薬2020,p.924)

第二選択薬:新規発症の全般てんかん(全般性強直間代発作)、新規発症の部分てんかん。

ペランパネルは、非線形型薬物である

  • ペランパネルは、高用量では「血中濃度頭打ちタイプの非線形型薬物」である。(どんぐり2019,p.234)
    ペランパネルは、2mgから4mgへの増量では線形、4mgから8mgへの増量では非線形を示す。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

薬物動態学から

分布容積(少しだけ組織移行性のある薬物の例)(山村ほか2016,p.21など)

テオドール錠(一般名:テオフィリン)、450mL/kg
フェノバール錠(一般名:フェノバルビタール)、560mL/kg
イスコチン錠(一般名:イソニアジド)、670mL/kg
アレビアチン注(一般名:フェニトイン注)、550mL/kg
尿素、600mL/kg

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)そのほか

抗うつ薬(SNRI、そのほか)概略

  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
    SNRI(serotonin/noradrenaline reuptake inhibitors)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
    NaSSA(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant
  • セロトニン拮抗・再取り込み阻害薬(SARI)
    SARI(serotonin antagonist/reuptake inhibitor)

うつ病患者では、神経伝達物質であるモノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン)の濃度が減少しているとされている。

  • セロトニンは、精神の安定(安心感や落ち着き)をもたらす。
  • ノルアドレナリンは、意欲・関心(やる気や気力など)を高める。
  • ドーパミンは、興味や楽しみなどを高める。

SNRIは、セロトニンやノルアドレナリン濃度を高めることによって、抗うつ効果を発揮すると考えられている。
SNRIは、セロトニンやノルアドレナリンのシナプスでの回収(再取り込み)を阻害して、シナプス間隙のセロトニンやノルアドレナリン濃度を高める作用を有する。

NaSSAは、セロトニンとノルアドレナリンの分泌を促して、両者の濃度を高める。

セロトニン、ノルアドレナリンは、消化管の活動にかかわっている。
吐き気、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状が現れることがある。

ノルアドレナリンは、交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質である。
したがって、「交感神経のかかわる心臓・前立腺などに対する悪影響や、不眠の副作用も出やすい」→特にサインバルタ。(児島2017,p.268)

ノルアドレナリンには痛みを軽減する作用もあるため、慢性的な痛みがある患者に使われることも多い。
例えば、サインバルタがそうである。

なお、多くの抗うつ薬は、痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、慎重投与となる。

SSRIとSNRI

入院・外来にかかわらず、うつ病の第一選択薬は、SSRI若しくはSNRIである。
入院・外来にかかわらず、「不眠、食思不振がある」場合は、ミルタザピンが第一選択薬となる。
外来対応が可能で「不安症を併せ持つ」場合、エスシタロプラムとセルトラリンが第一選択薬となる。
(今日の治療薬2020,p.845)

元住吉こころみクリニック
「抗うつ剤の副作用と安全性の比較」
cocoromi-cl.jp/knowledge/psychiatry-medicine/antidepressant/dep-side/

⇒「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」

医薬品各種(SNRIなど)

  • サインバルタ(SNRI):
    ノルアドレナリン作用強い(慢性疼痛に適応、前立腺肥大・高血圧・心疾患注意)
    肝消失型薬物だが、高度腎機能障害のある患者では尿毒素が蓄積。
    CYP1A2(強い基質薬)、CYP2D6(中程度の阻害薬)。
  • トレドミン(SNRI):
    脂溶性だが腎排泄(尿細管から分泌)。
  • イフェクサーSR(SNRI):
  • リフレックス、レメロン(NaSSA):
    不眠、食思不振(第一選択薬)
  • レスリン、デジレル(SARI):
    もっぱら睡眠薬として使用される。

サインバルタ(一般名:デュロキセチン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):
「投与早期の胃腸症状に注意。肝障害患者への投与は控える。さまざまな疼痛に効果」。(今日の治療薬2020,p.878)

サインバルタ・カプセル(20mg、30mg)

「(SNRIは)セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みに選択的に働く。SSRIよりも意欲に効果が期待。消化器症状、血圧上昇あり。循環器疾患には慎重投与」。(同上,p.858)

【効能・効果】
〇うつ病・うつ状態
〇下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害
線維筋痛症
慢性腰痛症
変形性関節症

【用法・用量】
〈うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして40mgを経口投与する。
投与は 1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。
なお、効果不十分な場合には、1日60mgまで増量することができる。
〈線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛〉
通常、成人には1日1回朝食後、デュロキセチンとして60mgを経口投与する。
投与は1日20mgより開始し、1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。

ノルアドレナリンに対する作用が強い

  • 前立腺肥大症等排尿困難のある患者:
    ノルアドレナリン再取り込み阻害作用により症状が悪化することがある。
  • 高血圧又は心疾患のある患者:
    本剤投与前に適切にコントロールし、定期的に血圧・脈拍数等を測定すること。
    心拍数増加、血圧上昇、高血圧クリーゼがあらわれることがある。

(サインバルタ添付文書)

腎機能低下時の用法・用量(デュロキセチン)

  • 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
    尿中排泄率(0%)、ESKDでのクリアランス(-62%)、ESKDの用量(禁忌)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛:1日40mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量、最大1日量60mg
    2)線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛:1日60mgを分1、朝食後。1日20mgより1週間以上の間隔を空けて1日20mgずつ増量
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    中等度腎障害では薬物動態に変化が認められないため減量は不要(Clin Pharmacokinet 49:311-321,2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(ほとんど尿中排泄されず、半減期も延長しないものの、AUC、Cmaxが約2倍に上昇する)

デュロキセチンと尿毒素の蓄積

デュロキセチンは、肝消失型の薬物である。
それにもかかわらず、高度腎機能低下のある患者(CCr<30mL/分)及び透析患者には禁忌である。

「糞中及び尿中にデュロキセチンはほとんど存在せず、投与量の72.0%は代謝物として尿中に排泄され、18.5%は糞中に排泄された(外国人によるデータ)」⇒肝消失型であることを示す。(サインバルタ添付文書)

高度の腎機能障害のある患者では、健康成人と比べて、CmaxとAUCが約2倍に増大する(それぞれ有意差有り)。(サインバルタ・インタビューフォームより)

「腎機能が正常から中等度の障害の範囲ではデュロキセチンの血漿中濃度変化に及ぼす腎機能の影響は大きくないと考えられた」⇒高度腎機能障害のある患者のみ問題となる。(サインバルタ審査報告書(2010年01月20日)2 申請資料概要)

ところで、「実践薬学2017,p.191」では、同じく審査報告書からの引用として「正常~中等度障害の腎機能の範囲では、本剤の血漿中未変化体濃度に対する腎機能の影響は大きくない」と記載している。

それはともかくとして、実践薬学2017では、「高度の腎機能障害のある患者で問題となるのは尿毒素の蓄積である」として、その機序について考察している。
大変参考になる意見である。

「(尿毒素の蓄積によって)CYPやトランスポーターなどの機能性蛋白質の翻訳後修飾の阻害を引き起こし、結果として、デュロキセチンやワルファリンの代謝が遅延してしまう。つまりそれらの血中濃度が上昇する」⇒腎機能低下患者ではCYP活性などが低下する。(実践薬学2017,p.191)

デュロキセチンは、CYP1A2の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

フルボキサミン(CYP1A2阻害薬)とは、併用注意である。
チザニジン、ラメルテオン(CYP1A2の強い基質薬)は、フルボキサミンと併用禁忌である。

デュロキセチンは、CYP2D6阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    デュロキセチン:IR(CYP2D6)0.84、(PISCS2021,p.50)、120mg/day投与
    デュロキセチン:IR(CYP2D6)0.84、(PISCS2021,p.50)、60mg/day投与
    デュロキセチン:CR(CYP2D6)0.37、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

トレドミン(一般名:ミルナシプラン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI):(今日の治療薬2020,p.879)

トレドミン錠(12.5mg、15mg、25mg、50mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人には、ミルナシプラン塩酸塩として1日25mgを初期用量とし、1日100mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
ただし、高齢者には、1日25mgを初期用量とし、1日60mgまで漸増し、1日2~3回に分けて食後に経口投与する。

腎機能低下時の用法・用量(ミルナシプラン)

  • 脂溶性が高い薬物であるが、腎排泄型である。⇒「腎排泄型薬物と肝消失型薬物あるいは胆汁排泄型薬物」

尿細管分泌によって腎排泄されている。アマンタジンとプラミペキソールは有機カチオントランスポーター(OCT)の基質であり、ミルナシプランの輸送系は明らかになっていない。(実践薬学2017,p.165)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(高齢者への減量法有り)。
    ⇒参照(デュロキセチン)

イフェクサーSR(一般名:ベンラファキシン)

セロトニン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬(SNRI):
「少量ではSSRI的に、高用量ではノルアドレナリンが作用する。用量の幅は広い」。(今日の治療薬2020,p.879)

イフェクサーSR徐放カプセル(37.5mg、75mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし、1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこと。

腎機能低下時の用法・用量(ベンラファキシン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

ベンラファキシンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.92、(PISCS2021,p.50)
    R,S-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.80、(PISCS2021,p.50)
    S-ベンラファキシン:CR(CYP2D6)0.59、(PISCS2021,p.50)

リフレックス、レメロン(一般名:ミルタザピン)

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA):
「α2受容体を遮断し、セロトニン・ノルアドレナリン放出を促進。SSRI、SNRIで問題となる胃腸症状や性機能障害が少ない。体重増加と眠気に注意」。(今日の治療薬2020,p.880)

リフレックス錠(15mg、30mg)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ミルタザピン:CR(CYP2D6)0.19、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

SSRIやSNRIなどとは異なり、受容体を遮断し、シナプス間隙の遊離アドレナリンやセロトニンを増加させることで抗うつ効果を示す。(実践薬学2017,p.40)
つまり、直接分泌を増やす作用を持つ。(児島2017,p.268)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
通常、成人にはミルタザピンとして1日15mgを初期用量とし、15~30mgを1日1回就寝前に経口投与する。
なお、年齢、症状に応じ1日45mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として15mgずつ行うこと。

(リフレックス添付文書)

ミルタザピンは、入院・外来にかかわらず、「不眠、食思不振がある」患者では、第一選択薬となる。

ミルタザピンの作用機序

  1. ミルタザピンは、NA細胞体(及び神経線維)のα2自己受容体を遮断することで、ノルアドレナリンの遊離を促進する
  2. 放出されたノルアドレナリンの刺激が、α1自己受容体を介して5-HT細胞体に伝わり、5-HT神経活動を促進する
  3. ミルタザピンは、5-HT神経前シナプスのα2ヘテロ受容体を遮断することで、セロトニンの遊離を促進する
  4. ミルタザピンは、後シナプスの5-HT2、5-HT3受容体を遮断するため、増加したセロトニンは5-HT1受容体への刺激を選択的に増強する
  5. その結果、抗うつ効果をもたらす

(実践薬学2017,p.412-413「ミルタザピン(NaSSA)の作用機序の模式図」)

ミルタザピンの適応外使用(不眠症)

「適応症:うつ病・うつ状態。適応外使用:不眠症」。(今日の治療薬2020,p.880)

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

米国では、トラゾドンと同様に、不眠に対して多く処方されている。
睡眠薬として用いるならば、0.25~0.5錠など(1錠の規格は15mg錠)からスタートした方がよいだろう。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)」

ミルタザピンとミアンセリンは、化学構造がよく似ている。ミルタザピン=6位がN(窒素)、ミアンセリン=6位がC(炭素)となっている。ただし半減期は、ミルタザピン(半減期31.7時間)の方がミアンセリン(半減期18時間)よりも長いことは注意が必要だろう。(実践薬学2017,pp.411-412「ミルタザピンとミアンセリンの6位近傍の結合様式の模式図」)

なお、両者の構造式中には、メチル基(-CH3)が含まれている。血液脳関門(BBB)を通過しやすくするため、脂溶性を高めていると考えられる。それに対して、よく似た構造のエピナスチン(抗アレルギー薬)では、BBBを通過しないように、親水性のアミノ基(-NH2)が採用されている。(実践薬学2017,pp.414)

腎機能低下時の用法・用量(ミルタザピン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日15mgを初期用量とし、1日15~30mgを分1、就寝前、最大1日量45mg。増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量15mgずつ
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため2/3に減量
  • CCr(15mg/dL未満)
    本剤のCLが低下する可能性があるため1/2に減量
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    本剤のCLが低下するため1/2以下に減量。
    ただし、透析患者で薬物動態に影響ないという症例報告もある(Pharmacopsychiatry 41:259-260,2008)

レスリン、デジレル(一般名:トラゾドン)

その他の抗うつ薬:
「5HT2a受容体を遮断し、またセロトニン再取込みを抑制。抗コリン作用弱く、鎮静が強い」。(今日の治療薬2020,p.880)

弱いセロトニン再取り込み阻害作用と強い5-HT2受容体遮断作用を併せ持つ。(実践薬学2017,p.39)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

レスリン錠(25mg、50mg)

【効能・効果】
うつ病・うつ状態

【用法・用量】
トラゾドン塩酸塩として、通常、成人には1日75~100mgを初期用量とし、1日200mgまで増量し、1~数回に分割経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

トラゾドンの適応外使用(不眠症、せん妄)

「適応症:うつ病、うつ状態。適応外使用:不眠症、せん妄」。(今日の治療薬2020,p.880)

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の発売以降は抗うつ薬として使われることは少なくなり、精神科ではむしろ睡眠薬として汎用されている。
米国では第一選択薬の1つである。

「睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン」-出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアル-(2013年6⽉25⽇初版、10月22日改訂)⇒適応外処方

うつ病性不眠に対しては選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)よりもミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピンなどの催眠鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。原発性不眠症に対して抗うつ薬を使⽤することは適応外処⽅であり薦められない。ただし、睡眠薬が奏功せず、抑うつ症状がある患者に対しては催眠・鎮静系抗うつ薬を⽤いる価値がある。その場合にも、持ち越し効果など
副作⽤に留意すべきである。【推奨グレードB】

トラゾドンは、全体の睡眠時間を増加させ、何度も持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らすといわれている。
睡眠障害に使用する場合は、25~50mgを就寝前に用いる(100mgとしている報告もある)。

⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)」

リーマス(一般名:炭酸リチウム)

気分安定薬:
「双極性障害の再発予防、治療抵抗性うつ病に効果」。(今日の治療薬2020,p.881)

リーマス錠(100mg、200mg)

【効能・効果】
躁病および躁うつ病の躁状態

【用法・用量】
炭酸リチウムとして、成人では通常1日400~600mgより開始し、 1日2~3回に分割経口投与する。
以後3日ないし1週間毎に、1日通常1200mgまでの治療量に漸増する。
改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200~800mgの1~3回分割経口投与に漸減する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

(リーマス添付文書)

炭酸リチウムは、双極性障害患者に対して、うつが前景の場合でも躁が前景の場合でも第一選択薬となる。
ただし、腎障害に不可であり、また定期的な採血を必要とする。

腎機能低下時の用法・用量(リチウム)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日400~600mg分2~3より開始し、以後3日ないし1週間毎に1日1,200mgまで漸増。改善後は、維持用量1日200~800mgを分1~3
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    50~75%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    25~50%に減量(腎障害ではリチウムが体内貯留しやすいため禁忌)
    1回600mgを週3回HD後という報告あり(Am JPsychiatry 167:1409-1410,2010)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗うつ薬)

高齢者のうつ病の治療には、心理社会的要因への対応や臨床症状の個人差に応じたきめ細かな対応が重要である。高齢者のうつ病に対して三環系抗うつ薬は、特に慎重に使用する薬剤に挙げられている。
(抗うつ薬 (スルピリド含む))、ただし、SNRIは含まれていない?

  • 痙攣、緑内障、心血管疾患、前立腺肥大による排尿障害などの身体症状がある場合、多くの抗うつ薬が慎重投与となる。
  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン[トリプタノール]、アモキサピン[アモキサン]、クロミプラミン[アナフラニール]、イミプラミン[トフラニール]など)は、SSRIと比較して抗コリン症状(便秘、口腔乾燥、認知機能低下など)や眠気、めまい等が高率でみられ、副作用による中止率も高いため、高齢発症のうつ病に対して、特に慎重に使用する。
  • 三環系抗うつ薬とマプロチリン[ルジオミール]は、緑内障と心筋梗塞回復初期には禁忌であり、
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。
  • SSRI(セルトラリン[ジェイゾロフト]、エスシタロプラム[レクサプロ]、パロキセチン[パキシル]、フルボキサミン[デプロメール、 ルボックス])も高齢者に対して転倒や消化管出血などのリスクがある。
  • SSRIは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • SSRIの使用に当たっては、CYPの関与する相互作用などを受けやすいため、併用薬に注意が必要である。特にフルボキサミンは CYP1A2を、パロキセチンはCYP2D6を強く阻害し、併用禁忌の薬剤もあることから、注意が必要である。
  • 三環系抗うつ薬とエスシタロプラムはQT延長症候群に禁忌である。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2D6

【基質】
デキストロメトルファン(中枢性非麻薬性鎮咳薬、メジコン)
ノルトリプチリン(三環系抗うつ薬(TCA)、ノリトレン)
マプロチリン(四環系抗うつ薬、ルジオミール)
メトプロロール(β遮断薬(β1選択性ISA(-))、ロプレソール、セロケン)
アトモキセチン(ADHD治療薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、ストラテラ)
トルテロジン(頻尿・過活動膀胱治療薬、デトルシトール)

【阻害薬】
パロキセチン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、パキシル)
テルビナフィン(深在性・表在性抗真菌薬(アリルアミン系)、ラミシール)
シナカルセト(腎疾患用剤(Ca受容体作動薬)、レグパラ)
ミラベグロン(頻尿・過活動膀胱治療薬、ベタニス)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【誘導薬】
なし

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。

抗精神病薬(統合失調症治療薬など)

統合失調症治療薬(概要)

(今日の治療薬2020,pp.843-857)

統合失調症は、陽性症状(妄想、幻覚等)および陰性症状(感情の平板化、意欲の欠如等)を主症状とする慢性の精神疾患であり、長期にわたる維持療法を必要とする。
維持療法中の重要な治療目標として、精神症状の再発、再燃防止と患者のQOL向上が挙げられる。

「(統合失調症の)原因としてドパミンやその受容体の異常が考えられており、ドパミン神経路のうち幻覚妄想に関係するとされる中脳―辺縁系路のドパミンD2受容体の遮断効果のある抗精神病薬が治療の中心となる」。(今日の治療薬2020,p.843)

抗精神病薬(統合失調症治療薬)は、一般的には、薬効よりも副作用の状況をみながら使い分けられる。
副作用としては、錐体外路症状や高プロラクチン血症などが重要である。

各剤の副作用リスクの違いについては、受容体親和性(Ki値,nM)から考えることができる。
D1、D2、D3、D4、5-HT1a、5-HT2a、5-HT2c、α1、H1、M1
(参考:「Next Challengeプログラム」Webサイト,「抗精神病薬と耐糖能障害、脂質代謝異常」大塚製薬)

錐体外路症状

ドパミン神経の過剰な遮断によって、日常の動作が障害されてスムーズな体の動きができなくなる症状のこと。
振戦・歩行困難などの運動機能障害のことをいう。

  • ジスキネジア:無意識に口が動く、手足が勝手に動く、など
  • ジストニア:目が上を向いたままになる、ろれつが回らなくなる、首が反り返る・つっぱる、など
  • パーキンソン様症状:手がふるえる、小刻みに歩く、など
  • アカシジア:身体(足)がムズムズしてじっと座っておれない(絶えず歩き回る)、など

抗精神病薬共通の副作用として、「ドパミン神経の黒質―線状体路を遮断することでEPSが出現する」。
抗精神病薬によるEPS(錐体外路症状)そのほかの副作用には、以下のようなものがある。
(同上,pp.847-848参照)

  • 治療早期の急性ジストニア(首や上肢の筋肉のつっぱりや眼球上転)。
  • パーキンソニズム(筋強剛や振戦など)。
  • 長期投与で出現する遅発性ジスキネジア(舌や口唇、下顎の不規則な不随意運動や四肢の粗大な振戦)。
  • プロラクチン値上昇(ドパミン神経の漏斗―下垂体路を遮断→月経異常や乳汁分泌、射精不能)。
  • ヒスタミンH1受容体やセロトニン5-HT2c受容体遮断に伴う肥満。
  • 抗コリン作用に伴う慢性便秘、多飲水(口渇)。

クロルプロマジン換算値(CP換算値)=薬の処方量÷等価換算×100
適正値は300mg~600mgであり、1,000mg以上は過剰投与の疑いがある。

「主な抗うつ薬の副作用、相互作用における比較」。(同上,p.853)

第一世代(定型)抗精神病薬ほか(従来薬)

定型抗精神病薬(フェノチアジン系、ブチロフェノン系)は、錐体外路症状が出やすい薬物である。
ただし、体重や血糖への影響は少ない。

  • フェノチアジン系(ウインタミンなど)
    抗コリン作用、アドレナリンα1作用が強い。
  • ブチロフェノン系(セレネースなど)
    ドパミンD2受容体に拮抗することで、妄想・幻覚などの陽性症状を改善する。
    抗コリン作用は弱いが、EPSやプロラクチン値上昇作用が強い。
  • ベンザミド系(ドグマチールなど)
    ドグマチール(スルピリド)は、抗潰瘍薬である。
    低用量(50~150mg)では抗うつ作用、高用量(300mg以上)では抗精神病作用が認められる。
    脳内移行が悪いため、高プロラクチン血症が出やすい。
    高齢者では、ESPが出やすい。

第二世代(非定型)抗精神病薬(第一選択薬)

非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬の副作用である「錐体外路症状」(EPS:extrapyramidal symptom)を軽減した薬物である。
ただし、体重増加や血糖・脂質上昇などの代謝系副作用がある。

薬剤間での治療効果には差がないとされている。
副作用の出やすさによって使い分けられる。
例えば、眠気、体重増加や性機能障害などである。

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA:Serotonin-Dopamine Antagonist)
    リスパダールなど:ドパミンD2受容体に加えてセロトニン5-HT2受容体にも拮抗して、意欲低下などの陰性症状も改善する。
    セロトニン5-HT2受容体に対する拮抗作用は、EPSを減らす要因ともなる。
    高プロラクチン血症←血液脳関門を通過しにくいため、血液脳関門の外にある下垂体に影響しやすい。
  • 多元受容体作用抗精神病薬(MARTA:Multi-Acting Receptor-Targeted Antipsychotics)
    ジプレキサなど:セロトニン・ドパミン以外のコリン、ヒスタミン、アドレナリンなど、多くの受容体に作用する。
    鎮静効果があるため睡眠薬の代わりに使用されることもある。
    EPSやプロラクチン値上昇はほとんどない。
    体重増加、脂質代謝異常や血糖上昇が問題となる。
  • ドパミンD2受容体部分作動薬(DPA:Dopamine D2 receptor partial agonist)
    エビリファイ:ドパミンD2受容体を部分的に刺激する部分作動薬である。
    ドパミン神経路を過度に遮断することがないので、EPSやプロラクチン値上昇はほとんどない。
    ただし、鎮静効果が弱い。

眠気と化学構造

クロルプロマジン、クエチアピンなどは、第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。
抗ヒスタミン作用を示し、BBBを通過する。
つまり、眠気がある。
そのほか、三環系抗うつ薬もよく似た構造の三環を持っている。(実践薬学2017,p.416)

医薬品各種(定型・非定型型精神病薬)

  • セレネース(一般名:ハロペリドール)、第一世代抗精神病薬
    錐体外路障害があり、第一選択薬とはならない。
  • リスパダール(一般名:リスペリドン)、第二世代抗精神病薬(SDA)
    第一選択薬である(世界100か国以上での使用実績が豊富)。
    入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬。
    高プロラクチン血症に注意。
  • ジプレキサ(一般名:オランザピン)、第二世代抗精神病薬(MARTA)
    入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、リスパダールと共に第一選択薬。
    糖尿病に禁忌、体重増加に留意。
  • エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)、第二世代抗精神病薬(DPA)
    外来(鎮静不要)、入院(鎮静不要あるいは短期の鎮静でよい)の場合、第一選択薬。

セレネース(一般名:ハロペリドール)

ブチロフェノン系抗精神病薬:
「抗幻覚妄想作用は強いが、錐体外路症状多い。抗α1作用があり、静注でのQT延長に注意」。(今日の治療薬2020,p.861)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

【禁忌】パーキンソン病又はレビー小体型認知症の患者〔錐体外路症状が悪化するおそれがある〕

(セレネース添付文書)

リスパダール(一般名:リスペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「抗幻覚妄想作用は強い。非定型薬の中では錐体外路症状やプロラクチン値上昇を来しやすい」。(今日の治療薬2020,p.864)

  • 抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬となる。
高プロラクチン血症に注意する。

【効能・効果】
〈リスパダール錠1mg、リスパダール錠2mg、リスパダール細粒1%〉
○統合失調症
○小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
〈リスパダール錠3mg〉
統合失調症

【用法・用量】
6.1 統合失調症
通常、成人にはリスペリドンとして1回1mg 1日2回より開始し、徐々に増量する。
維持量は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。
但し、1日量は12mgを超えないこと。

(リスパダール添付文書)

【適応外処方】

厚生労働省 保医発0928第1号「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」(2011)
原則として、「リスペリドン【内服薬】」を「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」、「パーキンソン病に伴う幻覚」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める。

リスパダールは、剤形が豊富である。
そして、それらはいずれも食事の影響を受けない。
体調不良で食事が取れない日や、服薬時間がズレてしまった日でも、病状のコントロールをしやすい。
(参考:児島2017,p.281)

リスパダール細粒(1%)
リスパダール錠(1mg、2mg、3mg)
リスパダールOD錠(0.5mg、1mg、2mg)
リスパダール内用液(1mg/1mL、包装各種有り)
リスパダールコンスタ(筋注用:25mg、37.5mg、50mg)

リスペリドンは、CYP2D6の基質薬である

  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    リスペリドン:CR(CYP2D6)0.85、(PISCS2021,p.50)
    リスペリドン:CR(CYP2D6)0.16、(PISCS2021,p.50)
    (リスペリドンと代謝物の9-ヒドロキシリスペリドンに活性がある)

薬物相互作用ガイドライン、そのほかの資料では挙げられていない。

併用注意(併用に注意すること):
CYP2D6を阻害する薬剤(パロキセチン2)等
本剤及び活性代謝物の血中濃度が上昇することがある。
これらの薬剤の薬物代謝酵素阻害作用による。

相互作用:
本剤は主としてCYP2D6で代謝される。
また、一部CYP3A4の関与も示唆される。

(リスパダール添付文書)

リスペリドンは、代謝酵素CYP2D6によって代謝活性体のパリペリドンに変換され、薬効を発揮する。
ところが、代謝酵素CYP2D6の働きには、遺伝的素因による個人差が大きい。
したがって、リスペリドンの薬効は個人差が大きくなり、薬の効果や副作用が安定しないという問題がある。
⇒「インヴェカ」(改良品の開発)

腎機能低下時の用法・用量(リスペリドン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)統合失調症:1回1mgを1日2回より開始し、維持量1日2~6mgを分2、最大1日量12mg
    2)その他の適応は添付文書参照
  • CCr(60mg/dL未満、透析患者を含む)
    活性代謝物が蓄積するため、1日1mgを分2より開始し、維持量2~6mg を分2、最大1日量6mg

インヴェカ、ゼプリオン(一般名:パリペリドン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「リスペリドンの代謝産物。鎮静は弱い。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.865)

パリペリドンは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。
入院が必要(鎮静不要、あるいは短期の鎮静でよい場合)。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

高プロラクチン血症に注意する。

パリペリドンは、リスペリドンの代謝活性体そのものであり、代謝酵素CYP2D6による代謝を必要としない。
代謝酵素CYP2D6の働きには、遺伝的素因による個人差が大きい。
代謝酵素CYP2D6を必要としないパリペリドンは、薬効に個人差を生じにくい。

インヴェカの錠剤は、浸透圧放出システム(OROS:Osmotic Controlled Release Oral Delivery System)を採用した徐放製剤になっている。
したがって、1日1回の服用で、24時間にわたって安定した血中濃度を維持することができる。

インヴェカは、朝食後に服用する。
空腹時服用では、吸収量が低下する。
Cmax(最高血中濃度)36%、AUC(血中濃度時間曲線化面積)37%、それぞれ低下する。
「夕食後などに服用すると、睡眠中の副交感神経優位の状態で腸の蠕動運動が活発になり、まだ錠剤が有効成分を放出している状態で排泄されてしまう恐れ」がある。(児島2017,p.286)

ゼプリオン(一般名:パリペリドンパルミチン酸エステル)
パリペリドンの注射薬。
1回の注射で効果が4週間持続する。

腎機能低下時の用法・用量(パリペリドン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(80mg/dL以上)、常用量
    1日1回6mg,朝食後より開始。1日12mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は5日間以上の間隔をあけて1日量として3mgずつ行うこと
  • CCr(50~80mg/dL未満)
    1日用量として3mgから開始し、1日用量は6mgを超えないこと
  • CCr(50mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(本剤の排泄が遅延し血中濃度が上昇するおそれがある)

ルーラン(一般名:ペロスピロン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「5-HT1a受容体に働くため、抗不安効果もあり、錐体外路系副作用は弱い」。(今日の治療薬2020,p.866)

ペロスピロンは、SDAの中では唯一「セロトニン5-HT1a受容体」にも作用する。
その結果、錐体外路障害を軽減するとともに、抗不安効果・抗うつ効果を発揮する。
ペロスピロンは、5-HT1a受容体への親和性が非常に高い。
(Ki値:nMは、極端に小さい)

ペロスピロンは半減期が短く(5~8時間)、せん妄の治療にも使いやすい。
持ち越し効果のリスクが少ない。
なお、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」は適応外処方(保険適応有り)となる。→リスペリドン参照。

空腹時に服用すると、吸収が大きく低下する。
日本国内のみで発売。

ロナセン(一般名:ブロナンセリン)

セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):
「5-HT2a受容体にも働くが、ドパミンD2D3受容体により働く。錐体外路症状は出やすいが、メタボリックな副作用は少ない。鎮静は弱い」。(今日の治療薬2020,p.866)

ブロナンセリンは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。
入院が必要(鎮静不要、あるいは短期の鎮静でよい場合)。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

錐体外路症状(EPS)に注意する。

ブロナンセリンは、リスペリドンと比べて、起立性低血圧や食欲増進・体重増加といった副作用が少ない。
これは、アドレナリンα1やヒスタミンH1受容体への親和性が低いことによる。
(Ki値:nMは、極端に大きい)

空腹時に服用すると、吸収が大きく低下する。
日本・韓国・中国などで発売。

ブロナンセリンは、CYP3Aの基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、極めて高度である。
    CR(CYP3A4)0.94VS、(PISCS2021,p.46)
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
    併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

グレープフルーツジュース(200mL)の飲用で、Cmax、AUCはそれぞれ約1.8倍まで上昇した。
(要約:ロナセン・インタビューフォーム)

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「鎮静作用が強い。錐体外路症状を生じにくい。気分安定効果あり。体重増加、血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

入院・外来を問わず、鎮静が必要な場合、ジプレキサと共に第一選択薬となる。
双極性障害(躁が前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善

糖尿病に禁忌、体重増加に留意する。

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

(ジプレキサ添付文書)

オランザピンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

セロクエル、ビプレッソ(一般名:クエチアピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「抗幻覚妄想効果は弱いが、鎮静は強い。錐体外路症状は生じにくい。抗うつ効果もあり。体重増加と血糖上昇が問題」。(今日の治療薬2020,p.867)

セロクエル細粒(50%)
セロクエル錠(25mg、100mg、200mg)
クエチアピン錠(12.5mg有り)
ビプレッソ徐放錠(50mg、150mg)

【効能・効果】
統合失調症

【用法・用量】
通常、成人にはクエチアピンとして1回25mg、1日2又は3回より投与を開始し、患者の状態に応じて徐々に増量する。
通常、 1日投与量は150~600mgとし、2又は3回に分けて経口投与する。
なお、投与量は年齢・症状により適宜増減する。
ただし、1日量として750mgを超えないこと。

(セロクエル添付文書)

なお、「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」は適応外処方(保険適応有り)となる。→リスペリドン参照。

第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
抗コリン作用リスクスケール、1点。(実践薬学2017,p.115)

クエチアピンは、米国においては睡眠薬として処方されることがある。(実践薬学2017,p.41)
不安・焦燥(イライラ)が強い場合、少量の抗精神病薬を用いる。(児島2017,p.253)
⇒「ベンゾジアゼピン系睡眠薬(レンドルミンなど)」

【警告】著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
【禁忌】糖尿病の患者、糖尿病の既往歴のある患者

(セロクエル添付文書)

ビプレッソ徐放錠(クエチアピンの徐放製剤)は、双極性障害(うつが前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害におけるうつ症状の改善

クエチアピンは、CYP3A4の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、高度である。
    CR(CYP3A4)0.85S、(PISCS2021,p.46)、CYP3A基質薬

クロザリル(一般名:クロザピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「効果は強いが体重増加、血糖上昇、無顆粒球症の危険があり、指定施設での入院治療を要する」。(今日の治療薬2020,p.868)

  • 抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)

クロザピンの適応は、以下のとおりである。
「どの抗精神病薬でも効果が得られない(反応性不良)、副作用の問題で必要量を増やせない(耐容性不良)といった場合」。(児島2017,p.276)

クロザピンは、CYP1A2の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)

シクレスト(一般名:アセナピン)

多元受容体作用抗精神病薬(MARTA):
「舌下錠。舌への刺激あり。比較的速く効く。鎮静作用あり。メタボリック系副作用は軽度」。(今日の治療薬2020,p.869)

エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)

ドパミン受容体部分作動薬(DPA):
「ドパミンD2受容体の部分アゴニスト。錐体外路症状やプロラクチン値上昇はほとんどみられない。鎮静は弱いが、投与早期の不安、焦燥、アカシジアに注意」。(今日の治療薬2020,p.869)

  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、軽度である。
    アリピプラゾール:CR(CYP3A4)0.45W、(PISCS2021,p.46)、CYP3A基質薬
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    アリピプラゾール:CR(CYP2D6)0.31、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

アリピプラゾールは、外来対応が可能な場合、特に鎮静が不要であれば、第一選択薬となる。
また、入院では、鎮静不要あるいは短期の鎮静でよい場合には、第一選択薬となる。
(鎮静が必要ならば、バルプロ酸を加える)

双極性障害(躁が前景の場合)の第一選択薬の一つである。(今日の治療薬2020,p.845)
→【効能・効果】双極性障害における躁症状の改善(高用量)

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)

ドパミン受容体部分作動薬(DPA):
「アリピプラゾールよりセロトニン5-HT2a受容体遮断を持ったため、アカシジアやパーキンソン症状が出にくい。用量の幅は狭い」。(今日の治療薬2020,p.870)

ブレクスピプラゾールは、以下の場合、アリピプラゾールなどと並んで第一選択薬となる。
外来対応が可能(特に鎮静が不要な場合)。

オーラップ(一般名:ピモジド)

その他の抗精神病薬:

細粒(劇薬)

ピモジドは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
(実践薬学2017,pp.146-147)

ドグマチール(一般名:スルピリド)

ベンザミド系抗精神病薬:
「低用量で抗うつ作用、高用量で抗精神病作用。潰瘍治癒促進効果あり。プロラクチン値上昇に注意」。(今日の治療薬2020,p.862)

カプセル、50mg錠を除く(劇薬)

腎機能低下時の用法・用量(スルピリド)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)胃・十二指腸潰瘍:[50mg]1日150mgを分3
    2)統合失調症:[50, 100, 200mg]1日300~600mgを分割投与。1日1,200mgまで増量可
    3)うつ病・うつ状態:1日150~300mgを分割投与。1日600mgまで増量可
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日25~300mgを分3
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日25mgを分3
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日25mgを分1。HD患者ではHD日はHD後

グラマリール(一般名:チアプリド)

ベンザミド系抗精神病薬:(今日の治療薬2020,p.863)

腎機能低下時の用法・用量(チアプリド)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日75~150mgを分3。パーキンソニズムに伴うジスキネジアの患者では、1日1回25mgから開始
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    1日50~75mgを分2~3
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1日25~50mgを分1

ウインタミン、コントミン、(一般名:クロルプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い」。(今日の治療薬2020,p.859)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)
    第1世代抗ヒスタミン薬のプロメタジンと類似構造(全く同じ三環)を持つ。(実践薬学2017,p.416)
  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

ウインタミン細粒(フェノールフタリン酸塩、10%)
コントミン糖衣錠、筋注
(劇薬:12.5mg錠、25mg錠を除く)

ヒルナミン、レボトミン(一般名:レボメプロマジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(プロピル側鎖):
「鎮静作用強い。催眠作用もあり、少量で睡眠薬としても使用。注射剤は筋注で鎮静に使用」。(今日の治療薬2020,p.859)

  • 抗コリン作用有り。
    抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    レボメプロマジン:IR(CYP2D6)0.67、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

散(50%)
細粒(10%)
錠(5mg、25mg、50mg)
筋注(塩酸塩、25mg/1mL)
(劇薬:5mg錠、25mg錠を除く)

ピーゼットシー、トリラホン(一般名:ペルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
「中力価。錐体外路症状は定型薬の中では少ない」。(今日の治療薬2020,p.860)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

散剤、注射剤(劇薬)

ペルフェナジンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    ペルフェナジン:CR(CYP2D6)0.86、(PISCS2021,p.50)

フルメジン、フルデカシン(一般名:フルフェナジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):
「抗幻覚妄想作用は強力」。(今日の治療薬2020,p.860)

  • 抗コリン作用リスクスケール、3点。(実践薬学2017,p.115)

錠剤を除く(劇薬)

ノバミン(一般名:プロクロルペラジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):(今日の治療薬2020,p.860)

抗コリン作用リスクスケール、2点。(実践薬学2017,p.115)
制吐作用有り。

ニューレプチル(一般名:プロペリシアジン)

フェノチアジン系抗精神病薬(ピペラジン側鎖):(今日の治療薬2020,p.861)

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(BPSD)

BPSDの原因となりうる心身の要因や環境要因を検討し、対処する。薬剤がBPSD を引き起こすこともあるため、関連が疑われる場合、まずは原因薬剤の中止を検討する。これらの対応で十分な効果が得られない場合は薬物療法を検討する。
(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia、行動・心理症状)

  • 薬物療法としては、症状に応じた薬剤の使用を検討する。
  • 抗精神病薬は、幻覚、妄想、焦燥、興奮、攻撃などの症状に対して使用を考慮してもよいが、抗精神病薬のBPSDへの使用は適応外使用であることに留意する。
  • 定型抗精神病薬(ハロペリドール[セレネース]、クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)の使用はできるだけ控え、
  • 非定型抗精神病薬 (リスペリドン[リスパダール]、オランザピン[ジプレキサ]、アリピプラゾール[エビリファイ]、クエチアピン[セロクエル]など)は必要最小限の使用にとどめる。
  • 抑肝散が使用されることがあるが、甘草が含まれるため、偽アルドステロン症による低カリウム血症に注意する。
  • 抗うつ薬が認知症のうつ状態に用いられる場合がある。三環系抗うつ薬は、認知障害のさらなる悪化のリスクがあるためできる限り使用は控えるべきである。
  • 抗精神病薬は、認知症患者への使用で脳血管障害および死亡率が上昇すると報告があるため、リスクベネフィットを考慮し、有害事象に留意しながら使用する。認知機能低下、錐体外路症状、転倒、誤嚥、 過鎮静等の発現に注意し、低用量から効果をみながら漸増する。効果が認められても漫然と続けず、適宜漸減、中止できるか検討する。半減期の長い薬剤は中止後も有害事象が遷延することがあるので注意が必要である。
  • 非定型抗精神病薬には血糖値上昇のリスクがあり、クエチアピンとオランザピンは糖尿病患者への投与は禁忌である。
  • ブチロフェノン系(ハロペリドールなど)はパーキンソン病に禁忌である。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは肝代謝であり、高齢者では通常量より少ない量から開始することが望ましい。また、てんかん発作の閾値の低下を起こすことがある。
  • 抗精神病薬や抗うつ薬の多くは主にCYPによる肝代謝を受け、 CYPの関与する相互作用に注意が必要である。
  • スルピリド[アビリット、ドグマチール]は、食欲不振がみられるうつ状態の患者に用いられることがあるが、パーキンソン症状や遅発性ジスキネジアなど錐体外路症状発現のリスクがあり、使用はできるかぎり控えるべきである。
  • スルピリドは使用する場合には50mg/日以下にし、腎排泄型薬剤のため腎機能低下患者ではとくに注意が必要である。
  • 褐色細胞腫にスルピリドは使用禁忌である。

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

【抗精神病薬】

  • フェノチアジン系抗精神病薬(クロルプロマジン[コントミン]、レボメプロマジン[ヒルナミン、レボトミン]など)
  • 非定型抗精神病薬 (オランザピン[ジプレキサ]、クロザピン[クロザリル])

【制吐薬として】

  • プロクロルペラジン[ノバミン]

別表3.代表的腎排泄型薬剤(精神・神経疾患治療薬)

  • 炭酸リチウム(気分安定薬)
  • スルピリド(ベンザミド系抗精神病薬)
  • リスペリドン(抗精神病薬、セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA))
  • アマンタジン塩酸塩(パーキンソン病治療薬、ドパミン遊離促進薬)
  • メマンチン塩酸塩 他(抗認知症薬(NMDA受容体アンタゴニスト))

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチリン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

免疫抑制薬(メトトレキサート、タクロリムス、シクロスポリンなど)

医薬品各種(免疫抑制薬)

疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs:Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs)

免疫抑制薬の相互作用の概要

未完

リウマトレックス(一般名:メトトレキサート)

免疫抑制薬(DMARDs):
「抗リウマチ薬のアンカードラッグ。5~6日/週の休薬が必須。ガイドラインで強い推奨」。(今日の治療薬2021,p.334)

腎機能低下時の用法・用量(メトトレキサート)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。
腎障害患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1)関節リウマチ:6mg/週で開始し、4~8週間経過しても効果不十分であれば8~16mg/週まで増量。1週間あたりの投与量を1~3回に分割し、12時間間隔で1~2日間かけて投与(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    低用量から開始し,最初から葉酸の併用が望ましい(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(関節リウマチ治療におけるメトトレキサート診療ガイドライン. 日本リウマチ学会2010)

プログラフ(一般名:タクロリムス)

免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬):
「わが国初の薬物。T細胞に特異的に作用し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制」。(今日の治療薬2021,p.337)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

食後の服用によって、空腹時及び食前の服用と比べて血中濃度が低下する。
柑橘類(CYP3A阻害作用)に注意する。

タクロリムスは、CYP3Aの基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、中等度である。
    CR(CYP3A4)0.66M、(PISCS2021,p.46)、CYP3A4基質薬

タクロリムスの定常状態平均血中濃度を求める

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算」

(どんぐり2019,p.91)

体重50kg、腎移植後の管理
タクロリムスカプセル1mg、1回3カプセル、1日2回朝夕、30日分

消失半減期(hr)= 7.93±5.16h(hr)
投与間隔/消失半減期=12/8=1.5<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=20±17.8%[成人腎移植患者9例に0.125~0.24mg/kg経口投与(カプセル)時]
塩係数(S)=0.98(小数点第3位繰上げ)、(H2O=18、(822.03-18)/822.03≒0.978)
1回投与量(Dose)=3mg
投与間隔(τ)=12時間
分布容積(Vd)=1.010±0.382L/kg
消失速度定数(Ke)=0.693/t1/2
=0.693/7.93≒0.087(/hr)

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.2×0.98×3mg/12hr)/(1.01L/kg×50kg(体重)×0.087hr)
=0.049/4.3935
=0.0112mg/L⇒11.2ng/mL

単回投与時の最高血中濃度(定常状態の血中濃度ふり幅)
=(F×S×Dose)/(Vd)
=(0.2×0.98×3mg)/1.01L/kg×50kg(体重)
=0.588/50.5
=0.0116mg/L⇒11.6ng/mL

定常状態での最高血中濃度(Css.max)
= Css.ave + 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=11.2+11.6×1/2
⇒17.0ng/mL

定常状態での最低血中濃度(Css.max)
= Css.ave - 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=11.2-11.6×1/2
⇒5.4ng/mL

プログラフの有効血中濃度:
5~20ng/mL
おおむね有効血中濃度の範囲に入っている。

ネオーラル(一般名:シクロスポリン)

免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬):
「T細胞に特異的に作用し、IL-2などのサイトカイン産生を抑制」。(今日の治療薬2021,p.336)

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune

シクロスポリンは、CYP2C8阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

シクロスポリンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 基質薬の経口クリアランスに対するCYP3A4の寄与率CRは、高度である。
    CR(CYP3A4)0.8S、(PISCS2021,p.46)

シクロスポリンは、P-gp阻害薬である

シクロスポリンは、P糖蛋白(P-gp:排出トランスポーター)阻害薬である。

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

シクロスポリンは、OATP1B1阻害薬である

シクロスポリンは、OATP1B1(取り込みトランスポーター)阻害薬である。
相互作用を受ける薬物(OATP1B1の基質):スタチン系薬物など。p.98

OATP1B1は肝臓の血管側膜に発現し、薬物の肝臓への取り込みを促進する。OATP1B1が阻害されると、一般に基質薬物の血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。

スタチン系薬は、OATP1B1の基質である。つまり、スタチン系薬はOATP1B1によって肝臓に取り込まれてその作用を発揮する。そこで両者が併用されていると、シクロスポリンのOATP1B1阻害作用によって、スタチン系薬が肝臓に取り込まれなくなる。その結果、スタチン系薬の血中濃度が大幅に上昇する。⇒詳細は「ネオーラルと併用できるスタチンはどれ?」pp.80-84

イムラン、アザニン(一般名:アザチオプリン)

免疫抑制薬[代謝拮抗薬(プリン代謝拮抗薬)]:
「6-MPのプロドラッグ。NUDT15遺伝子型で早期の重症骨髄抑制及び脱毛が予測可能」。(今日の治療薬2021,p.332)

イムラン:錠(50mg)

アロプリノールとの併用で、アザチオプリンの活性代謝物6-メルカプトプリン(6-MP)の代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼが阻害される。その結果、6-MPの血中濃度が上昇し、重篤な骨髄抑制が起きる可能性がある。(PharmaStyle No.9 June 2021,13)

セルセプト(一般名:ミコフェノール酸)

免疫抑制薬[代謝拮抗薬(プリン代謝拮抗薬)]:
「シクロホスファミドと同等の効果を有し、重篤な副作用は少ない。催奇形性のため妊婦には禁忌」。(今日の治療薬2020,p.329)

○腎移植後の難治性拒絶反応の治療
(既存の治療薬が無効又は副作用等のため投与できず、難治性拒
絶反応と診断された場合)
○下記の臓器移植における拒絶反応の抑制
腎移植、心移植、肝移植、肺移植、膵移植
○ループス腎炎

腎機能低下時の用法・用量(ミコフェノール酸)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

オルミエント(一般名:バリシチニブ)

免疫抑制薬(JAK阻害薬):
「JAK(1と2)の阻害薬。強力だが安全性情報は不十分。腎排泄性のため腎障害では減量」。(今日の治療薬2020,p.335)

既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)。

腎機能低下時の用法・用量(バリシチニブ)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

薬物間相互作用

グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(免疫抑制薬)

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)」

タクロリムス:CR(CYP3A4)0.66M、(PISCS2021,p.46)
シクロスポリン:CR(CYP3A4)0.8S、(PISCS2021,p.46)

タクロリムス、シクロスポリンは、共にCYP3A4基質薬(中程度に影響を受けやすい)である。
グレープフルーツジュースとは、併用注意(併用に注意すること)となっている。

ネオーラル添付文書:
「本剤の血中濃度が上昇することがあるので、本剤服用時は飲食を避けることが望ましい」。

プログラフ添付文書:
「腎障害等の副作用が発現することがある。本剤血中濃度のモニターを行い、必要に応じ減・休薬等の処置を行う」。

BG薬(ビグアナイド薬)インスリン抵抗性改善

ビグアナイド薬は、インスリン抵抗性を改善する

【参考資料】糖尿病診療ガイドライン2019/一般社団法人日本糖尿病学会
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、ビグアナイド薬の特徴について、次のようにまとめている。

「欧米での第一選択薬となっている。肝臓からのブドウ糖放出抑制や、末梢組織でのインスリン感受性促進作用により効果を発揮し、肥満2型糖尿病患者では、大血管症抑制のエビデンスもある。まれに重篤な乳酸アシドーシスの起こる危険があり、適応患者を見極める必要がある」。p.72

ビグアナイド薬の血糖降下作用は、SU薬と同等あるいはそれ以上である

「ビグアナイド薬はインスリン抵抗性改善薬として、肝臓からのブドウ糖放出の抑制および筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を高める作用を有している。SU薬やチアゾリジン薬と同等あるいはそれ以上の血糖降下作用を示すが、単剤では低血糖を起こしにくく、また体重も増えにくいという利点がある」。(糖尿病診療ガイドライン2019,p.72)

ビグアナイド(BG)類は、「主に肝臓での糖新生を抑制する。高齢者では肝・腎機能を確認し、慎重投与する」。(今日の治療薬2020,p.381)

メトホルミンは、欧米での第一選択薬になっている

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、次のように述べている。

「メトホルミンには肥満2型糖尿病患者に対する大血管症抑制のエビデンスがあり経済性にも優れるため、欧米の主要なガイドラインの第一選択薬として推奨されている」。p.72

つまり、「2型糖尿病の診断と同時または診断後早期に、有効性、安全性、費用対効果の面からビグアナイド薬のメトホルミンを第一選択薬として開始することを推奨している」。p.70

ただし、「2型糖尿病の病態やライフスタイルが異なる日本では、第一選択薬を特に指定せず、病態に応じた薬剤選択を推奨している」。p.70

乳酸アシドーシス(重篤な副作用)

乳酸アシドーシス[私の治療]日本医事新報社(2019年5月)
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=12363

「ビグアナイド薬は肝細胞のミトコンドリア膜に結合し,酸化的リン酸化を阻害することによりTCA(tricarboxylic acid)サイクルを低下,NADH/NAD+比を上昇させ,乳酸生成を亢進すると考えられている。また,ビグアナイド薬の血糖降下作用機序のひとつに肝臓での糖新生の抑制がある。それがピルビン酸の蓄積につながり,乳酸増加を促す一因となっている」。

乳酸アシドーシスの主な初期症状(実践薬学2017,p.346)

  • 悪心・嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状
  • 筋肉痛、倦怠感
  • アセトン臭を伴わない過呼吸

症状としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、けいれんなどが起こる。
さらに症状が進行すると、過呼吸、脱水、低血圧、昏睡状態などの重篤な症状を引き起こす。
そして死に至ることもある(致死率50%)。

「BG類はフェンホルミンで乳酸アシドーシスの副作用により死者が出たことから1970年代以後使用されなくなっていたが、2000年以降メトホルミンのインスリン抵抗性改善作用が注目され、復権を果たした」。(今日の治療薬2019,p.363)

フェンホルミン(脂溶性)とメトホルミン(水溶性)の違い

「実践薬学2017」p.348は、「メトグルコは、同じビグアナイド薬だけれど、問題となったフェンホルミンとは別物と考えた方がいい」としている。
そして、両薬剤間で乳酸アシドーシスの発症頻度に差があることについて、次のようにまとめている。

フェンホルミン(脂溶性)は、置換基が大きい。
メトホルミン(水溶性)には、NH基が多く存在しており水素結合を生じやすい。

「(脂溶性の)フェンホルミンはミトコンドリア膜に結合しやすくなり、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化反応を阻害して、乳酸アシドーシスに関与することとなる。対して、水溶性のメトホルミンはミトコンドリア膜に結合しにくい。これが両薬剤での乳酸アシドーシスの発症頻度の差をもたらしていると考えられる」。p.348

メトグルコの体内での動きをトレースしてみる

「日本腎臓病薬物療法学会誌 特別号(通称:グリーンブック)」(2年に1回会員に配布(非売品))
腎機能別薬剤投与方法一覧や体内動態パラメータなどの情報有り
参照)実践薬学2017,pp.91-93

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(糖尿病治療薬)

高齢者糖尿病では安全性を十分に考慮した治療が求められる。特に75歳以上やフレイル・要介護では認知機能や日常生活動作(ADL)、サポート体制を確認したうえで、認知機能やADLごとに治療目標を設定※すべきである。
※2016年に日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会により高齢者の血糖コントロール目標(HbA1c値)が制定。(糖尿病治療薬)

  • 高齢者では、生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら、低用量から使用を開始するなど、慎重に投与する。
  • 高齢者はシックデイに陥りやすく、また低血糖を起こしやすいことに注意が必要である。
  • インスリン製剤も、高血糖性昏睡を含む急性病態を除き、可能な限り使用を控える。
  • SU薬(グリメピリド[アマリール]、グリクラジド[グリミクロン]、グリベンクラミド[オイグルコン、ダオニール]など)のうち、グリベンクラミドなどの血糖降下作用の強いものの投与は避けるべきであるが、他のSU薬についてもその使用はきわめて慎重になるべきで、低血糖が疑わしい場合には減量や中止を考慮する。
    SU薬は可能な限り、DPP-4阻害薬への代替を考慮する。
  • メトホルミン[グリコラン、メトグルコ]では低血糖、乳酸アシドーシス、下痢に注意を要する。
  • チアゾリジン誘導体(ピオグリタゾン[アクトス])は心不全等心臓系のリスクが高い患者への投与を避けるだけでなく、高齢患者では骨密度低下・骨折のリスクが高いため、患者によっては使用を控えたほうがよい。
  • α-グルコシダーゼ阻害薬(ミグリトール[セイブル]、ボグリボース[ベイスン]、アカルボース[グルコバイ])は、腸閉塞などの重篤な副作用に注意する。
  • SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン[スーグラ]、ダパグリフロジン[フォシーガ]、ルセオグリフロジン[ルセフィ]、トホグリフロジン[デベルザ、アプルウェイ]、カナグリフロジン[カナグル]、エンパグリフロジン[ジャディアンス])は心血管イベントの抑制作用があるが、脱水や過度の体重減少、ケトアシドーシスなど様々な副作用を起こす危険性があることに留意すべきである。
    高度腎機能障害患者では効果が期待できない。
    また、中等度腎機能障害患者では効果が十分に得られない可能性があるので投与の必要性を慎重に判断する。
    尿路・性器感染のある患者には、SGLT2阻害薬の使用は避ける。
    発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。
  • インスリン製剤やSU薬以外でも複数種の薬剤の使用により重症低血糖の危険性が増加することから、HbA1cや血糖値をモニターしながら減薬の必要性を常に念頭においておくべきである。
  • SU薬やナテグリニド[ファスティック、スターシス]は主にCYP2C9により代謝されるので、CYP2C9阻害薬との併用に注意する。
  • SGLT2阻害薬は脱水リスクの観点から利尿薬との併用は避けるべきである。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(糖尿病治療薬)

  • メトホルミン塩酸塩(ビグアナイド薬、メトグルコ)
  • シタグリプチンリン酸塩水和物(DPP-4阻害薬、グラクティブ、ジャヌビア)
    アログリプチン安息香酸塩(DPP-4阻害薬、ネシーナ) 他

医薬品各種(ビグアナイド薬)

メトグルコ(一般名:メトホルミン)

「メトグルコで最も多い下痢や悪心などの消化器症状の副作用は、用量依存的に増加する」。(実践薬学2017,p.349)

しかしながら、乳酸アシドーシスの発現頻度に用量依存性はみられない。(重要⇒下記)

高用量(1000mg以上)のメトホルミンはグルカゴン抑制薬に分類される

「メトホルミンのHbA1c低下作用はスルホニル尿素(SU薬)と並んで「強い」」。
その最も重要な作用機序は「糖新生抑制」にある。(実践薬学2017,p.341)

メトホルミンはグルカゴン拮抗作用を有する。
メトホルミンの効果を発揮するには、しっかりとした投与量を確保する必要がある。

つまり、「メトホルミンは1000mg以上の高用量においては、用量依存的にインスリン拮抗ホルモンであるグルカゴンの肝臓での働きを阻害」して糖新生を抑制する。
その結果、HbA1cを強力に低下させる。(実践薬学2017,p.343)

メトホルミンの主な作用機序(実践薬学2017,p.343図1)

  • 肝臓での糖新生の抑制(最も重要)
  • インスリン抵抗性の改善
  • 小腸における糖吸収抑制

メトホルミンによるGLPー1分泌増加メカニズム

1)「メトホルミンは、ASBT(消化管のナトリウム依存性胆汁酸輸送体)に直接作用することで胆汁酸の再吸収を抑制する」。
2)「胆汁酸が小腸L細胞に発現するTGR5(G蛋白共役輸送体)を活性化し、GLP-1の分泌を促進する」。(同上、p.344図2)

GLP-1(インクレチンの一種):「血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進するとともに、膵α細胞からの過剰のグルカゴン分泌を抑制する」。(同上、p.379-380)

メトホルミンの乳酸アシドーシス発現リスクは低い

メトホルミンは、ビグアナイド薬の中では乳酸アシドーシスを起こす率は低いものの、「まれに乳酸アシドーシスが起こる危険があるため、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提」とする。(糖尿病診療ガイドライン2019,pp.72-73)

「メトホルミンの乳酸アシドーシスの発生頻度は年間10万人に1~7人程度だ。また、比較試験やコホート研究からは、他の血糖降下薬と比べてメトホルミンで乳酸アシドーシスの発現リスクが上昇する、乳酸の血中濃度が上昇するといったエビデンスは認められていない」。(実践薬学2017,pp.347-348)

乳酸アシドーシスを防ぐには、禁忌や慎重投与例に投与しないことが大切

「実践薬学2017」では、大日本住友製薬配布の資料の分析結果を基に、次のようにまとめている。

メトホルミンによる乳酸アシドーシスは、低用量から高用量まで幅広く分布しており、用量依存的な傾向はみられない。

そしてそのほとんどは、添付文書の禁忌や慎重投与に該当する症例となっている。p.349

資料の分析結果を改めて確認すると、「目を引くのが脱水だ。脱水が懸念される場合には、シックデイなどで食事が取れないようなときと同様に、休薬(または中止)してもらう必要がある。また、利尿薬やSGLT2阻害薬との併用には十分に注意する」。p.351

「さらに、注意すべきは飲酒、特に「飲み過ぎ」だ。
飲酒は脱水を招くだけではなく、肝臓における乳酸の代謝能を低下させる。故に乳酸がたまりやすくなる」。p.351

「「禁忌症例には交付しない」、「禁忌状態では休薬(中止)させる」ことができれば、乳酸アシドーシスを回避できる」。
「初期症状のアナウンスよりもむしろ、乳酸アシドーシスを回避するための対策が大事」である。p.353

「糖尿病診療ガイドライン2019」は、禁忌事項について次のようにまとめている。

「eGFRが30(mL/分/1.73m2)未満の場合や、脱水、脱水状態が懸念される下痢、嘔吐などの胃腸障害のある患者、過度のアルコール摂取の患者、高度の心血管・肺機能障害がある患者、外科手術後の患者への投与は禁忌とされている」。p.73

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(80~100%)、減量法の記載無し。
中等度以上の腎機能障害、透析患者(腹膜透析を含む)は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日500mgを分2~3、食直前又は食後より開始し、維持量は1日750~1,500mg、最大1日2,250mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    添付文書では中等度以上の腎機能障害(一般的にCCr<60mL/min)では腎臓における本剤の排泄が減少するため禁忌となっているが、メトホルミンの適正使用に関するRecommendationによると、「eGFR30未満の場合には禁忌.eGFRが30~45の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与」
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    禁忌
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌(透析患者(腹膜透析を含む)では高い血中濃度が持続するおそれがある)

メトホルミン最高用量の目安(2019年6月添付文書改訂)

患者の状態により適宜増減するが、1日最高投与量は2,250mgまでとする。(以下、メトグルコ添付文書)

「中等度の腎機能障害のある患者(eGFR 30mL/min/1.73m2以上60mL/min/1.73m2未満)では、メトホルミンの血中濃度が上昇し、乳酸アシドーシスの発現リスクが高くなる可能性がある」。

その場合の1日最高投与量の目安は、以下のとおりである。

推算糸球体濾過量(eGFR)(mL/min/1.73m2)⇒ 1日最高投与量の目安
45≦eGFR<60 ⇒ 1,500mg
30≦eGFR<45 ⇒ 750mg

抗不整脈薬(Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ)

心房細動に対する抗不整脈薬の実際

心房細動に対する治療法には、薬物治療とカテーテルアブレーションがある。薬物治療が優先されるが、カテーテルアブレーションの適応となる患者においては積極的に考慮してもよい。心房細動に対する薬物治療としては、まずは抗凝固療法を考慮する。次のステップとして、以前は洞調律維持療法と心拍数調節療法が同列で推奨されていたが、近年では心拍数調節療法のほうが洞調律維持療法よりも優先順位が高くなっている。
(不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.65)

  • 心拍数調節(レートコントロール)
  • 洞調律維持(リズムコントロール)

頻脈性⼼房細動に対する⼼拍数調節療法

⽬標安静時⼼拍数<110/分(徐脈傾向に注意)
(不整脈薬物治療ガイドライン2020,pp.65-68,図16)

  • ⼼機能低下(LVEF < 40%)
    [急性期]:ランジオロール静注→ジゴキシン静注(追加)
    [慢性期(長期)]:ビソプロロール経⼝/貼付、カルベジロール経⼝(少量から開始)
    →ジゴキシン経口(追加で使用)
  • ⼼機能温存(LVEF ≧ 40%)
    [急性期・慢性期(⻑期)]:ビソプロロール経⼝/貼付・カルベジロール経⼝・ベラパミル経⼝・ジルチアゼム経⼝(いずれかを通常量で使⽤)
    →ビソプロロール経⼝/貼付・カルベジロール経⼝・ベラパミル経⼝・ジルチアゼム経⼝
    (作⽤が異なる2剤を併⽤で使⽤)

慢性期の経口薬としては、β遮断薬が第一選択薬となる。(予後改善効果が認められる)
内因性交感神経刺激作用(ISA)のないβ遮断薬が用いられる。
ビソプロロールとカルベジロールの比較では、心臓(β1)選択性の高いビソプロロールのほうが心拍数抑制効果は強い。(高齢の心不全患者では、副作用として高度徐脈に注意する)
なお、ジギタリス製剤では、予後改善効果は認められていない。

非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬も使用される。
降圧効果に加えて房室伝導抑制による比較的強い徐拍効果を有する
陰性変力作用を併せもつため心機能が保たれた症例での使用に限られる
陰性変力作用は心機能が低下した症例ほど現れやすく、ベラパミルのほうがジルチアゼムよりも強い

ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較する

医薬品各種(抗不整脈薬)

「Sicilian Gambitが提唱する薬剤分類枠組(日本版)」(JSC2009,p.4)

ジソピラミド、シベンゾリン、ピルシカイニド、ジゴキシンの尿中未変化体排泄率(fu)は高く、ほとんど代謝を受けずに腎から排泄される。

非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬は、頻脈を伴う高血圧症に対して、β遮断薬と共に積極的適応となっている。
(高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019),p.77)←(児島2017,p.27)

リスモダン(一般名:ジソピラミド)

Naチャネル遮断薬(Ia群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「Naチャネルへの結合・乖離が遅い。夜間発症の心房細動に有利。抗コリン作用強め」。(今日の治療薬2020,p.658)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)
  • 抗コリン作用リスクスケール(実践薬学2017,p.115)にはリストアップされていない。
    しかしながら、下記のとおりMND(活性代謝物)の抗コリン作用が非常に強く、注意すべき薬物である。

腎機能低下時の用法・用量(ジソピラミド)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(50%以上)、減量法の記載無し

ジソピラミドの尿中未変化体排泄率(fu)≧50%
ジソピラミドの活性代謝物(CYP3A4により代謝):モノ-N-デアルキルジソピラミド(MND)、fu=17~30%ジソピラミドは腎排泄型薬物である。上記50+30=80%になる。

ジソピラミドにはノモグラムはないので、下記学会の投与量一覧が参考になる。(実践薬学2017,p.223-224)

なお、MND(活性代謝物)の抗コリン作用はジソピラミドの24倍と強力である。
抗コリン作用は、腎機能低下者や高齢者で副作用が現れやすいので、患者の訴えに耳を傾け過量投与に注意する。
添付文書の記載は以下のとおりである。

「本剤には抗コリン作用があり、その作用に基づくと思われる排尿障害、口渇、複視等があらわれることがあるので、このような場合には減量又は投与を中止すること」。(リスモダン添付文書)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3
  • CCr(20~50mg/dL未満)
    1日150~200mgを分1~2
  • CCr(20mg/dL未満)
    1日100mgを分1
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1日100mgを分1
  • リスモダンR錠:1日300mgを分2(CCr≧60mg/dLの場合)。
  • リスモダンR錠:徐放性製剤のため用量調節できないので使用を推奨しない(CCr<60mg/dL未満の場合)。
  • リスモダンR錠:透析患者を含む重篤な腎機能障害のある患者は禁忌(CCr<15mg/dL未満の場合)。(腎排泄で徐放性製剤のため適さない)

ジソピラミドも、シベンゾリン同様に低血糖、そしてQT延長に注意する。

シベノール(一般名:シベンゾリン)

Naチャネル遮断薬(Ia群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「Naチャネルへの結合・乖離が遅い。多くの標的チャネル、受容体に作用。抗コリン作用中程度」。(今日の治療薬2020,p.659)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

腎機能低下時の用法・用量(シベンゾリン)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(60%)、減量法の記載無し(透析中の患者は禁忌)。

(以下、実践薬学2020,pp.218-222)

シベンゾリンを高齢者に投与する場合、たとえ腎機能に異常がなくても、初期投与量150mg/日を目安とすべきである。(通常用量:300mg/日)

シベノールの発売(1991年1月)以来、高齢の患者において、シベンゾリンの血中濃度上昇を伴う心停止が発現し、致命的な経過をたどる症例が相次いだ。
メーカーは、「添付文書の改訂」(2012年3月)を行って対応した。
現在の添付文書で該当部分を確認すると以下のとおりである(2020/06/05)。

「高齢者では、肝・腎機能が低下していることが多く、また、体重が少ない傾向があるなど副作用が発現しやすいので、少量(例えば1日150mg)から開始するなど投与量に十分に注意し、慎重に観察しながら投与すること」。(シベノール添付文書)

ところが、その後も新たな症例が発生した。
そこでメーカーは「適正使用のお願い」(同年7月)を作成して、そのなかに、「腎機能(CCr)を指標としたシベンゾリン初期投与ノモグラム」(CCr値+体重を加味している)を掲載した。

同ノモグラムによれば、通常用量である300mg/日投与の対象となる患者は、「CCr≧80+体重≧70kg」となっている。
これは、一般的にCCr値が低下している高齢者(70歳以上)ではほとんど該当しない数値である。

同ノモグラムからは、特に高齢者(70歳以上)では、初期投与量として150mg/日以下を目安とすべきと読み取れる。
下記「日本腎臓病薬物療法学会」の基準よりも厳しい用量設定となっている。

つまり、特に高齢者においては、CCr値≧60mg/dL以上でも常用量(1日300mg)の投与はほぼあり得ないと考えるべきである。

そうした中で、再度「適正使用のお願い」が発出(2015年12月)された。
明らかな腎機能低下がみられない高齢者における症例が複数例報告されたためである。
心停止・心肺停止に至った3例で、いずれも70歳代、体重50kg台、シベンゾリン投与量は300mg/日であった。

やはり、高齢者においては初期投与量を減量することが大切である。

参考)「CKDのステージ分類とeGFRを指標としたシベンゾリン初期投与量」というツールもある。
ただし、これはあくまでも「CKDのステージ分類」であるから、体表面積1.73m2で補正されている点に注意する必要がある。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日300mgを分3、1日450mgまで増量可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1回50mgを1日1~2回
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1日1回50mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    禁忌 (低血糖などの重篤な副作用を起こしやすい)

シベンゾリンと低血糖、そしてQT延長

シベンゾリン(腎排泄型薬物)の「過剰投与を続けると、心抑制や精神神経系の副作用が発現しやすい。特に高齢者では注意が必要だ」。
シベンゾリンやジソピラミドが「過剰になると薬の分布が変化してしまう」。
シベンゾリンなどが「膵臓に分布するようになると、Kチャネル遮断作用を有するために、低血糖を引き起こしてしまう」。

糖尿病における低血糖の発現は、不整脈や死亡リスクの上昇と関連することが知られている。
そして、低血糖の発現時にQT間隔の延長がみられることが明らかになっている。
さらにはTdPを引き起こし、突然死に至ることもある。

なお、シベンゾリンの分布容積は6~7L/kgと非常に大きい。
したがって、透析による除去はできず、低血糖よりも更に処置が難しくなる。(実践薬学2017,pp.219-220)

メキシチール(一般名:メキシレチン)

Naチャネル遮断薬(Ib群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「リドカイン塩酸塩参照→心抑制作用は少ない。急性心筋梗塞には現在推奨されていない。心房筋への効果は認められない。肝代謝」。(今日の治療薬2021,p.673)

  • メキシチール:カプセル(50mg、100mg)
  • メキシチール:点滴静注(125mg/5mL)

メキシレチンは、CYP1A2阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R-メキシレチン:CR(CYP2D6)0.33、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬
    S-メキシレチン:CR(CYP2D6)0.30、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6基質薬

メキシレチンの定常状態平均血中濃度を求める

(どんぐり2019,p.91)

40歳女性、体重40kg、痩せ気味、不整脈
メキシレチン塩酸塩カプセル100mg、1回1カプセル、1日3回毎食後、14日分

消失半減期(hr)= 10.35±3.2(hr)
投与間隔/消失半減期=8/10=0.8<3.0⇒定常状態がある

平均血中濃度(Css.ave) = (F×S×Dose/τ)/(Vd×Ke)

バイオアベイラビリティ(F)=0.83
塩係数(S)=0.84(小数点第3位繰上げ)、(HCl=35.5、(215.72-35.5)/215.72≒0.835)
1回投与量(Dose)=100mg
投与間隔(τ)=8時間
分布容積(Vd)=5.79L/kg
消失速度定数(Ke)=0.06/hr

平均血中濃度(Css.ave)
=(0.83×0.84×100mg/8hr)/(5.79L/kg×40kg(体重)×0.06hr)
=8.715/13.896
=0.63mg/L⇒0.63μg/mL

単回投与時の最高血中濃度(定常状態の血中濃度ふり幅)
=(F×S×Dose)/(Vd)
=(0.83×0.84×100mg)/5.79L/kg×40kg(体重)
=69.72/231.6
⇒0.30μg/mL

定常状態での最高血中濃度(Css.max)
= Css.ave + 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=0.63+0.30×1/2
⇒0.78μg/mL

定常状態での最低血中濃度(Css.max)
= Css.ave - 1/2×(F×S×Dose)/Vd
=0.63-0.30×1/2
⇒0.48μg/mL

メキシチールの有効血中濃度:
0.5~2.0μg/mL
おおむね有効血中濃度の範囲に入っている。

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算」

アスペノン(一般名:アプリンジン)

Naチャネル遮断薬(Ib群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「心房性不整脈にも有効。陰性変力作用が少ない。ベプリジルとの併用で効果増強」。(今日の治療薬2020,p.661)

  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)

タンボコール(一般名:フレカイニド)

Naチャネル遮断薬(Ic群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「強いNaチャネル遮断作用の他に、弱いKチャネル者遮断作用を有する。器質的心疾患には使いにくい。心房細動が粗動化することがある」。(今日の治療薬2021,p.674)

  • タンボコール:錠(50mg、100mg)
  • タンボコール:細粒(10%(100mg/g)
  • タンボコール:静注(50mg/5mL)

フレカイニドは、CYP2D6の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    R-フレカイニド:CR(CYP2D6)0.19、(PISCS2021,p.50)
    S-フレカイニド:CR(CYP2D6)0.09、(PISCS2021,p.50)

併用禁忌(併用しないこと)⇒ミラベグロン(ベタニス、CYP2D6阻害薬(中程度))

サンリズム(一般名:ピルシカイニド)

Naチャネル遮断薬(Ic群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「わが国で開発され、使用頻度が高い。pureなNaチャネル遮断薬で心外性副作用が比較的少ない。心房細動を粗動化することがある」。(今日の治療薬2021,p.675)

サンリズム:カプセル(25mg、50mg)
サンリズム:注射液(50mg/5mL)

腎機能低下時の用法・用量(ピルシカイニド)

  • 「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
    尿中未変化体排泄率(90%)、減量法の記載無し。

サンリズムの添付文書には、腎機能(クレアチニンクリアランスCCrなど)に対応した投与量は記載されていない。
ただし、ピルシカイドには、「腎機能(CCr)を指標としたピルシカイニド初期投与ノモグラム」(CCr値+体重を加味している)がある。(実践薬学2017,p.224)

⇒日本循環器学会/日本TDM学会合同ガイドライン(2013-2014年度合同研究班報告)
「2015年度循環器薬の薬物血中濃度モニタリングに関するガイドライン」p.36より

同ノモグラムによれば、通常用量である「1日150mg/分3」投与の対象となる患者は、「CCr≧80+体重≧70kg」となっている。これは、一般的にCCr値が低下している高齢者(70歳以上)ではほとんど該当しない数値である。(シベンゾリンと全く同じ基準である)

ただし、そのほか腎機能(CCr)に対応した投与量は、下記日本腎臓病薬物療法学会の方が厳しいようである。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日150mgを分3、1日225mgまで増量可
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1日1回50mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1日1回25mg
  • CCr(15mg/dL未満)
    1回25mgを48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    1回25mgを48時間毎より開始

Giusti-Hayton法による薬物投与設計

58歳男性、165cm、体重62kg
血清クレアチニン:1.3mg/dL
ピルシカイニド塩酸塩カプセル50mg、1回1カプセル
1日3回毎食後、14日分

Cockcroft-Gaultの式より
CCr={(140-58)/(72×(1.3+0.2))}×62kg
={82/108}×62
=47.07⇒47.1

尿中未変化体排泄率(経口時)の記載無し
尿中未変化体排泄率(静注時):fu=90%

補正係数(G)=1-fu×(1-対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr)
=1-90%×(1-47.1/100)
=52.39⇒52%

  1. 投与量を減量する方法
    腎機能低下患者の投与量=150mg/日×52%
  2. 投与間隔を延長する方法
    腎機能低下患者の投与間隔=8hr÷0.52=15hr

1回25mgを1日3回または、
1回50mgを1日2回投与が望ましい。

そのほか

ピルシカイニドの半減期は、腎機能(CCr)の低下に伴って大幅に延長する。
したがって、「潜在的に腎機能の低下した高齢者では定常状態になるまでに時間を要し、かつ血中濃度が高まる恐れがある」。
添付文書には、以下のとおり記載されている。(サンリズム添付文書)

  • 50≦Ccr:半減期は腎機能正常例とほぼ同じ。
  • 20≦Ccr<50:半減期は腎機能正常例に比し約2倍に延長する。
  • Ccr<20:半減期は腎機能正常例に比し約5倍に延長する。

ピルシカイニドは、Naチャネル以外の阻害作用を有しない。
したがって、副作用として、 房室ブロックやQRS幅増大などの循環器障害をいきなり引き起こすことがある。
注)シベンゾリン:低血糖など先行する症状が有る、ジソピラミド:低血糖、抗コリン作用など先行する症状が有る。

インデラル(一般名:プロプラノロール)

β遮断薬(Ⅱ群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「各種の薬物相互作用に注意」。(今日の治療薬2020,p.614)

アンカロン(一般名:アミオダロン)

Kチャネル遮断薬(Ⅲ群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「多面的作用による卓越した効果、心機能低下にも使用可能。経口では薬効発現に数週間かかる。特有の副作用あり。長期的には間質性肺炎、甲状腺機能障害に特に注意」。(今日の治療薬2021,p.677)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)

【効能又は効果】
生命に危険のある下記の再発性不整脈で他の抗不整脈薬が無効か、又は使用できない場合
心室細動、心室性頻拍
心不全(低心機能)又は肥大型心筋症に伴う心房細動
(アンカロン錠の添付文書)

錠剤:毒薬、注射:劇薬

アミオダロンの血中濃度半減期は極めて長い

血中濃度半減期が極めて長い⇒消失速度定数(ke)と血中濃度半減期(T1/2)⇔ 消失半減期(生物学的半減期)

アミオダロンは、脂肪への分布が大きく、分布容積は70~621L/kgにもなる。
アミオダロンの半減期(30~50日)は非常に長く、定常状態に達するまで約250日かかる。
活性代謝産物Nーデスエチルアミオダロンの半減期(41~62日)も非常に長い。
ただし、ワルファリンとの併用によるINRの延長や重大な出血は数日で現れることがあり注意を要する。

そのほかの副作用モニタリングピリオド(監視期間)としては、投与直後よりも、併用後2~3週間から定常状態に達する250日前後までを考えるのが妥当である。

肝消失型薬物であり、尿中未変化体排泄率は0%である。
活性代謝物の一つであるNーデスエチルアミオダロンにはアミオダロンと同等の活性があるものの、腎機能低下においては減量を必要としない。

また、CYP阻害薬でもあり、P-gp阻害薬でもある。

アミオダロンは、CYP2C9阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)
1)アミオダロンは、中程度のCYP2C9阻害薬であり、ワルファリンは、CYP2C9基質である。

ワルファリン服用患者にアミオダロンを併用開始後、数日でINRの延長がみられ、重大な出血が生じることがある。(PISCS2021,p.152)

アミオダロンがCYP2C9を阻害することによって、ワルファリンの血中濃度が上昇して抗凝固作用が増強する。
アミオダロン及びその活性代謝産物(N-デスエチルアミオダロン)の血中半減期は、いずれも非常に長く、定常状態に達するには数か月を要する。
それにもかかわらず、ワルファリンとの併用による副作用(INRの延長や重大な出血)が数日で出現することから、アミオダロンによるCYP2C9阻害作用は、定常状態での濃度よりも低い濃度で発現するものと考えられる。
なお、アミオダロンによるワルファリンの抗凝固作用増強の程度は、未変化体濃度よりも活性代謝産物(N-デスエチルアミオダロン)の濃度により相関している。
また、アミオダロンの副作用である甲状腺機能亢進が、ワルファリンの抗凝固作用をさらに増強することも考えられる。(PISCS2021,p.152)

「併用注意(併用に注意すること)
ワルファリン(抗凝血剤)
プロトロンビン時間の延長、重大な又は致死的な出血が生じることが報告されているため、抗凝血剤を1/3~1/2に減量し、プロトロンビン時間を厳密に監視すること。
本剤によるCYP2C9阻害が考えられる。また、甲状腺機能が亢進されると、抗凝血剤の作用が増強されることが考えられる」。(アンカロン錠の添付文書)、プロトロンビン時間:プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)

さらに、アミオダロンを投与中止後もその作用は4か月程度持続するので、相互作用の影響を投与中止後も長期にわたってモニターすることが重要である。(PISCS2021,p.153)

参考:「アミオダロンの活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはCYP2C9を阻害し、WFの薬効本体であるS体の代謝を妨げてしまう」。(実践薬学2017,p.129)

2)アミオダロンは、中程度のCYP2C9阻害薬であり、カルベジロールは、CYP2C9基質である。

「アミオダロンの活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはCYP2C9を阻害し、β遮断作用の強いカルベジロールのS体の代謝を妨げてしまう」。(実践薬学2017,pp.129-131)

ただし、このことは添付文書やインタビューフォームでは読み取れない。
そうした中で、アンカロン錠の添付文書は以下のような記載になっている。

「併用注意(併用に注意すること)
カルベジロール(抗不整脈薬)
心刺激伝導抑制障害(徐脈、心停止等)があらわれるおそれがある。定期的な心電図モニターを実施する。
アミオダロン塩酸塩により、本剤の肝初回通過効果が減少し、血中濃度が上昇する可能性がある」。
(アンカロン錠の添付文書)

「カルベジロールはα遮断作用を有するβ遮断薬で、α遮断作用(血圧低下作用)はS体とR体による差はない。
ところが、β遮断作用はR体に比べS体の方が強い」。
したがって、アミオダロンとカルベジロールを併用すると、「カルベジロールS体の代謝が阻害され、β遮断作用が強く表れる」。

アミオダロンは、CYP2D6阻害薬である(弱い)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)
    (実践薬学2017,pp.146-147)

アミオダロンは、P-gp阻害薬である

  • 「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune
    アミオダロンは、P糖蛋白(P-gp:排出トランスポーター)阻害薬である。

(P糖蛋白(P-gp)は)小腸の管腔側膜に発現し薬物の吸収を抑制する一方、肝臓の胆管側膜および腎臓の尿細管側膜に発現し、薬物の胆汁排泄・腎排泄を促進する。(主に消化管・脳からの排出に影響)

(P糖蛋白の)阻害により、一般には基質薬物の吸収促進・排泄抑制が起こり、血中濃度の上昇、薬効・副作用の増強が起こると考えられる。一方、脳内への移行抑制にも働ことから、その阻害は、薬物の脳内移行を上昇させる可能性がある。

アミオダロンは、P糖蛋白(P-gp)阻害薬であり、ジゴキシンは、P-gp基質である

「併用注意(併用に注意すること)
ジゴキシン(抗不整脈薬)
ジゴキシン血中濃度が上昇し、臨床的な毒性(洞房ブロック、房室ブロック、憂鬱、胃腸障害、精神神経障害等)を生じることが報告されているため、本剤を投与開始するときはジギタリス治療の必要性を再検討し、ジギタリス用量を1/2に減量するか又は投与を中止すること。
本剤による腎外クリアランスの低下、消化管吸収の増加が考えられる。また、甲状腺機能の変化がジゴキシンの腎クリアランスや吸収に影響することなどが考えられる」。
(アンカロン錠の添付文書)

ワソラン(一般名:ベラパミル)

カルシウム拮抗薬(フェニルアルキルアミン系)、頻脈性不整脈(Vaughan Williams分類Ⅳ):
「心房粗・細動のレートコントロール、PSVT、左室起源特発性心室頻拍の停止などに用いる」。(今日の治療薬2020,p.667)

【効能・効果】
成人:
頻脈性不整脈(心房細動・粗動,発作性上室性頻拍)狭心症,心筋梗塞(急性期を除く),その他の虚血性
心疾患
小児:
頻脈性不整脈(心房細動・粗動,発作性上室性頻拍)

Ca拮抗薬ではあるが、血管に作用して血圧を下げる効果よりも、心臓に作用して心拍数を減らす効果の方が強い。
降圧薬としてではなく、頻脈性不整脈の薬として使用する。

  • 末梢血管抵抗を下げ,心仕事量を軽減する
  • 冠状動脈や末梢血管を拡張する
  • 心筋保護作用を示す
  • Ca++流入を抑え,抗不整脈作用を示す
  • ノルアドレナリンや電気刺激による実験的不整脈を抑制する
    (ワソラン錠添付文書)

「本剤は主として肝代謝酵素CYP3A4で代謝される。また、本剤はP‐糖蛋白の基質であるとともに、P‐糖蛋白に対して阻害作用を有する」。(ワソラン添付文書)

以下は、ダビガトランの場合(P‐糖蛋白(P-gp)関連、詳細はダビガトランの項へ)
参考(実践薬学2017,p.172)

併用注意(併用に注意すること):
「ダビガトランの抗凝固作用が増強することがあるので、ダビガトランエテキシラートの用量調節や投与間隔を考慮するなど、投与方法に十分注意すること」。(ワソラン添付文書)

注射:劇薬

ベラパミルの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.211-215、服薬指導例・薬歴記載例有り)

ベラパミルの「その他の副作用」の中に、「消化器:便秘,悪心・嘔吐(0.1~5%未満)」が挙げられている。(ワソラン添付文書)

その作用機序としては、以下のように考えることができる。

ベラパミル(Caチャネル遮断薬)は、心臓だけでなく消化管(消化管平滑筋)へのCa2+の流入も抑制する。
その結果、消化管が弛緩し、蠕動運動が抑制されて便秘が生ずる。p.213
したがって、ベラパミルと酸化マグネシウム(緩下薬)の併用は有り得る組み合わせである。

ここで、治療薬がベラパミルからピルシカイニドに変更になった場合を想定してみる。

ピルシカイニドには、薬理作用から生じる便秘はないと考えられる。
したがって、ベラパミルからピルシカイニドに変更になると、便秘は治まる可能性がある。
そこにもしも、酸化マグネシウムを併用し続けたならば、軟便あるいは下痢になるかもしれない。

酸化マグネシウムの服用を継続するかどうか、検討の余地がある。

ベラパミルは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、やや高度である。
    IR(CYP3A4)0.71SS、(PISCS2021,p.47)

ベラパミルは、P-gp阻害作用を有する

(実践薬学2017,pp.101-104)

ベラパミルのP-gpに対する作用は、キニジン、クラリスロマイシンそしてアミオダロンと比べて強くはない。

「しかし、患者の腎機能が低下するほど、ジゴキシンは“積極的に尿細管から分泌される”ようになる。つまりP-gpを介した排泄の寄与率が大きくなり、より注意が必要となる」。p.103

ヘルベッサー(一般名:ジルチアゼム)

カルシウム拮抗薬(ベンゾチアゼピン系)、高血圧+頻脈(Vaughan Williams分類Ⅳ):
「降圧効果は弱いが、徐脈作用は強い。【R】長時間効果持続、副作用に注意」。(今日の治療薬2020,p.626)

ジルチアゼム(ベンゾチアゼピン系)は、アムロジピンとは異なる非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬である。
アムロジピン(ジヒドロピリジン系)とベラパミル(フェニルアルキルアミン系)の中間的な特徴を持っている。
非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬は、頻脈を伴う高血圧症に対して、β遮断薬と共に積極的適応となっている。
(高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019),p.77)←(児島2017,p.27)

注射:劇薬

ジルチアゼムは、CYP3A阻害薬である(中程度)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 阻害薬の臨床用量におけるCYP3A4の阻害率IR(CYP3A4)は、高度である。
    ジルチアゼム:IR(CYP3A4)0.80S、(PISCS2021,p.47)、CYP3A4阻害薬

ベプリコール(一般名:ベプリジル)

カルシウム拮抗薬(そのほか系)、頻脈性不整脈・狭心症治療剤(Vaughan Williams分類Ⅳ):
「マルチ(Ca、Na、K)チャネル遮断薬。QT延長が顕著に現れる。多剤抵抗性の心房粗・細動に有効なことがあるが、催不整脈に注意」。(今日の治療薬2021,p.680)

  • 「QT延長を来す主な薬剤」(実践薬学2017,p.212)番外

【効能・効果】(ベプリコール添付文書)

  • 下記の状態で他の抗不整脈薬が使用できないか、又は無効の場合
    持続性心房細動
    頻脈性不整脈(心室性)
  • 狭心症

日本での使用頻度は、持続性心房細動(7日以上停止しない心房細動)によるものが最も多いと思われる。
ちなみに、抗不整脈薬として適応があるのは日本のみである。
海外(フランス、アメリカとベルギー)では抗狭心症薬として使用されている。

ベプリジルは、Kチャネル遮断作用を有している。
その結果、持続性心房細動に対する優れた除細動効果を発揮する。
ただし、この除細動効果が行き過ぎると、QT延長からさらにはTdP発症のリスクが高まることから、“諸刃の剣”ともいえる。
なお、ベプリジルには、除細動成功後の洞調律維持効果もある。

ベプリジルによるQT延長リスクを上昇させる可能性のある患者背景

1)低カリウム血症(併用薬など):

血清カリウム値4mEq/L以下ではTdPが起きやすくなる。
アルコールの取りすぎ:アルコール利尿によるカリウム喪失
利尿薬やグリチルリチン製剤(カリウム低下作用有り)との併用
そのほか血清カリウム値を低下させる薬剤やQT延長を来す恐れのある薬剤などとの併用

2)患者背景(徐脈、高齢者、女性):

徐脈(50拍/分未満)の患者は元々QT間隔が長い
高齢者では既にQT間隔が延長していることが多い
女性の方がTdPの発生率が高い

3)基礎心疾患、遺伝的要素

心不全や基礎心疾患がある場合
本人に失神の既往があったり、突然死の家族歴がある患者では、遺伝的にTdPを起こすリスクが高い

併用禁忌

  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬

HIVプロテアーゼ阻害薬などとは併用禁忌である(CYP阻害による)

ジゴシン(一般名:ジゴキシン)

ジギタリス製剤(強心配糖体):(今日の治療薬2020,p.681)

うっ血性心不全、心房細動による頻脈など

  • ハーフジゴキシン:錠(0.125mg)
  • ジゴキシン:錠(0.25mg)
  • ジゴキシン:錠(0.0625mg)
  • ジゴシン:散(0.1%、1mg/g)、錠(0.125mg、0.25mg)、エリキシル(0.05mg/mL)、注(0.25mg/1mL)

副作用機序別分類(ジギタリス中毒を考える)

(どんぐり2019,pp.76-77)

ジゴキシンなどのジギタリス製剤は、心筋細胞膜のNa+/K+ATPaseを阻害する。
そうすると、Na+/Ca2+交換輸送体の働きが低下する。
つまり、細胞内 Ca2+ を細胞外へくみ出す作用が低下する。
結果として、細胞内のCa2+濃度が上昇する。

  • 強心作用を発揮する
    細胞内のCa2+濃度が上昇して、心筋収縮力が増大することによる。
  • 心拍数を減少させる
    迷走神経の刺激作用と房室結節の興奮伝導抑制作用による。
  • 消化器症状(初期症状):悪心、嘔吐、食欲不振など
    ジギタリス製剤が、化学受容器引金帯(CTZ)を刺激して嘔吐中枢に作用することから起こる。
    ジギタリス中毒の多くで併発することが多い。
  • 精神神経症状:めまい、頭痛、錯乱、失見当識など
    迷走神経の刺激が関与している。
  • 眼症状:視覚異常(光がないのにちらちら見える、黄視、緑視、複視など)
    視細胞におけるNa+/K+ATPase阻害作用による。

〇〇さんが服用している薬は、効果が現れる量と副作用が出やすくなる量が近いため、ちょっとした増量で副作用が起きることがあります。
2錠飲んでしまうと、副作用を起こしやすい量になります。
処方箋の指示どおり1日1回1錠、服用してください。
また、決められた量を飲んでいても副作用が出る可能性があります。
ジギタリス中毒という副作用は、高齢者や脱水時などで起こりやすいので、特に畑仕事をする際は注意してください。
吐き気、めまい、不整脈などの症状が出た場合はジギタリス中毒の可能性がありますのですぐにご連絡ください。

腎機能低下時の用法・用量(ジゴキシン)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(75%)、減量法の記載無し。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    急速飽和療法:初回0.5~1.0mg、以後0.5mgを6~8時間毎。比較的急速飽和療法・緩徐飽和療法も可。
    維持療法:1日0.25~0.5mg
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    維持療法:0.125mgを24時間毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    維持療法:0.125mgを48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    維持療法:0.125mgを週3~4回

ジゴキシンは、P-gpを介した薬物相互作用研究のプローブ薬である

ジゴキシンは、P糖蛋白(P-gp)の基質として非常に重要な薬物である。
参考までに、同じくダビガトラン、フェキソフェナジンが重要である。

ジゴキシンとP-gp阻害薬との相互作用において、P-gp阻害薬の通常投与量での血中濃度(μmol/L)が高いほど、ジゴキシンの血中濃度上昇度(%)が高くなる。

各種P-gp阻害薬を、ジゴキシン阻害度(ジゴキシンの血中濃度上昇度の高い)順に並べると以下のとおりである。p.103

キニジン>クラリスロマイシン>アミオダロン>イトラコナゾール>プロパフェノン>ベラパミル>シクロスポリン>スピロノラクトン

上記の中で、キニジン、クラリスロマイシン、アミオダロンが特に重要である。

ジゴキシンは、P-gpの基質である

ジゴキシンはP-gpの基質であり、リファンピシンはP-gp誘導薬である。

リファンピシンとジゴキシンを併用(経口投与)すると、小腸においてリファンピシンによって誘導されたP-gpが、ジゴキシンを腸管内にくみ出すため、ジゴキシン血中濃度の上昇が抑えられる(AUCは有意に減少、BAは30%減少する)。p.105-106

ジゴキシンを心不全に用いる場合、その血中濃度は低め(0.5~0.8ng/mL)にコントロールされている場合が多い。そこにP-gp誘導薬が併用され、ジゴキシンの血中濃度が低下して有効域から外れると、運動耐容能の低下や心不全の悪化につながる恐れがある(併用注意)。

セントジョーンズワートは、P-gpの基質/CYP3A阻害薬である

上記と同様の理由で、P-gp誘導薬であるセイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort、セント・ジョーンズ・ワート)含有食品は、ジゴキシンと併用注意になっている。

「SJWは抗うつ効果に一定の評価のあるサプリメントである(海外では軽度から中等度のうつ病の治療に広く用いられている)。その最大の問題点は、多くの医薬品との相互作用が報告されているP-gpおよびCYPの誘導薬であるにもかかわらず、専門家の手を介することなく、コンビニエンスストアや通信販売で誰でも手にすることができてしまう。このことに尽きる」。p.106-107

ジゴキシンのイメージトレーシングに挑戦する

以下、(実践薬学2017,pp.101-102,256)

ジゴキシンのバイオアベイラビリティ(BA)は約60~80%である。小腸P-gpの影響を受けるため、消化管からの吸収は100%にならない。

分布容積7L/kgであり、非常に大きい。心筋(標的臓器)への移行性は大きいが、脂肪組織にはほとんど分布しない。肥満患者での投与量設定には注意を要する。(注:インタビューフォームでは、9.51L/kg)

注)ジゴキシンは、水溶性(極性が強い)で腎排泄型である。しかしながら、心筋組織への親和性が高く、Vd(分布容積)は大きい。p.256 ⇒「分布容積(Vd)」

透析に関して:透析で浄化できるのは血漿と間質液(細胞外液)だけである。したがって、細胞内液まで分布する(分布容積の大きい)ジゴキシンは、透析では除去できない。

一部は腸肝循環する。肝臓のP-gpが関与する。

ほとんど腎臓から未変化体のまま排泄される。したがって、CYP3A4による代謝は無視できる。そして、全身クリアランスは腎機能に依存する。

ジゴキシンは、血液脳関門(BBB)を通過する。ただし通常は、P-gpの働きによって脳内にはほとんど移行しない。P-gp阻害薬と併用すると、組織移行率が変動する。ジゴキシンが脳内に移行することによって、視覚異常などが出現することがある。

ジゴキシンの尿中への排泄は、糸球体濾過とP-gpを介する尿細管分泌による。ジゴキシンとP-gp阻害薬との相互作用は、主にこの過程で起こる。腎機能が低下すればするほど、その影響度は大きくなる。

ジゴキシンの感受性に影響する相互作用

実践薬学2017,pp.108-111

ジゴキシン錠の定常状態平均血中濃度を求める

⇒「定常状態における平均血中濃度の推算」

ラニラピッド(一般名:メチルジゴキシン)

ジギタリス製剤(強心配糖体):
「吸収は速やかでジゴキシンの約2倍」。(今日の治療薬2021,p.694)

うっ血性心不全、心房細動による頻脈など

腎機能低下時の用法・用量(メチルジゴキシン)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    急速飽和療法:初回0.2~0.3mg、以後1回0.2mgを1日3回。比較的急速飽和療法・緩徐飽和療法も可
    維持療法:1日0.1~0.2mg
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    維持療法:0.05~0.1mgを24時間毎
  • CCr(15mg/dL未満)
    維持療法:0.025~0.05mgを24~48時間毎
  • HD(血液透析)・PD(腹膜透析)
    維持療法:0.05mgを週3~4回

キニジン(一般名:キニジン)

Naチャネル遮断薬(Ia群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「キナアルカロイド。Naチャネルへの結合・乖離速度は中程度。IKr、IKs、Ito、IK1を抑制」。(今日の治療薬2021,p.671)

キニジンは、CYP2D6阻害薬である(強い)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    キニジン:IR(CYP2D6)0.99、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:フルコナゾール(ジフルカン)・CYP2C9、CYP2C19、CYP3A阻害薬
併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
併用禁忌:イトリゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬

プロノン(一般名:プロパフェノン)

Naチャネル遮断薬(Ic群抗不整脈薬、Vaughan Williams分類):
「Na活性化チャネル遮断。結合・乖離速度は中程度。主として上室性不整脈に使用。β遮断作用あり。心房細動が粗動化することがある」。(今日の治療薬2021,p.674)

  • 「添付文書に「非線形型薬物である」と明記されている薬剤」(どんぐり2019,p.52)
    プロパフェノンは、血中濃度急上昇型の非線形型薬物である。

(どんぐり2019,p.233)

代謝能に飽和現象が認められる。
100mg→300mgで、Cmax、AUCが約10倍になる。

飽和現象があるため、代謝されない血漿中の未変化体が増加する。
血中濃度上昇による血圧低下が起きる。
めまい、ふらつきや徐脈、動悸、PQ延長、QRS増大、QT延長が起きる。
血圧、脈拍、心電図を定期的に調べる。

プロパフェノンは、CYP2D6の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2D6のCRおよびIR値
    プロパフェノン:CR(CYP2D6)0.59、(PISCS2021,p.50)
    プロパフェノン:IR(CYP2D6)0.99、(PISCS2021,p.50)、CYP2D6阻害薬

併用禁忌(併用しないこと)⇒ミラベグロン(ベタニス、CYP2D6阻害薬(中程度))

心臓の働きと不整脈

(どんぐり2019,p.212)

心臓は、洞結節で生じた興奮(活動電位の発生)が刺激伝導系を伝わり収縮します。
洞結節が自発的に一定のリズムで活動電位を発生させることにより、心臓は正常に動きます。

不整脈とはこのリズムが乱れ、心拍が不規則になることをいいます。
血管や心臓などの筋肉収縮はCa2+が細胞内に流入することが引き金となり起こります。

ベラパミルは心筋のCaチャネルを遮断することで、心収縮力や洞結節・房室結節を抑制し、抗不整脈作用を示します。
ピルシカイニドは心筋細胞のNa+チャネル抑制作用により、細胞膜の活動電位の最大分極速度を抑制し、刺激の伝導速度を抑制することにより、抗不整脈作用を示します。

また、K+、Ca2+チャネルおよびα、βおよびムスカリン受容体などには影響を与えないため、活動電位時間に影響しないと考えられます。

怖い不整脈、怖くない不整脈

全ての不整脈が治療対象となるわけではない

不整脈とは、脈の打ち方がおかしくなる状態をいい、大きく分けて3つの種類がある。
脈の遅くなる「徐脈」、速くなる「頻脈」、さらに、脈が飛ぶ「期外収縮」である。

そうした中で、全ての不整脈が治療対象となるわけではない。

「無害な不整脈もあり、その際は何もせずに放置します。診察の結果、治療が必要となった場合は、薬物療法、カテーテルアブレーション、ペースメーカー治療の中から治療方法を選択します。それぞれの治療方法にメリット、デメリットがあり、すべてを考慮した上で、医師から患者さんに最適と思われれる治療方法を提示します。患者さんがそれに同意するようであれば、その治療方法を実行いたしますが、他の治療方法を希望される場合もあります」。
(引用:不整脈なら東京ハートリズムクリニック/https://www.tokyo-heart-rhythm.clinic/)

薬物療法と共に、非薬物療法が重要である

不整脈の治療では、薬物療法と共に、非薬物療法(カテーテルアブレーション、ペースメーカーや植え込み型除細動器などによる治療)が重要である。

薬物療法に反応しない不整脈をそのまま継続治療していると、ますます治療に反応しなくなる。
漫然と薬物投与を続けることは避けなければならない。

「不整脈非薬物治療ガイドライン」(2018年改訂版)では、症候性AF(心房細動)の場合、薬物療法を全く行うことなく最初からアブレーションを施行する場合もあり得るとしている。

心房細動は、脳梗塞のリスクが高い疾患である。
早期に薬物療法・非薬物療法を見極めることが大切となる。

「不整脈非薬物治療ガイドライン」(2018年改訂版)日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン 班長、筑波大学医学医療系循環器不整脈学教授 野上昭彦 先生

「今回、「不整脈非薬物治療ガイドライン」が8年ぶりに改訂された。カテーテルアブレーション(以下、アブレーション)治療の技術向上や植込み型心臓電気デバイスの進歩に伴い、不整脈非薬物治療が急速に発展したことを背景に、2018年改訂版では、最新のエビデンスを踏まえて内容が改められた。近年、増加が著しい心房細動(AF)に対するアブレーションの治療適応に関する記述では、症候性AFの場合、抗不整脈薬の投与を経ずにアブレーションを施行することも第一選択として妥当性があるとされた。また、AFに対するアブレーション周術期の抗凝固療法として、ダビガトラン継続投与もしくはワルファリン継続投与が推奨クラスⅠ、エビデンスレベルAと明記された」。
(引用:不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)改定のポイント(プラザキサ 製品紹介)
https://www.boehringerplus.jp/product-pages/prazaxa/product-description/guideline2018/interview/commentary)

心房細動の発症リスク

「心房細動は、再発する疾患として知られており、(一部略)薬物治療・非薬物治療を行いさえすれば治療が完結するものではないことを再認識する必要がある」。
「心房細動患者を診療していくうえで、心房細動自体の治療以外にも心房細動リスクの評価と管理が重要となる」。(日本薬剤師会雑誌,第73巻,第7号,p.18)

  • 介入不可能なリスク:
    年齢・性別・人種・遺伝的要因など
  • 修飾可能な因子:
    高血圧・糖尿病・肥満・睡眠呼吸障害・尿酸・喫煙・飲酒など

「肥満指数(BMI)の上昇は心房細動と有意な関連が認められている。(一部略)修正可能な危険因子の中で、心房細動の生涯リスクに影響を及ぼすもっとも顕著な危険因子は肥満である」。(不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.34)

グレープフルーツジュースとの飲み合わせ(抗不整脈薬)

⇒「グレープフルーツジュースとCa拮抗薬など(CYP3A阻害)」

Ca拮抗薬は、いずれもCYP3A基質薬である。
そしてその強さは、ジヒドロピリジン(DHP)系Ca拮抗薬と非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(フェニルアルキルアミン系:PAA、ベンゾチアゼピン系:BTZ)で異なる。

ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の中には、グレープフルーツジュースと併用した場合、AUCやCmaxが大幅に上昇する薬物がある。

ベラパミル(フェニルアルキルアミン系:PAA、BA22%)では、多少AUC、Tmaxの上昇がみられる。

「本剤の血中濃度を上昇させることがある。異常が認められた場合には,本剤を減量するなど適切な処置を行うこと。また、グレープフルーツジュースとの同時服用をしないよう注意すること」。(ワソラン添付文書)

ジルチアゼム(ベンゾチアゼピン系:BTZ、BA39%)では、AUC、Tmaxはアムロジピンよりも上昇せず、添付文書の注意書きも無い。

Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ

Vaughan Williams分類(1970年代前半の発表)は、「抗不整脈薬の分類法の標準として用いられてきた。この分類法は各種薬剤の薬理学的作用の特徴を簡潔に表現している点で優れており、多くの臨床家により利用されてきた」。(下記ガイドラインp.3)

「しかし、いくつかの問題点が指摘されて」おり、その改良を目指したSicilian Gambitは、「不整脈の発生機序に基づく論理的薬剤使用を推奨するもので、エビデンスに基づいたガイドラインとは根本的に異なるが、不整脈診療における意義と有用性は証明されつつあり、今回のガイドライン改訂にあたっても、その根幹となる概念である」。(同上p.3)

Sicilian Gambitには、従来含まれていなかった薬物(ジゴシン)を含めることができた。
また、日本のみで発売されている薬物も含んだ日本版が発表されている。
臨床的に有用な様々な情報が含まれており、今後の大規模臨床試験のエビデンス蓄積が期待されている。

「抗不整脈剤のVaughan Williams 分類」
http://cms.softsync.jp/rinshoyakuri/blog/docs/06_bunrui.pdf
http://cms.softsync.jp/rinshoyakuri/blog/docs/15_jinfuzen.pdf
(熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・平田純生 2014年12月作成)

「不整脈薬物治療に関するガイドライン」(2009年改訂版)【ダイジェスト版】
Guidelines for Drug Treatment of Arrhythmias(JCS 2009)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_kodama_d.pdf

QT延長に伴う多形性心室頻拍(TdP:torsade de pointes(トルサード・(ド・)ポワンツ))を考える

抗不整脈薬による催不整脈作用

抗不整脈薬の副作用として不整脈があることはよく知られている。
その中でも特に、QT間隔の延長をきたす抗不整脈薬では、重症化するとTdPを生じる場合があり注意が必要である。(以下、実践薬学2017,pp.202-209)

QT間隔の延長をきたす抗不整脈薬は、Ia群,Ic群,またはⅢ群(Vaughan Williams分類)に属している。
いずれも、Kチャネル遮断作用を有する薬物である。

そうした中で、ベプリジル(Ⅳ群)は、「Kチャネル遮断作用を有しており、投与量および濃度依存的に、QT延長に続くTdPのリスクを高めることが知られている」。
そこで、副作用を考える上では、ベプリジルは「Ⅳ群ではなくⅢ群と捉えた方が都合が良い」。

アミオダロン(Ⅲ群)は、Kチャネル遮断作用を有する薬物である。
ただし、Kチャネル(サブタイプ有り)の選択性そのほかの作用によって、TdPの発症率はベプリジルよりも低くなっている。

Ⅰ群薬(ジソピラミドやシベンゾリンなど)のTdP発症率は、ベプリジルよりも低いとされている。
ただし、治療域またはそれ以下でも発生することがある。

また、ベプリジルが専門医によって低用量でコントロールされているのに対して、Ⅰ群の薬物は、汎用薬として長期に用いられることが多い。
さらに、腎排泄型の薬物が多く、腎機能に応じた用量調節が欠かせない。
実臨床では、ベプリジルよりもむしろ注意すべき薬物と言える。

こうしたQT延長症候群の起因薬物の中には、抗不整脈薬以外に、三環系抗うつ薬、フェノチアジン系薬剤、特定の抗ウイルス薬、抗真菌薬などがある。

さらに、薬剤性のQT延長症候群に対して先天性QT延長症候群が有り、基礎に遺伝的要素を含んでいる。
また薬剤性においても遺伝的要素が指摘されている。

薬物動態学から

分布容積の大きな薬物の例(山村ほか2016,p.22など)

ジゴシン錠(一般名:ジゴキシン)、9.51L/kg
アンカロン錠(一般名:アミオダロン)、106L/kg
トリプタノール錠(アミトリプチリン)、15.0L/kg
トフラニール錠(一般名:イミプラミン)、11.1L/kg
パキシル錠(一般名:パロキセチン)、17.2L/kg
セレネース錠(一般名:ハロペリドール)、1,300L
ジプレキサ錠(一般名:オランザピン)、954L

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗コリン薬)

【抗不整脈薬】

  • ジソピラミド[リスモダン]

高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015に列挙されている抗コリン作用のある薬剤、Anticholinergic risk scale にstrongとして列挙されている薬剤およびBeers criteria 2015のDrugs with  Strong Anticholinergic Propertiesに列挙されている薬剤のうち日本国内で使用可能な薬剤に限定して作成。

  • 抗コリン作用を有する薬物のリストとして表にまとめた。
    列挙されている薬剤が投与されている場合は中止・減量を考慮することが望ましい。
  • 抗コリン系薬剤の多くは急な中止により離脱症状が発現するリスクがあることにも留意する。
  • 抗コリン作用を有する薬剤は、口渇、便秘の他に中枢神経系への有害事象として認知機能低下やせん妄などを引き起こすことがあるので注意が必要である。
  • 認知機能障害の発現に関しては、ベースラインの認知機能、電解質異常や合併症、さらには併用薬の影響など複数の要因が関係するが、特に抗コリン作用は単独の薬剤の作用ではなく服用薬剤の総コリン負荷が重要とされ、有害事象のリスクを示す指標としてAnticholi-nergic risk scale(ARS)などが用いられることがある。

別表2.その他の特に慎重な投与を要する薬物のリスト【ジギタリス】

  • ジゴキシン[ジゴシン、ハーフジゴキシン]
  • ジギタリス中毒
  • 0.125mg/日以下に減量する。
    高齢者では0.125mg/日以下でもジギタリス中毒のリスクがあるため、血中濃度や心電図によるモニターが難しい場合には中止を考慮する。

(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2005(日本老年医学会)、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015(日本老年医学会)より改変引用)

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗不整脈薬)

【不整脈治療薬】

  • シベンゾリンコハク酸塩
  • ジソピラミド
  • ピルシカイニド塩酸塩 他

【強心配糖体】

  • ジゴキシン
  • メチルジゴキシン 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP1A2

【基質】
チザニジン(中枢性筋弛緩薬、テルネリン)
ラメルテオン(メラトニン受容体作動薬、ロゼレム)
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、サインバルタ)

【阻害薬】
フルボキサミン(選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ルボックス、デプロメール)
シプロフロキサシン(ニューキノロン系薬)
メキシレチン(抗不整脈薬(Naチャネル遮断薬)、メキシチール)

【誘導薬】
なし

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

参考資料

薬物代謝酵素がかかわる薬物相互作用
ファルマシア Vol.50 No.7 pp.654-658(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

サイアザイド系利尿薬(フルイトランなど)

サイアザイド系利尿薬(概要)

サイアザイド系利尿薬は、<降圧>利尿薬として用いる。

サイアザイド利尿薬は、「腎臓でのNa再吸収を阻害することで、Naや水の排出を促進する作用」がある。
それによって、循環血液量を減らし血圧を低下させる。(児島2017,p.38)

長期使用による血管拡張作用も有する。
中等度の効力のある利尿薬であり、高血圧治療薬として用いられる。

「積極的適応がない場合の高血圧に対しては,最初に投与すべき降圧薬として,Ca拮抗薬,ARB,ACE阻害薬,利尿薬の中から選択する」。(JSH2014,p.45)
骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。

注)サイアザイド系とは、サイアザイド利尿薬(トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド)とサイアザイド類似薬(インダパミド)を合わせた分類を言う。
なお、添付文書などではチアジド系と表記されるが、一般的にはサイアザイド系と称されることの方が多い。

注)ループ利尿薬(ラシックスなど)など ⇒「ループ利尿薬(ラシックスなど)など」
注)カリウム保持性利尿薬(スピノロラクトンなど)⇒「カリウム保持性利尿薬」

糸球体におけるNaの再吸収

腎臓の糸球体では、血液中の老廃物や塩分を濾過して、1日およそ150L(リットル)の原尿を作っている。

この原尿の中には、老廃物以外に各種栄養素やさまざまな電解質も含まれている。
そこで、糸球体では、それらを再吸収することによって体内の水分量や電解質バランスなどを保っている。

その結果、体外に排出される尿量は、1日およそ1.5Lとなる。
つまり、原尿の約99%は再吸収されることになる。
再吸収が行われる場所とその量は以下のとおりである。(今日の治療薬2016)

場所ごとの再吸収率(%)は、文献によって異なるものの、近位尿細管>ヘンレ上行脚>遠位尿細管の順となっている。

【糸球体ろ過】

  • 近位尿細管(全体の60%)
  • ヘンレ上行脚(全体の30%)、ループ利尿薬
  • 遠位尿細管(全体の7%)、サイアザイド系利尿薬、スピロノラクトン

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(高血圧治療薬)

高齢者においても降圧目標の達成が第一目標である。
降圧薬の併用療法において薬剤数の上限は無いが、服薬アドヒアランス等を考慮して薬剤数はなるべく少なくすることが推奨される。
(高血圧治療薬)

  • Ca拮抗薬(アムロジピン[ノルバスク、アムロジン]、ニフェジピン [アダラートCR]、ベニジピン[コニール]、シルニジピン[アテレック]など)、ARB(オルメサルタン[オルメテック]、テルミサルタン [ミカルディス]、アジルサルタン[アジルバ]など)、ACE阻害薬(イミダプリル[タナトリル]、エナラプリル[レニベース]、ペリンドプリル[コバシル]など)、少量のサイアザイド系利尿薬(トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)が、心血管疾患予防の観点から若年者と同様に第一選択薬であるが、高齢患者では合併症により降圧薬の選択を考慮することも重要である。
  • α遮断薬(ウラピジル[エブランチル]、ドキサゾシン[カルデナリン]など)は、起立性低血圧、転倒のリスクがあり、高齢者では可能な限り使用を控える。
  • β遮断薬(メトプロロール[セロケン]など)の使用は、心不全、頻脈、労作性狭心症、心筋梗塞後の高齢高血圧患者に対して考慮する。
  • Ca拮抗薬の多くは主にCYP3Aで代謝されるため、CYP3Aを阻害する薬剤との併用に十分に注意する。
  • ACE阻害薬は、誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者には誤嚥予防も含めて有用と考えられる。
  • サイアザイド系利尿薬の使用は、骨折リスクの高い高齢者で他に優先すべき降圧薬がない場合に特に考慮する。
  • 過降圧を予防可能な血圧値の設定は一律にはできないが、低用量(1/2量)からの投与を開始する他、降圧による臓器虚血症状が出現した場合や薬物有害事象が出現した場合に降圧薬の減量や中止、変更を考慮しなければならない。
  • レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ARB、ACE阻害薬など)、利尿薬(フロセミド[ラシックス]、アゾセミド[ダイアート]、スピロノラクトン[アルダクトン]、 トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。(消炎鎮痛薬の項より引用)

医薬品各種(サイアザイド系利尿薬)

サイアザイド利尿薬は、〈遠位尿細管〉に作用してNaの再吸収を阻害することによって、Naや水の排出を促進する。

  • 利尿作用は弱いものの効果は長続きする。
  • 少量でも十分な降圧効果を発揮する。

ただし、サイアザイド利尿薬が降圧薬として単独で使用されることは少なく、現在では、特にARBとの合剤として盛用されている。

副作用として、低カリウム血症、高尿酸血症、高脂血症、耐糖能異常などがある。
また、トリクロルメチアジド[フルイトラン]など)とNSAIDsの併用により腎機能低下や低ナトリウム血症のリスクが高まるため、これらの併用はなるべく避けるべきである。

「降圧薬が血清尿酸値に及ぼす影響」(実践薬学2017,p.309)

  • サイアザイド系利尿薬が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。
  • ループ利尿薬が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇>である。
  • ARB/サイアザイド系利尿薬が尿酸値に及ぼす影響は、<上昇ないしは不変>である。

フルイトラン(一般名:トリクロルメチアジド)

サイアザイド利尿薬:
「わが国で多用」。(今日の治療薬,p.608)

高尿酸血症、高血糖症、電解質異常(低ナトリウム、低カリウム)、光線過敏症
高カルシウム血症(骨粗鬆症の積極的適応)

「骨粗鬆症患者ではそれ自体の治療が重要であるが,降圧薬治療が必要な際に,積極的適応となる降圧薬がない場合,サイアザイド系利尿薬が推奨される」。(JSH2014,p.95)

  • イルトラ配合錠:イルベサルタン(ARB)+トリクロルメチアジド(サイアザイド系利尿薬)

フルイトラン錠の切り込みは割線ではない

フルイトラン(2mg錠)は、淡赤色をした花びら形の錠剤で有名である。(1mg錠は白色)

錠剤の表面には十字に浅く「割線」もどきの線が入っている。
その裏には、もっとはっきりとした線が入っており、容易に半分に割ることができる。

ところが、これは「割線」ではない。
割線模様(割線のように見える模様)つまりデザインに過ぎない。

なぜならば、添付文書の“性状・剤形”欄には「淡赤色の花形の錠剤である」とあるのみで、「割線入り」とは明記されていないからである。
メーカーとして、「質量偏差試験や含量均一性試験によって、そこで割れば含量が半分になると保証」してはいないのである。(児島2017,p.39)

いずれにしても、2009年5月に1mg錠が発売されたため、半錠に分割した際の自家製剤加算はできなくなっている。
なおそれまでも、自家製剤加算の算定要件を完全に満たせていたかどうかは微妙なところであろう。

注)メイラックス半錠の自家製剤加算は算定できる?(DI Online)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/sekirara/201908/561741.html

【編集部追記】2019.8.20 20:15
本記事の内容について、社会保険診療報酬支払基金の審査委員を務める薬剤師から情報提供がありました。
支払基金では、半割しても問題ないことを薬剤師として確認した場合には、割線の有無にかかわらず自家製剤加算を算定可能として、全国的に統一を図る動きがあるとのことです。

ヒドロクロロチアジド(一般名:ヒドロクロロチアジド)

  • プロミネント配合錠:ロサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、ロサルヒド
  • エカード配合錠:カンデサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、カデチア
  • コディオ配合錠:バルサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、バルヒディオ
  • ミコンビ配合錠:テルミサルタン(ARB)+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)、テルチア
  • ミカトリオ配合錠:テルミサルタン80㎎(ARB)+アムロジピン(Ca拮抗薬)5㎎+ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)

ナトリックス(一般名:インダパミド)

サイアザイド類似(非サイアザイド)利尿薬:
「海外臨床試験で多用。脂質への悪化作用が少ない」。(今日の治療薬2020,p.608)

サイアザイド類似利尿薬は、サイアザイド骨格そのものは有していない。
側鎖の違いから、利尿作用によらないユニークな効果を示す。
つまり、直接的血管拡張作用と活性酸素(ヒドロキシラジカル)消去作用を有する。

海外での評価が高い。

イルトラ配合錠(イルベサルタン+トリクロルメチアジド)

プロミネント配合錠(ロサルタン+ヒドロクロロチアジド)、ロサルヒド

エカード配合錠(カンデサルタン+ヒドロクロロチアジド)、カデチア

コディオ配合錠(バルサルタン+ヒドロクロロチアジド)、バルヒディオ

ミコンビ配合錠(テルミサルタン+ヒドロクロロチアジド)、テルチア

ミカトリオ配合錠(テルミサルタン+アムロジピン+ヒドロクロロチアジド)

参考URL

フルイトランと私の長い付き合い ⇒フルイトランの販売元は塩野義製薬(株)

脂質異常症治療薬:フィブラート系薬物(特に中性脂肪TGを下げる)

フィブラート系薬物

フィブラート系薬物は、脂質異常症の治療薬であり、核内受容体PPARαに作用して脂質代謝を改善する。

フィブラート系薬物は、「肝臓で核内受容体PPARα(eroxisome proliferator-activated recetor α)を活性化することで脂質代謝を改善し、主に中性脂肪(トリグリセライド:TG)を減らし、HDLコレステロール(HDL-C)を増やす効果を発揮」する。(児島2017,p.71)

腎機能低下患者では横紋筋融解症の頻度が高くなる

以下に注意事項を示す。

  • 自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現
  • CK(CPK)上昇
  • 血中及び尿中ミオグロビン上昇
  • 血清クレアチニン上昇など

スタチン系とフィブラート系の「原則併用禁忌」を解除へ

スタチンは、強力なLDLコレステロール低下作用を有している。
それに対して、フィブラート系薬物は、中性脂肪(トリグリセライド:TG)を下げる効果が強い。

したがって、LDL-Cに加えてTGを同時に低下させたい場合、両剤の併用が考えられる。

しかしながら、従来の日本の添付文書では、腎機能に異常がある患者に対しては「原則併用禁忌」となっていた。
その理由は腎機能に関する臨床検査値に異常がみられる患者では、どちらの薬物も横紋筋融解症が現れやすいとされているからである。

これに対して、2018年9月25日(平成30)、下記のような対応が取られることになった。

「薬事・食品衛生審議会の医薬品等安全対策部会安全対策調査会(五十嵐隆座長)は25日、スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用について、腎機能に異常がある患者に対する「原則禁忌」を解除する方向で一致した」。(日本医事新報,2018-09-26付け)

「臨床経験からも、海外のデータからも、併用によって横紋筋融解症は増えていない」(同日の調査会で、動脈硬化学会からの参考人として出席した上田之彦氏(枚方公済病院)ら)とする日本動脈硬化学会の要望を受けた対応となったものである。

そして例えば、リピディル錠の添付文書は、以下のように改訂された(2018年10月)。

腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に,本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること.急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすい.やむを得ず併用する場合には,本剤を少量から投与開始するとともに,定期的に腎機能検査等を実施し,自覚症状(筋肉痛,脱力感)の発現,CK(CPK)上昇,血中及び尿中ミオグロビン上昇並びに血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与を中止すること.(リピディル錠添付文書より)

スタチン、フィブラート系薬物共に、ずっと使い続ける必要のある薬物である。
その間には相互作用のある薬物(抗菌薬や抗真菌薬など)と併用する機会があるかもしれない。
いつも変わらない薬でも、腎機能、横紋筋融解症あるいは併用薬など注意が必要である。

副作用まとめ

「フィブラート系では消化器症状が最も多く、次いで発疹や掻痒感などの皮膚症状が多い。横紋筋融解症、ミオパチー、肝障害などがみられる。腎機能低下時では蓄積された副作用が起こりやすい。ワルファリンやスルホニル尿素系血糖降下薬の作用を増強する」。(今日の治療薬2019,p.397)

医薬品各種(フィブラート系)

ベザトールSR(一般名:ベザフィブラート)

フィブラート系薬:
「Ⅱb、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ型高脂血症によく反応。HDL増加。腎排泄型」。(今日の治療薬2022,p.428)

ベザトールSR:徐放錠(100mg、200mg)

腎排泄型薬物

排泄率:投与量の69.1%
バイオアベイラビリティ:該当資料なし
油水分配係数:水にはほとんど溶けない、脂溶性

腎機能低下時の用法・用量(ベザフィブラート)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
尿中未変化体排泄率(70%)、減量法の記載有り。
人工透析患者(腹膜透析を含む)、腎不全などの重篤な腎疾患のある患者、SCr2.0mg/dL以上の患者は禁忌。

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日400mgを分2、朝夕食後
  • CCr(50~60mg/dL未満)
    1日1回200mg
  • CCr(15~50mg/dL未満)
    血清Cr2.0mg/dL以上は禁忌
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌

リピディル、トライコア(一般名:フェノフィブラート)

フィブラート系薬:
「核内受容体PPARαを活性化し、血中TG低下、HDL-C増加。腎排泄型」。(今日の治療薬2022,p.428)

リピディル:錠(53.3mg、80mg)

腎排泄型薬物

排泄率:投与量の64%
バイオアベイラビリティ:該当資料なし
(参考、ラット64%、イヌ39%)
油水分配係数:ほぼ完全に有機相に分配、脂溶性

相互作用が少ない(代謝酵素CYPの影響を受けないため)。

腎機能低下時の用法・用量(フェノフィブラート)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(60mg/dL以上)、常用量
    1日1回106.6~160mgを食後、最大1日160mg
  • CCr(15~60mg/dL未満)
    中等度以上の腎障害(目安として血清Cr値2.5mg/dL以上)では禁忌
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌

パルモディア(一般名:ペマフィブラート)

フィブラート系薬(選択的PPARαモジュレーター):
「核内受容体PPARα活性化作用が最強。強力なTG低下作用」。(今日の治療指針2022,p.428)

パルモディア:錠(0.1mg)

胆汁排泄型薬物

胆汁排泄型:「投与216時間後までの総放射能回収率(平均値)は投与量の87.81%であり、尿中へ14.53%、糞中へ73.29%の放射能が排泄された」。(パルモディア・インタビューフォーム)
尿中未変化体排泄率:0.47%以下
バイオアベイラビリティ:61.534%
油水分配係数:logP=1.59~4.63(ph2~ph12)、脂溶性

腎機能低下による用量の調節は不要と考えられる。
ただし、横紋筋融解症を念頭において、腎機能の低下度に応じた投与法(禁忌あるいは慎重投与)が求められていた。
禁忌の記載削除(2022年10月)⇒eGFR<30(体表面積1.73m2で補正)では、低用量あるいは投与間隔を延長。

リピディルよりも副作用が少なく、軽度の肝機能障害では使用可(容量調節必要)。

ペマフィブラートの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.126,244)

50歳女性、身長150cm、体重50kg、血清クレアチニン値1.5mg/dL
ペマフィブラート錠0.1mg、1回1錠、1日2回朝夕食後、14日分

eGFR、CCrを計算する

日本腎臓病薬物療法学会
「eGFR・CCrの計算」に数値を代入して自動計算する。(https://jsnp.org/egfr/)
下記数値左側(SCr1.5mg/dLを代入)⇔ 数値右側(SCr1.5+0.2mg/dLを代入)

  • eGFRcr(標準化eGFR)
    29.94mL/min/1.73m2 ⇔ 26.11
    (体表面積1.73m2で補正した値である)
    CKD重症度分類より、G3bであり、中等度~高度低下と判断できる。
  • 体表面積未補正eGFRcr(個別化eGFR)
    24.79mL/min ⇔ 21.62
  • eCCr(個別化eCCr)
    42.77mL/min/1.73m2 ⇔  37.74
    (体表面積1.73m2で補正した値である)
  • 体表面積未補正CCr(標準化eCCr)
    35.42mL/min ⇔ 31.25mL/min
    血清クレアチニン値をSCr(1.5+0.2mg/dL)として、Cockcroft&Gaultの式で手計算した結果と同一の値となる。

上記結果から、用量を調節する必要がある。

腎機能低下時の用法・用量(ペマフィブラート)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)、各種リストにはまだ記載されていない。

ペマフィブラートと相互作用を起こす薬物

リピディルよりも相互作用のある薬物が多い。
薬物代謝酵素によって代謝・分解されたり、有機アニオントランスポーターの基質にもなる。(新しい薬物であり、リストには載っていない)

薬物代謝酵素:CYP2C8、CYP2C9、CYP3A
有機アニオントランスポーター:OATP1B1、OATP1B3

併用禁忌:シクロスポリン(ネオーラル)・Cmax:8.96倍、AUC:13.99倍
併用禁忌:リファンピシン(リファジン)・Cmax:9.43倍、AUC:10.90倍
併用注意:クロピドグレル(プラビックス)・Cmax:1.48倍、AUC:2.37倍
併用注意:クラリスロマイシン(クラリス)・Cmax:2.42倍、AUC:2.09倍

高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(脂質異常症治療薬)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」別表1「高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点」
(以下、引用)

生活習慣の指導に重点を置きつつ薬物治療を考慮する必要がある。
(脂質異常症治療薬)

  • スタチン(ロスバスタチン[クレストール]、アトルバスタチン [リピトール]、ピタバスタチン[リバロ]など)投与により、65歳以上74歳以下の前期高齢者において心血管イベントの一次予防、二次予防の両者共に有意な低下を認めたため、特に高LDL血症に対してはスタチンが第一選択薬として推奨される。
  • 75歳以上の後期高齢者では、スタチンによる心血管イベントの二次予防の有意な低下が認められている一方、一次予防の有効性は証明されておらず、一次予防目的の使用は推奨されない。
  • スタチン以外の薬剤については十分なエビデンスがないため、慎重な投与を要する。
  • スタチンの使用においては、高齢者においても筋肉痛や消化器症状、 糖尿病の新規発症が多いとされており、これらに対する注意が必要である。
  • スタチンとフィブラート系薬剤(フェノフィブラート[リピディル、トライコア]、ベザフィブラート[ベザトール]、クリノフィブラート[リポクリン]、クロフィブラート)の併用は横紋筋融解症の発症リスクがあり、腎機能低下例には原則併用禁忌である。
  • シンバスタチン[リポバス]、アトルバスタチンは主にCYP3A、フルバスタチン[ローコール]は主にCYP2C9で代謝されるため、これらのCYP阻害薬との併用によりスタチンの血中濃度が増加する可能性があり、その有害作用に注意を要する。
  • 肝取り込みトランスポーターであるOATPを阻害するシクロスポリン[ネオーラル]はスタチンの血中濃度を増加させる。
    特にロスバスタチン、ピタバスタチンはシクロスポリンとの併用は禁忌である。

参考URL

横紋筋融解症⇒「動脈硬化のペニシリン:HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」

インフルエンザ異常行動は、タミフル服用に関係なく発生している

インフルエンザ異常行動の傾向と対策

インフルエンザ異常行動は、タミフル服用に関係なく発生している

  • インフルエンザ患者の異常行動はタミフル服用の有無にかかわらず発生している
    • タミフルを服用しなかった患者でも発生している
    • タミフルを服用した患者でも発生している
    • タミフル以外の抗インフルエンザ薬を服用した患者でも発生している
  • つまり、異常行動と抗インフルエンザ薬服用との因果関係は明確になっていない

厚生労働省では、インフルエンザ患者は、抗インフルエンザウイルス薬を服用したかどうかにかかわりなく、異常行動を起こす可能性がある、とする見解を示している。
そして、下記条件に当てはまる患者を中心として、特に注意することを呼び掛けている。

タミフル(もちろんそのほかの抗インフルエンザウイルス薬も含む)と異常行動の因果関係が明確でない以上、治療薬投与の有無にかかわらず、インフルエンザ患者全般にわたって注意すべきは当然のことと考えられる。

なお、以下の中国新聞記事(2019/12/11付け、2019/12/16付け)はよくまとまっている。

飛び降り、そのほかの異常行動について

異常行動には、「飛び降りのほか、おびえや無意味な動作の繰り返し、徘徊(はいかい)など」がある。
また、「「眠りから覚めてすぐに起こった」ケースが67%を占める」。
(中国新聞記事2019/12/11より)

  • 小中学生に目立つ。男性に多い(79%を占める)。
  • 発熱から2日間以内に発現することが多い(約9割を占める)。
  • ワクチンを接種していない人に多い

インフルエンザ異常行動とインフルエンザ脳症(幼児に多い(大部分が1~5歳))ではメカニズムが異なっているようである。⇒インフルエンザ脳症とカロナール

患者を一人にさせない、部屋や窓を施錠する

  • 発熱から2日間は患者を1人きりにしない
  • 玄関や全ての部屋の窓を確実に施錠する
  • ベランダに面していない部屋で寝かせる
  • 窓に格子のある場合は、その部屋で寝かせる
  • 一戸建ての場合は、できる限り1階で寝かせる
    (中国新聞記事2019/12/16より)

そもそもインフルエンザにかからなければ、インフルエンザ異常行動を起こすことはあり得ない。
インフルエンザワクチンの接種を徹底したいものである。
ワクチン接種によって、インフルエンザに罹患した場合でも、その症状は軽くなるとされている。

タミフルの服用に関係なく発生している

タミフルの10代使用制限が解除された(2018年8月)

厚生労働省は昨年(2018年8月21日)、インフルエンザ治療薬タミフルについて、10代への投与を同日から再び認める通知を出した。
同省の専門家会議がタミフルと異常行動の因果関係は明確でないと判断したことによる措置である。
(厚生労働省通知、薬生安発0821第1号)

今から10年ほど前(2007年当時)、タミフルを飲んだ中学生2人が相次いで転落死したため、タミフルと異常行動の因果関係が疑われ社会問題となった。
そして、10代へのタミフル投与は原則禁止(警告有り、下記)となっていた。

参考:タミフル添付文書の「警告」欄(ただし2018/08/21解除):
「10歳以上の未成年の患者においては、因果関係は不明であるものの、本剤の服用後に異常行動を発現し、転落等の事故に至った例が報告されている。このため、この年代の患者には、合併症、既往歴等からハイリスク患者と判断される場合を除いては、原則として本剤の使用を差し控えること」。

2018年8月21日以降は、タミフルをはじめとするノイラミニダーゼ阻害剤そして新薬のゾフルーザ(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬)のいずれにおいても、添付文書の記載(重要な基本的注意)に異なる点は無い。

タミフル以外でも異常行動は起きている

厚生労働省の調査によれば、過去10年間(2009年4月~2019年8月)に転落などによる死亡例は13件発生している。
そして、昨シーズン(2018年~2019年)の異常行動は、72件(4~18歳)報告されている。

10代の異常行動報告数は、タミフル6.5件、リレンザ4.8件、イナビル3.7件であり、決してタミフルだけの問題ではないことが分かる。
厚生労働省の資料(2009~16年の調査)処方患者100万人当たりの数。
(中国新聞記事2019/12/16より)

ところで、広島市で今月(2019年12月)、インフルエンザに罹患した中学生がマンションから転落して亡くなる事故があった。
抗インフルエンザウイルス薬は服用していたという。
なお、広島県では初めての転落死である。(中国新聞記事2019/12/11より)

10代というよりは小中学生に多い

厚生労働省研究班の調査(「重度の異常行動のあった患者の報告数(年齢別)」)によれば、学年別の発症数には以下のような傾向がある。

小中学生の発症数(年齢別)が多い。
また、10代後半よりも10歳未満の方が発症数(年齢別)が多い。

つまり、2007年当時に発せられたタミフルの警告「10歳以上の未成年の患者においては原則禁止」は、年齢区分が実態と少しずれていたことが分かる。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」(2019/10/24)

「日本感染症学会では、2009年にA(H1N1)pdm09による新型インフルエンザ発生の際に、新型インフルエンザ対策委員会・診療ガイドラインワーキンググループを組織して幾つかの提言を行って」以来今日まで、新薬の発売などの節目節目で様々な提言を行ってきている。

抗インフルエンザ薬による早期治療が、症状緩和や罹病期間の短縮に貢献している

ここでは、最も最近(2019年10月24日)の提言の中から、抗インフルエンザ薬投与に関する基本的な考え方について、私なりにポイントを抜き出してみた。

同提言では、基本的には、タミフルをはじめとする抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)の有用性について述べている。
つまり、抗インフルエンザウイルス薬の積極的な使用を勧めている。

なお、新薬ゾフルーザ(キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬)をめぐる低感受性株の問題については、下記各論のゾフルーザの項で別途引用した。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

インフルエンザは、自然軽快傾向のみられる上気道炎様症状から生命の危機におよぶ呼吸不全や脳症まで、幅広い臨床像を呈する疾患です。特に、高齢者や幼児、妊婦、基礎疾患を有する人は、重症化のリスクを有しており、続発性の細菌性肺炎による高齢者の超過死亡も問題となっています。

オセルタミビルを含めたノイラミニダーゼ阻害薬の早期治療による、症状緩和、罹病期間の短縮は、これまでの報告により確認されています。

それに従い、オセルタミビルの適用は、合併症のないインフルエンザ感染症患者における48時間以内の投与となっています。

わが国では、この適用に従う形で、症状緩和の目的で軽症の外来患者から投与され、それが結果として、重症化や入院の必要性の抑制につながってきたという背景があります。早期治療が、入院防止、下気道感染症合併防止に有効なことも報告されています。

医療機関へのアクセスが容易で、迅速診断法が普及しているわが国の状況を鑑みると、インフルエンザが確定あるいは疑われる患者について、発症後48時間以内に抗ウイルス薬の投与を開始して症状の緩和を試みることは、ノイラミニダーゼ阻害薬の適応に沿った治療です。

繰り返しますが、発症早期に重症化するかどうかの判断は困難です。もし、医師の判断により抗ウイルス薬の投与を行わない場合でも、症状の増悪があればすぐに受診するように指導することが必要です。

ノイラミニダーゼ阻害薬(48時間以内に服用開始)

タミフル、リレンザ、イナビル、そしてラピアクタは、いずれも「ノイラミニダーゼ阻害薬」である。
インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること。(各剤添付文書より、ほぼ同じ意味の文章)

細胞内で増殖をしたウィルスが細胞外に飛び出す時に必要な「ノイラミニダーゼ」の働きを阻害することによって、ウィルスの増殖を抑制する薬物である。
したがって、インフルエンザ様症状が出てから48時間を経過して、ウィルスの数が増えてしまってからでは、薬の効果を発揮することができない。

インフルエンザ罹患時の異常行動について

(各剤添付文書共に同じ内容)

抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。

異常行動による転落等の万が一の事故を防止するための予防的な対応として、
1)異常行動の発現のおそれがあること、
2)自宅において療養を行う場合、少なくとも発熱から2日間、保護者等は転落等の事故に対する防止対策を講じること、
について患者・家族に対し説明を行うこと。

なお、転落等の事故に至るおそれのある重度の異常行動については、就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多いこと、発熱から2日間以内に発現することが多いこと、が知られている。

以上、適宜改行した。

注)異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)
注)インフルエンザ脳症(大部分が1~5歳)

中外製薬(株)
タミフルカプセル75、タミフルドライシロップ3% 適正使用のお願い
https://chugai-pharm.jp/content/dam/chugai/product/notice/2019/20191101_tam_oshirase.pdf

インフルエンザ脳症を防ぐために
⇒「インフルエンザや小児・妊婦でも使えるカロナール(やさしめ)」

残薬としてのNSAIDs(ロキソプロフェンなど)を安易に使用しないよう注意すること。

医薬品各種(抗インフルエンザ薬)

タミフル(一般名:オセルタミビル)内服薬

抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬):
「国内で最も使用されている抗インフルエンザウイルス薬」。(今日の治療薬2020,p.104)

オセルタミビルは、プロドラッグである。
構造式中にエステル結合を含み、脂溶性=吸収を高めている。

オセルタミビルの効能・効果、用法・用量など

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防。

タミフルカプセル75の用法・用量
通常、成人及び体重37.5kg以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与する。

タミフルドライシロップ3%の用法・用量
成人
通常、オセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。
小児
通常、オセルタミビルとして以下の1回用量を1日2回、5日間、用時懸濁して経口投与する。ただし、1回最高用量はオセルタミビルとして75mgとする。
幼小児の場合:2mg/kg(ドライシロップ剤として66.7mg/kg)
新生児、乳児の場合:3mg/kg(ドライシロップ剤として100mg/kg)

タミフルは、1日2回5日間継続して内服するため、幼小児や高齢者でも分かりやすい薬物である。
また、吸入がうまくできない幼小児や高齢者には、ドライシロップで対応することができる。

腎機能低下時の用法・用量(オセルタミビル)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)
    「腎機能低下時に特に注意が必要な経口薬の例」(実践薬学2017,p.163)
  • 尿中未変化体排泄率(70%、報告によって異なる)、減量法の記載有り。
  • 厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月
    別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗微生物薬)
    オセルタミビルリン酸塩 他

オセルタミビルの用法・用量を考える

(どんぐり2019,p.169-173、服薬指導例・薬歴記載例有り)

オセルタミビル服用後、数時間で急な発熱有り。
この発熱は何によるものか、下記にて検討してみた。

オセルタミビルは、定常状態のある薬物である。(下記、タミフル添付文書参照)
定常状態に達するまでには、少なくとも丸1日以上かかる。
したがって、服用後数時間で生じたこの発熱は、インフルエンザそのものによるものと考えられる。

  • 単回投与時の活性体の薬物動態パラメータ:
    消失半減期、t1/2(hr)=6.4±3.7(投与量75mg、日本人健康成人男子)
    投与間隔12時間/6.4時間=1.875<3.0
    定常状態に達するには、6.4×5=32時間くらいかかる。
  • 反復投与時の投与開始7日目における活性体の薬物動態パラメータ:
    「投与開始後3日以内に定常状態に到達」
    消失半減期、t1/2(hr)=8.8±3.6(投与量75mg、日本人健康成人男子)

なお、オセタミビルの重大な副作用として、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死症候群(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)がある。

ただしこの場合、初発症状として発熱のほか、発疹・発赤などがみられるはずである。
したがって、服用後数時間で生じたこの発熱は、インフルエンザそのものによるものと考えられる。

リレンザ(一般名:ザナミビル)吸入薬

抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬):
「オセタミビル耐性ウイルスに交叉耐性なし」。(今日の治療薬2020,p.104)

ザナミビルは、ラニナミビルのリード化合物である。
ザナミビルによる過敏症(発疹)がある。
ザナミビルは、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用している。
⇒ 乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者に投与した際にアナフィラキシーがあらわれたとの報告がある。

ザナミビルの効能・効果、用法・用量など

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防

通常、成人及び小児には、ザナミビルとして1回10mg(5mgブリスターを2ブリスター)を、1日2回、5日間、専用の吸入器を用いて吸入する。

リレンザは、タミフルやイナビルと比べて、B型インフルエンザに対して早く熱を下げることが期待できる、とするデータがある。

B型の流行に留意を、治療薬にはリレンザを推奨
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201203/523863.html

イナビル(一般名:ラニナミビル)1回のみの吸入薬

抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬):
「プロドラッグ。1回完結のため利便性や服薬コンプライアンス向上に貢献。オセタミビル耐性ウイルスに交叉耐性なし」。(今日の治療薬2020,p.105)

ラニナミビルは、ザナミビルをリード化合物として創生された。
プロドラッグ(エステル結合有り)であり、加水分解後の構造式は、ザナミビルそっくりである。
⇒ ザナミビルで過敏症(発疹)の既往歴のある患者に、ラニナミビルを使うことはできない。
ザナミビル同様、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用している。
⇒ アナフィラキシー有り

ラニナミビルの効能・効果、用法・用量など

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防。

成人・小児(10歳以上):ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
小児(10歳未満):ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。

成人及び小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与する。

  • 一回の吸入だけで治療が完了する。
    ただし、吸入方法にはちょっとしたコツが必要である。
    病医院内、薬局内で医師・薬剤師等の指導の元に吸入完了するのが望ましい。
    「イナビル吸入方法(動画)/第一三共株式会社」がWeb上で提供されている。
  • 特定の背景を有する患者に関する注意
    9.1 合併症・既往歴等のある患者
    9.1.1 乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者
    本剤は、夾雑物として乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しており、アナフィラキシーがあらわれたとの報告がある。

なお、イナビルは海外では使用されていない。

ラピアクタ(一般名:ベラミビル)点滴薬

抗インフルエンザウイルス薬(ノイラミニダーゼ阻害薬):
「ノイラミニダーゼ阻害薬唯一の静注薬。投与は重症例、経口・吸入療法が不可能な症例に限るべき。オセタミビル耐性ウイルスに交叉耐性あり」。(今日の治療薬2020,p.104)

ノイラミニダーゼ阻害剤:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症。

本剤の投与は、症状発現後、可能な限り速やかに開始することが望ましい。

〈成人〉
通常、ペラミビルとして 300mgを 15分以上かけて単回点滴静注する。合併症等により重症化するおそれのある患者には、1日1回600mgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。なお、年齢、症状に応じて適宜減量する。
〈小児〉
通常、ペラミビルとして1日1回10mg/kgを15分以上かけて単回点滴静注するが、症状に応じて連日反復投与できる。投与量の上限は、1回量として600mgまでとする。
なお、3日間以上反復投与した経験は限られている。

インフルエンザが重症化して肺炎を合併した場合など、咳や呼吸困難によって吸入薬(リレンザやイナビル)がうまく吸えなくなる。
また吐き気や喉の異常によって内服薬(タミフル)を服用できないなど、重症例への使用が推奨されている。

ゾフルーザ(一般名:バロキサビル)単回経口投与

抗インフルエンザウイルス薬(Cap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬):
「ウイルスの増殖を抑制。1回の投与で治療が完了。使用により耐性ウイルスの出現の報告あり」。(今日の治療薬2020,p.106)

キャップ依存性エンドヌクレアーゼ(Cap-Dependent Endonuclease)阻害薬:
A型又はB型インフルエンザウイルス感染症。

従来薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)とは異なり、インフルエンザウイルスの増殖そのものを抑える働きを有している。

通常,成人及び12歳以上の小児には,20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして 40mg)を単回経口投与する。ただし,体重80kg以上の患者には20mg錠4錠又は顆粒8包(バロキサビル マルボキシルとして80mg)を単回経口投与する。
通常,12 歳未満の小児には,以下の用量を単回経口投与する(略)。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」では、ゾフルーザに関して、次のような提言を行っている。

日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=37

当委員会では、バロキサビルの使用に関し、現在までに得られたエビデンスを検討した結果、以下のような提言を行います(バロキサビルの単独使用を前提としています)。

(1)12-19歳および成人:臨床データが乏しい中で、現時点では、推奨/非推奨は決められない。
(2)12歳未満の小児:低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討する。
(3)免疫不全患者や重症患者では、単独での積極的な投与は推奨しない。

(以下、私なりに同提言の根拠をピックアップしてみた)

日米で行われた12歳以上65歳未満の健康人を対象とした国際共同第Ⅲ相試験の成績では、臨床的な有効性、罹病期間の短縮はオセルタミビルと同等でしたが、ウイルス感染価を早期に大幅に低下させることが示されました。

一方、臨床試験の段階から、高率でアミノ酸変異が生じることが判明しており、変異ウイルスは、バロキサビルに対する感受性が低下し、健常者において、罹病期間の延長とウイルス排泄の遷延化が認められました。

しかしながら、バロキサビル低感受性ウイルスが、臨床経過に与える影響については、エビデンスが十分ではありません。

バロキサビルは、ノイラミニダーゼ阻害薬とは異なる作用機序を有するため、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスには有効性が期待でき、新型インフルエンザ出現時での使用も期待されています。

なお、製造販売元の塩野義製薬(株)では、2019年~20年のシーズンは積極的な販売活動は控えて、正確なデータの収集に努めるとしている。

アビガン(一般名:ファビピラビル)

抗インフルエンザウイルス薬(ポリメラーゼ阻害薬):
「パンデミックインフルエンザに対する薬剤。国の判断で投与可能」。(今日の治療薬2020,p.105)

【警告】
必要性を慎重に検討。催奇形性・精液中への移行あり。

日本では、高病原性鳥インフルエンザウイルス感染症の流行に備えて備蓄薬として承認されている。
(IASR(病原微生物検出情報),Vol.36,101-103:2015年6月号)

エボラ出血熱に対する「アビガン錠200mg」の臨床試験(中間解析)で有効性が示唆
(富士フイルム株式会社、2015年2月24日)

ワルファリンと直接経口抗凝固薬(DOAC)を比較する

心房細動に対する抗不整脈薬の実際

⇒「抗不整脈薬(Vaughan Williams分類からSicilian Gambitへ)」
⇒「β遮断薬(αβ遮断薬を含む)・α遮断薬など」

ビソプロロール(メインテート)などは、上記の抗不整脈薬のページではなく、β遮断薬のページにまとめている。

医薬品各種(抗凝固薬)

抗凝固薬と抗血小板薬の使い分け

抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)は、血管内で血栓ができにくくする性質を持っている。
主として心筋梗塞や脳梗塞の予防を目的として使用される薬物である。

抗血栓薬は、抗凝固薬と抗血小板薬の二つに大別され、対象となる血栓のでき方(病態)によって明確に使い分けられている。

ワルファリンは、代表的な抗凝固薬であり、不整脈がある患者などでよく使用される。

不整脈や心不全のある患者では、特に左心房で血液の流れが滞って血液が固まりやすくなる。
こうしてできた血栓が心臓や脳の血管を詰まらせると突然死につながる恐れがある。

そこで、血液が固まらないようにするために抗凝固薬が使われる。
具体的には、心房細動(不整脈の一種)による心原性脳塞栓症を防ぐ目的や、肺塞栓を予防するために深部静脈血栓症に対して用いたりする。

一方、バイアスピリンなどの抗血小板薬は、生活習慣病の患者でよく使用される。

生活習慣病の患者では、動脈硬化の進展に伴って生じたプラークが、はがれたり破れたりすることがある。
そして、そこに血小板が集まり血栓を生じやすい状態になっている。
そこで、血液が固まらないようにするために抗血小板薬が使われている。

⇒「バイアスピリンとそのほかの抗血小板薬を比較する」

出血傾向(薬の効き過ぎに注意)

  • いつの間にか打ち身・青あざ
  • 鼻血、歯ぐきから出血、皮下出血
  • 血痰、血尿
  • 下血、吐血、黒色便(タール便)・・・消化器症状
  • 吐気、めまい、激しい頭痛・・・頭蓋内出血

ワーファリン(一般名:ワルファリン)

クマリン系薬:
「ビタミンK作用に拮抗し、肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制」。(今日の治療薬2021,p.598)

  • ワーファリン:錠(0.5mg、1mg、5mg)
  • ワーファリン:顆粒(0.2%)

【効能・効果】
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防

【用法・用量】
本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である。(中略)
成人における初回投与量は、ワルファリンカリウムとして、通常1~5mg1日1回である。

(ワーファリン添付文書)

ワルファリンとDOACのどちらを用いるべきか

  • ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
  • DOAC(直接経口抗凝固薬)は、CYP3A(あるいはP糖蛋白)基質薬である。
  • DOACは、至適濃度域を維持するため、薬剤ごとに1日1回または2回投与と定められている。
  • DOACには、減量基準がある。

ワルファリンは、弁膜症性心房細動の患者にも適応となる。
DOAC(直接経口抗凝固薬)は、弁膜症性心房細動や重度の腎機能障害のある症例では適応とならない。
非弁膜症性心房細動では、DOACの方が、ワルファリンと比べて脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ副作用が少ないとして第一選択薬とされている。

『不整脈薬物治療ガイドライン2020』p.10,44,51
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf

  • 「弁膜症性」とは、リウマチ性僧帽弁疾患(おもに狭窄症)、機械弁置換術後をさす。p.44
  • 一般的には、僧帽弁狭窄症および機械弁置換術後以外は、すべて非弁膜症性心房細動として差し支えない。p.44
  • 「生体弁を用いた人工弁は「非弁膜症」」と定義される。p.10
  • ただし、ワルファリンは重度の肝障害時だけでなく、重度の腎障害がある場合にも、薬剤排泄の遅延による出血リスクの増大が懸念され、添付文書上はワルファリン投与が原則禁忌となっている点に注意を要する。pp.51-52
  • 正常腎機能~中等度腎機能障害(CCr ≧ 30mL/ 分)の場合、非弁膜症性心房細動の脳梗塞予防としてワルファリンとDOACのどちらを選択するかについては、投与の簡便性、効果の安定性、食事や他の薬剤との相互作用の少なさ、頭蓋内出血の少なさなどから、新規開始の第1選択としてはDOACを推奨する意見が欧米のガイドラインにはみられる。
    わが国においてもDOACは、ワルファリンと同等あるいはそれ以上の有効性や安全性を示す報告が多い。p.51

周術期(抜歯、消化管内視鏡、外科手術など)の抗凝固療法

(不整脈薬物治療ガイドライン2020,pp.57-59)

抜歯時にワルファリンを休薬すると約1%に重篤な脳梗塞を発症し、死亡例も報告されていることから、ワルファリンを継続したまま抜歯することが望ましい。(中略)
DOAC療法中もワルファリンに準じて継続下での抜歯が望ましいと考えられる。p.57

心房細動患者において内視鏡処置時にワルファリンを休薬した場合,約1%で脳卒中を発症したことが報告されている。(中略)

出血リスクにより①通常消化器内視鏡(観察など)、②内視鏡的粘膜生検(超音波内視鏡下穿刺吸引術を除く)、③出血低リスクの消化器内視鏡、④出血高リスクの消化器内視鏡の4つに分類している。
①はワルファリン・DOACともに休薬不要とされる(以下略)。pp.57-59

ワルファリンは、CYP2C9の基質薬である(影響を強く受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 臨床試験における血中濃度変化から推定されたCYP2C9のCRおよびIR値
    S-ワルファリン:CR(CYP2C9)0.99、(PISCS2021,p.52)、CYP2C9基質薬

ワルファリンは、ラセミ体(光学異性体の等量混合物)として存在している

  • S-ワルファリン(R体の約5倍の抗凝固能)
    ほぼCYP2C9のみで代謝される
  • R-ワルファリン
    CYP3A、CYP1A2など複数の酵素で代謝される

両者の抗凝固能は、S体:R体=約5:1であることから、ワルファリンの臨床を考える場合には、S-ワルファリンにおけるCYP2C9の活性変動による薬物相互作用が問題となる。(PISCS2021,p.146)

薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9阻害薬―

ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
CYP2C9阻害薬との併用によって、ワルファリンの代謝は抑制される。
その結果、ワルファリンの抗凝固作用は増強される。
(プロトロンビン時間(PT)延長→出血傾向)

  • フルオロウラシル系抗がん薬(代謝拮抗薬:ピリミジン代謝拮抗薬)は、ワルファリンの作用を増強させる。(明確な機序は不明、PISCS,p.148)併用注意
  • 経口アゾール系抗真菌薬(各種CYP阻害薬)の中で、「ミコナゾールは特にCYP2C9の阻害作用が強い薬剤です」。(PISCS2021,p.150)併用禁忌
  • ワルファリン服用患者にアミオダロン(抗不整脈薬)を併用開始後、数日でINRの延長がみられ、重大な出血が生じることがある。(PISCS2021,p.150)併用注意
  • 高尿酸血症治療薬(尿酸排泄促進薬)であるブコロームおよびベンズブロマロンはCYP2C9阻害作用を有し、ワルファリンの抗凝固作用を増強する。(PISCS2021,p.153)併用注意
  • メトロニダゾール(抗寄生虫薬)の代謝酵素への影響は明らかでないが、ワルファリンとの併用による重篤な相互作用の症例報告がある。(PISCS2021,p.154)併用注意

薬物相互マネジメント(PISCS)―CYP2C9誘導薬―

ワルファリンは、CYP2C9基質薬である。
CYP2C9誘導薬との併用によって、ワルファリンの代謝が促進される。
その結果、ワルファリンの抗凝固作用は減弱される。

  • リファンピシン(抗結核薬)は、強力なCYP3A4誘導薬であると共に、CYP2C9の強力な誘導薬でもある。
  • 抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェノバルビタール)は、CYP2C9の誘導薬である。
  • そのほか(アプレピタント(制吐薬)、ボセンタン(肺高血圧症治療薬)、エンザルタミド(抗悪性腫瘍薬))など、CYP2C9誘導薬がある。
    いずれも、ワルファリンの抗凝固作用を減弱する作用を有する。(PISCS2021,pp.154-155)

薬物相互マネジメント(PISCS)―蛋白結合置換による―

  • 抗てんかん薬(フェニトイン)とワルファリンとの併用開始時は、むしろ蛋白結合置換によると推察されるワルファリンの抗凝固作用増強の報告がある。(PISCS2021,p.155)

参考:「ワルファリンは光学異性体であるSワルファリン(薬理活性が高い)とR-ワルファリンが当量の割合で含有されている。Sワルファリンは主に肝臓細胞のチトクロームP450 (CYP)、特にCYP2C9による代謝により水酸化化合物となり代謝される」。(日本血栓止血学会・用語集/ワルファリン)

腎機能低下時の用法・用量(ワルファリン)

肝消失型薬物である。

  • 「末期腎不全(ESKD)で減量が必要な非腎排泄型薬剤」(実践薬学2017,p.190)
    尿中排泄率(2%以下)、ESKDでのクリアランス(-50%)、ESKDの用量(禁忌)

「ワルファリンも重篤な腎障害のある患者には禁忌になっている(実際には使われているが・・・)。ワルファリンによる大出血の頻度が腎機能低下に伴って増加することも示唆されている(特にCCr<30mL/分)。そして注目すべきは、腎機能が低下してくると、少ない維持量でコントロールできるようになるという点。つまり、効きが良くなっているわけだ」。(実践薬学2017,p.188-189)
⇒参照(デュロキセチンと尿毒素の蓄積)

ただし、以下には収載されていない?
「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り。

プラザキサ(一般名:ダビガトラン)

DOAC(経口トロンビン直接阻害薬):
「体内でエステラーゼによって活性代謝物に変換されるプロドラッグ」。(今日の治療薬2021,p.597)

  • プラザキサ:カプセル(75mg、110mg)

【効能・効果】
非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制

【用法・用量】
通常、成人にはダビガトランエテキシラートとして1回150mg(75mgカプセルを2カプセル)を1日2回経口投与する。なお、必要に応じて、ダビガトランエテキシラートとして1回110mg(110mgカプセルを1カプセル)を1日2回投与へ減量すること。

(プラザキサ添付文書)

  • 【ダビガトラン】トロンビン直接阻害薬(第Ⅱ因子)、1回150mgを1日2回経口投与
  • ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である
    (CCr50mL/分以下減量、30mL/分未満で禁忌、他剤ではCCr15mL/分未満で禁忌)
  • 減量基準(併用薬を除く)、1回110mgを1日2回経口投与
  • 強力なP糖蛋白阻害薬(イトラコナゾール)、併用禁忌、(PISCS2021,p.161,162)
    (クラリスロマイシン影響無し、理由不明)
  • P糖蛋白阻害薬(ベラパミル、アミオダロン、キニジン、タクロリムス、シクロスポリン、リトナビル、サキナビルなど)、併用注意→減量を考慮する、(PISCS2021,p.162,pp.161-165)
    (ベラパミル:併用開始から3日間はベラパミル塩酸塩服用の2時間以上前に本剤を服用させること)
  • P糖蛋白誘導薬(リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意
    (AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.162,165)

トロンビン直接阻害薬(第Ⅱ因子)、1回150mg、1日2回経口投与
酒石酸製のカプセル剤:胃腸障害、胸やけ、ディスペプシアなど
カプセル剤:一包化及び粉砕不可

生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は約6.5%
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約80%(腎排泄型)。
P糖蛋白が関与する:経口クリアランスへの寄与率約60%。
(プロドラッグのダビガトランエテキシラートはP糖蛋白の基質である)

減量基準(併用薬を除く)、1回110mgを1日2回

  • 中等度の腎障害(CCr30~50mL/min)のある患者
  • P糖蛋白阻害剤(経口剤)を併用している患者
  • 70歳以上の患者
  • 消化管出血の既往を有する患者

DOAC相互の位置付け(ダビガトラン)

ダビガトランは、1日2回投与である。
1日1回投与時よりも血中濃度ピーク値とトラフ値の振れ幅を小さくして、薬物動態学的な安定性を得ているものと考えられる。

ダビガトランの禁忌基準は、CCr30mL/分未満となっている。
そのほかの直接経口抗凝固薬(DOAC)の禁忌基準(いずれもCCr15mL/分未満)よりも一段と厳しくなっている。

ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である

ダビガトランは、腎排泄型の超ハイリスク薬である。
平成23年8月12日(2011年)、発売後5か月で安全性速報(ブルーレター)が出された。
その背景は以下のとおりである。

「本剤の発売の2011年3月14日から2011年8月11日までの間に、重篤な出血性の副作用が81例報告されています。そのうち、専門家の評価により、本剤との因果関係が否定できないとされる死亡例が5例報告されています(発売以降の推定使用患者数約6万4千人)」。(実践薬学2017,p.172では死亡15例としている)

【減量】中等度の腎障害(クレアチニンクリアランス30-50mL/min)のある患者
[ダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがある]

【禁忌】透析患者を含む高度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者
[本剤は主に腎臓を介して排泄されるため、血中濃度が上昇し出血の危険性が増大するおそれがある]

副作用機序別分類(ダビガトラン)

「活性代謝物であるダビガトランは選択的かつ可逆的にトロンビンの活性部位に結合し、フィブリノゲンからフィブリンに変換するトロンビンの触媒反応を阻害する」。(プラザキサ添付文書)

血栓のもととなるフィブリンの産生を抑えることで、血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ。
したがって、薬理作用が過剰に発現すると、出血が起こりやすくなる。

(どんぐり2019,pp.118-125)

  • 薬理作用による副作用:
    出血(消化管出血、頭蓋内出血など)
    (鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便など)
  • 薬物過敏症による副作用:
    間質性肺炎(息切れ、空咳、発熱など)
    アナフィラキシー
    急性肝不全、肝機能障害、黄疸
  • そのほかの副作用:
    鼻出血、皮下出血、血尿(薬理作用による)

そのほか、出血以外に胃腸障害の頻度が高い。
(消化不良、胃食道炎、悪心、腹部不快感など)

  1. 消化管出血(重大な副作用)に伴う症状
  2. 酒石酸(添加物)による酸性化で吸収率を高めている
  3. カプセルが大きく食道に付着する可能性あり

服薬指導(ダビガトラン)

この薬は、腎臓の機能に合わせて飲む量を調整する必要があります。
誰でも薬が体に合わないことがあります。
薬の飲み始めでは、急な発熱や、湿疹、空咳などに注意してください。
薬が効きすぎて起こる副作用として、出血しやすくなります。
鼻出血、歯肉出血やあざなどの症状が出たらすぐにご連絡ください。
この薬は、カプセルが大きいので飲みにくいかもしれません。
ただし、カプセルは開けて飲まないでください。
薬が効きすぎて副作用が出やすくなってしまいます。
カプセルが大きくて喉に引っかかると、食道に炎症の起きる可能性があります。
コップ1杯程度の多めの水で服用してください。

腎機能低下時の用法・用量(ダビガトラン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1回150mgを1日2回。ただし、経口P-糖蛋白阻害薬(ベラパミル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、イトラコナゾール、シクロスポリン、キニジン、リトナビル、ネルフィナビル、プロパフェノン)併用患者、70歳以上の患者、消化管出血の既往のある患者では1回110mgの1日2回投与を考慮
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1回110mgを1日2回、ただし経口P-糖蛋白阻害薬併用患者には投与を避ける
    ただし、Giusti-Hayton法による計算では1日220mgの投与量自体が過量投与である可能性あり
  • CCr(30mg/dL未満、透析患者を含む)
    禁忌 (腎排泄型薬物であり出血の危険性が増大する)

ダビガトランの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.118-125)

69歳男性、体重63kg
血清クレアチニン1.3lmg/dL
ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩カプセル75mg
1回2カプセル、1日2回朝夕食後、14日分

Cockcroft&Gaultの式より、
CCr={(140-69)/(72×(1.3+0.2)}×63
=(71/108)×63
=41.42⇒41.4mL/min

尿中未変化体排泄率(fu)=0.85 

補正係数(G)=1-fu×(1-(対象患者のCCr/腎機能正常者のCCr))
=1-0.85×(1-41.4/100)
=1-0.4981
=0.5019⇒50%

投与量=300mg/日×0.5⇒150mg/日

ダビガトランは、P糖蛋白(P-gp)の基質である

「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune
「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬。p.99
主に小腸P-gpに起因する。腎P-gpも関与する。

プラザキサのバイオアベイラビリティは約6.5%(健康成人男性)であり、P糖蛋白(P-gp)阻害剤を併用することによってバイオアベイラビリティは15%上昇した。(参考:プラザキサ・インタビューフォーム)

ダビガトランのようにバイオアベイラビリティ(BA)の小さい薬物は、吸収部位である小腸におけるP-gp阻害の影響を大きく受ける。
また、ダビガトランは腎排泄型薬剤であり、イトラコナゾール(CYP3A4阻害薬、P-gp阻害薬)は胆汁及び腎より排泄される。
以上から、CYP3A4阻害作用よりもP-gp阻害作用の方が大きいと考えられる。

イグザレルト(一般名:リバーロキサバン)

DOAC(経口直接Xa阻害薬):
「日本人用量を設定して治験を実施」。(今日の治療薬2021,p.596)

  • イグザレルト:錠(10mg、15mg)
  • イグザレルト:OD錠(10mg、15mg)
  • イグザレルト:細粒分包(10mg/包、15mg/包)

【効能・効果】
成人
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
小児
○静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制

【用法・用量】
〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制〉
通常、成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する。なお、腎障害のある患者に対し
ては、腎機能の程度に応じて10mg1日1回に減量する。
〈静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制〉
成人
通常、成人には深部静脈血栓症又は肺血栓塞栓症発症後の初期3週間はリバーロキサバンとして15mgを1日2
回食後に経口投与し、その後は15mgを1日1回食後に経口投与する。
小児
通常、体重30kg以上の小児にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する。

(イグザレルト添付文書)

  • 【リバーロキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回15mgを1日1回食後投与
  • リバーロキサバンは、腎排泄型(中間型薬物)である
  • 減量基準(併用薬を除く)、1回10mgを1日1回経口投与
  • 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用禁忌、(PISCS2021,p.162,pp.165-166)
    (HIVプロテアーゼ阻害剤、コビシスタットを含有する製剤、アゾール系抗真菌剤(フルコナゾールを除く))
  • 中程度のCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意(PISCS2021,p.162,pp.166-167)
    (フルコナゾール、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなど→減量を考慮する、
    なお、エリスロマイシンは腎障害時には、AUCがさらに増加するので注意)
  • 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)誘導薬(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意(AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.162,167)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回15mg、1日1回食後投与
腎排泄型(中間型薬物):
腎障害のある患者に対しては、腎機能の程度(クレアチニンクリアランス)に応じて減量する
一包化、粉砕可

生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)はほぼ100%である。
(空腹時20mg投与時66%、空腹時は溶解性が悪いためとのこと、 メーカーの説明)
肝臓のCYP3A4で代謝されて腎排泄される。
腎排泄の寄与率:経口クリアランスの約1/3
肝代謝の寄与率:経口クリアランスの約2/3
尿中未変化体排泄率(fu):約42%(静注時)

「本剤を静脈内投与した際、全身クリアランスは約10L/hであり、投与量の42%が未変化体のまま腎排泄された。健康成人男子4例に[14C]リバーロキサバン10mgを単回経口投与した際、投与量の約2/3は不活性代謝物として尿中及び糞中に排泄され、残りの約1/3が未変化体のまま腎排泄された(外国人データ)」。(リバーロキサバン添付文書)

減量基準(併用薬を除く)、1回10mgを1日1回

  • CCr30~49mL/minの患者⇒10mgを1日1回投与する。
  • CCr15~29mL/minの患者⇒本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する。

DOAC相互の位置付け(リバーロキサバン)

リバーロキサバンは、1日1回投与であり、Xa阻害活性のピーク値とトラフ値の振れ幅が、アピキサバン1日2回投与時と比べて大きくなっている。⇒アピキサバン参照

リバーロキサバンの用法・用量の設定試験の結果は以下のとおりである。

  • 1日1回投与と1日2回投与で効果に差はない。
  • 1日2回投与で出血の副作用が増加した。
    (幾つかの大規模臨床試験で、1日1回投与の有効性と安全性が実証されている)

リバーロキサバンの血中消失半減期は、約10時間程度(5~13時間)である。
1日1回投与としたならば、次回投与時には血中の薬物濃度は1/4弱まで減少していると考えられる。
それでも、リバーロキサバンが抗凝固作用を発揮するのは、リバーロキサバン投与によって生理的凝固阻止因子と線溶系が温存されるため、とする考え方が示されている。(実践薬学2017,pp.236-237)

リバーロキサバンの用法・用量を考える

(どんぐり2019,pp.127,248)

70歳男性、体重60kg、血清クレアチニン1.2mg/dL、心房細動による脳卒中予防のため処方。
イグザレルト錠15mg、1回1錠、1日1回朝食後、30日分

Cockcroft&Gaultの式から、
CCr={(140-70)/(72×(1.2+0.2))}×60
=41.7mg/dL

用法及び用量に関連する注意〈非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制〉
7.1 クレアチニンクリアランス30~49mL/minの患者には、10mgを1日1回投与する。
7.2 クレアチニンクリアランス15~29mL/minの患者には、本剤投与の適否を慎重に検討した上で、投与する場合は、10mgを1日1回投与する。(イグザレルト添付文書)

上記添付文書の記載に従い、イグザレルト10mg錠を1日1回投与に変更する。

高齢者や腎機能低下患者では、血中濃度が上昇することで薬理作用による副作用が起こりやすくなるため減量する。
また、出血などに注意する。

腎機能低下時の用法・用量(リバーロキサバン)

  • 「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2019年4月1日改訂(32版))⇒注)2021年改訂34.1版有り

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制:1日1回15mg
    2)静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制:発症後の初期3週間は1回15mgを1日2回、その後1日1回15mg
  • CCr(30~60mg/dL未満)
    1)1日1回10mg
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1)適用について慎重に判断して1日1回10mg
    2)禁忌 (使用経験がない)
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1)2)禁忌 (使用経験がない)

リバーロキサバンは、CYP3A4の基質薬である(影響を中程度に受けやすい)

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」
  • 「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」(2016年7月)、(実践薬学2017,pp.146-147)
  • 「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2019」/PharmaTribune
  • 「経口アゾール系抗真菌薬の併用禁忌」(実践薬学2017,p.124)
    併用禁忌:ミコナゾール(フロリード)・CYP2C9、CYP3A阻害薬
    併用禁忌:イトラコナゾール(イトリゾール)・CYP3A、P-gp阻害薬
    併用禁忌:ボリコナゾール(ブイフェンド)・CYP2C19、CYP3A阻害薬(リスト抜け)

イトラコナゾール(CYP3A4阻害薬、P-gp阻害薬)と併用すると、CYP3A4阻害作用を受ける。
小腸のP-gp(及び小腸のCYP3A4)の関与は少なく、腎のP-gpの関与はあると考えられる。
(主にCYP3A4阻害に起因する。腎P-gpも関与する)

リバーロキサバンは、P糖蛋白(P-gp)基質である

  • 「医療現場における薬物相互作用へのかかわり方ガイド」日本医療薬学会(2019年11月)p.45→「CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例(特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)」

エリキュース(一般名:アピキサバン)

DOAC(経口直接Xa阻害薬):
「腎排泄率が27%と少ない」。(今日の治療薬2021,p.597)

  • エリキュース:錠(2.5mg、5mg)

【効能・効果】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制

【用法・用量】
<非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制>
通常、成人にはアピキサバンとして1回5mgを1日2回経口投与する。
なお、年齢、体重、腎機能に応じて、アピキサバンとして1回2.5mg 1日2回投与へ減量する。
<静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制>
通常、成人にはアピキサバンとして1回10mgを1日2回、7日間経口投与した後、1回5mgを1日2回経口投与する。

(エリキュース添付文書)

  • 【アピキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回5mg、1日2回経口投与
  • 減量基準(併用薬を除く)、1回2.5mgを1日2回経口投与
  • 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.163,pp.167-168)
    (アゾール系抗真菌剤(フルコナゾールを除く)、HIVプロテアーゼ阻害剤→減量を考慮する)
  • 中程度のCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.162,pp.166-167)
    (クラリスロマイシン、エリスロマイシン、フルコナゾール、ナプロキセン、ジルチアゼム)
  • 強力なCYP3A(あるいはP糖蛋白)誘導薬(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ含有食品など)、併用注意(AUC及びCmaxが低下する)、(PISCS2021,p.163,168)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回5mg、1日2回経口投与

生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は、約50%である。
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約27%
CYP3Aが関与する:経口クリアランスへの寄与率約50%
(そのほかP糖蛋白)

減量基準(併用薬を除く)、1回2.5mgを1日2回
次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg 1日2回経口投与する。

  • 80歳以上(年齢)
  • 体重60kg以下(体重)
  • 血清クレアチニン1.5mg/dL以上(腎機能)

エリキュースの安全性・適正使用情報
https://www.eliquis.jp/eliquis/product/direction/page01

DOAC相互の位置づけ(アピキサバン)

アピキサバンは、1日2回投与であり、Xa阻害活性のピーク値とトラフ値の振れ幅が小さくなっている。(実践薬学2017,p.232「リバーロキサバンとアピキサバンのXa阻害活性の比較」)

リバーロキサバン(1日1回投与)と比較した場合、ピーク値は約60%低下しており、トラフ値は約40%上昇している。つまり、アピキサバン(1日2回投与)は、薬物動態学的には安定していると言えそうである。

アピキサバンもワルファリン同様、腎機能が低下するほど出血リスクが高まる。
これは、抗凝固薬全般にみられる傾向である。
ただし、アピキサバンでは、ワルファリンと比べて、腎機能低下に伴う大出血発現率の上昇幅が小さい。

裏を返せば、「アピキサバンは腎機能が低下している患者ほど、ワルファリンと比較した相対的な安全性が高まる」ことを意味する。(実践薬学2017,p.242「ワルファリンとアピキサバンの大出血発現率とeGFRの関係」)

アピキサバンには、そのほかのDOACにはない腸管からの排泄経路がある。
この排泄経路は、「腎機能や肝機能には影響されない」ので、アピキサバンでは、腎機能低下例や肝機能低下例における薬物動態の変化が緩和される可能性がある。(実践薬学2017,pp.240-243「アピキサバンの吸収・代謝・排泄経路」)

実際にアピキサバンを投与されている患者では、「腎機能低下例にも安心して使えるDOAC」的な考え方で投与されているケースがあるかもしれない。
いずれにしても、抗凝固薬使用例では腎機能のチェックが欠かせない。

腎機能低下時の用法・用量(アピキサバン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制: 1回5mg を1日2回。80歳以上,体重60kg以下,SCr 1.5mg/dL以上の3項目のうち2つ以上に該当する患者は,1回2.5mgを1日2回
    2)静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制:1回10mgを1日2回、7日間投与後、1回5mgを1日2回
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)1回2.5mg を1日2回への減量を考慮する
    2)腎機能正常者と同じだが、適応について慎重に判断し、減量も考慮する
    腎機能正常者に比しAUCが1.3倍上昇する
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1)1回2.5 mg を1日2回
    2)禁忌(使用経験が少ない)
    腎機能正常者に比しAUCが1.4倍上昇する
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1)2)禁忌(使用経験がない)

リクシアナ(一般名:エドキサバン)

DOAC(経口直接Xa阻害薬):(今日の治療薬2021,p.596)

  • リクシアナ:錠(15mg、30mg、60mg)
  • リクシアナ:OD錠(15mg、30mg、60mg)

【効能・効果】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
○下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
膝関節全置換術、股関節全置換術、股関節骨折手術

【用法・用量】
○非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制
通常、成人には、エドキサバンとして以下の用量を1日1回経口投与する。
体重60kg以下:30mg
体重60kg超:60mg なお、腎機能、併用薬に応じて1日1回30mgに減量する。
○静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制
同上
○下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制
通常、成人には、エドキサバンとして30mgを1日1回経口投与する。

(リクシアナ添付文書)

  • 【エドキサバン】直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子)、1回60mgで1日1回経口投与
  • 減量基準(併用薬を除く)、1回30mgを1日1回経口投与
  • P糖蛋白阻害薬、併用注意、(PISCS2021,p.163,169)
    (キニジン、ベラパミル、エリスロマイシン、シクロスポリン・・・減量30mg1日1回
    アジスロマイシン、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ジルチアゼム、アミオダ
    ロン塩酸塩、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビルなど)など→減量を考慮)

直接Xa阻害薬(第Ⅹ因子):1回60mgで1日1回経口投与
体重60kg超では1回60mgで腎機能・併用薬に応じて1回30mgに減量
一番新しい薬剤で薬価が多少高めである。

生物学的利用率:バイオアベイラビリティ(BA)は、約60%である。
腎排泄の寄与率:全身クリアランスの約50%
P糖蛋白が関与する:経口クリアランスへの寄与率約50%

減量基準(併用薬を除く)、1日30mgを1日1回

  • 体重60kg以下
  • CCr30~50mL/minの患者⇒30mgを1日1回投与する。
  • CCr15~30mL未満/minの患者⇒有効性及び安全性は確立していないので、本剤投与の適否を慎重に判断すること。投与する場合は30mgを1日1回経口投与すること。

DOAC相互の位置付け(エドキサバン)

エドキサバンは、なぜ1日1回投与となっているのであろうか。

エドキサバンの分布容積(107L)は、DOAC薬の中では一番大きくなっている。
分布容積の大きさと1日1回投与を結びつける理論的根拠として、以下のようなヒントが示されている。(実践薬学2017,p.233←山下武志著からの引用)

一般的に、分布容積が大きくなると、血中濃度の半減期は、血液からの代謝・排泄という要素(速い半減期)以外に、組織から血液への薬物移行(遅い半減期)が生じ、血液で作用する薬物ではその効果が長時間維持されやすくなります。エドキサバンの1日1回というコンセプトは、この分布容積の大きさにも理論根拠がありそうです。

ところで、エドキサバン1日1回投与から1日2回投与にすれば、もっと理想的な動態になるであろうか。

残念ながら、エドキサバンでは、1日投与回数を1回から2回に増やすことによって、出血のリスクが高まるという結果が出ている。

エドキサバンを1日1回で投与した場合、1日投与量を30mgから60mgへ倍増しても、出血リスクはワルファリンとほぼ同じであまり変化しなかった。
ところが、例えば1日投与量60mgを30mg分2で投与すると、60mg分1で投与した場合と比較して有意に出血リスクが高くなった。

(実践薬学2017,p.235「エドキサバンの用量と大出血または臨床的に重要な出血の発現率」(外国人データ)←リクシアナ・インタビューフォームの第2相試験の結果より引用)

1日2回投与とすることで、ピーク濃度を低く抑えることはできるが、トラフ濃度は逆に高くなってしまう。そのため、出血イベントが増えてしまったと考えられる。(実践薬学2017,p.236)

腎機能低下時の用法・用量(エドキサバン)

「腎機能低下患者さんへの投与量記載がある薬剤例(内服のみ)」(どんぐり2019,pp.108-111)

「腎機能低下時に最も注意の必要な薬剤投与量一覧」日本腎臓病薬物療法学会(2020年4月1日改訂(33版))

  • CCr(50mg/dL以上)、常用量
    1)非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症,静脈血栓塞栓症の発症抑制: 体重に応じて次の用量を1日1回。60kg以下30mg,60kg超60mg
    2)下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症発症抑制:体重に関係なく1日1回30mg
  • CCr(30~50mg/dL未満)
    1)1日1回30mg
    2)1日1回15mg
    腎機能正常者に比し、AUCが1.8倍上昇し、t1/2が1.1倍延長する
  • CCr(15~30mg/dL未満)
    1)1日1回30mg
    2)禁忌(CCr30mL/min未満の患者では使用経験が少ない)
    腎機能正常者に比し、AUCが1.9倍上昇、t1/2が2.0倍延長する
  • CCr(15mg/dL未満、透析患者を含む)
    1)2)禁忌(使用経験がなく, ベネフィットを上回る出血のリスクが生じるおそれがある)

古い薬であるワルファリン方が新薬(DOAC)よりも優れている点が幾つもある

ワルファリンは古い薬である。
例えば、ワーファリン錠(エーザイ)の発売開始は1976年12月(昭和51)である。

現在では、新しいDOAC(直接経口抗凝固薬)の方が、ワルファリンと比べて脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ副作用が少ないとして第一選択薬とされている。

ただし、ワルファリンには、納豆など食べ合わせに注意すべき食品があるものの、そのほかの利点が幾つもあり現在でも盛用されている。

ワルファリンの作用機序と納豆などの食べ合わせ(ビタミンK)

ワルファリンの作用機序は以下のとおりである。
以下「」内:ワーファリン錠添付文書(エーザイ)より
(ワーファリン⇒商品名)

「本剤は、ビタミンK作用に拮抗し肝臓におけるビタミンK依存性血液凝固因子(プロトロンビン、第Ⅶ、第Ⅸ、及び第Ⅹ因子)の生合成を抑制して抗凝固効果及び抗血栓効果を発揮する」。
注)プロトロンビン⇒第Ⅱ因子

  • ビタミンKは、脂溶性ビタミンの一種である。
  • 正常な血液凝固(止血作用)の維持に必要なビタミンとして発見された。
    (Koagulation(ドイツ語で凝固)にちなんで命名された)
    肝臓での血液凝固因子(プロトロンビンなど)の合成過程において、補酵素として作用する。
  • 近年、骨粗鬆症や動脈硬化の予防に効果があることが明らかとなってきている。
    カルシウムを骨に取り込む作用をもつオステオカルシンの合成にも必要である。

これに対して、ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えることによって、ビタミンK依存性凝固因子(プロトロンビンなど)の生合成を間接的に阻害する。
つまり、ワルファリンの抗凝固作用は、ビタミンKの働きを抑えることによる。
(ワルファリンは、同時に抗血栓作用も有する)

したがって、ワルファリン服用患者が、ビタミンKを多量に含んだ食物(納豆など)を摂取すると、ワルファリンの抗凝固作用が追いつかない状態となる。
結果的に、ワルファリンの作用が弱められることになる。

実際の食生活での注意点としては、「納豆、クロレラ食品及び青汁は本剤の抗凝固作用を減弱させるので避けることが望ましい」。
この中で、納豆はビタミンKの含有量が非常に多く、また腸内でもビタミンKを産生する働きがあるので、特に注意が必要である。
またモロヘイヤも避けた方がよい。

黄緑色野菜は、逆に避けてはならない食品である。
少量ずつでも継続摂取する必要がある。
具体的な目安として、1日に小鉢一杯程度を心掛ける。

1)ワルファリンの消失半減期は非常に長い⇒飲み忘れの影響が少ない

ワルファリンの消失半減期=55~133時間
DOAC4種の消失半減期=約5~14時間

ワルファリンは消失半減期の長い薬物である。
ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、1回投与量によって大きなばらつきがあるものの、おおまかには約100時間としてよいであろう。

そこで、ワルファリンを規則的に継続服用して血中濃度が安定してきたならば、たまに飲み忘れがあったり、服用時間がずれ込んだとしても血中濃度に大きな変化が出ることはない。
つまり、ワルファリンは飲み続けるのに精神的な負担が少ない薬物である。

これに対してDOACの場合には、消失半減期(t1/2)が短いので、少しでも飲み忘れがあるとすぐに血中濃度が下がってしまい、効果が減弱してしまう恐れがある。
なお、DOACの方が服薬中止例が多いようである。

2)ワルファリン投与量の目安(PT-INR)⇒効果を客観的に評価しやすい

ワルファリンは、長年にわたって数多く臨床使用されてきており、血液凝固能の数値に基づく標準投与法が既に確立している。
したがって、医師の裁量で患者の病態に応じてきめ細かく凝固能を調整することができる。

これに対してDOACは、ワルファリンのような細かい調整をすることなく服用する薬物である。
というよりも、モニタリングの基準がないので投与量を細かく調整することができない。

ワルファリンの用法・用量:「本剤は、血液凝固能検査(プロトロンビン時間及びトロンボテスト)の検査値に基づいて、本剤の投与量を決定し、血液凝固能管理を十分に行いつつ使用する薬剤である」。

現在では、ワルファリン投与量は、PT-INRを目安に決定するのが標準投与法となっている。
PT-INRは、PT(プロトロンビン時間)の検査を行うと、換算式に基づいて自動的に計算される仕組みになっている。

PT(prothrombin time):プロトロンビン時間
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比

  • PT-INR=1.0・・・・・・・・・標準(基準値0.9~1.1)
  • PT-INR 1.6~2.6(なるべく2に近づけるようにする)
  • PT-INR>4.0・・・・・・・・・出血の危険性が高まる

不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.52

(PISCS,pp.144-145にて引用)

  • 脳梗塞既往のない一次予防で比較的低リスク(例えば、CHADS2スコア2点以下)の患者
    年齢によらずINR 1.6~2.6で管理する(なるべく2に近づけるようにする)
  • 脳梗塞既往を有する二次予防の患者や高リスク(例えば、CHADS2スコア3点以上、がん患者など)
    年齢70歳以上、1.6~2.6で管理する
    (ただし、出血リスクを勘案しつつ、なるべくINR 2.0以上で管理する)
    年齢70歳未満、2.0~3.0で管理する

INRが目標治療域に保たれている割合(time in therapeutic range:TTR)は、治療効果に大きく影響する。(PISCS,p.145)

3)ワルファリンは薬価が安い

ワルファリンの薬価はDOACの1/10以下である。コストパフォーマンスに勝り、年金生活者などの懐には優しい。

4)ワルファリンのそのほかの長所

解毒剤がある(ビタミンK)、なお、INRが正常化するには12時間程度かかる
一包化が可能(錠剤)
微調整が可能(顆粒)

直接経口抗凝固薬(DOAC)とワルファリン比較

直接経口抗凝固薬DOAC(direct oral anticoagulant)は、いずれも単一の凝固因子(トロンビンあるいはXa)の「活性部位へ直接かつ選択的に結合して活性を阻害する」。(今日の治療薬2019,p.564)

  • 非弁膜症性心房細動による脳卒中の予防に用いる
  • 予防効果は、ワルファリンと同等もしくは上回る
  • 脳出血(頭蓋内出血)の頻度は、ワルファリンと比較して少ない
  • INRのモニターは不要(定期的な血液検査不要)
  • 納豆などの食事制限無し

脳梗塞の予防効果は、ワルファリンとDOACで同等と考えられている。

腎機能を考える

ワルファリンは肝消失型薬物であり、DOACは、いずれも腎排泄型薬物である。
ワルファリンをはじめとする抗凝固薬は、DOACも含めて「腎機能が低下するほど出血リスクが高まる」傾向がある。

ワルファリンは肝消失型薬物であるが、重篤な腎障害のある患者(CCr<30mg/dL)では投与禁忌になっている。
ワルファリンの代謝・排泄が遅延して出血することがあるからである。
その原因は、尿毒素の蓄積にあるとされている。
しかしながら、「腎臓専門医の80%以上がこのことを把握していないというデータ」がある。

ダビガトランはワルファリンと同じく、重篤な腎障害のある患者(CCr<30mg/dL)では禁忌である。
これに対して、ダビガトラン以外のDOACは使用可となっている(減量は必要)。
なお、ダビガトラン以外のDOACも、CCr<15mg/dLでは使用経験がないため禁忌である。

血圧を考える

抗凝固療法中は血圧をコントロールすることが大切である。
「収縮期血圧136mmHg以上は、血栓塞栓症や大出血の独立した危険因子となることが報告されている」。

ワルファリンには、第Ⅶ因子を減少させることによって、頭蓋内出血リスクを高め血腫拡大を引き起こす作用が有る。
DOACでは、消化管出血が多くなるものの、頭蓋内出血を高めるリスクは無い。
血圧が高めの患者には、DOACの方が安全に使用できる。

CHADS2(チャズ・ツー)スコアを考える

CHADS2スコアとは、心房細動による脳梗塞のリスクを測る物差しであり、CHADS2スコアが高いほど、脳梗塞の年間発症率が上昇する。(実践薬学2017,p.251「CHADS2スコアと脳梗塞発症率の関係」)

CHADS2スコア

  • C:Congestive heart failure(心不全)、1点
  • H:Hypertension(高血圧、治療中も含む)、1点
  • A:Age(年齢、75歳以上)、1点
  • D:Diabetes mellitus(糖尿病)、1点
  • S:Stroke/TIA(脳卒中 /TIAの既往)、2点
    (TIA:transient ischemic attack、一過性脳虚血発作)

CHADS2スコアが表しているのは、主に血管の内皮機能である。
そこでは、持続性心房細動か発作性心房細動かには関係なく、血栓を作りやすい病的な内皮機能になっているかどうかを示している。

  • CHADS2スコア、0点:
    従来は、生活習慣病のない若い患者でそのほかのリスクが無ければ、内皮機能に問題無し=血栓リスクは低い=抗凝固療法を必要としない。つまり、出血のリスクの方が高いとして、原則抗凝固療法は不要と判断されていた。
    しかしながら、CHADS2スコアがゼロ点でも抗凝固療法を考慮したい患者は確かに存在しており、新ガイドライン2020では、エビデンスのあるそのほかのリスクを加味して、DOACあるいはワルファリン投与を考慮可となった。(不整脈薬物治療ガイドライン2020,p.49「図12:心房細動における抗凝固療法の推奨」)
  • CHADS2スコア、1点以上:
    DOAC:推奨、ワルファリン:考慮可とされている。
    つまり、新ガイドライン2020では、CHADS2スコアが0点でそのほかのリスクを考慮する場合と、CHADS2スコアが1点以上の2群に大別されている。

(以下、ガイドライン2013の内容である。注:実践薬学2017はガイドライン2013を参考にしている)

  • CHADS2スコア、1点:
    まずDOAC(第Ⅲ相試験のデータが有るダビガトランとアピキサバン)が「推奨」される。
    第Ⅲ相試験でスコア1点の症例が対象に含まれていないリバーロキサバンとエドキサバンは「考慮可」となっている。
    ワルファリンは「考慮可」である。
    なぜならば、1点では、大出血や頭蓋内出血のリスクと脳梗塞予防効果のベネフィットが拮抗しているからである。
  • CHADS2スコア、2点以上:
    DOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバンそしてエドキサバン)が「推奨」される。
    なぜならば、DOACはワルファリンと比べて、脳梗塞予防効果は同等かそれ以上で、かつ大出血は同等かそれ以下、さらに頭蓋内出血は大幅に低下して血腫拡大は起こりにくいからである。
    ワルファリンは、副作用リスクの面からDOACの次に「推奨」されている。

抗凝固コントロールを考える

ワルファリンの効果をモニタリングするためには、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が用いられるのが一般的である。
それに対して、DOACにはそのようなバイオマーカーは存在しない。
血圧(高血圧)、コレステロール値(脂質異常症)や血糖値(糖尿病)のような治療の指標となるものは無い。

DOACの効果は、大規模臨床試験の結果から知る以外に無い。
患者個々にその効果を知る方法は存在しない。

クラスエフェクトについて考える

DOACの血中濃度半減期は、全ての薬物で5~15時間の範囲内に収まっており、それ程大きな違いは無い。
それにもかかわらず、用法には1日1回と2回の違いがある。
「新規抗凝固薬はすべてが異なる特徴(強みや弱み)を持つ。クラスエフェクトとして済まされない歴然とした差異がある」。(実践薬学2017,p.243←山下武志著からの引用)

ワルファリンの消失半減期と他剤への切り替え時の注意点

プラザキサ(抗凝固薬の一種)の添付文書には、(重要な基本的注意の一つとして)「ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)から本剤へ切り替える際には、ビタミンK拮抗薬を投与中止し、PT-INRが2.0未満になれば投与可能である」と書かれている。

ワルファリンが体内から消失するまでどのくらいかかるだろうか

一般的に、薬物が体内から消失するまでの時間は、消失半減期(t1/2)の5倍を目安に考えられている。
そして、そのときの薬物残存量は、1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/32=3.13%となる。

ワルファリンの消失半減期(t1/2)は、(ワルファリンカリウムの単回経口投与時の薬物動態パラメータ)から「投与量0.5㎎⇒133±42(hr)、1.0㎎⇒95±27、5.0㎎⇒55±12」となっている。

1回投与量によって消失半減期(t1/2)に大きなばらつきがあるものの、消失半減期を100時間として、ワルファリンが体内から消失するまでの時間を推測すると、消失半減期の5倍で500時間(約21日)かかることになる。

消失半減期を経過すれば、PT-INR<2.0まで低下するだろうか

ワルファリンを服用中の患者のPT-INRが、何らかの原因で例えば3.4まで上昇して、ワルファリンからプラザキサ(抗凝固薬の一種)に変薬を考えた場合、どのようにすべきであろうか。

プラザキサの添付文書には、PT-INRが2.0未満になれば、ワルファリンからプラザキサへの変薬可としている(前述)。

そこで考えられる手段としては、PT-INRが3.4から2.0まで低下するまでの間、まずはワルファリンの投与を中止することである。
投与中止期間の目安として、消失半減期(t1/2)=100時間(約4日)が考えられる。

丸4日休薬後、5日目にもう一度PTを測定してPT-INR<2.0であれば、プラザキサに変薬して投与を再開してもよいという判断になる。

ワルファリンの服用を中止したら、すぐに納豆を食べてもよいか

ワルファリンの用法・用量を考える
(どんぐり2019,pp.189-194、服薬指導例・薬歴記載例有り)

ワルファリンの消失半減期は、投与量(mg)によって異なるが、55~133時間である。
その平均をとると、約100時間ということになる。
したがって、ワルファリンが体内から消失するまで、500時間(約21日)くらいかかる計算になる。

服薬指導(ワルファリン⇒DOAC変薬時)

ワルファリンの投与を中止しても、その効果がすぐになくなることはありません。
そこで、次の薬を飲み始めるまで、しばらく待つことになります。
ところが、納豆をすぐに食べてしまうと、予想よりも早くワルファリンの効果がなくなって、血栓ができるリスクが高まります。
次の薬を飲み始めるまでは納豆をがまんしましょう。

高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)

厚生労働省「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」2018年5月

別表1.高齢者で汎用される薬剤の基本的な留意点(抗凝固薬)

高齢者では抗凝固薬投与時の出血リスクが高いことに配慮し、リスク・ベネフィットバランスを評価して投与の可否を判断すべきである。複数の抗血栓薬等の長期(1年以上)併用療法はなるべく避ける。
(抗凝固薬)

  • 直接作用型経口阻害薬(DOAC)(アピキサバン[エリキュース]、ダビガトラン[プラザキサ]、リバーロキサバン[イグザレルト]、エドキサバン[リクシアナ])は、アジア人ではワルファリンと比較して消化管出血のリスクは少ないとされ、高齢患者では使用しやすい薬剤であると思われる。
    ただし、高度の腎障害のある患者にDOACは使用禁忌である。
  • 抗血小板薬や抗凝固薬、糖質ステロイドの併用患者ではNSAIDs潰瘍のリスクが上昇するため、これらの薬剤を使用する場合は、なるべくNSAIDsの変更・早期中止を検討する。(消炎鎮痛薬の項より引用して追加)
  • DOACの抗血小板薬との併用療法においては、出血リスクが上昇するため、冠動脈ステント留置後など投与せざるを得ない場合においても長期間投与は避けるべきである。
    脳卒中のリスク評価にはCHA2DS2-VAScスコアが、抗凝固薬投与時の出血リスクの評価にはHAS-BLEDスコアがそれぞれ有用である。
    このほか、高齢患者ではがんや転倒の既往、ポリファーマシーも大出血のリスクとされる。
  • ワルファリン[ワーファリン]は定期的にPT-INRを確認することにより抗凝固作用がモニターできるが、DOACはモニターができないため、定期的に腎機能を確認し、用量が適正であるか見直しが必要である。
  • ワルファリンおよびDOACはそれぞれ、併用薬との相互作用に十分注意が必要である。
  • リバーロキサバンは強いCYP3A(あるいはP糖蛋白)阻害薬である複数の薬剤が併用禁忌に指定されている。
  • ダビガトランやエドキサバンはP糖蛋白阻害薬との相互作用に注意が必要である。
    特にダビガトランは強力なP糖蛋白阻害薬であるイトラコナゾールは併用禁忌である。
  • ワルファリンはビタミンKを多く含む食品や健康食品の摂取にも注意が必要であり、納豆、クロレラ、青汁に関しては摂取しないように指導する。

別表3.代表的腎排泄型薬剤(抗凝固薬)

  • ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩
  • リバーロキサバン 他

別表4.CYPの関与する基質、阻害薬、誘導薬の代表例

( 特に高齢者での使用が想定され注意が必要な薬物)

CYP2C9

【基質】
ワルファリン(クマリン系薬、ワーファリン)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
グリメピリド((スルホニル尿素(SU類)(第三世代)、アマリール)
グリベンクラミド(スルホニル尿素(SU類)(第二世代)、オイグルコン、ダオニール)
ナテグリニド(即効型インスリン分泌促進薬、ファスティック、スターシス)
ジクロフェナク(NSAIDs[アリール酢酸系(フェニル酢酸系)]、ボルタレン)
セレコキシブ(NSAIDs(コキシブ系)、セレコックス)
フルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、ローコール)

【阻害薬】
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
アミオダロン(抗不整脈薬(クラスⅢ群)、アンカロン)
ブコローム(尿酸排泄促進薬、パラミヂン)

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)

CYP3A

【基質】
トリアゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(超短時間型)、ハルシオン)
アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬、ソラナックス、コンスタン)
ブロチゾラム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬(短時間型)、レンドルミン)
スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬、ベルソムラ)
シンバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リポバス)
アトルバスタチン(スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、リピトール)
フェロジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、スプレンジール)
アゼルニジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、カルブロック)
ニフェジピン(Ca拮抗薬(ジヒドロピリジン系)、アダラート)
リバーロキサバン(DOAC(経口直接Xa阻害薬)、イグザレルト)
チカグレロル(抗血小板薬(P2Y12阻害薬、ブリリンタ)
エプレレノン(カリウム保持性利尿薬、セララ)

【阻害薬】
イトラコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(トリアゾール系)、イトリゾール)
ボリコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ブイフェンド)
ミコナゾール(深在性・表在性抗真菌薬(イミダゾール系)、フロリード)
フルコナゾール(深在性抗真菌薬(トリアゾール系)、ジフルカン)
クラリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、クラリス、クラリシッド)
エリスロマイシン(マクロライド系薬(14員環)、エリスロマイシン)
ジルチアゼム(Ca拮抗薬(ベンゾジアゼピン系)、ヘルベッサー)
ベラパミル(Ca拮抗薬(クラスⅣ群)、ワソラン)
グレープフルーツジュース

【誘導薬】
リファンピシン(抗結核薬、リファジン)
リファブチン(抗結核薬、ミコブティン)
フェノバルビタール(抗てんかん薬(バルビツール酸系)、フェノバール)
フェニトイン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、アレビアチン、ヒダントール)
カルバマゼピン(抗てんかん薬(主にNaチャネル阻害)、テグレトール)
セントジョーンズワート

  • 基質(相互作用を受ける薬物)は、そのCYP分子種で代謝される薬物である。
    基質の薬物は、同じ代謝酵素の欄の阻害薬(血中濃度を上昇させる薬物等)、誘導薬(血中濃度を低下させる薬物等)の薬物との併用により相互作用が起こり得る。
    一般に血中濃度を上昇させる阻害薬との組み合わせでは基質の効果が強まって薬物有害事象が出る可能性があり、血中濃度を低下させる誘導薬との組み合わせでは効き目が弱くなる可能性がある。
    なお、多くの場合、基質同士を併用してもお互いに影響はない。
  • 上記薬剤は2倍以上あるいは1/2以下へのAUCもしくは血中濃度の変動による相互作用が基本的に報告されているものであり、特に高齢者での使用が想定され、重要であると考えられる薬剤をリストアップしている。
    抗HIV薬、抗HCV薬、抗がん薬など相互作用を起こしうる全ての薬剤を含めているものではない。
    組み合わせによっては5倍以上、場合によっては10倍以上に血中濃度が上昇するものもある。
  • 本表はすべてを網羅したものではない。
    実際に相互作用に注意すべきかどうかは、医薬品添付文書の記載や相互作用の報告の有無なども確認して個別の組み合わせごとに判断すること。
  • ベンゾジアゼピン系薬やCa拮抗薬は主にCYP3Aで代謝される薬物が多い。
    本リストでは、そのなかでもCYP3Aの寄与が高いことが良く知られている薬物を例示した。
  • 消化管吸収におけるCYP3A、P糖蛋白の寄与は不明瞭であることが多く、また両方が関与するケースもみられることに注意を要する。
    またCYP3Aの阻害薬については、P糖蛋白も阻害する場合が多い。

薬物動態学から

分布容積の小さな薬物の例(山村ほか2016,p.20など)

エスポ―注射液(一般名:エリスロポエチン)、30mL/kg
ヘパリン、58mL/kg
ナイキサン錠(一般名:ナプロキセン)、約140mL/kg
ブルフェン錠(一般名:イブプロフェン)、120mL/kg
ワーファリン錠(一般名:ワルファリン)、140mL/kg
アスピリン(サリチル酸として)、200mL/kg
ハベカシン注射液(一般名:アルベカシン)、200~250mL/kg
アミノグリコシド系抗菌薬、300mL/kg